美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」

大脱出編

855 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 21:45:42.30 ID:3rIsNhg0 [2/10]

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そして、運命の日が訪れる――。




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856 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 21:49:36.50 ID:3rIsNhg0 [3/10]
3日後――。

本来ならあと1時間ほどで最終下校時刻を迎える頃、それは始まった。
1つの爆音を皮切りに、学園都市の至る場所から爆発や炎が舞い上がったのだ。
それは、学園都市の崩壊を報せる狼煙とも言えた。
地獄がまた始まったのだった――。


ジャッジメント第177支部――。

その日、美琴たち4人は予め早くから支部に集合していた。

美琴「始まった……っ!」

遠くで鳴り響いた爆音を聞き、美琴は立ち上がった。
内戦が始まったのだ。

黒子「電話が通じませんの。混線状況ですわ」

初春「ネットも使えなくなってます」

佐天「いよいよ終わりか……」

黒子「じき、インフラも麻痺するでしょう。本当の本当にこれで学園都市も終わりですわね」

美琴「さぁ、早く行くわよ!」

初春「待って下さい! 後ちょっとで機密書類の処分が終わりますから!」

黒子「こっちももうすぐですの!」

佐天「2人とも急いで!」

美琴「一刻の猶予も無いわ!」

パソコンを操作する黒子と初春を見、美琴と佐天は焦りを見せる。

黒子「終わりましたですの!」

3人は、ドアの付近に集まり初春を手招きする。

佐天「初春! 早く!」

初春「……よし終わった! 今行きます!!」

佐天は、手招きしていた腕を、走ってきた初春の肩に回すように急がせる。
最後の後始末も終え、美琴たち4人は支部を飛び出した。

857 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 21:54:35.55 ID:3rIsNhg0 [4/10]
美琴「こっちよ!! 合流地点までのルートは頭に入れてある」

4人は通りを駆け抜ける。この辺りはまだ、内戦勃発の煽りを受けていないのか、どこも被害は無く静かだった。

佐天「もっと早いうちに出てれば良かったんだけど……」

美琴「それじゃあ駄目なのよ。内戦開始の直前は、研究者側も敵対するテログループたちも神経をすり減らしてる。そんな最中に怪しい動きをすれば、どちらかの勢力に勘付かれる可能性もある」

黒子「逆に、内戦が始まったらみんな緊張も解けてカオスな状況になるので、隙が生まれやすいということですわね!?」

美琴「そういうこと! あいつが説明したまんまのことだけどね。それにわざわざあいつらはジャッジメント支部の近くに合流ポイントを設けてくれたわ。危険を冒してまでこんな近くまで迎えに来てくれるんだから贅沢は言えないでしょ!!」

佐天「なるほど確かにそれもそうですね!」

初春「なら早く行かないと」

美琴「ええ、寄り道は出来ないわ」

息を切らし彼女たちは走る。だが、それと同時に言い知れぬ緊張や不安も沸々と湧き上がってくる。
辺りはまだ静かとは言え、付近の建物が急に爆発したり、路地裏からテログループが顔を覗かせないか、と考えると余計に焦燥感が増してくるのだった。




ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!




突如、サイレンが鳴り出した。

858 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 21:59:38.68 ID:3rIsNhg0 [5/10]
恐らく、学園都市全域に緊急避難警報が出されたのだろう。

美琴「これは……サイレン!?」

本能をつつくような不気味な音を耳にし、美琴は僅かに顔を上げる。
と、その時だった。

黒子「お姉さま!!!!」

美琴「え……?」

先頭を走っていた美琴が、黒子の声に気付き正面に顔を戻した時だった。
突如、曲がり角の陰からごつい装甲を纏った腕が飛び出してきた。

美琴「!!!!!!!」

1秒後、美琴は後方に吹き飛ばされていた。

黒子「お姉さま!!!」

佐天初春「御坂さん!!!」

地面に転がった美琴に駆け寄る3人。彼女たちの絶望を更に肥やすように、ズゥンという地響きが後ろから轟いた。





「ぎゃぁっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!! いいザマだなぁ、レベル5のお嬢ちゃんよぉおおおおおおおおおお!!!!!!」







859 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:05:16.71 ID:3rIsNhg0 [6/10]
黒子たちが振り返る。
そこには、ピンク色のどぎつい模様で全身を埋められた、1台の駆動鎧(パワードスーツ)が3人を見下していた。

黒子「あ……貴女は……」

3人の顔に冷や汗が浮かぶ。



テレスティーナ「正解でぇぇぇぇっす!!!! ご無沙汰してましたかぁ、お嬢ちゃんたちぃぃぃい??? まあこっちはお前らガキのことなんて1oたりとも心配なんてしてなかったけどなぁ!!!! ぎゃははははははははははは!!!!!!!」



その駆動鎧に身を纏った人物――それはかつて『乱雑反応(ポルターガイスト)』の事件でさんざん美琴たちを苦しめた黒幕の女だった。

美琴「テ……テレスティーナ=木原=ライフライン………」

頭から一筋の血を流しながら、美琴が起き上がろうとする。

黒子「お姉さま!!」

佐天初春「御坂さん!!!」

テレスティーナ「あぁぁぁぁん? 何だ死んでなかったのかよこのクソガキは!!??」

限界まで顔を歪めに歪めまくり、テレスティーナは暴言を吐く。

美琴「……咄嗟に……回避しただけよ……もう少し反応が遅かったら、危なかったわね……」

テレスティーナ「ほざくなアバズレがぁ!!!」

黒子「くっ!」

美琴に注意を向けているテレスティーナの隙をつき、黒子が動きを見せる。

テレスティーナ「はいざんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇんんん!!!!!!!」

ドゴッ!!!!

黒子「きゃん!!!!」

しかし、彼女は攻撃を仕掛ける間も無く、駆動鎧のごつい左腕に薙ぎ払われてしまった。

美琴「黒子!!!」

佐天初春「白井さん!!!」

テレスティーナ「テレポーターなんてほんの少し捻って精神状態を悪化させてやれば無力になるからなぁ!!!! 強力に見えても実は相手しやすいっていう」

860 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:11:37.19 ID:3rIsNhg0 [7/10]
佐天初春「……………っ」

佐天と初春が、倒れた美琴と黒子の前に立ちテレスティーナを睨む。

テレスティーナ「ぁぁぁああああ? 何だその目はぁ?? 生意気なガキどもが!!! いいぜぇ、いつぞやの借りここで返してやるぁぁぁぁぁ!!!!!」

美琴「そうは……させない……」

美琴が震える手でポケットからコインを取り出す。

テレスティーナ「遅すぎるぞブァァァァァァァカ!!!!!!」ガッ!!

美琴「きゃ……あっ!!!!」

駆動鎧の右腕が美琴を掴み上げた。

テレスティーナ「何がそうはさせないキリッだよ!!!!!」

佐天初春「御坂さん!!!」

テレスティーナ「お前らの戦闘パターンなんてお見通しなんだよ!!! 1度戦ってるからなぁ!!!! 所詮レベル5とレベル4でも精神が未熟なガキだしぃぃ!!!! ほんの少し隙をついて傷つけてやるだけで戦闘を有利に運べるんだから簡単だよなぁあああああ!!!!????」

美琴「くっ……うぅ……」

美琴は何とか電気を発しようと試みるが、駆動鎧の右腕が彼女の首を押さえるようにしめつけているため演算に集中出来ない。

テレスティーナ「なぁぁんか前にもこんな風景見たことあるよなぁぁぁぁ!!!! あんときゃお前の知り合いのせいでみすみすお前を取り逃がしたが、今度こそお前は終わりだぜぎゃははははははははは!!!!!!」

黒子「そうは……させませんの!!」

ヨロヨロと黒子が立ち上がる。

テレスティーナ「あ?」

黒子は太ももに巻いていた革ベルトに手を触れ、金属矢をテレポートさせる。
しかし、何故か金属矢は駆動鎧に当たる前に、地面に叩き落されてしまった。

黒子「なっ!?」

861 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:17:21.41 ID:3rIsNhg0 [8/10]
テレスティーナ「驚いたぁぁぁ? 驚きまちたかぁぁぁぁぁ???? こっちにはなぁ、魔術師なんて反則的なやつもいるんだよ、ブァァァァァカ!!!!!!」

見ると、その言葉に反応するように駆動鎧の後ろから1人の外国人らしき男が出て来た。恐らくはテレスティーナが言った魔術師だろう。
黒子たちは初めて目にする驚異の力と魔術師という存在に動揺する。

テレスティーナ「こっちはこの生意気なクソガキを圧殺しとくから、お前はそのテレポーターどもをぶち殺しとけ!!!!!」

言われた魔術師はニヤッと笑い、黒子と佐天と初春に近付き腕を伸ばす。

佐天「あ……あ……」

初春「来ないで……」

黒子「……………っ」

目の前の、魔術師と言う未知の相手にどう対処していいのか悩んでいるのか、それともテレポートを実行するほどの精神を保てるほど冷静ではなかったのか、黒子は攻撃の動作に移れなかった。
美琴は美琴で、テレスティーナの駆動鎧に首を掴まれ壁に押し付けられ手も足も出せない状態だった。

テレスティーナ「ヒャハハハははははははははははは!!!!!!! 死ね氏ね士ね詩ね師ね詞ねシネ市ねしねSINE歯ねSHINEしねシネ死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

美琴「がっ………はっ……」

美琴の意識が遠のいていく。
顔を歪みまくるテレスティーナを目の前にして、美琴は手を動かそうとするがまともに反応しない。
視界の端には、今にも魔術師らしき男に襲われそうな黒子と佐天と初春の絶望がかった顔がチラッと見えた。
美琴はテレスティーナを睨む。

テレスティーナ「なんだぁぁぁぁその反抗的な目はぁぁぁぁぁあああああ!!!!??? どうやらおしおきが必要なようだなぁぁぁぁあああああ???? いいぜぇぇぇぇえ、そのブッサイクな面、不快だから今すぐぶっ潰してやんよ!!!!!!」

862 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:23:11.42 ID:3rIsNhg0 [9/10]
駆動鎧の左腕が動く。

テレスティーナ「死ねええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」

佐天「御坂さん!!!」

初春「御坂さん!!!」

黒子「お姉さま!!!」

美琴「くっ……!!」

重く、無慈悲な駆動鎧の左腕が美琴の顔を粉砕しようと振るわれる。
が、しかし………




テレスティーナ「……………あ?」




美琴「!!??」

いつまで経っても、攻撃は来なかった。不審に思った美琴が目を開くと、そこには不自然な方向に折り曲げられた駆動鎧の左腕が見えた。

テレスティーナ「ぐぎゃああああああああああああああ!!!!!!」

エイリアンのような悲鳴を発し、テレスティーナは駆動鎧の左腕を見る。恐らくは内部で自身の左腕も同じように曲がっているのだろう。
テレスティーナは恨めしい顔で叫んだ。

テレスティーナ「なんだぁお前はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?????」

テレスティーナが睨んだ先には………






駆動鎧と美琴の間に、1人の白い悪魔が立っていた。








865 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:29:25.57 ID:3rIsNhg0 [10/10]
美琴「!!!!!!!!!」

黒子「あれは……」

驚き、黒子や魔術師もそっちの方に顔を向けた。
そしてその時、別方向からも1人の少年が現れ、声を上げた。





「悪い御坂。遅くなったな」





美琴「!!!!!!!!!!!」

美琴たちの窮地を救った2人の少年――それは、上条当麻と一方通行だった。

上条「今すぐ助けてやる」

一方通行「やれやれェ」

テレスティーナ「…………………」

その光景にしばし呆然としていたテレスティーナだったが、我に返るとすぐにまた顔を歪めた。

テレスティーナ「…………………ハッ!」
テレスティーナ「何が助けてやるだクソヤロウ!!! 遅れてきたヒーロー気取りか!!?? ああ!!?? お前らみたいなクソガキが2匹増えたところで何にもならんぇぇぇぇよぶぁぁあぁァぁか!!!!!!」

一方通行「っせェ………」

テレスティーナ「ああぁぁぁ?」

駆動鎧と美琴の間に立っていた一方通行が、テレスティーナに背中を向けながら呟いた。

一方通行「うるせェって言ってンだよ三下が」

僅かに振り返り、一方通行は深紅の目でテレスティーナを睨む。

866 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:35:49.24 ID:8ClKob20 [1/15]
テレスティーナ「生意気なガキだなぁぁぁぁてめぇぇぇも!!!!! 左腕折られただけで戦闘力が減るとでも思ったかぁぁぁぁああああ?????」

ブンッ

そう言うと、テレスティーナはゴミを捨てるような動作で美琴を放り投げた。

美琴「あっ!!」

上条「よっと」

しかし、それを上手く上条がキャッチする。
が、テレスティーナはもう美琴のことはどうでもいいのか、既に一方通行に注意を向けていた。

テレスティーナ「てめぇみたいな生意気なガキは虫っころみたいに死んどけやああああああああああ!!!!!!!」

駆動鎧の右腕が一方通行に向けて振るわれる。




一方通行「うぜェ」




ドッ!!


テレスティーナ「…………は?」

鈍い音が一瞬響いた。
何が起こったのか理解する間もないまま、テレスティーナが纏った駆動鎧はどこからか生じたベクトルによって操られ………



ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!



2秒後、100m先の建物の壁にめり込んでいた。

869 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:41:51.56 ID:8ClKob20 [2/15]
決着はすぐに着いた。

一方通行「ふン」

美琴「しゅ…瞬殺……」

それ以外に形容し難い、あっけない戦闘の終わり方だった。
上条に抱きかかえられた美琴は、遥か遠くで倒れたテレスティーナの駆動鎧を唖然と見ていた。

一方通行「俺を殺したいなら、木原くンの木原神拳なみの策ぐらい練ろよ。にしても、ホントあの一族にはろくなのがいないねェ」

つまらなさそうに一方通行は髪を掻いた。

上条「で、大丈夫か御坂?」

上条は、お姫様だっこのように抱えている美琴を見下ろす。
彼女は、子供のように片腕を上条の肩に伸ばし、身体も上条に寄せていた。

美琴「え? あ……うん……」

上条「良かった」

美琴の無事を確認すると、上条は安心したように微笑みを見せた。

魔術師「クソ! どういうことだこれは!?」

上条「ん?」

振り返ると、魔術師がうろたえていた。
恐らく、一方通行の実力の一端を垣間見て、慣れない超能力に今更ながら慌てふためいているようだった。

上条「悪い御坂、少し降ろすぞ」

美琴「うん……」

上条は、優しくそっと美琴を地面に降ろす。

魔術師「クソオオオオオオオオオ!!!!!!!」

黒子佐天初春「!!!!!!」

錯乱した魔術師が両手を黒子たちに向けた。
そして、そこから何らかの攻撃が放たれた。

バギィィィン!!!!

魔術師「なに!?」

871 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:47:26.53 ID:8ClKob20 [3/15]
上条「寝てろ三下」

ドゴッ!!

と言う鈍い音と共に発せられた殴打を受け、魔術師は壁に突っ込みそのまま崩れ落ちた。

上条「ふん」

一方通行「雑魚しかいねェのかよ……」

3分もしないうちに、2人の強敵は倒された。

美琴黒子佐天初春「…………………」

そんな2人を4人は唖然と見ていたが、我に返った黒子と佐天と初春が美琴に駆け寄っていった。

黒子「お姉さま!」

佐天初春「御坂さん!」

美琴「大丈夫よこれぐらい。あんたたちは何ともない?」

黒子「私たちは大丈夫ですわ」

美琴「良かった……あんたたちが来てくれなかったら危なかったわ。ありがとう」

そう言って美琴は上条と一方通行に視線を向けた。

黒子佐天初春「ありがとうございます!」

美琴に続き、黒子たち3人が礼をする。

一方通行「礼は後だ」

上条「この近くに黄泉川先生たちの車があるからそこまで移動するぞ」

美琴「分かったわ」

数分後、美琴たちは上条に連れられて通りの端に待機していたワゴンに乗り込んだ。

872 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:52:56.01 ID:8ClKob20 [4/15]
前後に1台ずつ、警備員が運転する自動車に護衛されてワゴンは出発する。

美琴「いっつ……」

カエル医者「よし、これで大丈夫だよ?」

カエル顔の医者から応急処置を受ける美琴。
ワゴン車は10人乗りで、運転席に鉄装、助手席に黄泉川が、前部座席に左から打ち止めと一方通行が、中央座席に左から黒子、佐天、初春が、後部座席に左から上条、美琴、カエル顔の医者が乗っていた。
因みに、木山と寮監はワゴン車の前を進む自動車の中だった。

上条「今から全員で脱出地点まで向かう。敵は双方共に街の中心部で衝突しつつある。この車列は郊外に離れていくから、騒ぎの中心からは遠のいていくことになる。敵の方も、何も事情を知らないはずの学生たちがこんな早くに逃げ出すとは思ってないからな」

カエル医者「逆に言えば今しかチャンスはないわけだね?」

美琴「そう言えば先生」

カエル医者「何だね?」

美琴「病院の患者さんたちはどうしたんですか?」

カエル医者「全くもってその通りだよね? 僕も我ながら情けないよ。患者さんたちを置いて『外』へ逃げることになるなんて。一応、病院内の患者さんたちには、医療施設が整ってある第7学区随一のシェルターに避難させたけどね?」

本当に物悲しそうにカエル顔の医者は語る。今この時も患者のことが気になって仕方がないのだろう。
それを汲んだのか、腕組みをして前を見ていた一方通行が言う。

一方通行「自虐することはねェだろ。あンたはよくやってるよ」

カエル医者「まさか君からそんな言葉が出るとはね?」

一方通行「けっ」

美琴はカエル医者の顔を一瞥する。
本当に彼は残念そうな顔をしている。だが、このまま学園都市の『中』に残っていても出来ることはほとんどない。ならば、学園都市の『外』から患者を救う手立てを考えるのが最良の策なのかもしれない。

打ち止め「もう、アナタってば素直じゃないのね、ってミサカはミサカは呆れてみたり」

一方通行「っせェ」

初春「にしても、ちゃんと最後まで脱出出来るんでしょうか?」

初春が窓の外を眺めながら呟く。

佐天「心配と言えば心配だよね」

黒子「杞憂であればいいんですけどね」

上条「敵に見つからない限り大丈夫だろう。まあ、後は車で向かうだけだ。脱出地点の近くまで来たら、徒歩に切り替えるけどな。その後は、闇夜に紛れて川からボートに乗って『外』と『中』の境界まで行くだけだ」

873 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 22:58:33.83 ID:8ClKob20 [5/15]
美琴「………………でも、私たちだけ逃げるのってやっぱり何だか気が進まないな」

ふと、美琴が呟いた。

黒子「確かに、学園都市にはまだ多くの学生が残っていますしね」

車内に沈黙が訪れる。

カエル医者「………ま、かと言って学生たちを放っておくわけでもないよ。『外』のNGO団体の施設では、どのようにより多くの学生たちを学園都市から助け出すか、という計画が今から始まってるらしいからね。君たちなら、学園都市の内部を知る貴重な人材として彼らに協力することだって出来るんだ。だから、元気を出しなさい。ね?」

美琴「ゲコ太……」

上条「………………」

美琴「……でも」

カエル医者「ん?」

美琴「でも、学生たちだけじゃない。今こうしてる間にも、黄泉川先生の部下の人たちや、妹達が陽動で動いてるんでしょ?」

更に不安材料を口にする美琴。彼女の声はどこか弱弱しい。

一方通行「アイツらが自分で決めたことなンだ。ここで愚痴ってみろ。オマエはアイツらの意志を踏みにじることになるンだぞ」

黄泉川「私の部下たちも、生徒たちを守るのが本来の任務。腐ったアンチスキル上層部に代わって己の職務を全う出来るんじゃん。だからこそあいつらは喜んで志願して陽動任務を引き受けてくれたじゃん」

美琴「でも……でも……」

一方通行「グダグダうっせェな。納得いってないヤツがオマエだけだと思うなよ」

美琴「え?」

一方通行「だが、納得出来ても止められねェもンがあるだろ。それを止めようとしたら、逆にアイツらを馬鹿にしてることになる」

黄泉川「そういうこと。ま、人情としては見過ごしたくないんだけどさ」

一方通行と黄泉川の言葉にはどこかやり切れなさが含まれていた。恐らく、彼ら自身も妹達や部下たちに思うところがあるのだろう。

打ち止め「ちなみに、今ミサカネットワークに入ってきた陽動に就いてる妹達からのメッセージだけど……『これはミサカたちが自らの意志で決めたことです。お姉さまがここでミサカたちを心配して引き返したり、脱出に失敗すればミサカたちの行動も無駄になります。今、お姉さまが一番にすべきことは学園都市から逃げることです。では、ご武運を祈ってます』って下位個体たちが言ってるよ、ってミサカはミサカは説明してみる」

美琴「………あの子たち……」

打ち止め「ミサカだって本当は悲しいんだよお姉さま。だけど、下位個体たちの想いを無駄にするのは一番駄目だと思う」

美琴「……………………」

確かに、その通りかもしれない。だが、どうあっても全てが全て納得出来るものでもなかった。

上条「……………………」

874 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:04:25.39 ID:8ClKob20 [6/15]
と、その時だった。黄泉川の無線に連絡が入った。後ろの車両からだ。

黄泉川「何? 車が急に止まった?」

無線を受けた黄泉川が後ろを振り返る。それにつられ、全員も後部ガラスから後ろを窺った。
見ると、確かに後方に付いていた車が停まっている。

佐天「何かあったのかな?」

初春「エンジントラブルでしょうか?」

美琴「どうするの?」

カエル医者「ちょっと待っててくれ。僕が1番彼らの車に近い座席に座ってるしね。様子を見てこよう」

美琴「あ……」

そう言うと、カエル顔の医者はドアを開き出て行った。

鉄装「い、いいんですか?」

黄泉川「まぁ、すぐ戻るだろ」

世話好きなカエル顔の医者らしい行動と言えたが、あまり無駄に時間を食うわけにもいかなかった。

カエル医者「どうかしたのかな?」

カエル顔の医者は停車した車のところまで近付くと、運転席を覗き込んだ。

警備員A「分かりません。エンジンに異常は無いはずなんですが」

警備員B「急に止まった感じで」

カエル顔の医者「ふむ、急に…ね」

カエル顔の医者は異常を調べるため、車の周りを回る。
ワゴン車からは美琴たちがその様子を不安げに見つめていた。

カエル医者「おや? これは?」

875 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:09:37.79 ID:8ClKob20 [7/15]
車の背後に回った時、何かに気付いたのかカエル顔の医者が腰を屈めた。

カエル医者「パンクしているね……。しかもこれはまるで撃たれたような……ん?」

不意に、カエル顔の医者は立ち上がる。

美琴「何があったの?」




ズドオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!




突如、ワゴン車の後部ガラスの視界がオレンジ色に染まった。
咄嗟に、上条は美琴を庇うように覆い被り、他のみんなも反射的に椅子に頭を引っ込めた。



カエル医者「…………………」

しばらくして、カエル顔の医者は目を見開いた。

ボオオオオ……

周囲は黒い煙に覆われ、すぐ側ではオレンジ色の炎を上げながら燃える車が目に入った。

カエル医者「一体何が起こったんだね?」

状況も理解出来ず、カエル医者は呟いていた。

カエル医者「ん?」

彼は自分の身体を見た。
そこに、あるべきはずの下半身が無かった。

カエル医者「おやおや……」

877 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:15:26.88 ID:8ClKob20 [8/15]
上条「クソ!」

頭を上げ、後部ガラスから後方を見る上条。
車が炎上していた。

美琴「何があったの?………何よあれ!?」

黒子「車が……燃えてますわ……」

佐天「何であんなことに!?」

初春「まだあの中には、先生と2人の警備員がいるんですよ!!」

上条「チクショウ!!」

一方通行「チッ!!」

ガラッ!

同時に、上条と一方通行が扉を開けて飛び出していた。

美琴「あっ!」

打ち止め「アナタ!!」

鉄装「黄泉川先生、あの2人が!」

黄泉川「クソ! 急に爆発したと思ったら……。いつでも出発出来るようしとくじゃん!」

美琴「………………っ」バッ

黒子「お姉さま!?」

佐天初春「御坂さん!!!」

黄泉川「何!?」

止める間も無く、美琴も車から飛び出していた。

879 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:20:38.61 ID:8ClKob20 [9/15]
燃え盛る炎の熱にも負けず、上条と一方通行が車に近付いて来た。

一方通行「駄目だな。警備員の2人は即死だ。恐らくRPGの直撃でも受けたンだな。どこから撃ったのかは分からねェが、止まってると良い的だ。早く逃げるぞ」

上条「待て! 先生だ!!」

車から少し離れた所に、カエル顔の医者が仰向けに転がっていた。
ただし、  上  半  身  の  み  だ  が  。  

上条「先生!」

慌てて上条が駆け寄る。

カエル医者「おお君か。いやいや参ったね?」

上条「先生………」

その姿を見た上条が絶句する。

美琴「ゲコ太!!」

カエル医者「おや君まで。外に出たら危ないよ?」

上条「御坂!?」

美琴「あああ……何て……酷い……ゲコ太!!」

口元を両手で覆うように驚き、美琴はカエル顔の医者に駆け寄った。
一方通行は2人の様子を横目で窺いながらも周囲に警戒を向けている。恐らく、敵からの攻撃に備えているのだろう。だが、例え彼であっても音速で飛来する物体からワゴン車を守りきれるかは分からなかった。

880 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:25:32.23 ID:8ClKob20 [10/15]
木山「何かあったのかな?」

寮監「一番後ろの車が爆発したようですが、あの先生が巻き込まれたようですね」

先頭の車内でも、後ろで起こりつつある惨状に気付いたのか、後部座席に座っていた木山と寮監が後ろを振り返っていた。

木山「………本当に? 無事ならいいんだが……」



美琴「やだ! やだよゲコ太!! 死なないで!!!」

上条「御坂、残念だが先生はもう無理だ。可哀想だけど、早く行かないと」

美琴「放っておけって言うの!?」

涙で顔をクシャクシャにし、美琴はカエル顔の医者にすがる。

一方通行「敵が来るぞ。いつまでも余裕こいてる暇ねェぞ!」

上条「御坂、もう無理だ」

美琴「でも……!」

カエル医者「泣くのは止めて早く車に戻りなさい」

美琴を諭すように言うが、カエル顔の医者の腰から下は千切れており、そこからは大量の血が流れている。

カエル医者「その代わり、これを持ってってくれ」

美琴「?」

カエル顔の医者は懐からケースに入れられた1枚のCD-ROMを取り出した。

カエル医者「ふふ、さすが僕自慢の耐火耐衝撃ケースだ。少しヒビが入ってるだけで中身は何とも無さそうだね?」

美琴「……これは?」





カエル医者「能力者から能力を消すための音声データだよ」





美琴「……………え?」

881 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:31:29.99 ID:8ClKob20 [11/15]
カエル顔の医者の言葉に、美琴の思考が一瞬停止した。

カエル医者「能力者から能力を消し去るためのものだ」

美琴「…………な……何を? ……能力を消す?」

カエル医者「……そうだ。これは僕が長年の研究を費やした結果、極秘に作ったものでね。この中の音声データをある種のカリキュラムに沿って聞き続けると『自分だけの現実(パーソナル・リアリティ)』を消失させる効果が出るんだ。実際、先に学園都市の『外』に逃げた学生に協力してもらって成果も出てる」

美琴「どうして……こんなものを……?」

カエル医者「たとえ『外』に逃げられたとしても、学園都市で能力開発を受けた学生たちが満足で暮らせる生活環境は少ない。そればかりか、能力を使っただけでどこか怪しい外国の機関に目を付けられたり、あるいは過激派団体に攻撃の対象にされることも考えられる。だから、そういった危険な目に遭わないために、このデータを作り出したんだ」

美琴「そんな……でも……能力を消すだなんて……」

カエル医者「無論、最終判断は本人に任せるけどね? とにかく君は、これをNGO団体の施設にいる僕の友人の研究者たちに渡してほしい。以前、上条くんが君にあげたUSBメモリに入ってるはずだよ。持ってるね?」

美琴「持ってるけど……私は…私は能力を消すって……そんなの…どうしたら……」

カエル医者「だから言っただろう? それは本人の最終判断だと」

そう言うと、カエル顔の医者は美琴の手をギュッと包み込むようにCD-ROMを渡した。

カエル医者「『外』に脱出した学生たちが、少しでも平和に……そう、今までみたいに“あの男”のモルモットとして生きるのではない、1人の真っ当な人間として幸せな人生を送るために………」

カエル顔の医者は魂が篭った目で美琴を見据える。




カエル医者「頼んだよ」






882 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:36:43.38 ID:8ClKob20 [12/15]
美琴「うっ……ヒグッ……ゲコ太ぁ……」

目元を拭う美琴。

一方通行「もう待てねェぞ!!」

上条「行くぞ御坂」

上条と一方通行が美琴を促す。

美琴「………うん」

胸にCD-ROMを抱き、上条に急かされるように美琴はワゴン車へ戻っていく。
1度だけ彼女はカエル顔の医者の方を振り向いたが、すぐにワゴン車に飛び乗った。

一方通行「悪い遅くなった」

黄泉川「私の部下たちは?」

一方通行「死ンでたよ。あの医者ももう虫の息だった」

黒子佐天初春「そんな……!!」

黄泉川「……そうか」

打ち止め「あの先生が……」

美琴「…………………」

上条「黄泉川先生、早く出発して下さい」

黄泉川「よし、行くぞ!! 出せ!!」

鉄装「はい!!」

再び、車は発進する。仲間だった1人の犠牲者を残して――。

美琴「…………………」

美琴は後部ガラスから、小さくなっていくカエル顔の医者の姿をずっと眺めていた。

883 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:41:11.53 ID:8ClKob20 [13/15]
カエル医者「……さぁて、未来の芽は咲いたばかりだアレイスター。君が生きていようが死んでいようが知ったことじゃないが、もうこれ以上、無垢な子供たちを利用なんて出来ないからね?」

フウ、と息を吐きカエル顔の医者は虚空を見上げる。

カエル医者「おでましか……」

カエル顔の医者が顔を巡らすと、通りの向こうから武装した兵士たちが近付いて来るのが見えた。
警戒しながらも、周囲に危険が無いと判断した兵士たちはカエル顔の医者の前で立ち止まり銃口を向けた。
下半身が千切れ、もう虫の息であるにも関わらず、だ。

カエル医者「悪いがね、君たちにつける薬はこれしかないんだ」

武装兵たちが怪訝な顔をする。

カエル医者「本当は患者を救うのが僕の信条なんだけどね? あの子たちのことを考えると、そうも言ってられないからね? でも、安楽死だって1つの治療手段だろう?」

武装兵たちの顔が強張った。

カエル医者「共に人生の最果ての地まで赴こうじゃないか。僕と君たちは医者と患者の中なんだし」

突如、武装兵たちが喉を押さえて苦しみ始めた。
カエル顔の医者は笑う。
彼の手元には2つのビンが転がっており、そこから漏れ出した2つの液体が混じり空気と合わさり、1つの化学ガスを生み出していた。

カエル医者「安心しなさい。主治医は患者を最後まで1人ぼっちにはしないよ? それが死ぬ時でもね………」

武装兵がバタバタと倒れていく中、カエル顔の医者は微笑み呟いた。





カエル医者「それこそが、医者としての本懐なのさ……」







885 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/11(日) 23:47:32.79 ID:8ClKob20 [14/15]
1人分の座席が空いたワゴン車は、ひたすら目的地に向けて進む。
車内は、静寂に包まれていた。そんな中、美琴がポツリと口を開いた。

美琴「……………ねぇ……」

上条「ん?」

美琴「……あんたはどう思うの? ゲコ太が言ったこと……」

そう言って美琴はチラッとCD-ROMを覗かせた。

上条「俺には何とも言えない……。だけど、お前の能力に限っては、この間言った通りだ」

美琴「…………………」

2人が何やら大事な話をしているのは他のみんなも分かっていたが、どうもそれが2人だけの間に通じる話題であると悟ったのか、誰も何も口を開こうとは思わなかった。

上条「だけど、本音を言うとさ」

美琴「?」

上条「お前の電撃には何度も追い掛け回されたからなぁ。言わばそれはお前との思い出の日々みたいなもんだ。だから俺としては、お前には今のままでずっといてもらいたい」

ハッキリと上条は言い切った。

美琴「…………そう」

美琴は顔を手元に向ける。

上条「まあ、最後は自分で決めろ」

それだけ言うと、2人の会話はそこで終わった。


美琴たちを乗せたワゴン車は徐々に街から離れていく。このまま行けばスムーズに脱出地点辿り着けそうだった。
が、しかし、その時だった。


キキィィィーーーーー!!!!!!



ドォォォン!!!!!



けたたましい音が鳴り響いたかと思うと、次の瞬間には鈍い衝突音が全員の鼓膜を貫いた。
何かが起こった。分かったのはそれだけだった。

917 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 22:32:33.56 ID:VpgIO4I0 [2/17]




キキィィィーーーーー!!!!!!



ドォォォン!!!!!



耳をつんざくような嫌な音が聞こえたかと思うと、その次の瞬間には何かが衝突するような音が轟いた。

佐天「わっ何々!?」

初春「何かあったんですか!?」

一方通行「敵襲か!?」

黄泉川「落ち着くじゃんみんな!!」

車内がざわめく。

黄泉川「前方の車両が事故ったぞ!」

その言葉に反応し、全員がフロントガラスから外を覗き見る。
確かに、前を走っていた自動車が壁に衝突している。だが、被害がどれほどかはここからは分からなかった。

黄泉川「鉄装、ここで待ってろ」

鉄装「え? あ、はい!」

黄泉川「上条、一方通行、手伝え!!」

黄泉川は助手席の扉を開け外に飛び出し、上条と一方通行もそれに続いた。

美琴「寮監が………っ!!」

初春「木山先生も……っ!」

事故を起こした車内には、寮監と木山が乗車している。そのことを思い出したのか、美琴たちは顔を蒼くし車外へ飛び出していた。

鉄装「あ、コラ! 待ちなさいみんな!!」

打ち止め「お姉さま!?」

美琴たち4人は鉄装の注意も聞かず、既に走り出していた。

918 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 22:38:57.95 ID:VpgIO4I0 [3/17]
一方通行「どうだ?」

黄泉川「……駄目じゃん」

壁にめり込んだ自動車の開いたドアに手を掛け、運転席と助手席を覗き込んだ黄泉川は首を横に振った。

黄泉川「潰れてる」

余りにも急スピードで衝突したため、運転席と助手席に座っていた黄泉川の部下の身体は悲惨な状況と化していた。

上条「大丈夫ですか!?」コンコンコン

上条が後部座席の窓を叩き、中にいる木山と寮監に声を掛ける。

上条「このっ!!」

上条は多少変形したドアを開けると、上半身を潜り込ませた。

美琴黒子「寮監!!」

初春佐天「木山先生!!」

一方通行「なっ!? オマエら!? 危ねェから来てンじゃねェよ!!」

美琴たち4人が寮監と木山を助けようと、駆け寄ってきた。

美琴「だからって、ただ黙って見てられないわ!」

黄泉川「……ハァ。ま、いいじゃん」

美琴と黒子は後部座席の左側に周り、初春と佐天は右側に周った。

初春佐天「木山先生!!」

木山「君たちか……くっ」

上条が支える木山の身体を、初春と佐天も一緒になって引っ張り出そうとする。
衝突で脳が揺さぶられたのか、木山の意識は弱々しそうだった。

美琴黒子「寮監!!」

黄泉川と一緒に、美琴と黒子も寮監を引っ張り出そうとする。

黄泉川「前部座席は見るなよ」

美琴黒子「え?」

しかし、思わず見てしまった2人はすぐに顔を背けた。

919 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 22:45:17.54 ID:VpgIO4I0 [4/17]
黄泉川「だから見るなって言ったじゃん」

寮監「………おいおい、私の顔の上に……吐き出さないでくれよ」

寮監から反応があった。

美琴「寮監!!」

黒子「ご無事ですか!?」

寮監「当たり前だろ。私を誰だと思っている。だが、まさかお前らが助けに来てくれるとはな……。いつもはお転婆で生意気なお前らが今日は……天使に見えるよ」

美琴黒子「………っ」

寮監の身体を支える美琴と黒子の手に力が篭る。
黄泉川の助けもあって、何とか彼女たちは寮監を車外に引っ張り出せた。

初春「木山先生!!」

佐天「大丈夫ですか!?」

木山「まぁ何とかね……。多少、歩くのには難儀だが」

一方通行「よし2人とも救出した。戻るぞ!」

上条「俺が背負いましょうか?」

木山に話しかける上条の後ろで、初春と佐天が心配そうに眺めている。





木山「いや、その必要は無い。私はここに残るよ」





上条「!!??」

初春佐天「えっ!!??」

920 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 22:51:33.01 ID:VpgIO4I0 [5/17]
美琴「ちょっ、何言ってんのよ!?」

黒子「全員でワゴン車に戻るんですの!!」

黄泉川に寮監を預け、美琴と黒子は木山に詰め寄った。
車体にもたれ、木山は前方に顎をしゃくった。

一方通行「あァ? どうやらおでましのようだな」

木山「その通り。恐らくこの車が衝突したのもあいつらが原因……」

木山が見つめた先、随分向こうだが、そこには複数の白衣を纏った研究者らしき男たちと、数名の武装兵がいた。

美琴「敵!? ならここで私が」

木山「駄目だ。忘れたか? あいつらはただの研究者じゃない。非正規の手段で能力を手に入れた連中だ。どんな力を有しているのかは未知の領域だぞ」

初春「でも、木山先生を置いて行くなんて……!」

佐天「そうですよ! そんなの出来ません!」

木山「お前らが今優先すべき目的は脱出地点へ向かうこと。時間を潰せば潰すだけ状況は悪化するぞ。あいつらの相手をしている間に敵が後から増えることもあるだろうしな」

上条「…よし、分かりました。御坂たちは任せて下さい」

美琴黒子「えっ!?」

一方通行「黄泉川! 打ち止めが心配だ。早くワゴン車へ戻れ!」

黄泉川「分かったじゃん」

寮監を肩で支えながら、黄泉川はワゴン車に戻っていく。

一方通行「オマエらもだ。早くしろ! 時間が惜しい!」

一方通行が美琴と黒子を急がせる。

美琴「ま……待ってよ!」

黒子「こんな所に木山先生を1人で置いて行くなど……」

上条「さぁ、早く来るんだ!!」

初春「木山先生!!」

佐天「先生!!」

美琴たち4人は小さな身体を必死に動かして、彼女たちを押さえる上条と一方通行に抵抗しようとする。彼らが少しでも手を離せば、すぐにでも木山の下に駆け戻りそうだった。

922 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 22:57:26.09 ID:VpgIO4I0 [6/17]
木山「フゥ……」

上条と一方通行に連れられその場を離れていく4人の少女たちの悲痛の声を聞き、木山は1つ溜息を吐くと静かに言った。

木山「枝先や春上たちと仲良くしてやってくれ」

初春「!!!!!!!」
初春「木山先生!!!!」

佐天「嫌だ! 木山先生も一緒に!!」

黒子「離して下さいですの!! 木山先生!!」

美琴「木山先生!!!」

上条と一方通行に引っ張られるように美琴たちは連れ戻されていく。
車体に背中を預け、白衣のポケットに両手を突っ込んだまま木山は呟いた。

木山「まったく……聞き分けのない子らだ。だから私は子供が嫌いなんだ……」

だが、彼女はどこか嬉しそうだった。


ドォォゥ!!!!


次の瞬間、目には見えない、何らかの衝撃波のようなものを受けたのか、木山は地面にうつ伏せに倒れ崩れた。

美琴黒子佐天初春「木山先生!!!!!!」

上条と一方通行は強引に4人をワゴン車に乗せた。

上条「出発して下さい! 敵がすぐそこまで来てる!!」

黄泉川「だが、ルート上には敵がいるんだぞ!!」

本来のルートならば、丁字路を右に曲がるはずだったのだ。だが今そっちの道には倒れた木山と、そして研究者たちがいる。

上条「左に迂回して下さい! 多少、遠回りになりますがそっちからでも行けます!」

黄泉川「了解。鉄装、左だ!」

鉄装「はい!!」

言うやいなや、ワゴン車は出発する。美琴たち4人は、右側の窓に集まり、倒れた木山が景色と共に後方に流れていくのを見つめていた。

美琴「木山先生……」

一方通行「座ってろオマエら! 舌噛むぞ!!」

923 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 23:03:37.79 ID:VpgIO4I0 [7/17]
木山「………行ったか……」

ググッと全身に力を込め、木山は前方を見据える。彼女はまだ、死んでいなかった。
こっちへ向かって歩いてくる研究者たちは、木山ではなくもっと後ろを見つめている。恐らく、走り去るワゴン車を視界に据えているのだろう。

木山「……そうはさせんよ」

痛む身体に鞭打ちながらも、木山はヨロヨロと立ち上がった。
それを、驚いた目で研究者たちは見つめる。

木山「……驚いているな。何故、私が最初の攻撃で死ななかったのか……」
木山「簡単なことだよ。私にはもしもの時に残していた“秘策”があるんだよ。そう、あの子たちを逃がすために取っておいた飛びっきりのがね」

木山は研究者たちを睨む。そして、その目に変化が訪れた。

木山「『幻想猛獣(AIMバースト)』を知ってるかな? ……そうだ。私が開発した『幻想御手(レベルアッパー)』を元に、1つの巨大な脳波ネットワークを構築する演算装置……」

研究者たちの顔に動揺が現れる。無理も無い。木山の頭上に、世にも怖ろしい不気味で異形な胎児が姿を現したのだから。

木山「確かに、1度ネットワークは解体されたが、その時に残ったバックアップデータがあるんだ。再び同様の事件が起きた時にすぐさま解決出来るようにと備えていたものなんだよ。だが、残念ながらこれは本来の力を発揮出来ない、出来損ないでもあるんだ」

木山の頭上のAIMバーストがギョロリと目を剥く。

木山「実際に1万人の脳波も使っていない、ただの劣化した擬似AIMバーストだが、足止めぐらいにはなるだろう?」

木山が、不適に笑う。既に、ワゴン車は通りの視界から消えていた。


ダラララララララララララララララ!!!!!!!!


恐れをなした武装兵たちがAIMバーストに向かって一斉に発砲した。

924 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 23:08:29.04 ID:VpgIO4I0 [8/17]
続き、研究者たちも能力を発動させる。

木山「さぁて、廊下に立たされる悪い生徒たちにお仕置きをしなければね」

AIMバーストが武装兵たちを薙ぎ払う。しかし、研究者たちの反撃も同時に開始された。


ドオン!!! ドオオン!!!!


木山「ぐふっ!!」 
木山「なかなかやるじゃないか……」

様々な能力の直撃を受け、ボロボロだった木山の身体がずきずきと痛みを発する。
彼女の頭上のAIMバーストもまた、強力な攻撃によって半分ほど形が崩れていた。

木山「もう……時間も無いか……」

そして木山は静かに呟いた。

木山「枝先……春上……みんな……幸せになるんだぞ……」

研究者たちは止めを刺すべく、己の強大な能力を発動させる。
木山は変色した目で研究者たちを睨んだ。それと呼応し、AIMバーストも雄たけびを上げた。





木山「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





凄まじい爆風が起こり、辺りは崩壊が始まった。

925 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 23:14:45.64 ID:VpgIO4I0 [9/17]
美琴「木山先生……」

黒子「まさか私たちを守るために、残るだなんて……」

佐天「ずるいよ…。最後にカッコいいところ見せちゃってさ……」

ワゴン車の車内で、美琴たちは顔を暗くしながら木山の最期の姿を思い出していた。

初春「……木山先生」

初春はグッと手に力を込めた。

初春「春上さんたちは、私たちに任せて下さい……」

そんな美琴たちの悲痛が混じった表情を横目に、上条は座席から身を乗り出して黄泉川たちと話していた。

上条「とにかく、一刻の猶予もありません。出来るだけ飛ばして下さい」

一方通行「一度、脱出ルートを考え直した方がいいンじゃねェのか? 敵に気付かれてンだろ」

上条「駄目だ。遅くなればなるほど、脱出失敗の確率が上がっちまう」

一方通行「どの道同じだろ。アイツらすぐまた追っ手を寄越してきやがるぞ。それだけでなく、テログループどもともバッタリ鉢合わせしちまったらどうすンだ!? それこそ八方塞りになるぞ!」

上条「だから急ぐべきだって言ってんだ!! これぐらいの遅延なら想定の範囲内だ!!」

一方通行「敵がそれ以上にこっちの情報を掴ンでたらどうすンだ!!?? 全員一緒にお陀仏でもすっかァ!!??」

車内に、上条と一方通行の怒鳴り声が響き渡る。
脱出作戦の予定に狂いが生じ始めているためか、2人は苛立っているようだった。

打ち止め「お、怒っちゃダメだよ2人とも! ってミサカはミサカはなだめてみる」

一方通行「俺は現実的なこと言ってるだけだろうが!!」

上条「ならお前は、失敗した時の責任取れるのかよ!?」

美琴黒子佐天初春「……………………」

今にも殴り合いを始めそうな険悪な2人を前に、美琴たちは不安げな表情でその様子を見つめている。

926 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/12(月) 23:20:51.40 ID:VpgIO4I0 [10/17]
黄泉川「いいからお前ら黙れ!! ちょっとは冷静になれないのか!?」

一方通行「俺ァ、時間掛けてでも安全な道で行くべきだって言ってるだけだ。それに何の問題があるンだ!?」

上条「時間を掛ければ掛けるほど、敵に追いつかれちまうんだぞ!! それぐらい分からないのかお前は!?」

一方通行「あァ!? 舐めた口きいてくれンじゃないの三下ァ!?」

美琴「も、もうやめてよ2人とも!!!!」

その時だった。



ヒュゥゥゥゥ……



ズォオオオオオオオン!!!!!!



足元から這い上がるような地響きが唐突に轟いた。

美琴「な、何!?」

黄泉川「鉄装右だ!! 右にハンドルを切れ!!!!」

鉄装「はい!!」

キキィーという音を立て、ワゴン車が右に急カーブする。
揺れる車内。
直後、ワゴン車が通った後を瓦礫らしきものが上からいくつも降ってきた。

上条「何が起こった!?」

全員が窓から外を覗く。見ると、たった今通り過ぎた横の建物が音を立てて盛大に崩れるところだった。
続き、


ドゴオオオオオオン!!!!!!


と、また別の轟音が響いた。更には、遠くて近くではない距離から銃声音まで聞こえてきた。
車内がどよめく。

黄泉川「今のはRPGが誤爆したんだろう。恐らくあいつら、この付近でドンパチ始めやがったじゃん」

美琴黒子佐天初春「ええええええ!!!??」

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美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」

御坂妹編

634 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/06(火) 23:21:44.39 ID:HYcJdkc0 [11/14]
3日後・上条たちのアジト――。

上条「言った通り、黄泉川先生の部下の1個小隊が陽動で敵の主力を引き付けてくれる。その間に、俺たちは敵の一拠点を潰すぞ」

メインルームで作戦会議を行う上条と一方通行と御坂妹。
彼らは今、手元の資料に注目している。

上条「能力を持った科学者、魔術師、あるいは武装した兵士。何が出て来るか分からないが、十分気を付けてくれ」

一方通行「数あるうちの1つとは言え、敵の拠点に攻撃を仕掛けるンだ。こりゃァ、かなり危険な仕事かもなァ……」

頭をかきながら資料を眺めていた一方通行が一言呟いた。

御坂妹「表の陽動との連携が上手くいけば、我々もスムーズに行えるでしょう、とミサカは推測します」

一方通行「ま、やってみる価値はあるかもなァ」

上条「そういうことだ。御坂妹……」

御坂妹「はい?」

と、そこで上条が御坂妹に視線を向けた。

上条「さっきも言ったが、別に無理して付いて来る必要は無いんだぞ? 破壊工作ぐらいなら俺たち2人でも出来るんだから」

御坂妹「いえ。ただでさえ人数が不足しているのです。援護は多い方が合理的でしょう、とミサカは主張してみます」

上条「なら、無理して止めないがな……」

含みのあるようにそう言う上条。
御坂妹は何も返さず、ただ黙っていた。

御坂妹「…………………」

638 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/06(火) 23:27:19.04 ID:HYcJdkc0 [12/14]
上条たちのアジト・御坂妹と打ち止めの寝室――。

御坂妹「やれやれ、とミサカは唐突に溜息を零してみます」

打ち止め「ムー…そんな言い方はないんじゃないかな10032号、ってミサカはミサカはブー垂れてみたり!」

御坂妹「チッ、わがままで生意気なガキめ、とミサカは密かに上位個体の陰口を叩きます」

打ち止め「陰口になってないよー、ってミサカはミサカは指摘してみる」

狭い寝室で繰り返される「ミサカ」という単語。
今、御坂妹と打ち止めは仲良く(?)一緒になって寝室のベッドに潜り込んでいた。

御坂妹「そもそも、どうしてミサカが毎晩こんなことをしなければならないのでしょう? とミサカは懲りずに文句を言ってみます」

こんなこと、とは今まさに御坂妹がしていることで、それは寝る前の打ち止めに絵本を読んで聞かせてあげることだった。端から見れば仲の良い姉妹である。

打ち止め「いいのいのーって、ミサカはミサカは10032号の身体にギューッとひっついてみる」

御坂妹「やれやれ……(本物の姉妹とはこの様なものなのでしょうか。なら、こうやって本当の姉みたいに妹を可愛がるのも悪くないのかもしれませんね、とミサカは内心微笑んでみます)」

打ち止め「じゃ、次これ読んでよー」

御坂妹「はいはい分かりました、とミサカは本を開いてみます」

打ち止め「ワクワク」

御坂妹「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが………」

数十分後、本を読み終え部屋の電気も落とし、御坂妹と打ち止めは天井を見上げていた。

打ち止め「ねぇ……10032号」

御坂妹「何でしょうか?」

打ち止め「上条さんに言われたこと気にしてるの? ってミサカはミサカは地雷を踏みそうな話題に少し触れてみたり」

御坂妹「…………………」

打ち止め「上条さんは、明日の敵拠点の1つの破壊工作について、10032号に『無理して付いて来なくていい』って言ったみたいだけど……。別にそれは10032号が役立たずだとか、弱いとかそんなことを言っているんじゃないと思うよ、ってミサカはミサカは擁護してみる」

御坂妹「………」

打ち止め「多分、単純に危ない目に遭わせたくないんじゃないかな? ってミサカはミサカは名推理」

640 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/06(火) 23:33:48.40 ID:HYcJdkc0 [13/14]
御坂妹「…………それは十分承知しています。ですが、ミサカはあの人に協力を申し出る時『最後の最後まで付き合う』と誓ったのです。今更、危険から逃げようだなんて考えてません、とミサカははっきりと言っておきます」

打ち止め「だから、その10032号の決心を気遣ってほしかったんでしょ?」

御坂妹「………」

打ち止め「でも明日の作戦は、上条さんと一方通行の2人だけでも出来ることだし、上条さんは無理してまで10032号が危ない目に遭ってほしくなかっただけだと思うよ。ミサカも、そういう場合なら、10032号が付いて行かなくてもいいと思うけど……」

御坂妹「別にそれだけが理由ではありません」

打ち止め「え?」

御坂妹「ミサカには、あの人の側についてあの人を守ってあげたい、という意志もあるのです、とミサカは言い切ってみます」

打ち止め「そっか……」

御坂妹「………………」

無言になる2人。
御坂妹は、上条の言葉を思い出す。

御坂妹「(ミサカの固い意志は何人にも止められません、とミサカは自分で確信します)」

1度、御坂妹は溜息を吐く。

御坂妹「下らないことを言ってないで早く寝なさい」

打ち止めに注意する御坂妹。それはまるで本当の姉のようだった。

御坂妹「?」

しかし、打ち止めからの返事がない。思わず、打ち止めの方を見てみると……

打ち止め「スー……スー……」

打ち止めが天使のような寝顔で可愛らしい寝息を立てていた。

御坂妹「まったく、おマセさんなんだから」

打ち止め「スー……スー……」

御坂妹「……………ハァ…」

再び溜息を吐く御坂妹

御坂妹「………………クスッ」

そして1度だけ口元を緩めると、御坂妹は打ち止めに優しく布団を掛けてやった。
規則的なリズムで打ち止めのお腹を軽く叩いてやりながら、御坂妹も深い眠りに就いた。

661 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 21:41:23.55 ID:xkIq9wM0 [2/24]
翌日、上条の言った通り、学園都市の全校に出されていた休校措置が久しぶりに解除された。
安心した学生たちは、溜まっていた不安を発散するように街へ飛び出し、久しぶりの学生生活に身を浸らせた。
街は活気を取り戻し、学生たちの元気な声が響き渡った。
彼らは、赴くままに青春を楽しむ。街の裏で何が起こっているのか知らないまま――。


放課後・とある喫茶店――。

美琴「さぁて♪ 久しぶりのパフェよ〜♪」

初春「私もパフェが食べたくて食べたくて、この日が再び来るのをずっと待っていました!」キラキラ

窓際のテーブルに、いつもの4人…美琴、黒子、佐天、初春が座っていた。
彼女たちは今、4人分のパフェを前に女子中学生らしい歓喜の声を上げている。

佐天「うっひゃー…御坂さんも初春も、でっかいの頼んだねー」

黒子「お姉さま、太りますわよ」

美琴「1回食べただけで太ってたら、全人類メタボ化してるっつーの。しかも一昨日までホームレスみたいな生活してたんだから少しは痩せてるはず。なら今しかチャンスはないっしょ」

佐天「ま、確かにそうですね」

黒子「一理ありますわね」

美琴「じゃ、いっただきまーす!」

初春「いただきまーす!」

4人はムシャムシャとパフェを食べ始める。

黒子「お姉さま、一口だけ交換いたしません?」

美琴「いやいや、同じの食べてるのに交換とかないから」

663 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 21:46:23.14 ID:xkIq9wM0 [3/24]
黒子「そう仰らずに恥ずかしがらないで。はい、あ〜ん♪」

美琴「やめんかぁ!」ビリビリッ

黒子「あぁぁぁあん♪ 久しぶりのお姉さまの愛の鞭、効きますわ〜ん」ビクビクッ

佐天「あはは…相変わらずですねー……パクッ」
佐天「…うーん甘い! でもこの食感が最高なのよね♪」

初春「そうそう。この口の中に広がるトンローリとしたそれでいて何とも言い難い甘みの美味しいこと美味しいこと」モグモグ

佐天「あたしもっと食べてやろ」ムシャムシャ

黒子「あらあら。佐天さんも太ったらどうしますの?」パクパク

佐天「あはは。あたしは大丈夫です。何でか知らないけど、太っても胸の方に脂肪がいくみたいで」

美琴黒子初春「何ですと!!??」ガビーン

佐天「え? 何かあたし変なこと言いました?」

黒子「脂肪が胸にいくですって? 何ですかその反則的な体質は!」

初春「うわぁ羨ましいですぅ。だから佐天さん、中1なのにそんなにスタイル良いんですね!」

美琴「ね、ねぇ佐天さん、普段の食生活とか詳しくお、教えてくれないかな? え? いや、別に胸が小さいとか気にしてるわけじゃないのよ?」

佐天「何でみんなそんなに必死なんですか!?」

やいのやいのと騒ぎながら、とある女子中学生4人娘の時間は過ぎていく。

664 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 21:51:27.01 ID:xkIq9wM0 [4/24]
しばらくして………

美琴「…………………」

パフェを食べ終わり、美琴はスプーンの端を口に咥え頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。
今も街は学生たちで溢れている。

黒子佐天初春「―――――――」ワイノワイノ

初春「!」

と、そんな美琴の様子に向かいの席が初春が気付き声を掛けた。

初春「街も元気が戻ってきましたよね」

美琴「ん? あ、そうね……」

佐天「何だか1週間前を思い出すと、信じられませんよね。あたしたちホームレスみたいな生活してたんですよ」

黒子「色々ありましたわね」

佐天と黒子も話に加わる。
彼女たちのテンションが少し下がった。

初春「でも平和に見えても、本当は破滅へのカウントダウンが始まってるんですよね……」

佐天「本当に内戦なんて始まっちゃうのかな?」

黒子「いずれにせよ、大事に備えておく必要があるかもしれませんわね」

美琴「…………………」

徐々に、彼女たちのテンションが落ちていく。

黒子「…………………」

佐天「…………………」

初春「…………………」

やがて全員、無言になったしまった。

美琴「…ハァ……止め止め!」

黒子佐天初春「?」

美琴「何よ貴女たち辛苦臭くしてさ。せっかくなんだから、今は楽しみなさいよ」

美琴が何とか場の雰囲気を元に戻そうと試みる。

665 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 21:57:24.64 ID:xkIq9wM0 [5/24]
黒子「しかし……」

美琴「それに、内戦だって回避されるかもしれないでしょ?」

確かに、その可能性も無きにしも非ずだ。だが、上条たちの様子を実際見ているだけに、それが難しいことであることは彼女たちも大体分かっていた。
しかし、美琴はそれでも続ける。

美琴「私たちがうじうじしたって何も変わらないでしょ? だから今はほら、スマイルスマイル」

ニコッと美琴が笑ってみせる。

黒子佐天初春「……………」

美琴「(駄目か?)」

黒子「そうですわね」

美琴「え?」

佐天「落ち込んでても何も変わらないですもんね」

初春「ごめんなさい。スマイルですよね」

ようやく彼女たちも、元気を取り戻したようだった。

美琴「出来るじゃないスマイル。みんな可愛い笑顔してるわよ」

佐天「これでもですかぁ?」

美琴「え? プッ…あはははははは」

初春「一体何ですか? って佐天さん、フフフフフ」

黒子「ちょっ…貴女、やめなさい…クスス」

佐天が作った変顔を見て、美琴たちが笑う。

美琴「やったわね…じゃあこれなんてどう?」

佐天に倣い、美琴も変顔を作る。

佐天「プッ…は、反則ですそれ! あはは」

初春「お…お嬢さまのイメージが崩れ……でも…フフフフフ…おかしい」

黒子「お、お姉さま……そんなはしたない顔……クスクス」

初春「じゃ、私も……どうですかこれ!」

667 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:03:37.80 ID:xkIq9wM0 [6/24]
佐天「あははははは、初春、そんな顔出来たんだ? 超受ける。フフッ」

黒子「う、初春…お、お止めなさい……クククク」

美琴「あははは。初春さん貴女、最高よ!」

初春「そうですかぁ? でも1人だけまだやってない人がいますよー」チラッ

黒子「えっ」ギクッ

佐天「あ、本当だー。不公平ですよねー」ニヤニヤ

黒子「わ、私は淑女としての嗜みがありますの。そんな変な顔だなんて」

美琴「えいっこれでもか!」ムニュゥ〜

黒子「ぎゃっ! お、お姉さま! お止めになって下さいまし」

佐天「あはははは。すごい! 傑作です!」

初春「4人の中で最高の変顔してますよ白井さん。クスクス」

黒子「ぎゃー見ないで下さいのーでもお姉さまに触れてもらってるこの至福の瞬間から逃れたくないと言う二重苦やはりお姉さまは黒子のこと……」

美琴「ニコニコ」ビリビリッ

黒子「ぎゃぁぁぁぁん何と言う不意打ちですが最高に気持ちいいでも変顔はおやめになって〜」

佐天「あはははははは」

初春「ふふふふふふ」

彼女たちに、笑顔が戻った。

668 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:09:35.07 ID:xkIq9wM0 [7/24]
その頃・第5学区――。

ズッオオオオオオン!!!!!

けたたましい爆音が、共同溝内に響き渡った。

上条「クソッ!!」

美琴たち4人が第7学区の喫茶店で食事をしていた頃、上条たちは第5学区の地下で多くの敵を相手に悪戦苦闘していた。

バギィィィン!!!

咄嗟に右手を突き出し、上条は飛んで来た炎を打ち消す。
彼は今、第5学区地下の共同溝を、一方通行と御坂妹共に逃走していた。

一方通行「武装兵に魔術師…追っ手は増えるばかりだ。俺の反射で全て防ぎきれるかもしれねェが、オマエらを完璧に守れる保障はねェ。悪いが自分の身は自分の身で守れ」

上条「ああ」

御坂妹「承知しています」

彼らは今、劣勢にあった。
計画通り、敵の拠点の1つを狙った上条たち。しかし、彼らの作戦はいきなり失敗を見た。
上条たちは当初、敵の主力が地上に展開していると予測していた。それを受けて黄泉川の部下の1個小隊を敵の陽動として地上に向かわせてたのだが、実際は逆だった。
上条たちが密かに破壊工作を行おうとしていたルート上に、主力は待っていたのだ。お陰で、彼らは本来の目的を果たすことが出来ず、ただ逃走するしかなかった。

御坂妹「10時方向に人影を確認」

物陰から周囲を窺った御坂妹は、ダットサイトを覗き込みライフルのトリガーガードに添えていた指を引き金に掛ける。

ダダダダダダダダダダダダ!!!!!!

鋭い音が轟き、敵が一瞬怯んだ。

パパパパパパパパン!!!!! パパパン!!! パパパン!!!

が、すぐに反撃が開始され向こうからもライフル弾が飛んで来た。
咄嗟に身を隠す上条と御坂妹。
そんな中、一方通行は今、別方向からやって来た研究者たちを相手にしていた。研究者、と言っても非正規の手段で能力を手に入れた手強い連中だった。

御坂妹「しぶといですね、とミサカは溜息を吐きます」

ダットサイトから目を離すと、御坂妹は暗視ゴーグルと赤外線レーザーサイトを使って、手に抱えていたFN F2000アサルトライフルを連射した。

ダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!

その猛攻に敵の武装兵たちが後ずさる。

上条「ん!? あれは……!? 普通の兵士の姿をしてない……となると、また魔術師か! どんだけ魔術師を雇ってるんだ!?」

669 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:16:24.60 ID:xkIq9wM0 [8/24]
銃を持つ兵士たちの後ろから、1人の魔術師らしき男が現れた。

上条「援護頼む」

御坂妹「了解」

ヒュウウウウウウン!!!!!

魔術師がどこからか取り出したのか、半透明の槍を投げ付けてきた。

パパパパアン!!!! パパパパパパン!!!!!

と、同時に兵士たちが上条を狙おうと発砲を開始した。

御坂妹「そうはさせません」

ダダダダダダダダダダダ!!!!!!!

御坂妹の援護射撃で兵士たちの動きを牽制する。

バギィィィン!!!!

その隙を狙い、上条は飛んで来た槍を右手で打ち消す。
魔術師が怯んだ隙に、御坂妹は更に攻撃を加えた。

御坂妹「しつこいですね、とミサカは辟易します」

御坂妹は、銃口の下に装着されたグレネードランチャーの引き金を引いた。

ボッシュウウウウウウウ

空気が抜ける音と共に、御坂妹特製・対人近接信管が組み込まれた擲弾が飛来して行く。
やがてそれは、内部のセンサーで人体の温度と熱を感知すると兵士たちのすぐ頭上で爆発した。

ドォォォン!!!

魔術師「ぐあっ!!」

魔術師を含めた兵士たちが悲鳴を上げる。

上条「よくやった」

御坂妹「いえいえ」

上条「ん?」

御坂妹「新手ですね」

671 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:22:37.06 ID:xkIq9wM0 [9/24]
上条「きりが無いな。逃げるぞ」

御坂妹「了解!」

2人が立ち上がる。

上条「一方通行!」

振り返る上条。

一方通行「すまねェが、こっちもきりが無い。ちょっくら、あっちのルート攻め込ンで来るわ。オマエらは先に行ってろ」

上条「お、おい!」

上条が止めるより先に、一方通行は飛び出していた。

上条「ったく、反対方向からも新手が来てるんだぞ」

御坂妹「彼なら大丈夫でしょう。我々は一先ずここを退却しましょう」

上条「チッ、分かった」

2人は踵を返し、暗い地下を駆けて行く。

上条「ハッ……ハァ……ハァ…」

御坂妹「……ハァ……ハァ…」

御坂妹のF2000アサルトライフルに取り付けられたフラッシュライトの光を頼りに、2人は暗闇を疾走する。
息継ぎの声だけが不気味にエコーがかって響いていた。
と、その時だった。



ガサリ



上条御坂妹「!!!!!!」

前方の暗闇から物音がした。

673 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:27:57.13 ID:xkIq9wM0 [10/24]
足を止め、その場に固まる上条と御坂妹。
息をするのも躊躇われるような静寂の中、先頭に立つ御坂妹がライフルの銃口を四方に向ける。銃口と同期して、フラッシュライトの光が闇の一辺を流れるように照らしていく。

上条「………………」

御坂妹「………………」ザッ…

一歩、御坂妹は踏み出した。
フォアグリップを握る左手は既に汗ばんで今にも滑りそうになっており、トリガーガードに添えている右手の人差し指も感触がほぼ無くなっていた。

御坂妹「………………」

彼女は更に一歩、踏み出す。

上条「………………」

御坂妹「……………」

その瞬間――。



ヒュッ



という音と共に、フラッシュライトに照らされた何かが一瞬、不気味に煌いた。

御坂妹「!!!???」

その煌きに気付き、御坂妹がそちらに顔を向けると、暗闇から飛び出した1つのアーミーナイフが銀色の光を発しながら、彼女を今にも突き刺さんと迫っていた。

上条「危ない!!!!!」

674 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:33:24.17 ID:xkIq9wM0 [11/24]
紙一重でナイフをかわす御坂妹。
切られた前髪が空中を舞う。

「シッ!!!」

予断を与える間も無く、暗闇から飛び出してきた武装兵はナイフを更に薙ぐ。

パパパァン!!!

御坂妹はバックステップでそれを避けつつライフルを発砲したが、咄嗟のことだったためか銃弾はあらぬ方向に着弾した。そればかりか、汗で滑ったため同時に手元からライフルが離れてしまった。

御坂妹「くっ!」

3点スリングで肩に提げているため、ライフルが地面に落ちることはなかったが、武装兵は御坂妹が再びライフルを構えるための動作を許してくれるほど優しくはなかった。

上条「クソッ!」

迂闊に飛び込めば、御坂妹が無闇に傷ついてしまう可能性もある。したがって、上条は動こうと思っても動けない。

御坂妹「………っ」

英語らしき言語で「イッツ・オゥヴァ」と聞こえた気がした。と、同時に武装兵のナイフが御坂妹の胸へ一直線に振り降ろされた。
しかし………



バチバチッ!!!



「ぐふっ!!!」

刹那、暗闇が昼間のように明るくなったかと思うと、武装兵の手元からナイフが落ち、1テンポ遅れて武装兵が地面に崩れ落ちた。
ナイフが地面の上を回転する鋭い音が響いた。

上条「………大丈夫か!?」

倒れた武装兵を確認すると、上条は御坂妹に駆け寄った。

御坂妹「ミサカの得物がライフルだけだとタカを括ったのが貴方の敗因です、とミサカは冷めた目で倒れた武装兵を見つめます」

彼女の左手には、青白い電気がバチバチッと纏わりついていた。

上条「良かった……」

上条はホッと溜息を吐く。

675 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:40:01.41 ID:xkIq9wM0 [12/24]
御坂妹「安心している暇はありません。先を急がなければ」

上条「そうだな」

御坂妹「その前に、弾が切れたようです。マガジンを換えるので数秒ほど待って下さい」

そう言って御坂妹はスカートに取り付けていたマガジンポーチから弾倉を1つ取り出し、ライフルに装着しようとする。
その瞬間だった。

御坂妹「!?」

フラッシュライトが一瞬照らした先――そこに黒い覆面に覆われた男の姿が映った。
そして、その男の手にはライフルが抱えられてあり、銃口は上条の胸に注がれていて………

上条「?」

御坂妹「!」

時が止まる。
そして、御坂妹の脳裏に、ある人物の笑顔と言葉が共に蘇った――。






   ――「“あいつ”のことも守ってあげてね」――






叫ぶ間も無く、御坂妹は飛び出していた。

679 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:46:37.75 ID:xkIq9wM0 [13/24]





ダカカカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!!!!





莫大な光量と音が暗闇を充満する。

上条「あ……」

何が起こったのかすぐに理解も出来ない中、上条が見た光景はコマ送りのように流れていった。


自分をライフルで狙う男の影――。


目の前に飛び出す御坂妹の小さな背中――。


そして、オレンジ色の2つの発砲炎――。


御坂妹「………っ……!!」

2つ分の血が虚空に飛び散る。

「が……はっ!!」

断末魔を上げ、武装兵は倒れた。
しかし、上条はそっちに意識を向けていない。彼は、目の前を舞うように崩れていく御坂妹の姿に見入っていた。

上条「ミサカ!!!!!!」

血を身体から吹き出し、地面に倒れそうになる御坂妹を上条は寸でのところで抱き支えた。

上条「ミサカ!!!!!!!!!!!」

680 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:52:46.88 ID:xkIq9wM0 [14/24]
再び、上条が叫ぶ。
彼が抱える御坂妹の制服は、赤く染められており彼女の腕はダランと地面に接触していた。

御坂妹「……怪我は……ありませんか?……とミサカは……ゴボッ!!」

言葉を紡ごうとした御坂妹の口から赤色の液体が噴き出す。

上条「喋るな! 俺は大丈夫だから!! クソッ!! 何でこんなことに……ああ!!」

御坂妹「ご無事で……安心しました……」

上条「だから喋るな!!!」

暗闇に敵の姿を視認した御坂妹は、上条を守るために楯になる形で飛び出したのだったが、彼女はその瞬間に、マガジンを装着したばかりのF2000のボルトを引き、発砲するという二段階の動作を行っていたのだ。
庇うだけでなく、わざわざ反撃したのは自分が倒れた後に、物理攻撃への耐性を持たない上条が続けて撃たれるのを防ぐためだった。

上条「血が止まらない……チクショウ!!」

上条は御坂妹の傷口を必死に塞ごうとする。そんな上条の姿を、御坂妹は僅かに口元を緩めて見ていた。

一方通行「悪ィ、遅くなった……って…何!?」

そこへ一方通行が戻って来た。

一方通行「おい、何だよこれ……一体何があったンだ上条!?」

その凄惨な光景を見て、一方通行が驚きの声を上げた。

上条「敵が……潜んで……潜んでて…クソッ…庇おうとして撃たれたんだ!!!」

一方通行「!!」

気が動転しているのか、上条の言葉は半ば意味不明だった。
血まみれの御坂妹を一方通行は呆然と見る。彼女はヒューヒューと苦しそうに息をしていた。

一方通行「……………」
一方通行「……チッ、どけ」

上条「何する気だよ!?」

一方通行「黙ってろ」

御坂妹の前にしゃがむと、一方通行は御坂妹の肌に優しく手を触れた。内部の血液の流れや電気信号を読み取って、御坂妹の現在の状態を診断しているのだ。

一方通行「…………………」

上条「…………………」

御坂妹「……ハァ……ゼェ……ハッ……ゼェ……」

681 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 22:59:22.56 ID:xkIq9wM0 [15/24]
しばらくすると、一方通行は御坂妹から手を離した。

上条「どうなんだよおい!? 助かるのか御坂妹は!?」

御坂妹「………ハァ……ハァ…ん……ハァ…」

一方通行「…………………」

上条「お前、血流とかベクトル操作出来るんだろ? 早く治してやってくれよ!! 助けてくれよ!!」

上条が叫ぶ。
そして、一方通行は立ち上がると一言だけボソッと呟いた。

一方通行「やだね」

上条「!!!!????」
上条「………何だと?」

一方通行「聞こえなかったか? 嫌だ、って言ったンだよ」

上条「……お前、ふざけてんのか? こんな時に何寝ぼけたこと言ってんだよ!?」

一方通行「………………」

上条「黙ってないで何とかしろよ!!!!」ガッ

上条が一方通行の胸倉を右手で掴んだ。

一方通行「断る」

その言葉にぶち切れた上条が右手を振り上げた。

上条「てめぇ!!」

御坂妹「……待って!……」

上条「!?」

上条の拳が空中で静止する。

御坂妹「……一方通行に非は……ありません……ハァハァ…」

上条「なん……?」

一方通行は視線を御坂妹とは逆方向に向けたままただ黙っている。

御坂妹「………自分の身体のことぐらい、分かります………ミサカはもう……手遅れなんでしょう?」

上条「!!!!!!!!」

682 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:06:06.33 ID:xkIq9wM0 [16/24]
バッと上条が一方通行の方に振り返った。

一方通行「…………………」

御坂妹「だから……もう……」

上条「違う……」

御坂妹「……?」

上条「そんなことあっていいはずがない!! そんなの俺は納得出来ない!!」

再び、上条が一方通行に掴みかかる。

上条「お前、学園都市最高の頭脳を持ってんだろ!? 何で治せねぇんだよ!? 助けてやってくれよ!!」

上条の必死の叫びを一方通行はただ目を瞑って聞いていたが、耐え切れなくなったのか彼は上条の右手を振り払った。

一方通行「治せねェもンは治せねェンだよクソヤロウ!! ソイツは既に瀕死の状態なンだよ!!! 身体の中の内臓がボロボロに傷ついてどこをどうやろうが無駄骨なンだよ!!!!」

上条「………っ」

一方通行「いいぜェ? なら一箇所だけでも血流操作してやろうか? まァ、そンなことしてもソイツの寿命が僅かに延びるだけで、逆に苦しい思いを長引かせるだけだがなァ!! そンでもいいなら、治療してやろうか!? あァ!!??」 

上条「………………あ……あ…」

絶望の表情を浮かび上がらせ、上条は愕然とする。そして彼は信じられない、という目で御坂妹を見つめた。

上条「ミサカ………」

御坂妹「………そんな…顔を……なさらないで……下さい……」

上条「そうだ! カエル顔の先生の病院に連れて行こう! それならまだ……!!」

そう言って上条は御坂妹を抱え上げようとする。
しかし、御坂妹は上条の手を掴み、首を横に振った。

上条「!!!」

685 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:12:21.80 ID:xkIq9wM0 [17/24]
御坂妹「………ここから…アジトに戻って……救急車を呼んで……どれぐらい時間が掛かると思って……いるのですか? 恐らくミサカは……もう……アジトに戻るまでの体力も……ゲホッゲホッ」

再び御坂妹が血を噴き出した。

上条「ミサカ!!」

一方通行「上条」

上条「何だよ!!!」

一方通行「これ以上、ソイツに無理させンのは逆効果だ。もう、やめておけ………」

静かに、一方通行が後ろから声を掛けた。

上条「何でだよ!? 何でだよミサカ!! 何でお前がこんな目に遭わなきゃならないんだ!! 言ったじゃないか!! 俺と一緒に最後まで戦う、って!! こんなところで俺を置いていかないでくれ!!! ミサカ!!!」

御坂妹「ミサカはもう……十分です。貴方に……こんなに心配されて………」

そう言うと、上条に抱き支えられていた御坂は残った力を絞り出すようにググッと動かし、血にまみれた左手を上条の首に回した。

上条「ミサカ!?」

そのまま御坂妹は、上条の耳元に顔を寄せる。

御坂妹「ミサカは……貴方に会えて………幸せ…でした………」

上条「ミサカ……」

御坂妹「先に行って……待ってます」

静かに、御坂妹は一言一言を紡いでいく。

上条「そんな……やめてくれ………」

御坂妹「最後に………お姉さまのこと……宜しく頼みます………」

上条「お願いだミサカ……俺を…置いて行くなっ!!」

上条の懇願が空しく響き渡る。
そして御坂妹は最後に1つだけ呟いた。

686 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:18:25.14 ID:xkIq9wM0 [18/24]
御坂妹「“当麻”………」

上条「!!!???」

御坂妹「………ミサカは……貴方のことがずっと……好き……でした……とミサカは………」

上条「!!!」

ふと、御坂妹の力が抜け、上条の首に回されていた彼女の左手が上条の右頬を撫でるように離れていく。

上条「ミサカ………」

最後に上条の顔を見つめると、御坂妹は彼の腕の中、微笑みながらゆっくりと目を閉じていった。

上条「ミサカ……?」

ガクンと御坂妹の顔から、手足から、身体中から全ての力が抜け落ちた。

一方通行「……………………」

上条「ミサカ………」

御坂妹「……………」

しかし、もう御坂妹は何も発しない。いや、何も発せなかった。
そんな彼女を見て、上条はただ呆然とその名前を呟くことしか出来なかった。

上条「ミ……サ……カ………」





上条「ミサカあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」





胸の中で御坂妹を抱き締め、すがるように上条は泣き叫ぶ。

一方通行「………………」ギリッ…

その光景を一方通行もまた、黙って眺めていた。

上条「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

上条の右頬に付着した御坂妹の血がゆっくりと固まり始める。
上条は御坂妹を抱き締め、いつまでも彼女の名前を呼び続けていた――。

688 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:24:23.50 ID:xkIq9wM0 [19/24]
打ち止め「!!!!!!!!」

上条たちのアジト。1人、私室のベッドで足をぶらつかせていた打ち止めが急に立ち上がった。

打ち止め「…………10032号……?」

呆然と立ち尽くす彼女は、とある下位個体の名を呟く。

打ち止め「………10032号からの反応が……消えた?」

打ち止めは目を瞑り、ミサカネットワークにログインする。

打ち止め「…………やっぱり、いない」

徐々に彼女の顔が蒼ざめていく。

打ち止め「……ただのログアウトの状態とはまた違う……まるで、1つの端末が突然ネットワーク上から切断されたような………」

腕を胸元に引き寄せる打ち止め。

打ち止め「10032号……何があったの……?」



美琴「!!!!????」

学園都市の第7学区・とある大通り。街が夕日に染められ始めた頃、美琴は急に立ち止まり後ろを振り返った。

美琴「…………………」

黒子「ん? どうしたんですのお姉さま?」

佐天「急に立ち止まって、何かあったんですか?」

初春「御坂さん?」

美琴の様子に気付いた黒子たちも数m手前で立ち止まった。

美琴「(……何だろ今の…。何か嫌な予感がしたんだけど………)」

胸中に呟き、彼女は大通りを見つめる。

689 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:29:36.21 ID:xkIq9wM0 [20/24]
黒子「お・ね・え・さ・ま・!」

美琴「ん?」

ふと気付くと、黒子が美琴に腕を絡ませてきていた。そちらに視線をやると、佐天と初春もそこにいた。

黒子「ボーッとなされてどうなされたのですか?」

美琴「……いや、別に何にも(ただの気のせいよね……)」

佐天「これからカラオケ行かないか、ってみんなで話してたんですけどどうです?」

美琴「…カラオケ?」

初春「そうです! 久しぶりに歌っちゃいましょうよ!」ワクワク

美琴「…………………」

黒子「もしかして何か用事でも?」

美琴「え? いえ、まさか」
御坂「そうね。久しぶりだし、最終下校時刻まで時間あるし遊んじゃおうか」

佐天「やりぃ! そう来なくっちゃ!!」

初春「早く行きましょうよ!」

佐天がはしゃぐように先に歩き、黒子と初春は美琴の両腕をそれぞれ掴んで早く歩くよう彼女に促す。
美琴はそんな彼女たちの楽しそうな顔を見ると、一瞬過ぎった嫌な予感を頭の中から取り払い、一緒に微笑みながら歩き始めた。

690 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:34:46.77 ID:xkIq9wM0 [21/24]
上条たちのアジト――。

ドバン!!

物凄い勢いで、ドアが開けられる音が聞こえた。メインルームにいた打ち止めは急いで入口の方に駆け寄った。

打ち止め「!!!!!!」

そこには、目元に陰をつくった上条が血まみれの御坂妹を抱え立っていた。

上条「…………………」

打ち止め「…………ウソ……だよね?」

上条は無言のまま、メインルームに足を踏み入れる。

打ち止め「………ウソって言ってよ……」

一方通行「ウソじゃねェ……」

打ち止め「!?」

振り向く打ち止め。
上条の後ろから無表情のまま一方通行が入ってきた。彼の後ろでは、驚いた表情を浮かべている門番の警備員2人がドアの外からこちらを窺う姿が見えた。

上条「…………………」

上条は、メインルームに着くと、冷たくなった御坂妹の遺体をソファの上に優しく置いた。
打ち止めが駆け寄って来る。

打ち止め「……そんな……10032号……何で………」

御坂妹の目は閉じられ、口からは赤い液体の筋が流れていた。
見るからに痛々しそうな姿だったが、彼女の顔はどこか幸せそうに見えた。

黄泉川「一体何事じゃん」
黄泉川「!!!???」

奥の部屋から、黄泉川が現れ、ソファの上の光景を見るなり言葉を詰まらせた。

691 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:40:13.18 ID:xkIq9wM0 [22/24]
黄泉川「……お前ら………」

打ち止め「……グスッ……たった今……一方通行たちが帰って……ヒグッ……来たら……10032号が……こんなことに………」

打ち止めはグーにした両手で涙が零れる目元を拭く。

一方通行「俺は……直接その場面を見たわけじゃねェ……。だが、どうも敵の武装兵に撃たれたのは確かなようだ」

黄泉川「そうなのか? ……上条?」

上条「……………違う……」

黄泉川「え?」

上条「御坂妹は………俺を庇うために…楯になったんだ……。俺が殺したようなものなんだ」

御坂妹の前で両膝をつき、上条は唇を噛みしめながら両拳をソファの上で握った。
彼の目の前にある御坂妹の肌は、死んだのが嘘であるかのように白く綺麗だった。

上条「俺を守るために……こいつは……っ!!」

上条は心底悔しそうに言葉を紡いだ。
一方通行は彼の後ろでただ黙ったまま目を瞑り、黄泉川は泣き続ける打ち止めに影響されたのか目頭を潤ませた。

打ち止め「やだよぉ10032号!! 起きてよ!! 昨日はあんなに元気だったのに!!」

打ち止めが上条の側に座り、御坂妹にすがるように叫ぶ。

打ち止め「また……寝る時に本を読んでよ………起きてよ10032号……って、ミサカは……グスッ…ミサカは………」

しばらくの間、上条と打ち止めの嗚咽が部屋の中に響いていた。

一方通行「で………」

静かに一方通行が口を開く。

一方通行「……超電磁砲にはこのこと伝えるのか?」

693 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/07(水) 23:45:35.22 ID:xkIq9wM0 [23/24]
上条「…………………いや」

一方通行「?」

上条「……………駄目だ。そんなことしたらあいつは、激昂してこいつの仇を討とうとする。そうなったら……あいつらを危険な目に遭わせちまう……」

寂しそうな背中を見せながら、上条はボソボソと喋る。

一方通行「…………」

打ち止め「グスッ……ヒグッ………」

上条「御坂妹は最期に言った……『お姉さまを頼む』って…。こいつの……想いを無駄には出来ない……。御坂には伝えるが、それはもっと、日数を開けてからだ……」

一方通行「そうかよ」

それだけ言うと、一方通行は黄泉川の横を通り過ぎ、奥にある私室に入っていった。

打ち止め「ヒグッ……10032号……」

しばらくして、奥の私室から何かが壊れる音が聞こえた。

打ち止め「………一方通行……」

何の反応も無いように見えて一方通行もまた仲間の死を悔やんでいたのだ。特に彼にとって妹達(シスターズ)は過去の辛い経緯から、何があろうと守ろうとしていた存在だった。一方通行の心情も揺れに揺れていた。

黄泉川「上条」

黄泉川が上条の肩に手を置く。

黄泉川「いつまでも、彼女をこのままにはしておけない。分かるな?」

打ち止め「……うえっぐ……ヒグッ……」

上条「………………はい」

絞り出すように、上条は答えた。
彼はその後しばらく、御坂妹の遺体から離れることはなかった。それを知ってか知らずか、御坂妹はどこか嬉しそうに微笑みながら、胸元のネックレスに指を添えていた。

続きを読む はてなブックマーク - 美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」

美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」6

真相編

314 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:18:35.55 ID:OIGz7FY0 [2/7]
初めは何が起こったのか理解出来なかった。いや、その状況を信じたくなかったのかもしれない。
忠告通り、離れた場所から目の前で繰り広げられる2つの戦闘を眺めていた。絶対にあの2人――上条当麻と一方通行が負けるはずがないと信じて。だが、現実は違う様相を見せた。

打ち止め「一方通行………」

呆然と、その名を口にする。レベル4とレベル0の女子中学生のコンビによって悪戦を強いられ、同じ仲間であるはずの上条に殴られた末、地面の上で気絶した最強の超能力者の名を。

打ち止め「一方通行!!!!!」

倒れた一方通行を見て、耐え切れなかったのか、打ち止めは走り出していた。その顔に不安だらけの表情を浮かべながら。

黒子「お姉さま」

美琴「ん?」

地面にうつ伏せに倒れた上条のすぐ側に立っていた美琴、黒子、佐天、初春の4人。
彼女たちは突然発せられた子供の声を聞き、そちらに注意を向けた。打ち止めが必死の形相で走ってくるのが見えた。

美琴「まだ終わってないわ。黒子、お願い」

黒子「了解」

そう言って、黒子は美琴の側から消える。

打ち止め「え?」

数秒後、黒子は打ち止めを連れて美琴の元に戻ってきていた。

打ち止め「お、お姉さま?」

後ろから黒子に両肩を掴まれるように立つ打ち止め。彼女は目の前に倒れている上条を見て、そして後ろを振り返った。

美琴「どうしたの打ち止め? そんなに信じられない? この状況が?」

不適な笑みを浮かべる美琴。

目の前にはうつ伏せで倒れた上条の姿。顔を右に向けると、数m先には仰向けで気絶した一方通行の姿が見える。
百戦錬磨のはずだった彼らは敗れた。4人の女子中学生によって。

打ち止め「あ……う……」

この場に残ったのは打ち止め1人。逃げようにも、背後には美琴たち4人が立っている。
打ち止めは頭の中で考える。

打ち止め「(ツインテのお姉ちゃんと黒髪ロングのお姉ちゃんが、時間稼ぎで一方通行の足を止め気を引いている隙に、お姉さまは上条さんを誘い込むようにバックステップで一方通行に近付いた……)」

美琴「初春さんの指示で上手く一方通行の背後に近付けたものね」

打ち止め「!」ビクッ

316 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:24:16.66 ID:OIGz7FY0 [3/7]
初春「いえいえー褒められると照れます」

佐天「でも初春の指示が無ければ、あたしたちもあそこまで上手く動けなかったよ」

黒子「一世一代の大芝居を打った甲斐があるということですわ」

美琴「敢えて、上条当麻に超電磁砲(レールガン)を連発することで私が本気であることを見せ付けた。そうでもしないと、あいつは本気で私に殴りかかってこなかったでしょうね。まんまとノってくれて良かったわ」

打ち止め「(何てこと……お姉さまは上条さんに本気を出させて、周囲に気を配る余裕も無い状況に追い込み、自身は誘うように一方通行に近付いた。そして追い詰められた振りをして、上条さんが本気の拳を振るった時に……)」



   ――「アクセラレェェェェェェェタァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」――



……大声を出して背後にいる一方通行を振り向かせた。と同時に自身は素早く屈み込み、上条は勢いを残したまま、その右拳を吸い込まれるように一方通行の左頬に叩き込んだのだ。
   
打ち止め「………っ」ゾクッ
打ち止め「(そんな……僅かでもタイミングがずれたら簡単に失敗するのに……)」

もう1度、打ち止めは振り返り美琴の顔を見る。

美琴「1回限りの“大秘策”。上手くいったようね」

打ち止め「(これが……ミサカのお姉さま……)」

感心したように、あるいは恐怖を覚えるように打ち止めは美琴の顔を見つめた。

打ち止め「……………っ」

レベル5第3位の超能力者・美琴が主導していたとは言え、実際に黒子や佐天、初春の協力が無ければ最強の楯と最強の矛を持つ上条と一方通行は倒せなかったはずだ。
そう、彼女たちは宣言通り勝ってみせたのだ。この2週間で高めた己の力と、互いのサポートや連携でハンデを埋めることによって。

打ち止め「…………………」

と、その時だった――。





「やって……ハァ……くれたなァ……ゴホッ」







317 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:30:38.87 ID:OIGz7FY0 [4/7]
離れた場所から、声が聞こえた。殺気にも似た強大な威圧感を覚え、美琴たちは咄嗟にそちらを振り返った。

一方通行「……まさか……ハッ…上条の拳を……ゲホッ……使うとは……」

気絶していたはずの一方通行が、フラフラと揺れる身体を立ち上がらせようとしていたのだ。その顔には、怒りのようなあるいは享楽のような表情が浮かんでいる。

美琴黒子佐天初春「一方通行!!??」

打ち止め「ア……一方通行!!」

一方通行「……だが…それで…終わりだと……思った…かァ?」

大ダメージを食らってるにも関わらず、立ち上がろうとする一方通行。まさにその姿は怪物だった。

美琴「………………」

呆然とその様子を見つめていた美琴。我に返った彼女だったが、その顔に焦りは浮かんでいない。

美琴「はん! さすがは第1位、と言ったところかしら? でもその状態で動けるの? しかも……」
美琴「  打  ち  止  め  を  人  質  に  と  ら  れ  た  状  況  で  」

一方通行「あァ?」

打ち止め「あっ!!」

打ち止めの両肩を後ろから強く握り、黒子がその様子を一方通行に見せつける。

一方通行「人質だと?」

美琴「まさかあんたを倒したことで私たちが油断してると思った? もしもの時の予備プランぐらい考えてるに決まってるでしょ?」

一方通行「ふン……別にそのガキがどうなろうが……知ったこっちゃ……ねェが……」

打ち止め「!」

一方通行「ソイツに……手を出した瞬間……オマエらの……有利な状況は……覆るぜェ……」

美琴「よく言うわ。本当は心配で心配でたまらないくせに」

一方通行「ほざけ……俺が心配だと? どの道、オマエが……そのガキに手を出せるはずねェよ……」

息を切らしながらも、一方通行は確信めいた笑みを浮かべる。

美琴「私はね」

一方通行「何?」

美琴「でも、この場でこの子に何かをしなくても、違う場所でならどうかしら?」

318 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:36:34.79 ID:OIGz7FY0 [5/7]
一方通行「……まさか!」

一方通行は打ち止めの肩に両手を置く黒子を見る。それに気付いたかのように、佐天と初春が黒子の両端から彼女の腕を掴んだ。

黒子「その通り。貴方が少しでもその場所から動けば、私はこの子を連れてここから空間移動(テレポート)します」

打ち止め「えっ!?」

一方通行「…………そういうことかよ」

だが、と一方通行は笑みを浮かべて……

一方通行「……オマエが1度にテレポート出来るのは、自分を含めて3人まで。打ち止めと誰かもう1人を連れてテレポートするにしても、最低でも2人は残っちまうよなァ?」
一方通行「どうせ、1人は超電磁砲が残るンだろうが……あと1人はどうする? レベル1の低能力者かレベル0の無能力者がここに残ったって、俺に瞬殺されるだけだぜェ?」

佐天「………………」

初春「………………」

一方通行は脅迫めいた言葉を告げるが、佐天と初春は特に反応しなかった。

黒子「いつの話をしていらっしゃいますの?」

一方通行「あ?」

美琴「あんた、さんざん言ったのに覚えてないの? 私たちはこの2週間、あんたたちを倒すために努力した、ってね」

美琴は一方通行を見据えながら、親指を隣にいる黒子に向ける。

美琴「この子、この2週間で自分を含めた最高4人までなら一緒にテレポート出来るようになったわよ」

一方通行「なンだと?」

黒子「とは言え、テレポートの1度の飛距離は1mも伸びていない程度。まだまだレベル5には程遠いですがね」

そう言う黒子の両腕をそれぞれ佐天と初春が掴んでいる。
今の黒子は、1度に4人をテレポート出来る。見た限り、その言葉は嘘では無いようだ。

一方通行「…………………」

美琴「あんたがそこから1cmでも動いたら、すぐさま黒子がこの子たちを連れてここから逃げる手筈になってるわ」

一方通行「簡単に言うが……例えテレポーターどもがここから逃げられたとしても、そのクソガキをどうにか出来るとでも思ってンのか?」

美琴「あら? また忘れたの?」

一方通行「あァ?」

美琴「戦う前に言ったじゃない。『私たちはあんたちを殺す覚悟は出来てる』ってね」

320 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:42:33.56 ID:OIGz7FY0 [6/7]
打ち止め「!!!!!」

一方通行「………………」

美琴「私はともかく、この子たちには『何も喋らないようなら、あんたらの好きな方法で吐かせてもいいわよ』って言ってあるわ」

打ち止め「えっ!?」

打ち止めの肩がビクッと震えた。しかし、それを見ても一方通行は顔を崩さずに言う。

一方通行「いつまでも逃げれると思ってンのか? 俺が全力を出せば、3日もあればこの学園都市から逃げたオマエらを探し出すことぐらい可能だ。その先に待ってる結末は、ずばり鮮血エンドってところかァ?」

その言葉に、僅かに黒子と佐天と初春が強張る気配が伝わった。
が、実際は、美琴も打ち止めに手を出すつもりは無く、一方通行も今の言葉は脅しに使っただけだった。
2人のハッタリ合戦は尚も続く。

美琴「3日、ねぇ……。3日もあれば、何でも出来ると思うけど? 打ち止めの消息が3日も掴めない、って言う状況はあんたに耐えられるのかしら?」

一方通行「ほざけェ。そのクソガキがどうなろうが俺には関係ねェ。笑わせンなよ」

美琴「そう、じゃあやってみる?」

一方通行「やってやろうか?」

ジリと、一方通行の足が動く。
それに答えるように、美琴が身体中から電気を発する。

黒子佐天初春「………………」ゴクリ

打ち止め「お姉さま……一方通行……」

佐天と初春が黒子の両腕を握る手に力を込める。黒子もより強く打ち止めの両肩を掴む。
状況は一瞬で変化する。
風が凪ぐ。
無言の静寂が暗闇を包み込み、張り裂けそうな緊張感が周囲を漂う。
しかし、その瞬間だった。





「それまでだ……」







321 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:49:03.08 ID:OIGz7FY0 [7/7]
しかし、変化は起こらなかった。1つの声が、強制的にその状況に幕を下ろした。

美琴「あんた!!」

一方通行「オマエ……」

打ち止め「あっ!!」

黒子佐天初春「!!!!!」



上条「2人とも、やめろ……」



地面に倒れていた上条が僅かに動いた。彼はまだ痺れが抜け切らない身体を何とか動かそうとする。

上条「もう、いい………」

一方通行「あァ?」

上条「もう、十分だ………」

喋ることさえ辛そうに必死に身体を動かそうとする上条を、美琴は呆然と見つめる。

美琴「……何が『もういい』よ……。何が『もう十分だ』よ………ふざけないでよ!!!!」

美琴の身体を纏う電気が強みを増す。
2人の会話を、黒子たちは無言で眺めている。

上条「全部話す」

美琴「え?」

黒子佐天初春「!!??」

上条「お前らに黙ってたこと、全てを話す」

322 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:55:28.34 ID:SnU0rx60 [1/3]
そう言って、上条は金属矢で地面に繋ぎ止められた服の裾をビリビリと破らせながら上体をゆっくりと起こした。

黒子「あ……」

美琴「待って」

再び金属矢を構えようとした黒子を、美琴は制止する。

上条「見ての通り、俺たちの負けだ……約束通り、全て教えてやる」

打ち止め「……上条さん……」

上条「いいな? 打ち止め、一方通行」

打ち止め「………うん」

上条の問いに、静かに答える打ち止め。
一方通行は、しばらく黙っていたが、やがて顔を横に向けて「チッ」と舌打ちしただけだった。
それを確認すると、ボロボロに痛む身体を無理矢理動かしながら上条は美琴たちに顔を向けた。

美琴黒子佐天初春「!?」

美琴「な、何よ……。何が今更『約束通り、全て教えてやる』よ……」

勝手なことを言うな、とばかりに美琴は抗議の声を上げる。

黒子「そうですわ! 貴方がたはご自分のやったことが理解出来ていまして?」

佐天「たった一言謝ったところで許されると思わないでよね!」

初春「失った人は戻って来ないんですよ!」

目に涙を溜めながら、彼女たちは震えた声で主張する。

上条「…………確かに、どちらにしろ俺は許されないかもな」

フッと上条は自分を皮肉るような笑みを浮かべた気がした。

美琴「?」

上条「御坂」

不意に、上条は真剣な表情で美琴の顔を見据えた。

美琴「な、何よ!? 早く教えなさいよ!!」

323 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 03:01:33.00 ID:SnU0rx60 [2/3]
2人はしばらくの間、お互いの顔を見つめ合っていた。

美琴「…………………」

上条「…………………」

そして、次の瞬間、上条は信じられないことを言い放った。

上条「お前らの友達は生きている」

美琴「え………?」

思わず口から出てきた言葉はそれだけだった。
目を丸くし、キョトンとした顔で唖然とする美琴たちを見、上条はもう1度、確認するように言った。






上条「お前らの友達は全員、生きている」






凪いでいた風が止まった――。

362 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:10:25.59 ID:At2rjnk0 [2/17]
美琴たちは今、上条たちに連れられて四角柱状の空間を、それぞれの階の外周の壁を沿うように設置されている幅2mほどの通路を歩いていた。落下防止用の対策は簡素に備えられた手すりぐらいで、少しでも手すりから身を乗り出せば終わりだった。
彼女たちは先程から、階段を下り通路を歩き、角を2回ほど曲がりまた階段を降りるといった具合に同じ動作を繰り返しながら階下を目指していた。
辺りは暗闇に包まれており、御坂妹の持つF2000アサルトライフルのフラッシュライトや、上条が持つ懐中電灯だけが頼りだった。

上条「詳しいことはアジトに着いてからだ」

黒子「貴方、先程私たちの友達は生きている、と仰いましたよね?」

佐天「まさかそれは嘘で、これはあたしたちを誘い込む罠とかふざけたこと言わないよね?」

初春「何とか答えて下さい」

4人はひたすら抗議にも似た疑問の声を上げる。しかし、先頭を歩く上条は何も答えない。

御坂妹「良いのですか、とミサカは訊ねます」

上条のすぐ横を、FN F2000を抱えた御坂妹が一行を先導するように歩く。

上条「……………………」

美琴「どうして何も答えないの?」

上条のすぐ後ろを歩く美琴。彼女は今、打ち止めと手を繋いで歩いていた。

打ち止め「♪」

先程まで敵対していた仲であるにも関わらず、打ち止めはオリジナルの美琴と手を繋いで楽しそうだった。
手を繋ぐよう求めたのは打ち止めで、美琴は少しうろたえたが、自分の幼い頃の外見に似た女の子の笑顔を見て断ることも出来ず、しぶしぶ承諾したのだった。

一方通行「うっさいヤツらだ。もっと静かに出来ねェのか」

殿を歩くのは一方通行だ。彼は、目の前でギャアギャア声を上げる黒子たちを見て不満気だった。
一行は今、アジトを目指し歩いている。
先程まで対立していた彼らが呉越同舟で行動を共にしていたのには訳があった。

363 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:15:56.10 ID:At2rjnk0 [3/17]
小1時間ほど前――。

打ち止め「ねぇ大丈夫? ってミサカはミサカは心配してみる」

美琴の電撃を浴び、ガタガタになった身体を無理矢理起こそうとする上条に、打ち止めが心配して寄り添う。

上条「まぁ、あいつの電撃は浴び慣れてるからな」

一方通行「それはそれで問題だと思うがなァ」

軽口を叩くように一方通行も近付いてきた。

上条「打ち止め、護衛のためだ。御坂妹を呼んでくれ。今の俺や一方通行は万全な状態じゃないから、もしもの時に備えられない」

打ち止め「分かったちょっと待っててね、ってミサカはミサカは元気にお返事!」

そう言って打ち止めはミサカネットワークにログインする。

一方通行「別に俺はこのままでも大丈夫だけどなァ」

上条「そう言うな。万が一に備えてだ。あ、それと打ち止め」

打ち止め「なぁに?」

上条「御坂妹に、主要メンバー全員をアジトに呼ぶよう頼んでくれ」

一方通行「おいおい全員かよ。こンな夜中に集まるかどうか分からねェぞ」

上条「いいんだ。無理にとは言わない。ただ『御坂たちが説明を求めてる』って言えば、来てくれる確率も高くなるかもしれない」

打ち止め「はーい!」

美琴「…………………」

目の前で勝手に進められていく話から置いてけぼりを食らったように、美琴たちは黙ったままその場に立ち尽くしている。

上条「さて、これでいいか」

美琴「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

上条「ん?」

耐えられなくなったのか、美琴が上条を呼び止めた。

美琴「一体どういうことなの!? あんた、さっき『お前らの友達は生きてる』って言ったわよね?」

上条「………ああ」

美琴「それは本当なの?」

364 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:21:24.87 ID:At2rjnk0 [4/17]
黒子「嘘じゃありませんわよね?」

佐天「その場の方便とか言ったら怒るよ!」

初春「どういうことかちゃんと説明して下さい!」

4人分の少女の抗議を前に、上条は至って冷静に返事する。

上条「『お前らの友達が生きてる』っていうのは本当だ。嘘じゃない。固法美偉も、泡浮万彬も、湾内絹保も、婚后光子も、そして今まで俺たちが誘拐した学園都市の学生たちもみんな生きてる」

美琴「なっ…」

あまりにも簡単に言い切った上条の言葉に美琴は一瞬どう反応していいのか分からず、その視線を一方通行に向けてみた。

一方通行「ったく、自分で全部白状しちゃいやがって……。世話ねェな」

そのまま、美琴は打ち止めにも顔を向ける。

打ち止め「本当だよお姉さま! この2人は誰も殺してないよ! だからこれ以上2人を傷つけないで!」

打ち止めの必死の懇願を聞き、美琴がたじろぐ。

黒子「しかし、私たちには何が何やらさっぱり分かりません」

美琴「そうよ。ちゃんと説明しなさい」

伸びをし、上条は自分の身体の調子を確かめると、美琴たちを見て言った。

上条「俺たちのアジトで説明する。御坂妹が着き次第、出発するからそれまで待ってろ」

美琴「…………っ」

367 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:26:27.82 ID:At2rjnk0 [5/17]
以上の経緯で、美琴たちは上条に連れられアジトに向かっていたのだった。

黒子「しかし、何10年も前に立ち入りが禁止された共同溝は私たちも隠れ家の出入りのために利用していましたが、こんな場所にもこんな大きな共同溝があったのですね」

美琴たちは四方を見やる。確かに、廃墟にするにはもったいないぐらいの広大な空間だった。

上条「学園都市には地下の空間はいくらでもある。最新の共同溝や下水道は監視カメラなどで見張られてたりする場所もあるが、こういった古い共同溝は別だ。一部のスキルアウトたちも好んで使ってる」

初春「確かに、地下は監視カメラや衛星の死角になりやすいですからね」

佐天「そんなに地上から身を隠してでも、誘拐を行いたかったんですか」

上条「…………………」

美琴「よっぽど今は答えたくないようだけど。自分たちの縄張りに誘い込んでからのほうが、話を有利に進めるとでも思ってるのかしら?」

一方通行「オマエらペチャクチャうっせェぞ。黙って歩けねェのか」

美琴「黙って歩ける状況じゃないでしょ!」

一方通行「あァ?」

打ち止め「もーう一方通行!」

一方通行「チッ」

険悪な雰囲気を発しながらも、彼女たちはようやく上条たちのアジトに到着した。

美琴「あれが……あんたたちのアジト?」

吹き抜けの広大な空間をひたすら下へ降り、更にいくつもの共同溝を奥に進んだ所に、彼らのアジトはあった。
見た限り、特別大きいとも言い難い。ただでさえ狭い空間の中に、申し訳無さそうに嵌められたような小さな建物があった。

上条「昔、作業員が寝泊りに使ってた場所だ。一応、簡単な発電施設で屋内の電気はまかなっている」

美琴「(私たちの隠れ家より小さいけど、随分本格的ね)」

アジトに向かって歩く一行。と、アジトの木製のドアの前に2人の人間が立っているのが見えた。

美琴「誰!?」

黒子「新たな敵ですの!?」

警戒し、美琴と黒子が身構えた。

上条「よく見ろ」

美琴黒子「え?」

368 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:32:20.09 ID:At2rjnk0 [6/17]
促され、目を細めて見てみると、2人の人間はどこか見覚えのある装甲服を着、胸元にアサルトライフルを抱えていた。

美琴「アンチスキル!?」

上条「黄泉川先生の部隊の人たちだ」

美琴黒子佐天初春「!」

上条「すいません、お騒がせして」

そう言って、上条は門番の警備員2人に話しかけた。

警備員A「事情は黄泉川中隊長から聞いている」

警備員B「君はリーダーだからな。さあ、早く中へ入りなさい」

リーダーである上条が部下たちに敬語を使うのもどこか違和感があったが、元々は生徒と教師の関係だ。不思議は無い。

上条「御坂」

美琴「え? 何?」

上条「俺と一方通行と打ち止めで先に事情を説明してくる。お前らは御坂妹とここで待ってろ」

美琴「ちょっ」

呼び止めようとする美琴の手から打ち止めが離れ、更には彼女の横を一方通行が通り過ぎていく。
そのまま3人は木製の小さなドアを開けると、中に入っていった。

美琴「あ……」

手を伸ばしたまま固まる美琴。
まさか部屋の中からアンチスキルが大勢出て来て捕縛されないだろうか、という不安が過ぎる。
ふと、彼女が横に顔を向けると御坂妹と目が合った。

美琴「あんた……」

御坂妹「お願いですからここで静かに待っていて下さいね、とミサカはお姉さまに偉そうに指示します」

美琴「………………」

御坂妹「………………」

10分後、ドアが開き、上条が中に入るよう促してきた。
美琴たち4人は1度、互いの顔を見合わせるとゴクリと唾を飲み干し、敵のアジトへ足を踏み入れた。

369 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:38:12.03 ID:At2rjnk0 [7/17]
そこは、アジトと言うにはあまりにも小さくみすぼらしい場所だった――。
見上げると、そこには天井の中央に古い蛍光灯が1つ寂しそうに垂れ下がってるだけで、当然ながら非常用の電灯といったものはない。部屋の真ん中には机が置かれているが、これも縦1m50cm、横2mぐらいの地味で汚れがついた、セールで買ってきたような古びたものだった。その机を境に、一方に即席に用意された4つの椅子が、一方に長ソファが向かい合って置かれていたが、その椅子とソファだけで部屋の面積のほぼ半分が占められていた。

美琴「…………………」

正直、部屋はかなり狭い。ソファの後ろにはコーヒーポッドや本を並べた幅50cmも無い棚が壁に沿うようについている。部屋の隅には小さな冷蔵庫が置かれていたが、それすらも部屋をより狭めているのに一役買っているような印象があったほどだ。
上条曰く、この部屋は作戦会議を行うメインルームらしいが、それにしてはあまりにも狭い。美琴たちが一時的に使っていた隠れ家のほうが贅沢な造りと言えた。

美琴「…………………」

黒子「…………………」

佐天「…………………」

初春「…………………」

無言になる美琴たち。と言うよりも何かを喋りたくても喋れない雰囲気がその部屋には流れていた。
彼女たちが座る椅子の向かい側、長ソファに腰を掛ける9人の人間は、一切の発言を許さないような威圧感を放っており、正直、美琴たちはそれを前にして気圧されていたのだ。

上条「ここにいる9人が、俺たちの仲間の主要メンバーだ」

そう告げる上条。美琴たちはそのメンバーを一瞥する。そこに座っていたのは、通常では信じられない組み合わせのメンバーだった。

まず、一番右端で白衣のポケットに手を突っ込んでいるのは、美琴たちがよく世話になる第7学区の名医。『冥土返し(ヘブンキャンセラー)』と呼ばれるカエル顔の医者だ。
その隣で同じく白衣を纏い、手と足をそれぞれ組んでいる若い女性は、かつての教え子たちを助けるため『幻想御手(レベルアッパー)』を開発した末、美琴たちと対立することになった木山春生である。
一方、ソファの左端では気弱そうな性格をしている眼鏡の若い女性が、その隣では腕を組み目を閉じているこちらも若い女性がいるが、彼女たちは黒い戦闘服のようなものを身に纏っている。彼女たちはアンチスキルの隊員、黄泉川と鉄装。1週間前まで美琴たちの謹慎を見張っていた張本人たちである。
更に、黄泉川の隣に座る女性は美琴と黒子が日頃から最も世話になっている人物だった。彼女のあだ名は「寮監」。美琴と黒子の私室がある常盤台中学学生寮の管理人だった。今、彼女は足を組み、光る眼鏡に右手を添えていた。

そして、中央に座る4人。彼らこそ、美琴たちが最もよく知る人物たちだった。

向かって中央2人の右の人物に寄り添うように座っている彼女は、どう見ても9人の中で浮くほど幼い。動くたびに揺れる頭のアホ毛が可愛らしい彼女の名前は『打ち止め(ラストオーダー)』。9969人の『妹達(シスターズ)』を統べる司令塔的存在だ。
対して、向かって中央2人の左の人物の隣に座る少女は今も肩にFN F2000と呼ばれるアサルトライフルを掲げている。頭に付けられたゴーグルだけは違ったが、それ以外は美琴の外見とほぼ瓜二つだった。彼女は、『妹達(シスターズ)』の検体番号10032号。あだ名として、「御坂妹」と呼ばれていた。

最後に、一連の事件の中心人物が中央に2人――。

右に座るその人物は腕を組み、伸ばした足の先も組んでいるが、どこかやる気の無いように明後日の方向を見上げている。白い肌に白い髪。華奢な身体を持つ彼は、美琴たち4人の宿敵の1人。事実上、学園都市の頂点に君臨する、最強の超能力者(レベル5)『一方通行(アクセラレータ)』だった。
そして、左に座る人物。美琴たちの友達を誘拐し、殺害したと思われる計画の首謀者である彼は、膝の上で両手を組み、美琴たちを見据えている。異能の力であるのなら、どんな能力も打ち消してしまう『幻想殺し(イマジンブレイカー)』と呼ばれる右手を持つレベル0の高校生。最も美琴との因縁が深い彼の名は上条当麻。

計9人のメンバーが、美琴たちの正面で並んで座っていた。
その光景は、どこか貫禄を感じさせ威圧感も半端ではなかった。少年漫画だったなら背景に「ドン!」と言う擬音でも描き込まれてそうなほど威厳のあるものだった。その9人分の言葉無き威圧に対し、女子中学生である美琴たちは借りてきた猫のように縮こまっている。

370 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:45:26.11 ID:At2rjnk0 [8/17]
美琴「…………………」

黒子「…………………」

佐天「…………………」

初春「…………………」

彼女たちは並んだ9人の顔を無言でチラチラと窺う。

上条「で、だが……」

美琴黒子佐天初春「!」ビクッ

一方通行「プクク…w」

上条「ハァ……」
上条「それで、何から聞きたい?」

その言葉にハッとし、美琴は我に返った。

美琴「そ、そうよ! き、聞きたいこと! あるわよ!!」
美琴「ま、まずはゲコ太! それに木山春生!」

ズアッと立ち上がり、美琴が右端2人の人物を指差す。黒子たち3人が立ち上がった彼女を見上げた。

美琴「ど、どういうことなの!! 何で貴方たちが、こいつらの仲間なの!? 訳分かんない」

美琴の言葉に同意するように、黒子と佐天と初春もカエル顔の医者と木山を見る。
美琴たち4人分の眼差しを受け、耐え切れなかったのか初めに口を開いたのはカエル顔の医者だった。

カエル医者「すまないね、君たちを騙していた形になって。謝っても許してもらえないだろうね?」

美琴「なっ…」

言葉を詰まらせた美琴を助けるように黒子が援護する。

黒子「私たちは3週間ほど前、先生たちに泡浮さんの携帯電話の指紋鑑定を頼みましたわよね? 覚えていますか?」

カエル医者「ああ、覚えているよ」

木山「………………」

黒子「それは、泡浮さんと湾内さんの2人が、誘拐犯と思われる2人組の暴漢に襲われた時に……」チラッ

一瞬、黒子は上条と一方通行に視線を向けた。

上条一方通行「…………………」

373 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:51:24.49 ID:At2rjnk0 [9/17]
黒子「そのうちの1人が、泡浮さんの携帯電話に触れた可能性が高かったからです。だから、私たちは先生に、そして木山先生にも指紋鑑定を頼んだのです」

美琴「そうよ。私たちは先生たちのこと信じて頼んだのに……。本当は、こいつかこいつの指紋、出てきたんでしょう?」

美琴は上条と一方通行を順に指差す。

カエル医者「そうだよ?」

美琴黒子佐天初春「!!!」

美琴「やっぱり……」

佐天「でも、どうしてあたしたちには『男のものと思われる指紋は出てこなかった』って嘘吐いたんですか?」

初春「やっぱりそれは上条さんたちの存在を気取られなくなかったからですか?」

佐天と初春もようやく話に加わった。
4人の少女の質問に、カエル顔の医者は更に心苦しそうな顔を浮かべて答える。

カエル医者「……そうだよ?」

美琴黒子佐天初春「………っ」

カエル医者「僕は初めから上条くんや一方通行の仲間だったんだ。だから、彼らに疑いが向くのを防ぐため敢えて嘘を吐かせてもらったんだ。ただ、やっぱり君たちはそこで有耶無耶に終わらせるほど友達に対して薄情じゃなかった。だから木山くんにも続けて指紋鑑定を頼んだんだろうね?」

美琴「そ…そうです……でも…」

黒子「木山先生は、指紋鑑定を調べることはおろか、私がやめてほしいと頼んでおいたアンチスキルへの携帯電話の提出を勝手に行いました。それは何故ですの?」

責めるような黒子の言に、ずっと黙っていた木山が口を開いた。

木山「……私は初めから、上条くんたちの仲間ではなかった。本当のことを言うと、君に頼まれた通り指紋鑑定はしたし、実際に上条くんの指紋も出てきたんだ」

黒子「じゃあどうして!?」

カエル医者「僕が止めたんだよ」

美琴黒子「え?」

美琴たち4人の視線が再びカエル顔の医者に向けられる。

カエル医者「僕が事情を説明したんだ。だから木山くんには、君たちに泡浮くんの携帯電話を返さないよう言ってそのままの足で黄泉川くんに渡すよう仕向けたんだ」

黄泉川「…………………」

木山「……先生の話を聞いて私も協力させてもらおうと思ってね。君たちには冷たい対応をしてしまったことは謝るよ。別に許してもらわなくても構わんがね」

美琴黒子佐天初春「………っ」

375 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 21:56:52.80 ID:At2rjnk0 [10/17]
寮監「お前ら、黄泉川先生の部隊が12日の夜に、泡浮と湾内の失踪について寮に捜査しに来たのは覚えてるな?」

美琴黒子「!!」

今度は、左端の方から声が聞こえた。寮監だった。

美琴「寮監……」

黒子「……覚えてますが、それがどうしましたの?」

寮監「あの時、お前ら管理人室に来て『依頼した鑑定で誘拐犯と思われる男の指紋は出なかった』と不満気に語ってたよな?」

美琴黒子「………………」

寮監「今だから言うが、その時私は確信したよ。ああ、これはこいつらここで諦めないな、と。もう1度、別の方面に泡浮の携帯電話の指紋鑑定を頼むだろうな、と。だから……」

途中で言葉を切る寮監。それに続けるようにカエル顔の医者が説明する。

カエル医者「だから、それを聞いた僕が上条くんたちに頼んで、君たちが他に指紋鑑定を頼めるような人物がいないか調べてもらったんだ。そうしたら、木山くんの名が浮上してね。彼女とは知り合いだから、僕が直接止めに行かせてもらったんだ」

次々と大人たちは隠されていた真相を打ち明けていく。美琴たちは置いてけぼりを食らわないよう話について行くだけで必死だった。

黒子「……それで、泡浮さんの携帯電話は今どこに?」

黄泉川「一時期は私の部隊が預かってが、後に泡浮本人に返したよ」

今度は黄泉川が言った。

美琴黒子佐天初春「…………………」

結局、彼女たちは裏で繋がった大人たちのいいように動かされ、翻弄されていただけだったのだ。いじめっ子たちに奪われパス回しをされている自分の私物を必死に取り戻そうとするいじめられっ子のように。

初春「あの……黄泉川先生」

おずおずと、初春が小さく手を挙げた。

黄泉川「ん? 何じゃん?」

片目を開け、黄泉川は生徒に質問された教師のように反応した。

初春「先生も初めから上条さんたちの仲間だったんですよね?」

恐る恐る訊ねる初春を、美琴たちは不安げに見る。

黄泉川「そうだが?」

376 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:02:18.80 ID:At2rjnk0 [11/17]
初春「なら質問なんですけど、実は泡浮さんと湾内さんの誘拐事件を調べるため、2人が誘拐犯……つまりは上条さんと一方通行さんのことでしょうけど……」チラッ

上条一方通行「………………」チラッ

初春「と、とにかく泡浮さんと湾内さんが誘拐犯と思われる暴漢2人に襲われた時の現場の監視カメラの録画映像を調べてみようと思ったんですよね!」アセアセ

黄泉川「……それで?」

初春「それで……泡浮さんたちが言ってた11日付けの現場の第7学区の18番通りの録画映像を見てみたんです。そうしたら、ある2点…初めは16時20分頃だったかな? それで次が多分その5分後ぐらいだったと思いますけど、一瞬、画面が揺れたと言うかノイズが走った記憶があるんです。確か、黄泉川先生にも1度電話で訊ねて聞いたはずですけど……」

佐天「あ、そういえばあったね」

黄泉川「…………………」

初春「その時は先生『たまにこういうことがある』って言ってましたけど、もしかして本当は、黄泉川先生が細工したんじゃないですか…? アンチスキルなら、簡単に監視カメラの映像を見たり出来る権限持ってますし……」

逃亡中の身であった美琴たち4人が、地上を通るために密かに一時的に監視カメラの映像をダミーの映像に切り替えたことがあったからこそ、初春はそのことを思い出したのだった。

初春「違いますか?」

黄泉川「その通りじゃん」

きっぱりと黄泉川は言った。

初春「やっぱり……」

黄泉川「上条と一方通行が泡浮と湾内を襲った時は、珍しく夕方で監視カメラのある一角で試みた誘拐だったからな。まあこいつらは監視カメラの死角は初めから計算して2人を追い詰めようとしたんだが、その時は失敗して泡浮と湾内に逃げられたじゃん」

上条一方通行「…………………」

黄泉川「ま、だから万が一に備えて、その時の監視カメラの映像を細工して、泡浮と湾内が襲われた事実そのものをメディア上から消したんじゃん」

鉄装「実際に細工したのは私ですけどね」

鉄装が申し訳無さそうに横から付け足した。

佐天「あ、あたしも分からないことがあるんですけどいいですか?」

次いで佐天が手を挙げた。

黄泉川「何だ?」

佐天「初春が侵入したアンチスキル本部サーバーから得た誘拐事件資料では、黄泉川先生の部隊の報告では、泡浮さんと湾内さんが失踪したのは18日午前0時 30分頃から2時30分頃ってなってましたけど…嘘っぱちですよね? だって、その日その時間帯はあたしたちが上条さんたちと戦ってた時だもん」

黄泉川「その通り嘘っぱちじゃん。お前らがアンチスキル本部の取り調べで『18日午前0時30分頃に上条たちと会っていた』と証言しても、私たち実際に捜査を行った当の部隊が公式報告として『泡浮湾内両名の失踪・誘拐は18日午前0時30分頃〜午前2時30分頃に行われた』と記述してるじゃん。普通なら、誘拐を行っていた時間帯にお前らがその当の誘拐犯たちに会えるはずがないと考えるだろ? だとしたら子供であるお前らの証言の信憑性は低くなる。ま、一種のアリバイ作りってやつじゃん」

子供、と言われたことで佐天の顔が少しムッとなる。

黒子「では、実際に泡浮さんと湾内さんの誘拐が行われたのは、11日から12日に掛けてなんですね? 12日の夜にはその件で黄泉川先生の部隊が寮に捜査しに来ましたし」

378 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:08:44.34 ID:At2rjnk0 [12/17]
黄泉川「ああ。11日の夕方頃だな」

黒子「11日の夕方頃?」

黒子は顔をしかめ、美琴と顔を合わせる。美琴もどこか不思議そうな顔をしている。

美琴「11日の夕方頃……って言うと、ちょうど泡浮さんと湾内さんが誘拐犯の暴漢に襲われそうになった直後で、私が彼女たちをジャッジメント支部に連れてった時間帯じゃ……」

黒子「それで確かその時は、隣の支部が爆発事件に巻き込まれたとかで、黄泉川先生の部隊が私たちの支部に警護にやって来た時でしたわよね……?」

と、そこで美琴と黒子の表情が変わった。

美琴黒子「まさか!!!」

黄泉川「ああ。お前らが今想像した通りじゃん」

佐天「え? どういうことですか?」

初春「な、何ですか? 一体?」

鉄装「えっとね、11日の夕方、隣の学区のジャッジメント支部爆発事件を受けて、私たちの部隊がジャッジメント第177支部の警護のために出向いたでしょう?」

鉄装は、分かりやすくゆっくりと説明する。

佐天初春「は、はい……」

鉄装「その時、泡浮さんと湾内さんも支部にいたでしょう? 彼女たちを寮まで車で送って行ったのは誰かな?」

佐天初春「あ……」

ゆうやく2人も気付いたようだった。

黄泉川「彼女たちを寮に送る、とお前らに言っておいて実際は上条たちに途中で引き渡してた、ってことじゃん」

寮監「私とも話はついていたからな。黄泉川先生と口裏を合わせて、翌日の事件発覚時には、常盤台の教師やお前らに『昨夜、アンチスキルの黄泉川という方にわざわざ2人を送っていただいた。その後の巡回の時には部屋にいた』と嘘を吐かせてもらった」

謎が解けたように、美琴たち4人は納得した顔をする。

黄泉川「私の部隊なら、管轄から考えてお前らの支部の警護に就かされることは大体予想が着いてたじゃん。お前らの行動を監視するためにも、ちょうど良いだろう、と考えていたんだが、まさか初っ端からお前らの支部で上条たちが取り逃がした泡浮と湾内に会えるとは思わなかったからな。偶然だったが、御坂が私に2人を送るよう頼んできたし、都合が良かったのでそのまま車で彼女たちを連れ出したってわけじゃん」

黒子「では、わざわざ泡浮さんと湾内さんの誘拐事件に報道管制を敷いたのは……」

黄泉川「ああ、さっき説明した日付の矛盾が、事情を知る寮内関係者にバレないようにするためだ。報道されてないことに疑問を抱いてアンチスキルに問い合わせても、門前払いを受けるように仕向けてもある」

黒子「本当に、やってくれますわね……」

寮監「私も、寮内でことごとくお前らの行動を止めようとしていたんだがな……私の手ではじゃじゃ馬は扱いきれなかったようだ」

黒子「こっちの気も知らないで……」

380 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:13:54.95 ID:At2rjnk0 [13/17]
美琴「でも道理で寮監も黄泉川先生も見張りの警備員たちもみんな、執拗に私たちの行動を制限しようとしてたわけだわ」

黄泉川「私はお前らの推理力に感服するじゃん。私らが全部白状するまでにそこまで大体の予想を組み立ててるなんて、本当、子供ってのは成長が早いもんじゃん」

美琴「ふん。さんざん言ってくれて……」

ともあれ、これで美琴たちが抱いていた疑問はほぼ解決した。
だが、まだ肝心なことは聞いていない。

美琴「って、そうじゃないわ。私たちが本当に知りたいのはその先!」
美琴「答えなさい! 私たちの友達はどこにいるの!? そして何であんたたちはこんなことをしでかしたのか!!」

美琴は責めるように、あるいは罵倒するように大人たちを指差して質問する。しかし、その視線は正面の上条に据えられていた。

上条「…………………」

黒子「そうですわ! 本当に生きているのなら、今、固法先輩たちがどこにいるのか教えてくれないと信用出来ませんの!」

佐天「あたしたちのこと散々馬鹿にして……。答えない、とか言ったら許しませんよ!!」

初春「一刻も早く、みなさんの無事を確かめておきたいんです!!」

美琴「言いなさい!!」

美琴の最後の言葉はほぼ怒号だった。

上条「外だよ」

美琴「なに?」

ずっと黙っていた上条が久しぶりに口を開いた。しかし彼がたった今言ったその意味を瞬時に理解出来なかったのか、美琴は怪訝な顔をした。
それを汲んだのか、上条は分かりやすいように更に言葉を付け加えた。

上条「御坂たちの友達が今、どこにいるか。彼女たちは……」





上条「学園都市の『外』にいる」





美琴黒子佐天初春「!!!!!?????」

381 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:19:29.27 ID:At2rjnk0 [14/17]
美琴「何ですって!!??」

黒子「学園都市の……」

佐天「『外』……?」

初春「『外』ってつまり、学園都市にはいないってことですか!?」


上条「そうだ」


4人たちを見つめ、上条はきっぱりと重い声で言い切った。

一方通行御坂妹打ち止め「…………………」

美琴「な……な……」
美琴「ど、どうして? 何で学園都市の『外』なんかにいるの? い、意味分かんないわよ!!」

黒子「貴方の仰ることが本当だとしても、学園都市の外に出るのがどれほど難しいか承知していますか?」

上条「…………………」

上条は喋らない。まるで何か躊躇している感じだった。

一方通行「ふン」

そこへ御坂妹が上条の耳元に近付き、ヒソヒソと何事か囁き始めた。

美琴「!?」

御坂妹「ここから先は核心に迫ります。もし話し辛いならミサカが代わりに彼女たちに全てを打ち明けますが、とミサカは助言します」ヒソヒソ

上条「………いや。俺が首謀者だったんだ。俺が直接話さなきゃ、意味がない」ヒソヒソ

チラッと美琴を窺う上条。

美琴「!」

御坂妹「分かりました」

上条の耳元から御坂妹は離れる。

上条「……すまん待たせたな。こっからが大事な話なんだ」

美琴「……さ、さっさと言いなさいよ」

上条「ああ」

383 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:24:32.63 ID:At2rjnk0 [15/17]
上条は1度、深く目を閉じる。ゴクリ、と美琴たち4人は喉を鳴らす。
そして上条が再び目を開けたと同時、彼は話し始めた。

上条「お前ら、最近こんな噂聞いたことあるか? 『学園都市内部で内紛が起こる』とか『学園都市のXデーは間近』だとか……」

佐天「……それなら、耳にタコが出来るほど聞きましたけど」

初春「学生たちの間でもよく流れてました」

黒子「ネット上の掲示板でもしょっちゅう見かけましたわね」

美琴「でも、それが何だって言うの? 所詮は噂でしょ? そりゃあ今、学園都市中でテロとか要人暗殺とか連発してるけど」

初春「そうそう。それで確か学園都市全校に休校措置がとられたままなんですよね?」

佐天「何でも今、学園都市には世界中のテログループや秘密結社、過激新興宗教団体、他にもどっかの特殊部隊だのが紛れ込んでる、って話だったっけ?」

思い出すように、美琴たち4人は噂の内容を語る。

上条「その噂は実は、俺たちが流したんだ」

美琴黒子佐天初春「え?」

4人の視線が一斉に上条に向けられた。

美琴「……ま、待って。…あ、あんたが発信元だったの?」

黒子「……言っておきますけど、事件やテロが起きてるのは事実ですが……上条さん、根拠の無い、人々を無駄にパニックに陥らせるような噂を流せば、場合によっては罪に問われますわよ」

上条「ああ、知ってるさ。ただしそれは………」


上条「  噂  が  嘘  だ  っ  た  場  合  だ  ろ  ?  」


美琴黒子佐天初春「!!!!!」

384 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:29:27.94 ID:At2rjnk0 [16/17]
黒子「……どういうことですの?」

初春「まさか、その噂が実は本当だったとか……じゃ、ありませんよね?」

急に真剣な顔つきになる4人。しかしその表情はどこか不安気だ。

上条「そのまさかだ。噂は本当なんだ」

美琴「そんな!?」

佐天「じゃ、じゃあ……あの連日起こってるテロや要人暗殺は全て……」

上条「ああ。実際に学園都市に潜入してるテロリストや秘密結社、特殊部隊、他にも傭兵といった連中が起こしてる」

美琴「……ウソ……」

上条「本当だ」

美琴たちは愕然としたような顔をする。取り敢えず彼女たちは上条の次の言葉を待っているようだ。

上条「過去にもそう言った連中は学園都市に潜んで人目のつかないところでチマチマと工作活動(サボタージュ)してたんだが……今回はその規模が違う。断言させてもらうが……」





上条「  学  園  都  市  は  、  じ  き  崩  壊  す  る  」







385 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:35:03.46 ID:At2rjnk0 [17/17]
美琴「なん……」

黒子「…ですって!?」

佐天「は、はぁ? な、何言ってるんですか???」

初春「そんな見え透いた嘘はやめて下さいよ。この学園都市が崩壊?? あ、有り得ませんって」

4人は、上条が告げた真実を必死に否定しようとする。しかし………

一方通行「……………けっ」

御坂妹打ち止め「…………………」

上条以外の人間に注意を向けてみると、何故か全員含みを持ったような顔で押し黙っている。

大人たちはどこかやり切れない、という感じで各々があらぬ方向を向いている。美琴たちが上条の言葉の真意を確かめようとする素振りを見せても、誰も視線を合わせてこなかった。
その行為は暗に、上条の言葉に真実味を持たせているようなものだった。

上条「ほら、お前ら、俺たちを倒すために監視衛星の管理センターを乗っ取ったって言ったろ?」

初春「!」

上条「あれは、センターのセキュリティが甘くなってたから乗っ取れたんだと思うが、それ以前にセンター自体がまともに機能してないんだよ。みんな、学園都市崩壊の兆しを察して、ある者は逃げ、ある者は仕事を放り出したんだ」

美琴黒子佐天初春「…………………」

唖然となる4人。

美琴「……ふ…ふふふふふ。何言ってるのあんた? 正気? 今まで何度もそう言った危機に遭ってきた学園都市が!! そんな簡単に崩壊するはずがないでしょう!? 世界が滅んでも、唯一生き残ってそうなこの街が……」

黒子「…お姉さまの言う通りですわ! どこから仕入れた情報かは存じませぬが、貴方がたのほうがその情報に惑わされている、といった可能性もあるでしょう!?」

初春「これ以上、お願いですから、私たちを小馬鹿にしないで下さいよ……」

佐天「そうだよ……。冗談にしても程があるよ……」

学園都市は彼女たちの生活の基盤、そして能力者である証。今後、長年付き合っていくはずである街が、人生とも直結する街が、崩壊するなど彼女たちにとっては最も考えられないことだった。
目の前にいる9人の誰かが「嘘だ」と言ってくれればそれでいい。それでいいはずなのに、誰も口を開かない。沈黙が続けば続くほど、上条の言葉に真実味が増してくる。

美琴「誰か答えてよ!!!」

しかし、誰も無言のままだ。

カエル医者「……君たちは……」

これ以上美琴たちを放っておけなかったのか、耐えかねたかのようにカエル顔の医者が口を開いた。

カエル医者「………君たちは、アレイスター=クロウリーと言う人物を知ってるかな?」

386 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:42:03.85 ID:iIqeVyY0 [1/5]
カエル顔の医者はそれだけ質す。

美琴「……アレイスター……」

黒子「……クロウリー?」

佐天「…誰ですかそれ?」

初春「…外国の方ですか?」

カエル医者「君たちとも深い関わりがある人物だよ」

目を伏せながら、カエル顔の医者は説明を続ける。しかし、美琴たちは分からないようだった。

美琴黒子佐天初春「????」

カエル医者「この学園都市の、最も偉い人だよ」

黒子「…最も偉い? …と言うことは……」

美琴「統括理事長!!」

佐天「え!? そうなんですか? あたし、その人のこと一度も見たことありませんよ」

初春「……私も知りませんでした」

カエル医者「知らなくて当然。いや、能力者と言えど君たちのようなまだ普通の女子中学生は知らないほうがいい、と言えばいいのかな?」

美琴黒子佐天初春「??」

一方通行「オマエらとは住む世界の全く異なる人間だ。色ンな意味でな」

不意に、一方通行が発言した。

一方通行「あンなヤロウのこと、オマエらが無理して覚える必要は無ェ」

打ち止め「…………………」

美琴「………?」

腕組みをしたまま、明後日の方向に視線を向け呟く一方通行。
何故彼がこの地点で突然、話に割り込んだのか。それは分からなかったが、妙にその口調には美琴たち4人を気遣うような感じだった。
美琴は『絶対能力進化(レベル6シフト)実験』の件から、学園都市上層部が外道で腐り切っていることは知っている。しかし、それがどこまでの規模までかは知らなかった。もしかしたら一方通行は、その統括理事長に苦い思いを味わわされた経験があるのかもしれない。

美琴「……そ、それで、その統括理事長がどうかしたの?」

取り敢えず美琴は次を促してみた。

カエル医者「まあ、その男はずっと色々と怪しいプランを進めていたわけなんだけどね……」

388 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:47:51.73 ID:iIqeVyY0 [2/5]
佐天「怪しいプランって何です?」

一方通行「………っ」ギロリ

佐天初春「ひっ」

佐天の言葉を聞いた途端、一方通行が彼女を睨んだ。まるで「興味本位で深く突っ込もうとするな」と言っているような目つきだった。

カエル医者「……やれやれ。まあそうなんだが、その男、ある日長年温めていたプランを全部放り出してしまってね。旧知の仲である僕でも彼が何故そうしたのかは全くもって分からない。ただ、彼のその突然の行為が原因で今の学園都市の惨状があるのも事実なんだ」

美琴「アレイスター=クロウリーね………」

まるで恨みが篭ったような声で美琴はその名を呟き、そして訊ねた。

美琴「そいつは今どこに?」

明らかに美琴の口調が変わった。彼女がここでアレイスターの居場所を聞いた意図は大体、予想がつく。

一方通行「…………………」

上条「…………………」

カエル医者「残念だが、君が動いたところで何も出来やしないよ?」

美琴「何ですって?」

一方通行「…………ふン」

カエル顔の医者の発言には2つの含みがあった。
それは、最強の超能力者・一方通行ですらアレイスターの前では手駒だったことを考慮した上でのこと。そしてもう1つ。





カエル医者「だって僕が彼を殺したからね」





美琴「………………は?」

395 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:54:57.10 ID:iIqeVyY0 [3/5]
美琴「……は? は? えーーーーーーーっ!!!???」

カエル医者のあまりの唐突の告白に、美琴は間抜けな声で叫んでいた。

黒子「せ、先生が統括理事長を殺したと仰るのですの!!??」

カエル医者「ああ」

佐天「えーっと…それって……」

初春「事実上、学園都市のトップの人がいなくなっちゃったってことですよね?」

カエル医者「まあ、そうなるかな?」

美琴「(ゲコ太が人を……それも昔からの知り合いを殺したの?)」

佐天初春「へ、へぇ……」

普段、世話になっている名医が殺人を犯したという事実に衝撃を覚える4人。
しかし、彼女たちはアレイスターのほうについては深く考えない。どうも彼女たちにはアレイスターという人物が殺されることが、彼に振り回された人々にとってどれほど想定外のことなのか理解出来ないらしい。

カエル医者「全くもってふざけた話だよ。自分でこんな街を作って怪しいプランを立てておきながら、いきなりそれを放棄するんだ。その挙句、学園都市を崩壊させようだなんて、まるで遊びに飽きた子供が『いらない』と言って積み木をぶっ壊してしまうみたいなもんだ」

愚痴を零すようにカエル顔の医者は話を続ける。

カエル医者「だから彼の元まで行って真意を訊ねてみたんだよ。本当の理由は結局曖昧にして教えてくれなかったが、学園都市を破壊するのは本気だったらしくてね? 彼を無理矢理フラスコから出して、即効性の毒薬を注射させてもらったよ」

美琴黒子佐天初春「…………………」

4人は「フラスコって何? 科学の実験に使うフラスコのこと?」と言った表情を浮かべる。

カエル医者「僕自身、彼があんなにあっさり死ぬとは思わなくてね? まあ彼は1度過去に大きな挫折をしてるからね。どんなに人智を超えたように見えても所詮は彼も人間だったということだ」

一方通行「俺は今もアイツがどこかで飄々と生きてて、身内で滅ぼし合ってるこの現状を見て平気で笑ってるような気もするがなァ……」

冗談では無く、さもありなん、といったような感じで一方通行は言う。

396 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/04(日) 22:59:45.09 ID:iIqeVyY0 [4/5]
カエル医者「まあ……数年後、どっかでバッタリ会いそうな気もするよね? ただまあ、この学園都市においてはもう彼自体の脅威は去ったと見てもいいだろう」

黒子「……しかし、現状は学園都市は毎日のように事件が起きている始末です」

美琴「結局はその統括理事長の思惑通りってことじゃない」

一方通行「そうだなァ。アイツの最後っ屁の処理なンてドロドロにクソ汚くてやりたくなかったが……」

ニヤニヤと笑ってそう語る一方通行を見て、美琴たちは嫌な顔をする。

打ち止め「あ、コラ! レディの前でそんな汚い言葉使わないの!」

一方通行「あ? 悪ィ悪ィ」

カエル医者「そうなんだよ。彼自体の脅威は去っても彼が残した脅威の芽は摘み取られていないんだ。だから……」





上条「だから俺たちがその残された脅威を取り除くために立ち上がったんだ」





上条が言った。右拳を握りながら……。

465 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/05(月) 21:48:21.38 ID:CEQvaq60 [2/13]
上条は言う。右拳を握りながら。

上条「だから俺たちがその残された脅威を取り除くために立ち上がったんだ」

美琴「……………(あいつ……)」

黒子「……そうですか。事情は大体分かりました。それで、その残された脅威の芽はやはりこの現状、そしてそこから導かれる『崩壊』という結末なのですか? 私たちとして、その辺りは詳しく知りたいと思っているのですが」

上条「分かった。それを今から説明する」

美琴たちは上条の言葉に耳を深く傾ける。

上条「アレイスター=クロウリー統括理事長がいなくなった以上、現在、学園都市に残ってる連中は所詮小物ばかりだ。だが、その小物が今は、全ての黒幕となっている」

美琴「全ての黒幕?」

上条「ああ」

黒子「それは一体誰ですの?」

上条「科学者たちだよ」

美琴黒子佐天初春「!」

黒子「科学者……つまりは研究者の方々ですか?」

上条「ああ。統括理事長も死んで、統括理事会も殺されたり逃げたりして実質上機能が停止し、研究者の一部が暴走を始めたんだ。そこへ、他国の特殊部隊やら傭兵やらゲリラやらテログループだのが密かに学園都市崩壊の噂を聞きつけ、この機会を逃さんと学園都市に乗り込んで来て、テロや要人暗殺とか好き勝手やってるんだ」

佐天「それってつまり、研究者と『外』から来たテログループたちが争ってる、ってことですよね?」

上条「そうなるな」

初春「研究者の方々がどのように暴走しているかは知りませんけど、『外』から来た凶悪犯を止めようとしてるのは確かなんじゃないですか?」

上条「いや、そんな単純な構図でも無くてな」

御坂妹「『外』から来た凶悪犯たちと対立してるのは、自分たちの利益が失われるのを恐れてのことです。別に学生たちを守るといった使命感があるわけでありません、とミサカは説明します」

佐天「じゃあ、その研究者たちの利益って何です?」

上条「学園都市の学生たちだ」

美琴黒子佐天初春「?」

美琴「どういう……」

上条「アレイスターが残した脅威の芽。それは、学園都市に残った科学者たちにその権利を明け渡すことだった。その中身は『学生たちを自由にしてもらっていい』というふざけたもんだった」

美琴黒子佐天初春「!!!!!!!」

466 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/05(月) 21:54:30.98 ID:CEQvaq60 [3/13]
御坂妹「つまりは『学園都市の学生を使ってどんな実験をしても自分はもう知ったところではないから好きにしろ』ということですね。しかも学園都市の提携機関から密かに莫大な費用が支払われるとかで、私利私欲に走った研究者たちが血眼になって我先にその状況を確立しようと試みてるようです、とミサカは詳細説明します」

佐天「ちょ、ちょっと待って下さいよそれ!!」

黒子「そうですわ! 勝手過ぎます!!」

初春「人権無視にもほどがあります!!」

美琴「…………………」

彼女たちはまるで、上条たちが当の黒幕であるように攻め立てる。

一方通行「ふはは。こりゃァ傑作だわ…ククク」

黒子佐天初春「!」

その時、一方通行が笑みを零した。黒子と佐天と初春はそんな彼を睨む。対して、一方通行は気にしていない、という感じで組んでいた両腕をソファに広げるようにして言った。

一方通行「なァ、超電磁砲?」

美琴「…………………」

佐天「ふざけないで下さいよ! 何がおかしいんですか!!」

一方通行「オマエらの抗議があまりにも現実知らずだったからなァ。『人権無視』だと? この学園都市に自分で来ておいてよくそんなこと言えるなァ。ンなもン、この街の学生にあって無いようなもンだ」

打ち止め「アナタ!」

一方通行「事実じゃねェか」
一方通行「新手の詐欺ばりに胡散臭いキャッチコピーに惹かれてよォ……まだガキの身でわざわざ親元離れてこの学園都市にやって来たのはオマエらだろうがァ。それとも何だ? で、身に付いた能力はどうだ? オマエらに幸福だけをもたらしたのか?」

美琴「…………………」

一方通行「学園都市に来なけりゃ、暗部の世界に浸ったりスキルアウトになることも無かった連中がどンだけいると思ってる?」
一方通行「特に無能力者なンて可哀想だよなァ? そンだけしておきながら、周囲から期待を寄せられておきながら、なーンにも身に付かないなンて。来ただけ無駄、って奴だ」

佐天「あ…あたしはそんなんじゃありません……! 友達もたくさん出来ましたし……」

泣きそうな目で佐天が訴えた。

一方通行「ま、能力者だろうが無能力者だろうが関係ねェよ。オマエら……いや、俺たち学生はなァ『モルモット』なンだよ!!」

黒子「!!」

佐天「!!」

初春「!!」

一方通行の断言に、3人は絶句した。

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美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」5

再戦編

28 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:14:54.22 ID:n63cw3.0 [2/13]
第7学区・郊外――。

午前2時過ぎ。
人気の無い暗闇を、とある3人は駆け抜けていた。
月が出ていない上、空は曇に覆われてるせいか、ほんの数m先は漆黒に包まれており、まるで得体の知れない怪物が大きな口を開けて餌を待っているような威圧感があった。

上条「…………………」

一方通行「…………………」

しかし、そんな状況に恐怖どころか不安も覚えず、2人の少年は目的地へ向けて走っていた。
1人は、あらゆる攻撃を反射し様々なベクトルを操る、学園都市最強の超能力者(レベル5)・一方通行(アクセラレータ)。
そしてもう1人は、あらゆる異能の力を打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を右手に備えた無能力者(レベル0)・上条当麻。

打ち止め「…………………」

そんな百戦錬磨の2人に並ぶように、1人の幼女がトコトコとついて走る。
上条たちが走る速度を落としているためか、それとも彼女が全速で走っているためか、置いていかれる様子はない。
彼女の名前は『打ち止め(ラストオーダー)』。学園都市第3位の超能力者・御坂美琴の軍用量産モデル『妹達(シスターズ)』の司令塔的存在だった。

一方通行「しっかしよォ上条」

上条「あん?」

走りながら、一方通行が上条に声を掛けた。

一方通行「こうして見ると学園都市も平和に見えるもンだねェ」

上条「まあ今は深夜だからな。テログループとかもお眠りしてるんだろ」

一方通行「なるほどなァ。ま、こンな夜中にこンな寂しいところ走り回ってるのは俺たちみたいな物好きだけってことかァ」ニヤニヤ

打ち止め「こーら、2人とも無駄口叩いてないで走る走る! ってミサカはミサカは体育の先生気分」

一方通行「あァ? いつからオマエは教師になったンだ?」

打ち止め「えへへーたった今……」

一方通行「ちょっと待て」ピタ

ふと、その言葉と共に一方通行が突然立ち止まった。
不審に思った上条と打ち止めも1歩遅れて立ち止まる。

29 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:21:28.08 ID:n63cw3.0 [3/13]
打ち止め「何どうしたの? ってミサカはミサカは疑問を感じてみたり」

上条「おい急ごうぜ。こんなところで油売ってる場合じゃねぇんだ」

上条と打ち止めが一方通行を促す。

一方通行「黙れ」

2人の意見を遮るように一方通行は一言言い放つ。

上条「………………」

打ち止め「………………」

仕方なく2人も口を閉ざす。

打ち止め「…………………」

一方通行「…………………」

上条「…………………」

しばらくの間、静寂がその場を包み込んだ。辺りは、不気味なほど静かで真っ暗だ。
と、その時だった――。





ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!







31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:27:57.42 ID:n63cw3.0 [4/13]
1つの轟音と共に、闇夜を真っ昼間に変えるような青紫色の光が周囲にほとばしった。

上条「!!!!!!」

一方通行「!!!!!!」

打ち止め「!!!!!!」

その光の先端が、立ち止まっていた上条たちの足元を貫く。が、咄嗟に彼らはずば抜けた反射神経でそれを回避した。
打ち止めの服の裾を掴みながら一方通行は右方向に飛び、上条は右手を前に突き出すように左方向へ飛んだ。

上条「……………っ」

地面に着地する3人。

打ち止め「うわ、一体何が起こったの!?」

一方通行「誰かの気配がしたと思ったらこれだァ。全く、危なっかしいったらありゃしねェ刺客さンだなァ」

片膝を地面につきながら、一方通行は打ち止めを庇うようにして警戒の視線を流す。
光と地面の激突で舞い上がった砂煙が晴れていく。

一方通行「さァて……どンなお客さンだァ?」

ニヤニヤと笑いながら、一方通行は前方を見据える。

打ち止め「誰かいるの?」

上条「…………………」

32 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:33:16.87 ID:n63cw3.0 [5/13]






「ちょろっと〜、そう簡単に避けられると自信無くしちゃうじゃなぁい」








33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:38:17.27 ID:n63cw3.0 [6/13]
唐突に、暗闇の中から1つの高い声が聞こえてきた。女――それも子供の声だ。

一方通行「………なるほどなァ。オマエだったってか」ニヤリ

その正体に気付いた一方通行が、同じレベルを持つ超能力者として、その2つ名を呼ぶ。

一方通行「『超電磁砲(レールガン)』……」

次いで、上条も口中に呟き、その人物の名を確かめた。

上条「御坂……」ボソッ

美琴「あら? 男2人に名前を覚えられてるなんて嬉しいわね。あんたらのことだから忘れてると思ってたわ」

砂煙の中から歩いてきた1人の少女。
身体中に紫電を纏った彼女の正体は、常盤台中学のエースにして、最強の『電撃使い(エレクトロマスター)』・御坂美琴。学園都市第3位の実力を誇るレベル5の超能力者だ――。

打ち止め「お姉さま!? どうしてここに……!?」

その姿を見た打ち止めが驚きの声を上げる。

一方通行「で、今更オマエ1人でこンなところに来て何になるってンだァ?」

大して驚くこともせず、一方通行は楽しむように問い掛ける。
しかし………




黒子「あら、誰がいつ1人だって仰いました?」






34 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:44:26.26 ID:n63cw3.0 [7/13]
不意に、美琴の後ろから声が1つ増えた。

一方通行「テレポーター……」

上条「白井…」

黒子「ご機嫌麗しゅう殿方のお二方。そしてお姉さまの妹さま」

打ち止め「お姉さまだけでなく、ツインテのお姉ちゃんまで……?」

一方通行「ほォ……」

上条「…………………」

3人の予想を裏切るように、更に声は増える。

佐天「2人ってわけでもないですよ」

そしてもう1つ。

初春「もしかしたら4人かもしれませんね」

暗闇から発せられた3つの声の主は、正面で堂々と立つ美琴の側に順に歩み寄る。

一方通行「黒髪の無能力者に……」

打ち止め「お花のお姉ちゃんまで!?」

上条「…………………」

目の前に現れた4人の少女。彼女たちは上条と一方通行に挑むような視線を向け、力溢れるオーラを放っていた。

一方通行「超電磁砲(レールガン)、オマエまだ懲りてなかったのか」

美琴「“超電磁砲(レールガン)”じゃないわ。“超電磁砲(レールガン)組”よ。見て分からない?」

一方通行「あァ?」

美琴「あんた、まさか私だけが戦闘要員で、この子たちは見物人とでも思ってないでしょうね?」

腰に手を当て、美琴は一方通行に語りかける。

35 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:50:42.36 ID:n63cw3.0 [8/13]
一方通行「はァ? おいおい冗談よせよな。2週間前のこと忘れたとでも言うのかァ?」

美琴「忘れてるわけないでしょ。あんたたちに完膚無きまでに倒されたんだから」

一方通行「それでまた無謀にも残りのガキどもも連れて来たってのかァ? 学習能力あンのかオマエ」

黒子「残念。学園都市第1位の頭脳もそこまですか」

美琴と一方通行の会話を遮るように、黒子が横から割って入った。

一方通行「何!?」

佐天「学習能力無いのは貴方なんじゃないですか? ねぇ初春?」

初春「そうですねー。もしかして脳みその機能も反射しちゃってるんじゃないですか? フフ……」

一方通行という強敵を前にして、彼女たちは余裕の表情を作っている。それが気に入らないのか、一方通行は多少苛立ちを覚えた。

一方通行「そうかい……そうかいそうかい………。そうかいそうかいそうかい………そうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかいそうかい!!!!!!!!」

片膝を地面についていた一方通行がズアッと立ち上がる。




一方通行「いいね! いいねェ!!! 最っ高だねェ!!!!!」




満面の笑みを浮かべ、一方通行は楽しげに叫ぶ。

36 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 22:56:23.54 ID:n63cw3.0 [9/13]
打ち止め「一方通行?」

一方通行「打ち止め、オマエ、離れた所にいろ」

打ち止め「え?」

一方通行「どうやらコイツらは相当のドMらしいぜェ。あれだけやられてもまた懲りずにやって来てるンだからなァ!!!」

美琴「………………」

やる気を見せた一方通行を前にしても、美琴たちは微動だしにない。

一方通行「上条」

上条「ん?」

一方通行は傍らにいた上条に呟く。

一方通行「文句ねェよな!?」

上条「…………………」

無言で返す上条。彼は今、美琴の顔を見据えている。

美琴「…………………」

美琴もまた、上条を睨み返す。
2人の間に流れる独特の鋭い空気。上条はそれを感じ取り、言葉にならない威圧を美琴に向けていた。
しかし、美琴は何も応えない。まるでそれが、何の意味も無いと言うように。

上条「御坂………」

美琴「上条当麻………」

互いの宿敵の名を呼び合う上条と美琴。
彼らの脳裏に、因縁の相手との記憶が蘇る。一晩掛けて追いかけ、追いかけ回されていた日々のことを。
妹達(シスターズ)を助けるために鉄橋で言い争い、本気で電撃を浴びせ浴びせられた8月21日のことを。
そして、初めて本当の宿敵として戦った2週間前のことを――。

37 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 23:02:36.76 ID:n63cw3.0 [10/13]
一方通行「こンなところでイチャついてンじゃねェぞオマエら。上条、『返事が無い』って言うのは『了承』と捉えるぜェ!!!」

上条「その前に1つだけ聞いておく」

一方通行「あン?」

一方通行の言を無視し、上条は数m先に立つ4人の少女を捉える。

上条「お前ら、本当に俺たちとやる気か? 今ならまだ見逃してやってもいいんだぞ」

侮蔑とも取れる言葉を美琴は軽く受け流す。

美琴「冗談言わないでよ。私たちはこの2週間、あんたたちを倒すために努力して来たのよ。2週間前の私たちと同じだとは思わないことね」

一方通行「おーこわいこわい」ピュ〜

一方通行が小さく口笛を吹く。

一方通行「死ンでも構わねェんだな?」

ドスの効いた脅しをかける一方通行。しかし、4人の少女たちは簡単には怯えない。

美琴「再び巡ってきたこのチャンス。今回を逃したら次はいつになるのか分からない。なのに、本気を出さないと思う? 嘘偽りなく、私たちは貴女たちを殺す覚悟も出来てるし、自分たちが死ぬ覚悟も出来てるわ」

上条「御坂、言うのと実際にやるのとは違うんだぞ」

美琴の言葉を聞いた上条が彼女に忠告する。
しかし、美琴はそれでも取り合わない。

美琴「ほざきなさい。今夜、あんたたちに見せてやるわ。女の子の底力ってやつを」

上条「…………………」

39 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 23:09:24.23 ID:n63cw3.0 [11/13]
美琴「なに『納得出来ない』って顔してんの? そんなにおかしい? 寧ろ私たちのほうが納得出来ないわよ。黄泉川先生や寮監までもあんたたちの仲間だったんだからね」

上条一方通行「………………」

打ち止め「どうしてそれを……?」

打ち止めは素直に驚いたが、上条と一方通行は僅かに目を細めるだけだった。

美琴「そういうわけで、黄泉川先生と寮監のメールを盗み見させてもらったわ。『3日後午前2時、我々3人は第7学区のこのルートを使ってアジトへ戻る』って内容のね! お陰でここで待ち伏せすることに成功したわ」

上条一方通行「………………」

美琴「それともう1つ。私たち、死ぬ覚悟は出来てるけど、死ぬつもりはないから。ただ、生き残りあんたたちを倒すためだけに全身全霊を込めて戦わせてもらうわ!!」

上条と一方通行という最強の敵を前に、キッパリと言い切った美琴。
彼女のその姿は、まさに学園都市第3位の超能力者(レベル5)として凛としたものだった。

一方通行「なンだそりゃあ。結局死ぬのが怖いンじゃねェか?」ケラケラ

上条「無理するなら、帰ったほうがいいぞ」

それでも上条と一方通行は、まるで美琴たちを心配するような、それでいてある意味、見下し侮蔑するような言葉をかける。

黒子「それは貴方がたの物差しでしょう」

不意に、黒子が口を開いた。

佐天「あたしたちがどんな思いでこの2週間やって来たか、その成果を見せてあげますよ」

初春「後で後悔しないで下さいね」

佐天と初春も後に続く。

41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/30(水) 23:17:28.94 ID:n63cw3.0 [12/13]
美琴「そう、だから…上条当麻、一方通行……」

そして、彼女たちは口を揃えて宣言する――。







美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!!!!!!」







まるで静かな闇夜を切り裂くような、迷いの無い、ハッキリとした言葉だった。
少女たちの宣戦布告を正面から受け取り、2人の男は僅かに眉を顰めこう返した。







上条一方通行「………やってみろ」







その返答を合図に、戦闘は開始された――。

61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 21:33:27.94 ID:eQ1Xhtw0 [2/9]



美琴「うらああああああっ!!!!!!!」



バチバチバチッ!!!!!

男のような猛々しい声と共に、美琴は地面に向けて電撃を発した。
その強力な雷光が上条と一方通行の視界を覆い、2人は反射的に回避行動を取らざるを得なかった。
再び辺り一面は砂煙に覆われ、上条と一方通行は知らず知らずのうちに互いの距離を大きく開けていく。

一方通行「まさか俺の方が初めに回避運動取らされるとはなァ」

と言いつつ、余裕綽々の表情で周囲を見回す一方通行。
そこは、鉄骨や木材などが広場の隅に並べられている資材置き場だった。状況としては2週間前と似ている。

一方通行「月が出てねェのか。真っ暗闇なのは不便だが、所詮は不便なだけだ」

空を見上げそう呟く一方通行。
デフォルトで反射を設定している彼にしてみれば、闇討ちなんてものは何の脅威にもならない。

一方通行「ン?」

ポケットに両手を突っ込みながら前を向く一方通行。
誰かが2人、進路上に立っている。

一方通行「さァて超電磁砲(レールガン)、まずは敗者復活戦ってところかァ?」

ニタニタ笑う一方通行だったが、1秒後、目の前に立つ人物を確かめて彼の表情に変化が訪れる。

一方通行「はァ!!??」

62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 21:39:21.97 ID:eQ1Xhtw0 [3/9]
頓狂な声が思わず漏れ出る。無理も無かった。彼の目の前には、同じレベル5の美琴ではなく、黒子と佐天が立っていたのだから。

一方通行「おいちょっと待て。超電磁砲はどうした?」

黒子「何か、お姉さまでなくては不都合なのでしょうか?」

下げた両手の指の間に金属矢を挟み、黒子は言う。
その金属矢は以前と違い、手作り感があったがそれでも得物としては十分に効果を発揮出来そうなものだった。

一方通行「いやいやいや、オマエら俺が誰だか分かってンですか? もしかして、戦闘開始1分でボロ雑巾確定ルートをお望みなンですかァ?」

佐天「御坂さんなら、あっちにいますよ」

佐天は右手に持ったバットの先端を一方通行の後ろの方に向ける。つられて彼が振り返ると、確かに少し離れた所に上条に向かい合うようにして立つ美琴の背中が見えた。

一方通行「なンだそりゃァ? オマエら、戦いのセオリー無視してンだろ? どう考えてもオマエらに勝機なンてねェぞ? だってオマエら、たかがレベル4のテレポーターと、レベル0の無能力者だろ? 万に一つでも勝つつもりなら、超電磁砲が俺と勝負すべきだろ?」

一方通行は本当に疑問を感じているように唱える。

佐天「そんなの貴方の偏見でしょう? たまに言われません? 頑固だって。あたし、頑固な男って嫌いです」

一方通行「あァ?」

黒子「それに私たち、今日はとっておきの“秘策”を持って来てますの。ゆめゆめ、中学生が相手だからと油断してレベル4とレベル0のコンビに負けないことですわね」

一方通行「…………………」

佐天「………………」

黒子「………………」

一方通行「………………アハハ」

黒子佐天「?」

歪んだ笑みを刻む一方通行。

一方通行「……………アヒャハハハ」

失笑がその歪んだ口から漏れ出る。

一方通行「アヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」

黒子佐天「…………………」

一方通行「おもしれェよオマエら!!!! マジおもしれェ!!!! いいぜ、そのおもしろさに免じて遊ンでやるよ!!!!!!」

一方通行の両手が大きく広げられる。

63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 21:46:21.33 ID:eQ1Xhtw0 [4/9]
美琴「そりゃあああああ!!!!!!」

バチバチバチッ!!!!!

上条「無駄だ」

バギィィィン!!!!!

一方通行が黒子と佐天と対峙していた頃、美琴と上条の戦闘もまた、既に始まっていた。

美琴「もう1発!!!!!」

バチバチバチッ!!!!!

上条「無駄だって言ってんだろ」

バギィィィン!!!!!

雷撃の槍を放つ美琴。そしてそれを右手の幻想殺し(イマジンブレイカー)で打ち消す上条。

美琴「ホント、ムカつくほど反則な右手持ってるわよねあんた。改めて思い知らされるわ」

上条「俺のことより、白井たちはいいのか?」

美琴「ん?」

上条「相手は一方通行だぞ。白井たちには荷が重すぎると思うんだが。お前が行かなくていいのか?」

至って平静に問い掛ける上条。今、彼と美琴との距離は10mも開いていない。

美琴「ちょっと、私の後輩侮辱してない? あの子たち、あれでもやるのよ」

上条「それは街の不良1人や2人が相手の場合だろう。今の相手は一方通行だぞ。スキルアウトならまだしも、無謀にもほどがあると思うけどな」

美琴「優しいのね。でも心配しなくても大丈夫よ。私たちにはとっておきの“秘策”があるから」

64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 21:52:27.75 ID:eQ1Xhtw0 [5/9]
上条「秘策?」

ピクと眉を動かす上条。

美琴「教えてあ〜げな〜〜〜〜い!!!!」

軽い言葉を放ちながらも、美琴はいつの間にか手にした砂鉄剣を上条狙って薙ぐ。

美琴「余所見してんじゃないわよ馬鹿!!!!」

上条「フン」

バギィィィン!!!!!

当然、上条の右手は砂鉄剣すらも打ち消してしまう。
隙ができた美琴に逆にカウンターを食らわそうとする上条だったが、その拳にはどこか力が篭っていない。そのためもあってか、美琴は簡単に後ろに飛んで回避できた。

美琴「何あんた? 今、私を小突こうとしただけでしょ? 本気でやりなさいよ。死ぬわよ」

上条「言ってろよ」

美琴「あんたがね」

上条は、相変わらず身体中から放電している美琴を見据える。

上条「(全身全霊の攻撃と言っておきながら、簡単に右手で防げる攻撃だ。相手が俺だから無意識のうちに手加減でもしてるんだろうな。なら、話は簡単だな)」

美琴「ジロジロ見ないでよ気持ち悪いわね」

上条「ちょっと本気を出させてもらうぞ」

上条は右手を握り、一気に駆ける。突然の行動と、男子高校生の歩幅を予測していなかったのか美琴は慌てたように後ろへ下がった。

美琴「チッ」

電撃を放つ美琴。右手を突き出す上条。
因縁の対決は更にヒートアップする。

65 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 21:58:32.19 ID:eQ1Xhtw0 [6/9]
佐天「フッ!」

軽く息を吐き、佐天は地面に落ちていた小石をバットで飛ばす。狙いは、前方の一方通行。

ガッキイイイン!!!!

一方通行「ふぁ〜〜あ」

もちろん小石は跳ね返され、佐天の下に戻っていく。
戻ってきた小石を咄嗟にバットで防ぐ佐天。心地良い音を響かせると、小石はあらぬ方向へ飛んでいった。

佐天「………………っ」

ヒュヒュヒュヒュン!!!!

一方通行「ン?」

唐突に、一方通行の頭上に現れる複数の金属矢。それらは重力に従って一方通行の脳天に向かって落ちていく。

カンカカカカン!!!!

黒子「…………!!」

当然、跳ね返された金属矢は、雨粒が地面に落下するように四方八方に飛び散る。

一方通行「蚊でも止まったかァ?」

66 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:04:26.78 ID:eQ1Xhtw0 [7/9]
軽口を叩く一方通行。そんな彼の目の前にはいつの間にか8cmぐらいの硬球が迫っていた。

一方通行「お?」

佐天が用意していたボールを飛ばしてきたのだ。

一方通行「動かないのもつまンねェ」

一方通行は目の前に迫った硬球を右手で払う。
払われたボールは信じられないほどの速さで虚空を切り裂き、やがて100m先のプレハブ小屋の壁をドスンという音を立てて突き抜けた。

一方通行「やれやれェ…」

目を瞑る一方通行。
しかし容赦なく、金属矢が背後から襲い掛かる。同時に、地面をバウンドしイレギュラーな軌道で2個目の硬球が一方通行に向かう。

一方通行「………………」

正面と背後から同時に攻撃が来たのにも関わらず、一方通行は回避運動を取ろうともしない。
思った通り、金属矢と硬球は簡単に跳ね返されてしまった。

一方通行「(2週間前みたいに、がむしゃらに突っ込ンで来ねェな。寧ろ連携した攻撃を放って来やがる。ま、それがどうした、って感じなンだが……)」

佐天「………………」

黒子「………………」ブンッ

正面の佐天の側に、黒子がテレポートで戻ってくる。
無言の2人を見て、一方通行は指で耳の中を掻きながら退屈そうに訊ねた。

一方通行「で」
一方通行「“秘策”ってまだァ?」

67 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:11:08.55 ID:eQ1Xhtw0 [8/9]
同時に行われる2つの戦闘。打ち止めはその展開を少し離れた所から眺めていた。

打ち止め「……お姉さまの相手が上条さんで、あのツインテお姉ちゃんと黒髪ロングお姉ちゃんが一方通行の相手?」

首を傾げる打ち止め。

打ち止め「…普通、逆じゃないかなぁ? 一方通行なら同じレベル5のお姉さまが相手したほうが良いだろうし、上条さん相手なら、あのツインテお姉ちゃんと黒髪ロングお姉ちゃんのコンビの方が有利な気がするけど……」

打ち止めは推理をするように顎に手を添える。

打ち止め「むー……なんか前回戦った時の組み合わせの方が良かったと思うんだけど、ってミサカはミサカは疑問に思ってみたり」
打ち止め「でも……」

チラッと打ち止めは2つの戦闘を見る。

打ち止め「お姉さまたち、前回に比べて動きが洗練されてるような……」

と、そこで打ち止めはあることに気付いた。

打ち止め「あれ? お花のお姉ちゃんがいない?」

キョロキョロと周囲を探してみる打ち止め。
前回のように、いつの間にか人質に取られていたなどという事態に陥って一方通行たちに迷惑は掛けたくなかった。

打ち止め「あ、いた。あんな所に……」

見ると、随分向こうの方で初春が木材に腰を掛けている姿が見えた。
ここからはよく見えないが、足の上にノートパソコンを乗せているようだ。
暗闇の中、ボウッとパソコンの光が浮かび上がっている。

打ち止め「何やってるんだろ? ってミサカはミサカは新たな疑問に首を傾げてみる」

68 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:16:17.41 ID:eQ1Xhtw0 [9/9]
一方通行「つまンねェからこっちから仕掛けさせてもらうぞ」

黒子佐天「!!!!!!!!」

片方の戦闘に大きな動きがあった。一方通行が攻撃に回ったのだ。

一方通行「シッ!!!」

地面を蹴り、通常の人間では信じられないほどの速度で低空を飛行する一方通行。
彼が伸ばした手が佐天の身体へ伸ばされる。

佐天「!!!!!」

ドッ!!!

と、予想を反し、一方通行は佐天の足元の地面へ拳を叩き入れる。同時に、佐天に向かって放たれる石つぶて。
しかし………

一方通行「何?」

一方通行が顔を上げると、佐天はいつの間にか2mほど後ろに離れており、石つぶての雨から逃れていた。

一方通行「(フェイントで思考能力をストップさせ、その隙に地面から石つぶてを浴びせようと思ったが……何でコイツは素早く俺の攻撃から逃れられた?)」

考えても仕方が無い。今、一方通行の背後近くには黒子の気配がある。
一方通行は悟られないよう足首をグルリと回転させ、今度は黒子の足元へ拳を叩き込もうと………

黒子「…………!!」

……したところで、黒子は一方通行の動きを1秒前に読んでいたかのようにテレポートして消えた。

一方通行「(コイツら……っ! 僅かだが反応が早い……。どういうことだ!?)」

立ち上がる一方通行。数m先に並ぶ黒子と佐天。

一方通行「ン?」

暗くて分かりにくいが、黒子と佐天の左耳付近に注意を向けてみると、何か異物のようなものが見て取れた。

一方通行「(なンだありゃ?)」

更に目を細めてみるとその正体が分かった。

69 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:23:26.82 ID:bNssrMY0 [1/5]
一方通行「(ヘッドセットか…!?)」

縦長に細い、通信用のヘッドセットが、黒子と佐天の長い髪に隠れるように左耳に装着されている。

一方通行「(誰かから指示でも受けてンのか? 超電磁砲か? いや……)」

一方通行は振り返ってみるが、美琴は今、上条との戦闘に集中していて指示を飛ばせるような状況ではない。

一方通行「(待てよ……)」

一方通行は周囲に視線を走らせてみる。

一方通行「(あの頭お花畑がいねェぞ)」

ふと、彼の視線がある一点で止まった。そこだけ光が浮かび上がっていたので暗闇の中でもすぐに分かった。
随分離れた所だが、頭に花飾りをつけた少女が木材に腰掛け、何やら手元のパソコンらしきものを操作している。

一方通行「(あンな所に……。もしかして指示出してンのはアイツかァ?)」
一方通行「(だが、こンな月も無い暗闇の下でどうやって状況を把握して指示を出してやがる? ほンの数m離れただけでほとンど見えなくなるンだぞ)」

黒子「余所見ですか?」

一方通行「あァ?」

唐突に、声が掛けられた。

黒子「余所見をして大丈夫なのですか?」

一方通行「まさかとは思うけどさァ……オマエらの“秘策”って、ヘッドセットのことじゃねェよなァ?」

僅かに黒子と佐天の顔が動く。

一方通行「そンなの期待外れどころじゃねェぞ。あァ、心配するな。あのお花畑は大して脅威にもならないだろうから、別に手出ししたりはしねェよ」

黒子佐天「…………………」

余裕たっぷりげに告げる一方通行。しかし、彼は知らない。初春がわざわざ戦闘から離れた所で暗闇の中、何故パソコンを操作しているかを。

一方通行「おっと、1つ言い忘れてたことがあったぜェ」

黒子佐天「?」

一方通行「俺たちが誘拐してぶっ殺した常盤台の高飛車な生徒さァ……」

黒子佐天「!!!!!!」

一方通行「それまでは偉そうな口きいてた癖に、死ぬ間際になってビビって震えてやがンの。で、こう懇願するンだよ…『死にたくない…助けて』ってなァ! あの顔は最高だったなァ!! オマエらにも見せてやりたっかたぜェ」

黒子佐天「………………っ!!」

70 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:30:12.65 ID:bNssrMY0 [2/5]
心の底から楽しむように一方通行は語る。
その態度に1度は怒りを露にした黒子と佐天だったが、すぐに彼女たちの顔は静かになった。

黒子佐天「…………………」

一方通行「(なンだ? 挑発に乗らねェ)」
一方通行「なンだよなンだよなンなンですかァ? つまンねェなァおい」

そんな一方通行を見て、黒子と佐天は頷き合う。

一方通行「おっと、第2ラウンド開始か?」

ふと、その瞬間、黒子と佐天が消えた。
無論、そのからくりは分かっている。黒子が空間移動(テレポート)を使ったのだ。

一方通行「どういう攻撃が来るのか楽しみ……」

一方通行は途中で言葉を止めた。いつの間にか、佐天の顔が目の前にあったからだ。
不意をつかれ、少し驚く一方通行。

一方通行「はァ?」

抜けたような声を出す一方通行を前に、佐天は眼前に何かを素早く持ち上げた。

71 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:35:12.01 ID:bNssrMY0 [3/5]
それが何であるかを気付くより早く………




バシャッ!!!!!!!




唐突に、莫大な光量が一方通行を襲った。

一方通行「ぐあぁっ!!!!」

両目を覆う一方通行。

一方通行「目が!! クソッ!! ヤロウ!!!」

苦しむ一方通行に追い討ちをかけるように、今度はテレポートした黒子が彼の耳に何かを近付けた。




パアアンッ!!!!!!!




今度は、一方通行の耳の側で大音量の爆音が発せられた。

一方通行「うがぁぁぁっ!!!!!」

左手で左耳を抑える一方通行。
一方通行「チクショウ!!! 耳まで……っ!!」

75 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:41:18.94 ID:bNssrMY0 [4/5]
黒子と佐天がとった方法は簡単だった。

大量の光と音で一方通行の目と耳を一時的に封じたのだ。
彼女たちが手にしているもの。それは、ストロボカメラとデジタルピストルだった。

一方通行「ぐおおおおお」

2人はそれらによって即席で特殊閃光音響手榴弾(フラッシュグレネード)の効果を生み出したのだった。
まずは手の内がバレないように、黒子がテレポートで佐天を一方通行の眼前まで一瞬で飛ばし、間髪入れずストロボで視界を奪い、次いで視覚が奪われている間に、追撃でデジタルピストルを耳元で撃ち、聴覚までも奪ったのだ。

一方通行「うおおおおお」

月も出てないこんな真っ暗闇だからこそ、一方通行が光量を反射していないと捉えるのが普通だ。音にしても、戦闘を行うには最低限必要だからこし反射していないはず。だったら簡単だ。後はその隙をつけばいいだけだった。

一方通行「うがああああ」

黒子と佐天の顔に歓喜の表情が浮かぶ。

佐天「やった!!」

黒子「効きましたわ!!」

79 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:46:50.46 ID:bNssrMY0 [5/5]




一方通行「なァンてな!!!!!」ギャン!!




黒子佐天「!!!!!!!!!」

突如、一方通行が自分の目を覆っていた両手を離し、不気味な笑顔を露にした。

一方通行「確かに、俺の隙をついたいい策だったなァ?」

体勢を戻しながら、一方通行は語る。

一方通行「でもよォ、この策には欠点があるンだわ」

腰を大きく屈め、一方通行が攻撃の姿勢をとる。

一方通行「俺の反射は、許容量を超えたものも自動で反射するンだよ」

そして、最後に彼は1つだけ訊ねた。

一方通行「で、まさか今のが“秘策”ってヤツゥ?」

黒子「!!!!!」

佐天「!!!!!」

ドッと地面を蹴り、一方通行が2人に襲い掛かる。

一方通行「そンな陳腐な秘策で倒せる最強じゃねェぞォ!!!!!」

バガッと一方通行は、目にも止まらぬ速さで黒子の手に握られていたデジタルピストルを破壊した。

黒子「きゃぁ!!」

次いで、一方通行は間髪与えずに佐天のストロボも破壊しようとする。
それに気付いた佐天はバットを構え直そうとするが……

一方通行「遅せェぞ!!!」

それより早く一方通行がストロボカメラを破壊し、彼は佐天の身体にその腕を伸ばそうとした。

80 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 22:53:27.89 ID:R6khucU0
黒子「佐天さん!」

佐天「!?」

ブンッ!!

テレポートした黒子が一瞬佐天の側に現れ彼女と共に消えた。
一方通行の手が虚空を掴み取る。

一方通行「おっと……」

彼は頭上を仰ぎ見る。どうやら黒子と佐天の2人は空中へ逃げたようだった。

一方通行「なるほど」

ドッ!!

空中数十m上から地面へ向けて落下中の2人に向かって、一方通行は一直線に飛んでいった。

一方通行「鬼ごっこの始まりだァ」ニヤァ

花火のように飛んできた一方通行が黒子と佐天を捕まえようとする。
しかし……

ブンッ!!

一方通行「!?」

不意に、彼の目の前から2人が消えた。

一方通行「今度は下だなァ」

ベクトルのエネルギーがゼロになると、彼は落下すると共に、今度は地上にテレポートした2人に向かっていった。

一方通行「オラオラ逃げやがれェ!!!」

黒子「くっ!!」

佐天「!!!」

ブンッ!!

一方通行が地面に落下したと同時、またも黒子と佐天がテレポートで消える。

81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:00:23.46 ID:DtQhIO60 [1/8]
一方通行「で、また上かァ?」

バガッ!!!

彼は地面を割り、大小様々な破片を作ると、それらを蹴り上げ、空中高くへ向けて飛ばしていった。

一方通行「よっと!」

次いで彼は空中へテレポートした2人の元に向かう。

ボシュウウウウウ

一方通行「あ?」

ふと、黒子の手元から何やら白いモヤのようなものが噴き出してきた。
そして彼女たちはモヤだけを残し、今度は別の空中の場所へテレポートする。

一方通行「どこまで逃げたって同じだぞ」

ベクトルの勢いが無くなり落下してきた、先程蹴り上げた破片のうちの1つに足をトンと乗せ、彼は空中で方向転換し、黒子と佐天を追う。

一方通行「またか」

見ると、また黒子の手元からモヤのようなものが噴き出していた。

一方通行「捕まえたァ!!」

空中の黒子と佐天に向けて腕を伸ばそうとする一方通行。しかし、またしても彼女たちはモヤだけを残してテレポートしてしまう。
当然、一方通行はそれだけで諦めることなく、再び頭上から落下してきた破片に足を乗せ方向転換し、2人を追う。

一方通行「せいぜい逃げるこったな」

そうして、黒子と佐天と一方通行は三次元的に鬼ごっこを繰り返していった。
ある時は地上に、またある時は空中へと、様々な場所にテレポートする黒子と佐天。そして、自身のベクトルと落下する破片を用いて彼女たちを追う一方通行。
その間にも、黒子は手元からモヤを出し続け、気付くと周囲は真っ白な煙で覆われていた。

82 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:06:13.31 ID:DtQhIO60 [2/8]
一方通行「どうやらあのテレポーターが持ってたのは煙幕弾のようだな……。辺りを煙で覆おうとしたことで俺の視界でも奪うつもりだったかァ?」

言いつつ、一方通行はまるで鬼ごっこを楽しむように、テレポートで逃げる2人を追う。

一方通行「だが…この暗闇の中では、逆にオマエたちの位置を露呈させてるもンだぜ? ありがたいこった」

ドン!!!!!

一方通行は更にスピードを増し、テレポートで逃げる黒子と佐天を追いかけていく。
地上から空中へ一直線に、空中から空中へ斜めへ、空中から地上へ斜めに、空中から地上へ一直線に、彼は狭い箱の中で兆弾しまくるスーパーボールのように、猛スピードで2人を追い続ける。

黒子「しつこいですわね……!!」

佐天「しつこい男は嫌いです…!!」

一方通行「ふはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」

高笑いを挙げる一方通行。
と、その時だった。

一方通行「!!!!????」




グラリ




一瞬、視界が揺らいだ気がした。

83 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:12:18.64 ID:DtQhIO60 [3/8]
一方通行「…………っ」

同時に、脳がクラクラと回った気がした。

一方通行「なん………だ?」

黒子「………………」

一方通行「くっ!」

気にせず、一方通行は黒子たちを追い続ける。
しかし………

一方通行「!!!!????」

また、グラリと揺れた。

一方通行「チッ……何だ……」

視界が揺れに揺れ、脳が回りまくる。
空中を飛行していた彼は、何とか体勢を立て直そうと試みた。
しかし………



一方通行「(……ちょっと待て………どっちが上でどっちが下だった……?)」



何とか周囲の状況を確かめようとするが、上と下の区別がつかない。
今、どこを飛んでいるのかも分からない。
おまけに視界は揺れるし、頭が回る。
全周が暗闇に覆われ、白い煙幕だけが漂っている。

一方通行「(あ、こっちが上か……)」

一方通行がそう判断を下した次の瞬間………




ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!




彼は地面に激突し、十何mも地面を滑り、やがて資材の束に突っ込んでいった。

84 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:19:19.08 ID:DtQhIO60 [4/8]
黒子佐天「…………………」

しばらくすると、黒子と佐天がテレポートで一方通行の側まで降りてきた。

ガラガラ…ガラン

一方通行「…………………」

頭を抑えながら、一方通行が資材を押しのけて這い出てくる。
常人ならここで死んでいるところだが、無論、彼は落下の衝撃による傷すら1つも負っていない。
しかし、黒子と佐天の狙いは別にあった。

黒子「ご機嫌いかが?」

佐天「急に1人で落っこちて自爆しちゃいましたけど、大丈夫ですかぁ?」

一方通行「………………」

2人を一瞬睨むと、彼は立ち上がろうとした。

一方通行「!!??」

しかし、一方通行の身体はフラフラと揺れ、1秒後には地面に四つん這いになっていた。

黒子「おやおや、学園都市最強の四つん這いの姿が見られるなんて、滅多に無いですわね」

佐天「ストロボカメラが残ってたら、写真撮ってるところなんですけどねー」

黒子と佐天は、四つん這いになった一方通行を見下すようにして話す。

黒子「何が起こったか教えて欲しいですか?」

一方通行「…………………」

一方通行は何も答えない。ただ、地面に伏せたまま頭を抱えている。

85 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:26:39.62 ID:DtQhIO60 [5/8]
黒子「“空間識失調”ってご存知ですか?」

一方通行「!」

佐天「戦闘機のパイロットがたまに陥る症状らしいです」

黒子「何でも、周りが空や海で囲まれてたり、暗闇だったりする場所で飛び続けたら上下の方向が判断つかなくなるらしいです」

佐天「貴方、あたしたちを追いかけるために猛スピードで上行ったり下行ったりしてましたよね。しかも、こんな月も出ていない真っ暗闇の中、煙幕に覆われた状況で」

一方通行「………………」

黒子「もう分かりましたよね? 貴方の身に何が起こったのか」

冷静に、黒子と佐天は説明を続ける。

佐天「貴方は、外からの攻撃を一切受け付けません。物理的攻撃であっても能力であっても、全て跳ね返してしまう。だったら………」


黒子「  内  部  か  ら  攻  撃  す  れ  ば  ど  う  で  し  ょ  う  ?  」


一方通行「………っ」

佐天「テレポートでわざと貴方を誘い込み、上下左右色んな場所に逃げ続け、煙幕で視界を狭める。そうすることで貴方の視界は暗闇と白い煙だけに覆われ、上下の向きもどっちの方向に飛んでいるのかも分からなくなり、一時的に空間識失調に陥ったんです」

黒子「先程私たちが何故、ストロボとデジタルピストルで貴方の目と耳を封じようとしたのか分かりますか?」

佐天「平衡感覚を奪うためですよ。気付きませんでしたか? さっきは上手くいきませんでしたけど、今はその状態に陥ってるはずです」

一方通行「………………」

黒子「如何です? 種も仕掛けもない、実に簡単な方法でしょう?  さ  い  き  ょ  う  さ  ん  ♪  」

2人の説明を聞き終え、一方通行はただ一言言い放った。

一方通行「ガキどもがっ……!」

89 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:33:26.09 ID:DtQhIO60 [6/8]
その光景は打ち止めにとって信じられなかった。
それもそのはずで、まさか学園都市最強の超能力者が、レベル4とレベル0のコンビに不覚をとり、あまつさえ地面に四つん這いにされていたからだ。

打ち止め「そんな……一方通行……!!」

打ち止めの顔が蒼ざめていく。
あの一方通行が、あの最強の一方通行が、2人の少女を前に足を地面につくなんて有り得ないはずなのだ。
しかも相手は同じレベル5の超能力者でもない。歴戦の強敵を撃破してきた一方通行が、女子中学生に負ける。あってはならないことだった。
我慢出来ず、打ち止めは叫んでいた。

打ち止め「一方通行!!!!!」

91 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/07/01(木) 23:38:53.16 ID:DtQhIO60 [7/8]
上条「一方通行……!!」

愕然とした。
今まで共に肩を並べて戦ってきた、学園都市最強の男が四つん這いになってる姿なんて今までに1度も見たことがなかったからだ。

上条「そんなことが……」

美琴との戦闘中、不意に、向こうの方で何かがぶつかる音が聞こえたかと思ったら、数秒後そこには地面に伏せている一方通行の姿があった。
上条は知っている。一方通行の強さを。一度、敵対し殺し合った仲だからこそ、その限界を知らない強さを知っている。
しかし今、一方通行は2人の女子中学生を相手に頭を垂れるような形でうなだれている。

美琴「………………」

美琴は、絶望ともとれる表情を浮かべた上条に気付くと、横目で後ろを窺った。
どうやら、彼女たちは上手くいったようである。僅かに笑みを浮かべると、美琴は顔を正面に戻した。
そこにはまだ、呆然としている上条の姿がある。

ブオンッ!!!!!

上条「!!!!!」

そんな上条に向けて、美琴は再び砂鉄剣を振るう。間一髪、屈み込むことでそれを避ける上条。

上条「(こいつっ……!!)」

美琴「なに? お友達が心配? それは大変ね」

更に美琴は砂鉄剣で袈裟斬りを試みるが、上条はずば抜けた反射神経でそれを回避する。切られた上条の前髪が数cmほど空中を舞った。

美琴「甘いわね」

バチバチッ!!

バギィィィン!!!!

体勢を崩した上条に、美琴は左手で電撃を発する。慌てたように上条はそれを右手で打ち消す。

美琴「そろそろクライマックスでもいっとく?」

ブンブンと美琴は砂鉄剣を振るう。

上条「(この野郎……マジで俺を殺しにきやがった……)」

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美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」

隠遁編

692 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 21:31:18.41 ID:WLYl2ZQ0 [2/2]
とある場所――。

一方通行「逃げただと?」

御坂妹「はい」

窓も無い狭い部屋の中、一方通行は目を細めて御坂妹に質していた。

御坂妹「手に入れた情報によると移送直前、お姉さまは常盤台中学学生寮から白井さまと一緒に脱走したようです」

一方通行「………………」

御坂妹「それだけでなく、佐天さまや初春さまも寮の部屋から消えたようですね、とミサカは報告します」

淡々と、御坂妹は説明する。

一方通行「………………」

御坂妹「…………………」

一方通行「…ハッ!」

ドカッと一方通行はソファに腰を降ろす。

一方通行「やってくれるねェ、超電磁砲……」

御坂妹「恐らく現在も第7学区にいると思われますが、まだアンチスキルも消息は掴めていないようです、とミサカは多少驚きつつ現状を報告してみます」

一方通行「今更逃げたところで何が出来るンだか……。罪に罪を重ねてるだけじゃねェか」

御坂妹「それほどお姉さまたちは本気、ということでは?」

一方通行「くっだらねェ。何度歯向かってきても叩き潰すまでだ。無駄だと言うのが分かンねェのかアイツら」
一方通行「が、しかしだ…。出し抜かれたのは気に入らねェなァ……」

低い声で呟く一方通行。イライラしているわけではなさそうだが、どこか納得出来ないといった表情だった。

一方通行「オマエ、本当はアイツらが逃げ出すって、予想ついてたンじゃねェの?」

腕を組み、正面を見据えたまま一方通行は横に座る人物に訊ねた。

上条「…………………」

一方通行「いや、そこまでいかなくとも、本当はアイツらの脱走成功を心のどこかで願ってたンじゃねェか?」

上条「……冗談も休み休み言えよ」

693 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 21:38:52.92 ID:borzRdo0 [1/11]
一方通行の言を、上条は軽く流した。

御坂妹「………………」

一方通行「フン」

上条「まあ、詳しい状況は後で聞くとして、あいつらが逃げたのは本当なんだな?」

御坂妹「はい。4人とも寮内から消えました。何なら、こちらから捜索部隊を出しましょうか? 街中にいる妹達(シスターズ)にコンタクトを取ればすぐにでも……」

上条「いや」

御坂妹「?」

上条「……俺たちは本来の目的に専念したい。人員も減ってるんだ。無駄なことは出来ない」

一方通行「無駄なこと、ねェ……」

横合いから挟まれた言葉を無視し、上条は続ける。

上条「あいつらの動きは大して脅威にならない。だけど、1つだけやっておくことがある」

御坂妹「……協力者の発見、ですね?」

上条「ああ。現状を鑑みるに、御坂たちは自力で脱出出来たとも思えない。恐らく、誰かから協力を得ている。その協力者の輪郭がぼやけたままでは、こちらも如何ともし難い。相手が何らかのプロであったら、こっちの活動に支障をきたす恐れがあるからな」

御坂妹「プロ……お姉さまたちがそんな人間を雇えるでしょうか? とミサカは疑問を口にします」

上条「まあ超能力者とは言え、まだ中学生だからな。が、どっち道だ。協力者がプロであれ素人であれ、その素性を知っておく必要はある」

御坂妹「それで、その協力者を見つけたら如何なさいますか?」

上条「場合によっては、力ずくでの対処も辞さない」

御坂妹「……………なるほど。承知しました」

ペコと一礼すると、御坂妹は部屋を出て行った。

上条「………………何だよ?」

一方通行「べっつゥにィ〜」

上条が横目で一方通行を窺うと、彼は下らなさそうに言った。

上条「文句でもあんのか?」

一方通行「ねェよ。ただ俺なら、不満の芽はどンだけ小さかろうが、確実に潰しておくンだがなァ。優しいこった」

上条「ふん」

694 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 21:44:51.23 ID:borzRdo0 [2/11]
美琴「ここが、私たちの隠れ場所よ」

佐天「これはこれは……何というか」

初春「ほぇー…」

黒子「随分とまあ…どんよりとした場所ですこと」

美琴「あはは…」

美琴たちは今、暗く、ゴミやダンボールなどが無造作にひっちろげられた空間の中心にいた。
そのフロアの電灯はほとんどが割れており、窓ガラスはひびの入ったものばかり。おまけに埃っぽくジメジメとして居心地としては最悪だった。

黒子「遠路はるばる寂れた共同溝を歩いてきたと思ったら、今度は廃ビルですか」

美琴「これでも追われる身なのよ。贅沢言わないの」

第7学区のとある裏路地で『D-14』と蓋に刻まれたマンホールを見つけた美琴たち。
そのマンホールは、以前、美琴が接触を図ったスキルアウトの集団が利用していた地下の秘密ルートの1つだったのだ。
かくして彼女たちは長い時間をかけ、今は使われなくなった共同溝をひたすら歩き、再び『D-14』と刻まれたマンホールの出口から目的の場所に辿り着いたのだ。
その目的の場所とは………

佐天「でも、ここって御坂さんが誘拐犯の情報を得るためにコンタクトをとっていたスキルアウトのアジトですよね?」

美琴「そうよ」

佐天「確か、スキルアウトがあの誘拐犯の人たちに壊滅されたことを受けてアンチスキルが捜査を行ったはずじゃ……。大丈夫なんですかね?」

美琴「その点は心配ないわ。どうやらもう全ての現場検証は終えたようだし、部隊も完全撤収したみたいだしね。それに、私はそのスキルアウト壊滅の張本人だって疑われてるのよ? 普通に考えて、犯人が現場に戻って来るなんて考えないでしょ?」

黒子「それはお姉さまの仰る通りですが……」

佐天「御坂さん強いですねー。心臓に毛が生えてるんじゃないですか?」

美琴「なんだとー?」ウガー

佐天「あはは、冗談ですって」

初春「でも……」

美琴黒子佐天「?」

初春は膝を折り、優しい仕草で床に触れた。

初春「1週間ちょっと前に、ここでスキルアウトの人たちは殺されたんですよね……。私たちに関わったばかりに……」

悲しそうな表情を浮かべ、初春は床を見つめる。

695 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 21:50:59.07 ID:borzRdo0 [3/11]
美琴「“私たち”じゃないわ。“私”よ……。私が勝手にスキルアウトと接触図ったから、彼らは一方通行に虐殺されたのよ。だから、初春さんや黒子や佐天さんが負い目を感じる必要無いわ…」

4人は一斉に黙り込む。
言うまでもなく、そこはスキルアウトたちが殺害された現場であった。普通なら、そんな場所を隠れ家にするのは抵抗がありそうなものだが、今の彼女たちはそういったことを気持ち悪いと思うには至らなかった。寧ろ、死んだスキルアウトたちを偲んでいるようにも見える。

美琴「どの道、私たちは止まらない。いえ、止められないわ。あいつらの元へ再び辿り着くまでわね。そのためにここに来たんだから」

黒子佐天初春「…………………」

美琴「もう、寮や学校には戻れない。私たちは追われる身。ある意味で、私たちはスキルアウトになったようなものなのよ。だから、止められない。進むしかないのよ。あの2人に向かって一直線にね……」

美琴は3人を見据える。

美琴「だから、今度こそ決死の覚悟を決めなさい。半端な覚悟なら、上条当麻と一方通行は倒せないわよ! いいわね!?」

黒子佐天初春「はい!!」

真剣な表情で返事を返した3人の顔を、美琴は交互に見る。

美琴「よし。じゃあ、早速行動に移りましょう。まずはこの建物の構図を把握。2人1組で行動すること。それと何でもいいから使えるものを探しましょう。例えば、机や椅子の代わりになるものとか、布団の代わりになるものとか、ね。外に出てもいいけど、あくまで建物の周辺だけね」

美琴はトコトコとフロアを歩いて、割れた窓ガラスから既に暗くなった外の風景を見る。

美琴「見たところ、外周はほとんど建物も無い空き地のようだけど、このビルから出る時もやっぱり2人1組でね。特に、初春さんや佐天さんは私か黒子を連れて出てね。暴漢でも潜んでたら危ないから」

初春佐天「はい」

美琴「じゃあ、まずはそんな感じでいくわよ。いいわn」

グ〜〜〜

初春佐天「………………」

黒子「お姉さま……」

美琴「//////////////」
美琴「……/// い、一番大事なこと忘れてたわ/// 食料や飲み水も何とかしないとね。そう簡単に街へ出れないからね////」

黒子初春佐天「クスクス……はーい!」

美琴「も、もう! さあ、笑ってないで行動開始!!」

こうして、美琴を筆頭に女子中学生4人の隠遁(ホームレス)生活が始まった――。

697 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 21:56:51.58 ID:borzRdo0 [4/11]
常盤台中学学生寮・モニター室――。

美琴と黒子が寮から脱走してから数時間後、黄泉川の部隊によって315号室と管理人室の調査が始まっていた。
隊長の黄泉川は鉄装や数人の警備員、寮監と共にモニター室にいた。

黄泉川「ほら見るじゃん。16時26分頃…。寮監さんが私を迎えるために管理人室から出た直後、寮監さんの机の棚から何かを取り出して見ているじゃん」

ノートパソコンに映った再生映像の中の黒子の行動を指でなぞって追う黄泉川。
管理人室を監視していたモニターは全て破壊されていたが、映像を記録していた媒体は幸いにも生きていたため、現在、ノートパソコンを使って再生・検証している最中だった。

黄泉川「もう一度」

鉄装「はい」

鉄装が映像を巻き戻す。

黄泉川「ほらこれだ」

白黒の画面の中、本を読んでいた黒子が、寮監が部屋を出たと同時にベッドから降り寮監の棚に近付いているのが分かる。

寮監「この棚は……」

黄泉川「心当たりが?」

寮監「彼女が手に広げてるもの、多分、寮内の見取り図です」

黄泉川「見取り図?」

寮監「ええ。常盤台中学学生寮の内部が描かれてるものなんですが……」

黄泉川「なるほど。恐らく白井は、この見取り図を使って、このモニター室と御坂がいた315号室の間取りを調べてたんだな…。それで……」

画面の中の黒子の動きに合わせるように、黄泉川も説明を続ける。

黄泉川「トイレに入り、監視カメラの隙をつき、テレポートしたと……」

しばらくすると、黄泉川と寮監が管理人室に入ってきた映像が流れた。
画面の中の黄泉川はトイレに向かって何事か叫び拳銃を発砲している。

黄泉川「この間に、ここの部屋でモニターを監視していた私の部下を奇襲、モニターも破壊して御坂の部屋へテレポートし、まんまと逃げおおせたわけじゃん」

寮監「しかし、白井はどこでモニター室と御坂の謹慎部屋の情報を得たのでしょう?」

黄泉川「それについてはやはり……」

Prrrrrr.....

会話を切るように、黄泉川の携帯電話が鳴った。
寮監たちの側を離れ、黄泉川は電話を受ける。

698 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:03:10.72 ID:borzRdo0 [5/11]
黄泉川「はい黄泉川」
黄泉川「……え?……ああ……こちらも同様に…」

いくつかの会話の応酬の後、黄泉川は電話を切った。

鉄装「どちらですか?」

黄泉川「ん? ああ、“本部”じゃん」

鉄装「……なるほど」

寮監「……………」

鉄装「で? 本部の方はなんと?」

黄泉川「どうやら本部も私の考えと同じ…やはり寮内に協力者がいるものとの意見じゃん」

寮監「寮内の…協力者。となると、生徒ですかね?」

黄泉川「可能性としてはそれが一番可能性高いからねぇ。寮監さん、この1週間、白井と接触した生徒について、覚えてる限り思い出してほしいじゃん」

黄泉川に訊ねられ、寮監が人差し指の先を顎に当てて考え込む。

寮監「えっと……確か、この1週間で管理人室に来た生徒は10人もいなかったと思います」

黄泉川「その10人の生徒が誰だったか、覚えてるじゃん?」

寮監「はい、それは。寮監として、そういったことは記憶に留めるようにしていますし、寮内の生徒の顔と名前も全員把握しているつもりですから」

黄泉川「では、来室した10人の生徒の中で、怪しい挙動をした者は…?」

寮監「それは…いなかったと思いますが」

黄泉川「では、白井と話したのは?」

寮監「みんな白井とは一言ぐらい話していた気はしますよ。でも、特に怪しい言動は無かった気が……。特異のある行動をしていれば、私がしっかりと覚えてますし」

黄泉川「その10人の生徒は一体、どう言った理由で来室を?」

寮監「部屋のことやスケジュール、または寮内での悩みなど一般的な相談事ですね。みんなそのついでに白井に声をかけた感じだったので……」

黄泉川「…うーむ」

寮監の証言を聞き終えると、黄泉川は腕組みをして唸った。

寮監「あ、待って下さい」

黄泉川「ん?」

699 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:09:40.12 ID:borzRdo0 [6/11]
黄泉川と鉄装が同時に寮監の顔を見る。

寮監「1人だけ、正式な面会でやって来た生徒がいます。それも2回も」

黄泉川「何?」ピク

黄泉川の表情が急に変わった。

寮監「1回目は3、4日前に。2回目は昨日に」

黄泉川「昨日……」

それを聞き、黄泉川と鉄装は顔を見合わせる。

寮監「そうです! 昨日の面会時には、調理実習で作った弁当の差し入れに来たんですよ確か!」

黄泉川「弁当か…」

寮監「でも私も白井が食べる前に弁当の中身を見ましたけど、特に変わったものはありませんでした。さすがに白井の脱走と弁当では関係は無いのでは……?」

寮監が自分なりに組み立ててみた推測を口にしてみる。

黄泉川「いや」

寮監「え?」

黄泉川「工夫すれば弁当の差し入れだけでも、御坂の部屋番号を内密に伝えられる方法はあるじゃん。恐らくその弁当の差し入れ時に、何らかの情報提供が行われた可能性が高いな」

寮監「でも、あの時確かに怪しい様子は……」

しかし、寮監の疑問を否定するように、黄泉川が告げる。

黄泉川「まあ考えるのは後じゃん」

アンチスキルとしての洞察力を備えた彼女の目が鋭くなった。

黄泉川「それで寮監さん、白井に弁当を差し入れしたその生徒の名は?」

700 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:17:15.26 ID:borzRdo0 [7/11]
とある廃ビル(美琴たちのアジト)――。

佐天「初春、見て見て! 地下の床収納庫で食材見つけたよ!」

缶詰やペットボトルのミネラルウォーターを両手に、佐天が初春に向けて満面の笑みを浮かべてきた。

初春「わぁ! すごいじゃないですか! これで数日は食料の心配はありませんね!」

両手を合わせ、歓喜の声を上げる初春。

美琴「地下は、あんまり散らかってなかったわ。あそこなら寒くもないし、寝るにはいいかもね」
美琴「ちなみに布団は見つからなかったけど、毛布やタオルは何枚か見つけたわ」

そう言って美琴は手に持った毛布を見せる。
彼女たちは今、二手に分かれてビル内を調べ上げ、使えるものが無いか探していたのだ。

初春「良かったー…固い床だと眠れないんじゃないかと心配だったので」

佐天「そういう初春たちは何か見つけたの? 何か胸に抱えてるけど」

初春「あ? これですか? ちょっと白井さんと一緒に建物の周辺を探してみたんですけど、ゴミの中からパソコン見つけたんですよ!」

初春は胸に抱えていたものを美琴と佐天に見せる。
どうやら、15インチぐらいのノートパソコンのようだ。しかし、汚れも付着しており、いくつか傷も見受けられ新品の状態とは程遠かった。

初春「ただ、バッテリーの電池が切れてるんですよね……。当然と言えば当然なんですけど」

トホホと初春は残念がる。

701 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:22:51.68 ID:borzRdo0 [8/11]
黒子「その他にも、こんなものも見つけましたわ」

美琴「あら? 何それ? 白板?」

黒子が手にしていたのは、横1m、縦50cmほどの小さなホワイトボードだった。

黒子「ええ…使い道はないかもしれませんが、一応。周りにマジックペンも落ちてましたが、これもインクが出るかどうか……」

彼女の左手には黒と赤のマジックペンの2本が握られていた。

初春「あとはこんなものもありましたけど、需要無いですよね?」

一度ノートパソコンを抱え直すと、初春は背中のスカートの裾にでも挟んでいたのか、1つの如雨露を取り出した。

佐天「如雨露って……はっ! 初春! そっか…初春は頭のお花に水をやらないと死んじゃうもんねー」

からかうように佐天は笑う。

初春「ち、違いますよ! 目についたから拾って来たんですよ!」

佐天「あっはっは、冗談冗談」ケラケラ

美琴「まあまあ。でもガラクタと言えど結構集まったじゃない。工夫すれば何かに使えるかもしれないわよ?」

何に使うかは明日決めるとして、と前置きして美琴は腕時計を見る。

美琴「もう随分夜ね。今日は疲れてるし、取り敢えず地下行って寝よっか!」

黒子「そうですわね。それで明日早く起きて色々考えていきましょう」

佐天「賛成! もうあたしクタクタでさー」

初春「私もですー」

702 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:28:45.65 ID:borzRdo0 [9/11]
午前1時過ぎ・廃ビルの地下――。

捨て置かれた机や椅子が隅っこに捨てられている以外は、特に何も無い小オフィスほどの空間の中、美琴たち4人は毛布を一列に並べて横たわっていた。

美琴「………………」

黒子「………………」

佐天「………………」

初春「………………」

彼女たちにとって、とても長い1日だったと言える。
これまでのこと、これからのことを考えると簡単に眠りに就けそうにはなかった。

佐天「ねぇ…初春」ボソッ

佐天が隣で眠っている初春に声を掛ける。

佐天「もしかして、もう寝ちゃった?」ヒソヒソ

初春「起きてますよ」ヒソヒソ

佐天「そうなんだ。実は眠れなくてさ」ヒソヒソ

初春「私もですよ」ヒソヒソ

佐天「じゃあ御坂さんたちは……」

グルリと佐天は体勢を変える。

美琴「起きてるわよ」

黒子「右に同じく」

佐天「なんだー結局みんな起きてるんじゃないですかー」

美琴「だって眠れないものは眠れないんだもん」

黒子「目が覚めてしまってどうにも……」

佐天「ですよね。現実的に見たら今、あたしたち逃亡者の身ですし…。あの誘拐犯の2人のこと頭に浮かべると、ムカついてきて……。こうなったのも元はといえばあいつらの責任ですからねー」

と、そこで佐天が愚痴を零した時点でみんなが一斉に黙った。
よく見ると、みんな顔が暗く少し俯き加減だ。

703 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:34:54.57 ID:borzRdo0 [10/11]
佐天「(わわ、やばい。気まずい)」
佐天「ご、ごめんなさい! 空気悪くしちゃって!」

美琴「ん? いやいや何言ってるの。私も同じこと考えてたんだから佐天さんが気にすることないわ」

黒子「そうそう。仰ったように悪いのは全てあの類人猿と白ウサギですから」

初春「全くです。お猿さんはお猿さんらしく山でバナナでも食べて、白ウサギさんは檻の中で孤独に打ちひしがれてればいいんですよ!」プンプン

美琴黒子佐天「(腹黒い……)」

美琴「ところでさ佐天さん」

それまでの流れを変えるように、美琴が佐天に訊ねた。

佐天「何ですか?」

美琴「佐天さんって好きな人いるの?」

佐天「ブーーーーーーーーー!!!!!」

盛大に噴き出す佐天。

美琴「え? 何? 変なこと聞いちゃった?」

佐天「いや、唐突過ぎて…」

初春「あ、でもそれ私も興味あります! 佐天さん、仲の良い男子結構いますもんねー」ニヤニヤ

黒子「あら本当ですの?」

佐天「いや、あんな幼稚な男子どもを好きになるわけないじゃないですか。あたしはもっと、大人っぽくて一緒にいると楽しい人がいいの! うちのクラスにそんな気のきいた男子がいるわけないじゃん」

初春「うわぁ…手厳しい発言ですね(佐天さん、裏では結構モテてるのに知らないんでしょうね…)」

佐天「つーか、初春はどうなのよ?」

704 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:40:58.56 ID:borzRdo0 [11/11]
初春「ふぇぇ/// 私ですか? そんなのまだいませんよー」

黒子「そう言っておきながら、本当は初春のような子女が密かに裏で殿方と密会したりしているんですのよねん」

佐天「そうそう」ニヤニヤ

初春「そんなわけないじゃないですか///」

佐天「じゃあどんなタイプがいいのよ?」

初春「え? 私ですか? うーんと、そうですねー…白馬の王子様みたいな…?」

美琴黒子佐天「白馬の王子様!?」キョトン
美琴黒子佐天「……………………」
美琴黒子佐天「プププーwwwww」

初春「私のピンチの時に駆けつけてくれるんですよ! って何笑ってるんですかそこの3人!」

美琴「いやだって…ププw」

黒子「今時白馬の王子様ですか…クスクスw」

初春「だって!/////」

佐天「恋に恋してるって感じだねー」

初春「それを言うなら佐天さんだってそうじゃないですか」

佐天「んなわけないじゃん。つーか、その白馬の王子様(笑)だっけ? クラスの男子の中で当てはまる子とかいないの?」

初春「いませんよ。みなさん普段から破廉恥な話ばかりしてるのに……」

佐天「初春も言うねー(初春、裏では結構モテてるのに知らないんだろうなー)」

初春「そう言えば、御坂さんはどうなんですか?」

美琴「え? 私?」

初春「はい」

佐天「あ、それ知りたーい! 常盤台の超能力者ってどんな男の人を好きになるのか知りたいです!」

707 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:47:38.03 ID:k3jx1aU0 [1/4]
美琴「えーっと………」

数秒ほど、沈黙が訪れる。
自分からふっておきながら、まさか自分に質問が返ってくるとは思わなかったのか美琴はたじろいでしまう。

美琴「なんだろね」

黒子「………………」

明らかに複雑そうな顔を見せた美琴を見て黒子は黙り込んだ。
黒子は美琴が想いを寄せている意中の人物が誰であるのか、大体検討はついている。しかし、その意中の人物は今………。

美琴「………………」

佐天初春「?」

恐らく美琴の中にある恋心は今この時も、複雑な感情を渦巻いているはず。それを察知したのか、黒子は横から挟み込むように声を上げた。

黒子「決まってるじゃないですか! お姉さまが好きなのは誰よりもこの私! そうですわよねーんお姉さま〜ん(はぁと」ガバッ

黒子が美琴に飛びつこうとする。

美琴「んなわけねーでしょうが!!」ビリビリビリッ

黒子「はぁぁぁぁううん!!! 久しぶりの快感ですわっ!!!!」

2人の即席コントを見て、佐天と初春は顔を見合わせて笑う。

佐天「何だかそのやり取り久しぶりですねー」

初春「そうそう、随分見てなかった気がします」

黒子「お姉さま、油断は禁物ですわようふふのふ」キラーン☆

美琴「ホント、あんたってば異性に興味ないのね!!」

初春「そうだ、白井さんはどんな男の人が好きなんですかー?」

佐天「あ、それ知りたーい」

709 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 22:54:04.81 ID:k3jx1aU0 [2/4]
再び場の雰囲気が最初に戻る。

美琴「そうよ黒子。あんたのも聞かせなさい」

黒子「はん! そもそも私はお姉さま一筋。天と地がひっくり返ろうが、殿方をお好きになることなど一生ありませんわ!」キッパリ

美琴「……あんた、独身で過ごす気か」

佐天「白井さんらしいですねー」

初春「将来、同性同士の結婚が法律で認められたら御坂さんピンチですねー」

美琴「なっ! ふ、不吉なこと言わないでよ!」

黒子「でへへへへへへ」

佐天「あ、そういや初春、おっぱい大きくなった?」

初春「ブーーーーーーーーー!!!!!」
初春「いいいいいいいいきなりなな何言ってるんですか!?/////」

美琴「つーか今の話のどこに変換点(ターニングポイント)が?」

佐天「いやぁ、相変わらず初春は成長しないなあって…」チラッ

初春「どこ見てるんですか!//// って言うか佐天さんの成長速度がおかしいんですよ!」

美琴「そ、そうよ! 反則だわ反則!」

黒子「レッドカードですわ!」

佐天「そうかなあ?」ポフポフ

美琴黒子初春「自分の手で掴むなああああああ!!!!!!//////」

4人の少女のガールズトークは弾み、その後も彼女たちは1時間も話し通していた。
まさに普通の女子中学生の、修学旅行のような夜はこうして更けていった。

710 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/24(木) 23:01:16.24 ID:k3jx1aU0 [3/4]
その頃・とある部屋――。

上条「婚后光子。常盤台中学の2年生だ」

バサッという音と共に、件の人物が映った写真が貼り付けられた資料が机の上に置かれた。
窓も無い狭い部屋の中、上条の隣に座っていた一方通行が興味無さげにそれを掴み上げる。

一方通行「コイツが、例の超電磁砲の協力者か」

上条「ああ。内部からの情報と照らし合わすと、そうなる。恐らく彼女でビンゴだろうな」

一方通行「能力は? むァた、空間移動とか厄介なもンじゃねェだろうなァ?」

上条「いや、彼女は…」

御坂妹「レベル4の『空力使い(エアロハンド)』」

上条が説明するより早く、目の前に立っていた御坂妹が手にした資料を読み上げた。
2人は彼女に視線を移す。

御坂妹「任意の物体に目に見えないブースターのようなものを取り付け、ミサイルのように吹き飛ばしてしまう、といった能力のようですね、とミサカは説明します」

一方通行「エアロハンド……空気を操るってわけかァ」
一方通行「で、超電磁砲たちとの接点は?」

御坂妹「今までに何度か交友があるようです。水着モデルの撮影会でも一緒になった仲だとか。お姉さまたちが、テレスティーナ=木原=ライフラインと戦った時にも、援軍に駆けつけて敵に相当なダメージを与えています。レベル4の大能力者の中では、白井さまと並んで数少ないかなりの実力の持ち主ですね」

一方通行「ふゥん。形は何にせよ、あの外道木原ちゃンに敵対したってわけかァ。つまりは、それほど親しい仲ってわけだァ」

上条「都合がいいな」

一方通行「ン?」

上条「御坂と白井脱走の協力者で、御坂たちの友人。条件は揃ってる」

御坂妹「と言うと…もしかして彼女を…?」

上条「ああ決まりだ」

上条は立ち上がり、言った。

上条「次のターゲットは婚后光子。彼女だ」

726 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:07:31.09 ID:uAOqQxg0 [2/14]
とある廃ビル――。

太陽の位置も真上に近付いてきた頃、黒子は3階の窓から外を眺めていた。

黒子「………………」

廃ビルの周りは空き地で、様々な高低の草が生い茂っており、少し離れた所には綺麗な小川もあった。
彼女はそんな風景よりも、少し遠くに見える街並みに視線を据えていた。
その建物群の間から黒い煙が立ち昇っているのが見て取れた。

美琴「どうしたの黒子?」

背後から、美琴が近付いてきた。
黒子は街並みを見つめたまま答えた。

黒子「いえ…街の様子を眺めていたのですが……」

美琴「街?」

黒子「ほら、煙が一筋見えませんか?」

美琴「あ、確かに」

黒子「きっとまたテロか爆発騒ぎでもあったんでしょうか」

美琴「……かもね」

黒子の言に、美琴は静かに答えた。

黒子「この1週間、外の情報は遮断されていたので忘れていましたが、やはりテロや要人暗殺は今も続いているのでしょうか」

美琴「休校措置が解除されてないとすると、恐らく毎日のように起こってるんでしょうね」

728 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:13:23.34 ID:uAOqQxg0 [3/14]
黒子「……私、何だか恐いですの。近々、何かとてつもなく恐ろしいことが学園都市に起こるのではないかと……。こんな地獄みたいに化した学園都市を見てるとそう思いますの。あのネット上にあった噂通り、本当に学園都市の崩壊は近いのではないかと思うと恐くて恐くて……」

美琴「……大丈夫よきっと。学園都市はそんなヤワじゃないから」

黒子を褒める美琴だが、そんな彼女の表情も暗かった。

黒子「そう言えば、あの上条当麻と一方通行は確か固法先輩をも手に掛けていましたよね?」

美琴「…………そうね」

黒子「固法先輩は、無差別爆発に巻き込まれて死にましたわ。もし、爆弾を仕掛けたのもあの2人の仕業だったとすれば、あの2人は誘拐殺人だけでなく、テロも行っていることになりますわ」

美琴「うん…。だからさ黒子……」

黒子「はい」

美琴「それを止めるのが、今私たちがやるべきことでしょ?」

黒子「……そう、でしたわね」

美琴「じゃ、1階に来てちょうだい」

黒子「1階ですか?」

美琴は気持ちを変えるように笑みを浮かべた。

美琴「ええ。奴らを倒すための作戦会議を開くわよ!」

729 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:19:16.48 ID:uAOqQxg0 [4/14]
1階――。

1階に降りてきた美琴と黒子。
ふと部屋の端を見ると、そこだけ試着室のようなカーテンに遮られた空間が出来上がっていた。

美琴「何あれ?」

佐天「お、来た来た。見て下さいよこれー」

佐天に呼びかけられ、美琴と黒子は部屋の一角に向かって歩いていく。

佐天「即席ですけど、カーテンレール作ってみました。カーテンは2階にあったものを利用してます」

見ると、カーテンによって部屋の隅に一辺2mぐらいの空間が作られている。視線を上に移すと、壁と壁を繋ぐように、L字型のレールらしきものがカーブを描いて取り付けられていた。

美琴「何なのこれ?」

佐天「シャワールームですよ」

美琴黒子「はぁ?」

2人が頓狂な声を上げた時、カーテンが開けられ中から初春が出てきた。

初春「これですよこれ」

初春がカーテンの空間から出ると、そこには床にタライらしきものが、頭上にはペットボトルらしきものが逆さに吊られていた。
ペットボトルは1リットルのものらしく、逆さにされた底の近い部分に紐がグルグルと巻かれてあり、その紐の両端は空間に対角線を作るように、それぞれカーテンレールの一部分に結ばれていた。ペットボトルの底は、何故かくり貫かれてあり、何より不思議だったのは、ペットボトルの蓋の部分に如雨露の先がくっついていたことだ。

美琴「もしかしてこれがシャワー?」

佐天「そう! と言っても、お湯も出ませんし、大したものじゃありません。汚れを落とすぐらいしか使い道はありませんから」

初春「近くに綺麗な小川が流れていたでしょう? そこから水を汲んできてこのペットボトルの底から流せば、水がシャワー状に出てくるってわけです」

佐天「まあ…何だかんだ言って女の子ですからね! 服の替えは無くても身体だけは清潔にしておかないと! 妥協に妥協を重ねた案なんですけどね」

黒子「いや、しかし……」

美琴と黒子は顔を合わせ、感心したような声を上げる。

美琴「…よく考えたわね」

730 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:26:12.84 ID:uAOqQxg0 [5/14]
それからしばらくして、彼女たちの作戦会議が始まった。議題は、『上条当麻および一方通行の凶行阻止について』。
部屋の一角に、ビル内部から見つけてきた机と椅子を並べ、片方に佐天と初春が、向かい合うようにして黒子が座っている。美琴は、壁に吊られたホワイトボードの前に立ち、マジックペンで何かを書き込んでいる。どうやら、美琴が知る限りの、上条と一方通行の詳細データだった。

美琴「これがあいつらの簡単なプロフィールよ」

佐天「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』……どんな能力も打ち消してしまう、って……本当にあたしと同じ無能力者(レベル0)なの?」

初春「そしてもう1人が『一方通行(アクセラレータ)』。どんなベクトルの向きも操ってしまう、事実上、学園都市最強の超能力者(レベル5)……」

彼女たちの顔が、僅かに蒼くなる。
無理も無かった。1度あいまみえていたとはいえ、改めて説明されると想像以上だったからだ。

1人は、どんな能力ですら消滅させてしまう右手を持ち、更にその人物は日常茶飯事に厄介事に巻き込まれていて、美琴の見立てでは初春や佐天たちとは比べられないほど相当の死線や修羅場を潜っているとのこと。たとえ、拳銃などの物理的な攻撃が有効であっても、ここは能力が全ての『学園都市』。佐天や初春もその街の住人ゆえ『能力が1番』という意識が強い。しかも、彼女たちは普段から身近で美琴や黒子などの高レベル能力者の戦闘を見てきたのだ。そんな美琴と黒子の能力が一切効かない相手、というのは彼女たちにとって反則と呼べるほどイレギュラーで未知数の脅威だった。
そしてもう1人は、この『学園都市』で230万人もの頂点に君臨する最強の超能力者(レベル5)。美琴と同じレベル5とはいえ、その人物の序列は第1位。第3位の美琴であっても、その実力には大きな隔たりがあるとのことだ。しかもデフォルトで反射を適用しているらしく、どんな攻撃ですら跳ね返してしまう身体をしているという。そればかりか、僅かに手を触れただけで身体中の血流を逆流させ即死させることも出来るらしい。いくらレベル5の美琴たちと様々な事件を解決してきたとはいえ、その超能力者は彼女たちにとって、遥か雲の上――別次元に住む人間だった。

その2人は佐天と初春にとって、信じられない存在だった。彼女たちが日頃から目にしていた美琴の戦闘、美琴の存在こそ、この学園都市の最高位の領域に位置するものだと思っていたが、上条当麻と一方通行の出現によってその常識は覆された。まるで、美琴がいた最高位の領域の更に上に、新たな領域がまた1つ出来上がったような、そんな感じだった。

731 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:34:17.57 ID:uAOqQxg0 [6/14]
一斉に、無言になる。
どうやら、百戦錬磨の美琴と黒子ですら、佐天や初春と似たようなことを考えているらしく、微妙に顔が俯き加減だ。
実際、4人は既に1度、上条と一方通行と対峙してその力を目の当たりにし、完膚無きまでに倒きのめされている。しかもその時の戦闘ですら、彼らは本気の実力を出していないだろう、とのことだから『反則』や『別次元』というレベルではない。なまじ実体験してるだけに、美琴が説明した彼らのプロフィールには信用がある。まさに、『格が違う』とはこのことなのかもしれない。

美琴「…………………」

黒子「…………………」

佐天「…………………」

初春「…………………」

今まで4人で様々な事件を解決し、修羅場を一緒に潜り抜けてきた彼女たち。それでも疑問は浮かぶ。
彼女たちが抱く疑問はただ1つ。




―――『自分たちに勝てるのか』―――




誰も何も言わない、それとも言い出せなかったのか、時間ばかりが刻々と過ぎていった――。

732 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:41:18.66 ID:uAOqQxg0 [7/14]
その頃・常盤台中学学生寮――。

婚后「……御坂さんと白井さん、今頃上手くやってるかしら?」

扇子を片手に廊下を歩く婚后光子。そんな彼女に不意に後ろから声が掛けられた。

寮監「婚后!」

婚后「ひゃい!!」ビクウ!!

振り返る婚后。見ると、寮監がそこに立っていた。

婚后「(まさか今の独り言、聞かれてませんですわよね?)」アタフタ
婚后「な、何でしょう寮監様?」

寮監「お前、今暇か?」

婚后「は? え? あ…ま、まあ暇と言えば暇ですが何か?」

寮監「なら頼みがあるんだが、ちょっと買い物を頼まれてくれんか?」

婚后「か、買い物? この常盤台の婚后光子が雑用などと……」ブツクサ

寮監「嫌ならやらんでよい。買い物ですら出来ないお嬢さまに用は無いんでな!」

明らかに挑発じみた口調で寮監は言った。その言葉に婚后は額に青筋を浮かべる。

婚后「……」ヒク
婚后「……いいでしょう。この常盤台の婚后光子にとって買い物など造作もないこと! やってあげましょう!」

寮監「そうかそれは助かる。じゃ、この金で向かいにあるコンビニでコピー用紙30枚入りを買ってきてくれ」フフン

プライドの高いお嬢さまの扱いに手馴れているのか、言うは一転、寮監は婚后の手に二千円札を握らせた。

733 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:47:12.81 ID:uAOqQxg0 [8/14]
婚后「……コピー用紙ですのね」プクー

不服と言わんばかりに頬を膨らまし婚后は聞き返す。

寮監「そうだ。じゃ頼んだぞ」

婚后「あ、待って下さいまし」

何かを思い出したのか、婚后は寮監を呼び止める。

寮監「何だ?」

婚后「確か今は外出禁止中なのでは?」

寮監「まあそうだが、私も仕事があって忙しいんでな。仕方がない。それにすぐそこのコンビニに行って帰るだけだ。問題無いだろ。大体お前はレベル4の大能力者なんだから、心配するようなことはないだろ」

婚后「そ、そうですか。ならよいのですが」

寮監「じゃ、なるべく急いで頼む」

それだけ残すと、寮監はスタスタと去っていった。

寮を出、婚后は表の道路を横切る。コンビニはすぐ目の前にあった。
しかし、彼女は気付かなかった。彼女の行動を見張る自動車が寮のすぐ側に止まっていたことを――。

「来たか」

「彼女だ」

734 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:52:44.19 ID:uAOqQxg0 [9/14]
婚后「何故私が、コンビニで買い物などと……」ブツブツ

袋を片手に、愚痴を垂れながら婚后はコンビニから出る。と、そこへ……

若い男「すいませーん!」

婚后「何故私が庶民じみた袋を……」ブツブツ

若い男「ありゃ? す・い・ま・せ・ー・ん・!」

婚后「って、はい? 何ですか貴方は?」

コンビニを出たところで、婚后は若い男に呼び止められた。
外見はフリーターっぽく、若者らしい、しかしどこか地味な服を着込んだ男だった。

婚后「(あら、少しハンサム/// 服装は庶民ですけど)」

若い男「あの、ちょっと話いいですか?」

その言葉に婚后は眉をひそめる。

婚后「何ですのお昼時から? ナンパなら他所でやってくれませんこと? そもそも貴方のような庶民がこの常盤台の婚后光子をデートに誘えるとでも思って? いえそもそもデートに誘おうとする考えが身の程を……」

若い男「あ、やっぱり常盤台の婚后さんですね?」

婚后「?」

若い男「あ、いやいや、怪しいもんじゃないですし、ナンパでもありません!」

婚后「いえ、十分怪しいですし、何故私のお名前を?」

若い男「いやだって、常盤台の婚后光子って有名でしょ! 常盤台と言えば、あの超電磁砲と肩を並べる……いや、ダントツで有名ですから!」

婚后「そ、そう? オホホホホホ。まあ当然ですわね! オホホホホホ」

若い男「あははははは」

扇子を口元に笑う婚后。

婚后「で、ナンパなら他所でやって頂きたいのですが?」ジロリ

若い男「あ、だからナンパじゃなく……参ったな。僕、こういうものです」

そう言って若い男はポケットから名刺を取り出し婚后に渡した。
そこには『能力平和利用研究所  真堂場 上』と書かれていた。 

婚后「貴方のお名前……ま…まどうば? まどば? …うえ?」

若い男「『まどうじょう のぼる』です」

738 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 21:59:26.42 ID:uAOqQxg0 [10/14]
婚后「『能力平和利用研究所』など、聞いたことがありませんが?」

若い男「あれ? ないですか? おかしいな。結構科学者の間では有名なところですよ」

婚后「となると、貴方、研究者か何かですか?」

若い男「いや、僕は下っ端の雑用です。宣伝とかやらせてもらってます」

テヘヘと言うように若い男は髪をかく。見た目、チャラチャラしているわけではないが、どこか頼り無さそうな感じだった。

婚后「それで? そんな方が私に何の御用で?」

若い男「ぶっちゃけて言うと、婚后さんのお力を貸してほしいんですよ」

婚后「私の力? どういう意味ですか?」

若い男「ほら、今、学園都市って結構やばい状況じゃないすか。テロだの要人暗殺だの、誘拐だのって。アンチスキルがどれだけ頑張っても、事件は毎日のように起こる始末」

婚后「まあ、確かにそうですわね……」

若い男「それで、僕たち…って言うか、うちの研究所が能力者の学生を募集してるんですよ。何とかこの状況を打開するためのね」

婚后「募集?」

若い男「はい。この状況を改善するためにおあつらえ向きな能力者を集めて、色々話し合ったり、計画を練ったりしてるんです。ただ、僕たちは研究者ですので、アンチスキルのように犯人グループのアジトに突入とか、そんな軍事行動はしないんですけどね。どっちかと言うと、事件で傷ついた多くの人たちを速やかに効率よく治療したり、未然に事件を防ぐ手段を考えたりと言った、ソフト面でのことです」

婚后「へぇ、初耳ですがそれは大変、殊勝ですわね」

少し感心したのか、婚后はその話に興味を覚えたようだった。

739 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:05:13.97 ID:uAOqQxg0 [11/14]
若い男「で、ここで問題なんですが、やっぱりどうやっても能力者の人員が足りないんですよ。そ・こ・で・! 婚后さんにも手伝ってもらえないかなと思って声を掛けたってわけなんす」

婚后「え? 私に!?」

若い男「はい! と言うのも、レベル2やレベル3の学生は結構いるんですけど、やっぱりどうしてもレベル4の協力者が少ないんですよね」

婚后「それで……私に手伝ってほしいと?」

若い男「ええ。婚后さんの能力なら、かなりの人を救えると思いますし、何より常盤台のレベル4と言ったらそれだけで百人力ですからね! 勝手なお願いなんですけど……」

婚后「………………」

しばらく、婚后は無言になっていた。
若い男の話が本当ならば、自分の能力を使って困ってる人を助けられるかもしれない。今現在、学園都市で起こっている凶事を僅かながら止めることが出来るかもしれない。そう考えると、ハナから断るような話でもなかった。
しかし、あと一歩というところで目の前の男を信じきれられなかった。どうも、胡散臭い感じもするのだ。

婚后「それって……」

今すぐ決めなければいけないことなのだろうか。一旦、寮に戻って改めて考え直してから出なければいけないのか。そう思った婚后は疑問を述べようとしたが……

若い男「婚后さんの周りにテロや事件の影響で被害に遭われた方はいませんか? そういった方々を救えるんですよ! ぜひ力を貸して下さい!」

若い男は婚后に期待を寄せるように言った。
その言葉を耳にしたとき、婚后の脳裏に、美琴や黒子の顔が、そして今は消息を絶った泡浮や湾内の顔が蘇ってきた。

婚后「あの……もう少し詳しい話をお聞かせ願いませんか?」

彼女は即答していた。

740 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:12:28.15 ID:uAOqQxg0 [12/14]
とある廃ビル(美琴たちのアジト)――。

作戦会議中であるにも関わらず、自分たちが倒すべき敵の詳細を知り、言葉を失くしていた美琴たち4人。
しかし、このままでは士気が下がるだけだと思ったのか、ようやく黒子が口を開いた。

黒子「まあ、とにかく……」

一斉に美琴たちが黒子の顔を見る。

黒子「物理攻撃が可能な上条当麻はともかく、どんな攻撃も問答無用で跳ね返してしまう一方通行は厄介ですわね」

佐天「そ、そうですよ…。触れることも出来ないなんて反則じゃないですか」

初春「それじゃ、御坂さんの超電磁砲(レールガン)ですら効かないってことですよね?」

黒子の言葉を切っ掛けに、佐天と初春の2人も我に返り再び会議の場に戻ってきた。

美琴「超電磁砲、雷撃の槍、砂鉄剣、どれを使っても傷つけられないでしょうね……」

黒子「ですが、相手も所詮は人間。必ずどこかに隙があるはずです。まずはそれを考えてみては如何でしょう?」

美琴「そうね…」

実際、打開策など浮かぶかどうかすら不明だったが、そこで立ち止まってるわけにもいかないので美琴は強引に話を進めようとした。

美琴「じゃあまず、これからそれぞれ何をするか決めましょうか」

黒子「私は今言ったように、一方通行の打開策を考えてみますわ。あと、上条当麻のほうも。私の空間移動をどのように使えば、最も効率的に彼らに打撃を与えられるか、と。それと、出来うる限り空間移動(テレポート)の能力も磨きたいと思います。そう簡単に伸びるかどうか分かりませんがね」

美琴「分かったわ。じゃあ佐天さんはどうする?」

佐天「あたしですか? うーん…ぶっちゃけ、あたしのような無能力者に何が出来るかどうか。一方通行に攻撃が効かないなら、上条当麻との肉弾戦用に何か対策でも考えとこうかな……。ああ、あとバットの素振りも頑張りたいと思います。メジャーリーガー級にバッティング能力を上げてみますよ!」

美琴「そう。頼もしいわね。了解したわ。頑張ってね!」
美琴「初春さんはどうしようか」

初春「私は…パソコンを使って色々と対策を考えてみたいと思います。ネットワークに接続出来れば、過去の誘拐事件についてまた調査出来るかもしれませんし」

佐天「でも、あのパソコンって使えたっけ? 確かバッテリー切れてたはずじゃ…」

初春「あ…」
初春「どーしよー」ウルウル

742 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:18:42.00 ID:uAOqQxg0 [13/14]
美琴「バッテリーが切れてるだけでしょ? それじゃあ私の電気で充電してあげるわよ」

初春「あ、そんな手がありましたか!」

美琴「後で持って来なさい。ちゃぁんと使えるようにしてあげるから」

初春「ありがとうございます!」

佐天「うーむやっぱり心強い能力ですねぇ」

黒子「お姉さまはどうしますの?」

美琴「私も黒子と同じように、自分の能力の訓練ぐらいしか出来ないけど、他にもあいつら2人と戦闘に突入した時のシミュレーションのパターンを出来うる限り捻出してみるわ。どういう組み合わせでどういう風に戦えば、あいつらに打撃を与えられるか、ってね。今でこそ第3位の頭脳をフルに生かす場面だからね!」

黒子「なるほど、相変わらず頼もしいですわね」

美琴「それから、みんなに言っておくけど、自分のことばかりに集中しては駄目よ。自分のやるべきことをやる間に、他の3人ともそれぞれ一緒に何か考えてみたり、対策を組み合わせてみたりするのよ。そうすることで、より奴らを倒す道筋が開けてくるってもんよ」

佐天「なるほど。それは一理ありますね」

美琴「ええ。だから定期的に今回のような合同作戦会議も開くわよ。各々が出した成果をまとめた上で、より明確な形にするためにもね。分かった?」

佐天「はい!」

初春「分かりました!」

黒子「承知しました」

美琴「じゃあ、早速取り掛かるわよ」


美琴「超電磁砲(レールガン)組、ファイトオオオオオッ!!!」



美琴黒子佐天初春「ファイトオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!」



自分の長所を生かすため、4人の少女たちは全力で行動を開始する。
しかし、彼女たちの上条当麻・一方通行に辿り着くまでの道は、まだ遠い――。

743 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:24:57.78 ID:uAOqQxg0 [14/14]
とある喫茶店――。

若い男から、現在、学園都市で発生しているテロや事件を解決するための協力を申し出された婚后。
自分の能力で少しでも被害者たちを救えるのではないか、と考えた彼女はより深い話を聞くため、若い男と共に喫茶店に来ていた。

若い男「本当にすみませんね。別に強制ではないので、無理して受ける必要もないんすよ?」

婚后「いえ、そういうわけにはいきませんわ。私の能力で少しでも助かる人がいるなら、断る理由はありませんもの」

若い男「いやあ、優しい人だなー。きっと、被害者の方たちも救われる思いでしょう」

それを聞き、婚后は淡い笑みを浮かべた。

婚后「それにしても、その研究者の方はまだなのですか?」

若い男「遅いっすよね。そろそろ来ると思うんですけど」

若い男によると、『能力平和利用研究所』の支所が近くにあるらしく、より詳しい話を聞くにはそこに所属する研究者の話が必要とのことだ。そういうわけで、婚后は若い男と共にその研究者を待っていたのだ。

若い男「あ、来た来た! こちらです!」

若い男が手を振ると、真っ黒なスーツを着込んだ1人の男が歩いてきた。

婚后「(この方が研究者……)」

一目見て、婚后はどこか違和感を覚えた。
別に研究者であっても、公の場に出る時はスーツぐらい着ても何の不思議もないのだが、それ以前にどこか不思議な感じがしたのだ。似合わない、と言うよりもスーツを着慣れていない感じだった。

若い男「こっちへ」

促され、スーツ姿の研究者は婚后の向かいの席に座る。

研究者「どうも初めまして。以後、お見知りおきを……」

ボソボソと喋るように、研究者は名刺を差し出してきた。

婚后「『甲津 法一(こうつ ほういち)』さんですのね?」

研究者「…………………」

婚后「……あ、よ、宜しくお願いしますわ……」タジタジ

746 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:31:47.83 ID:6SiNaDs0
若い男「駄目っすよ甲津さん。可愛い女性を前にしたからってwww 無愛想なのは嫌われますよww」

どこか、無口でいて人見知りをしそうな人だな、と婚后は研究者を見て思った。別にそれでも問題無かったのだが、次の瞬間、婚后は研究者を見て寒気を覚えた。

研究者「………………」キッ

研究者が、軽口を叩いた若い男を睨むように横目で窺ったのだ。その視線は、まるで殺意でも込められているようなものだった。

婚后「………っ」

若い男「あ、すんませんww やだなあ、ただのジョークなのにwww」

しかし、そんな殺気だらけの目を向けられても、若い男は普段から慣れているのか軽い対応で簡単に流した。

婚后「………………」

若い男「でー…すいませんね。じゃ、早速本題に入っていきますね」

婚后「あ、はい、どうぞ……」

若い男「じゃあまずこちらの資料からなんすけど…」

それから小一時間ほど、若い男による説明は続いた。
休校措置の影響からか、店内はまばらに人がいるだけで学生の姿はほとんどない。常盤台の制服を着た女子生徒が若い男たちと一緒にいれば目を引きそうなものだったが、誰も対して気にはしていないようだった。

婚后「………………」

若い男「――――――」ペチャクチャ

研究者「………………」

若い男「――――――」ペチャクチャ

ほとんど若い男が一方的に喋るだけで、研究者はよほど重要なことでない限り口を開かなかった。婚后はそんな研究者をたまに横目で窺ったが、彼は腕を組んで黙ってるだけでどこか興味無さげに虚空を見つめていた。

若い男「じゃあ、まずは今から研究所に伺ってみますか?」

婚后「え? あ、はい…そうですわね」

研究者「……………」ガタッ

婚后が答えるがすぐ、研究者が立ち上がった。
婚后はここで拒否することも出来たのだが、研究者に気を取られていた彼女は成り行きで承諾してしまったのだ。かと言って、若い男の説明を聞いた限り、断る理由も特に無かった。

若い男「……………」Prrrrrrr....
若い男「あ、傘見さん? 俺っす、真堂場っす。運転手に喫茶店近くまで来るように伝えてくれます?」
若い男「ん? ええ、はい、そこですそこ。宜しくお願いしまっす!」ピッ

750 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:38:53.20 ID:NjsOlXM0
若い男「あ、すんません時間取らせて。じゃあ行きましょうか?」

婚后「え、ええ……」

若い男「研究所にいる他の能力者さんたち、婚后さんが来ると知って大喜びしてるようっすよ」

婚后「そうなの?」

若い男「ええ、もちろん! やっぱりみんなの期待の星ですからねぇ!」

婚后「ま、まあ当然ですわ」

照れを隠すように婚后は扇子を口元に寄せる。
そして、婚后は若い男と研究者に連れられ喫茶店を出た。少し歩くと、自動車が1台停まっていた。

若い男「ああ、あの車です。すんません傘見さん、わざわざ」

若い女「いえいえ、これが私の仕事ですから……」

自動車の側で立っていた1人の若い女性。彼女もまた女性用のスーツを着ていた。
見たところ、若い男の同僚なのかもしれないが、婚后は何故か彼女とどこかで会ったような気がした。

若い女「どうぞ」ガチャッ

若い女が後部座席の扉を開けると、研究者が先にドカッと無遠慮に乗り込んだ。
婚后はジッと若い女の顔を見つめながら、車に乗り込む。

婚后「…………」ジッ…

若い女「…………」

バタン

婚后が乗り込んだ後、若い女も後部座席に乗り込み扉を閉めた。

若い男「じゃあみんな乗りましたね? 運転手さん、宜しくお願いしやっす」

助手席に乗った若い男が運転席に座る男に話しかける。運転手はただ頷いただけだった。

婚后「あの……」

若い女「はい?」

婚后「貴女、常盤台中学の超電磁砲(レールガン)、御坂さんに似ていません?」

若い女「よく言われます、と傘見は返答します」

婚后「ふーん、世の中は狭いですわね……」

751 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:47:47.14 ID:O2Utmr60 [1/7]
婚后を乗せた自動車が出発する。
学園都市の街中を抜け、やがて車は高速道路に入り込む。その間、助手席に座る若い男がペチャクチャと話していたが、婚后の両隣に座る研究者と若い女は直接何かを訊ねられた時以外、口を開くことはなかった。

婚后「(何故この2人はこんなにもローテンションなんですの?)」

研究者「………………」

左を見れば、でかい態度で腕組みをしたまま窓の外も見ず正面を見据えているスーツ姿の研究者。どこか眠たそうだ。

若い女「………………」

右を見れば、揃えた足の上に行儀よく両手を添え窓の外を見ているスーツ姿の若い女。どこか感情が無いような印象を受ける。

婚后「……………(気まずいですわ)」
婚后「(と言うか何ですのこの重苦しい雰囲気は!? 1人で喋り立てている助手席の男が空しく見えますわ)」
婚后「(それにさっきから、妙に軽い頭痛を覚えますわね……。はぁ、とにかくもう少し我慢ですわ)」

それからも時間を掛けて車は進んだ。しかし、1時間経ってもまだ目的地に着く気配は無かった。

婚后「(随分かかりますわね…。いい加減早くしてくれないかしら? 頭痛も治まりませんし…)」
婚后「あの…真堂場さん……」

若い男「ん?何すか?」

婚后「まだ、お着きになりませんの?」

若い男「ああ、後もう少しっすよ。ねえ運転手さん?」

婚后「後もう少しって……」

気軽に答える若い男に、一言も発せずただ頷くだけの運転手。そして両隣には寡黙な研究者と若い女。どこか怪しい面子を見回し、婚后は僅かながら不安を覚えた。

婚后「あの……本当に『能力平和利用研究所』に向かっているのですわよね?」

若い男「そっすよwwwwww」

婚后「………にしては随分時間がかかっているような……」

不安が高まる中、婚后はふと窓の外を眺めた。

婚后「…………え?」

いつの間にか高速道路を降りていたらしいが、どうも周囲の景色がおかしい。明らかに都市部から離れ、建物が少ない地域を走っている。

婚后「ちょ、ちょっと! もう1度お聞きしますけど、本当に『能力平和研究所』に向かっているのですよね!?」

若い男「……………そうですよ……」

婚后「!?」

752 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:53:13.31 ID:O2Utmr60 [2/7]
若い男の声の抑揚がさっきと違う。
ルームミラーに目をやると、運転手の顔が映ったが、帽子を深く被り込んでいるのか目元が暗くなっててよく見えない。

婚后「…………」ゾクッ
婚后「い、いい加減にして下さらない? もう2時間近く経っているんですわよ!!」

助手席に手をかけ、婚后は叫ぶ。

若い男「…落ち着いて下さいよ。目的地はすぐそこですから……」

婚后「さっきからそればっかりじゃないですの!」

と、婚后は何か背後から嫌な気配を感じ取った。振り返ると、研究者と若い女がジッと婚后の顔を見つめていた。

研究者「………………」

若い女「………………」

婚后「な…何ですの!? その目は? あ、貴方たち、本当に研究者なんでしょうね!?」

若い男「……………そうですよ」

相変わらず、若い男は後ろを見ずに答える。

婚后「嘘をおつきなさい!! 私を騙しましたわね!!」

若い男「…騙しただなんてそんな……」

婚后「この私を常盤台の婚后光子と知っての狼藉ですこと!?」

若い男「…狼藉だなんて、難しい言葉知ってますねー」

婚后「…っ」イラッ
婚后「車を今すぐに停めなさい!! これは警告ですわよ!! 私はレベル4の大能力しゃ……」

若い男「この頃、いい音楽ありませんよねー」

婚后「はぁ!?」

婚后の声を遮るように若い男は話を変えた。

若い男「でも、最近良い歌を手に入れたんですよー」

婚后「何を言ってるの?」

753 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 22:59:30.39 ID:O2Utmr60 [3/7]
若い男「あれ? さっきから、流してるのに気付きませんでしたか?」

婚后「歌なんて聴いてもいませんわ! それより早く車を……」

若い男「おかしいな。頭痛くなったりとかしてません?」

婚后「………え?」
婚后「どうしてそれを……?」

若い男「この歌、特定の聞き手に頭痛を起こさせるんですよ。ある種の音波を使ってね。ただ、この歌…って言うかこのCD、戦利品みたいなもんですし試作品のようなものですから1つしかないし、1回きりしか使えないんすよね」

婚后「………!?」

婚后は訳も分からず若い男の話を聞き続ける。しかし、頭痛にも似たような症状がずっと彼女を苛んでいるのもまた事実だった。

若い男「ただ改良版ですから、頭痛を起こさせる聞き手の条件を選べるんですよ。例えば、『レベル2』の能力者だとか『レベル3』の能力者とかね」

婚后「!!!」

若い男「あ、気付きました? 今、婚后さんのために『レベル4』能力者用に設定してあります」

婚后「何を……」ズキズキ

頭痛は続く。

若い男「知らないなら教えてあげますよ。この曲名……」





若い男「『キャパシティダウン』って言うんですよ」





振り返ったと同時、若い男はCDプレーヤーのボリュームを上げた。

婚后「くっ!! ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

755 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 23:05:41.69 ID:O2Utmr60 [4/7]
キイイイイイイイイイイイイイイインという超音波にも似た音が婚后を襲う。
彼女は耐え切れず頭を抱える。

若い男「本当はこんな手荒な真似したくなかったんすけど、すいませんね……」

婚后「やっぱり……貴方たち、研究者では……くっ」

若い男「嘘をついたことについては謝ります」

婚后「ふざけ……」

若い男「それより、貴女が御坂と白井の脱走の手助けをしたんですよね?」

婚后「!!!!」

若い男「やっぱり、ビンゴだったか」

若い女「カマをかけた甲斐がありましたね、と傘見はいい加減鬱陶しくなってきた偽名に辟易しながら答えます」

若い男「まぁな。しかし相手はレベル4の大能力者。これぐらいやらないと下手にこっちがやられかねんから」

婚后「……貴方たちが……泡浮さんと…湾内さんを誘拐した張本人……くっ」

若い男「彼女たちの知り合いですか。残念ながら、彼女たちはこの世界にいませんよ?」

婚后「!!!!????」

若い男「“死んでる”んですよ。今は天国にいると思います」

婚后「そんな!!!!!!」

757 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 23:11:43.28 ID:O2Utmr60 [5/7]
若い男「色々と事情があるんですよ。くんで下さい」

婚后「ふ、ふざけないで……」

若い男「ふざけてなんていません。我々は本気です」

婚后「あ、貴方たちに……御坂さんを止められるとでも……お思いで?……うぐっ…」

若い男「…………………」

婚后は何とか状況を打開しようと、辺りを見回し、そして左隣にいた研究者と目が合った。
相変わらず研究者は無言で婚后を見つめているが、どうもさっきまでとは様子が違うように見える。と言うよりも、その研究者は初めから外見からして違和感だらけだった。何故なら…… 


  黒  い  ス  ー  ツ  に  白  い  髪  は  あ  ま  り  に  も  不  釣  合  い  だ  っ  た  か  ら  だ 


若い男「抵抗はやめたほうがいいですよ。その男、レベル5の超能力者ですから」

婚后「レベル5!?」

驚き、婚后はもう1度スーツ姿の研究者を見る。そして、絶望の色を顔に浮かべた彼女は体勢を変え、反対の扉から逃げ出そうと試みた。

婚后「た、助けて!!」

若い男「まあ今は狭いスペースに3人もいるので、反射は切ってるようですけどね」

研究者「………………」

婚后「くぅ…あ、頭が……」

扇子が床に落ちる。左手で頭を抑えながら、婚后は右手を扉のノブに伸ばす。そんな彼女を見ても、何故かスーツ姿の若い女は何も動こうとしなかった。まるで、その行動が無駄だと言うように。

婚后「もう少し……」

若い女に乗り上げる格好で、婚后は更に手を伸ばす。

婚后「あと少しで……」

ようやく、ドアノブに手が届いた。
と、その時だった。

758 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/25(金) 23:18:27.99 ID:O2Utmr60 [6/7]



ガッシィッ!!!



と、後ろから肩を強く掴まれた。振り返る婚后。


そこには、見たこともないような不気味で狂気を孕んだ笑みを浮かべた研究者の姿があった。



研究者「あはははははははははははははははは!!!!!! ひゃはははははははははははははははははは!!!!!!!!」



婚后「!!!!!!!」ゾクウッ!!

グググッ、と婚后の肩を掴む研究者の力が強まる。

婚后「い、いや……」カタカタブルブル

逃げようとも逃げ切れず、研究者の怪物にも似た笑顔が近付いてくる。

婚后「やだ……来ないで……」ガクガクブルブル

そして、怪物はニヤァと笑みを浮かべながら震える婚后に告げた。






「  死  ン  で  く  れ  ね  ェ  か  ?  」






婚后の黒い瞳に、絶望が襲い掛かった――。

807 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 21:38:52.90 ID:HBnTjmI0 [2/14]
とある廃ビル(美琴たちのアジト)――。

カタカタカタと、キーボードを叩く音がフロアに鳴り響く。初春が机の上でノートパソコンを使っているのだ。

初春「これをこうやって……こうして…」

実はそのノートパソコンは拾い物で、バッテリーの電池も切れていたのだが、美琴の電気によって回復させたのだった。

佐天「うーん?」

隣では、佐天がどこからか見つけてきたラジオをトントンと叩いている。

美琴「どう? 初春さん調子は?」

初春「あ、御坂さん。またバッテリー切れそうなので、充電お願いします」

美琴「はいはいお安い御用だ」ビリビリッ

初春「おーさすがです。ありがとうございます」

美琴「今どれぐらい進んでるの?」

初春「パソコンのスペックをあらかた調べて、どんなことが出来るのか調べてみました。そんなに古くない機種で助かりました。CPUも高性能で私にはおあつらえ向きですね。今、ネットワークのデバイスを改造して、何とか近くの無線LANを拾えないか試みてるところです」

美琴「結構進んでるじゃない。さすが初春さん」

初春「えへへ」

美琴「その調子で頑張ってね。それで……佐天さんは何やってるの?」

顔を反対に向ける美琴。見ると、佐天が古びたラジオ相手になにやら格闘していた。

佐天「これ拾ったラジオなんですけど…うんともすんとも言わなくて…」

黒子「あらあら皆さんお揃いで。どうかいたしましたの?」

と、そこへ黒子も話の輪に加わってきた。

美琴「なんか佐天さんがラジオ拾ったみたいなのよ」

佐天「ええ、でもぜんぜん動かなくて」

808 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 21:45:10.86 ID:HBnTjmI0 [3/14]
美琴「ちょろっと貸してみて」

美琴は佐天からラジオを受け取り、手の中に収めると、電気を発した。

ビリッ

ジジジジ……

すると、数秒ほど空電ノイズが響いた後、

『続いてのニュースです……』

なんと、ラジオが復活した。

佐天「おおお、聞こえたーーーー」

『………今朝、第5学区の廃墟で爆発があり……』

黒子「お姉さまにかかればどんな電化製品も永久に使えますね」

『………調べでは、廃墟は学園都市に潜入中のテログループのアジトと……』

初春「コンセントいらずで助かりますよー」

『………目撃談では、1人の外国人と思われる男が廃墟に入り数分後に爆発した模様で……』

美琴「こーら。私はどこぞの電気系モンスターじゃないのよ?」

『………外国人の外見は、赤い髪に教会の神父のような服を身に纏い……』

佐天「でもこれで多少は便利になりましたね」

『………現場では外国人の男も含め生存者がいる可能性は絶望的と見られ……』

初春「とにかく、あと少しで独自のネットワーク構成に成功しそうです。そうなったら、ネットも使えるようになりますから、情報も得られるようになります」

美琴「やるわねぇ。頼むわよ。上条当麻と一方通行に辿り着くためなんだから」

初春「はい」

美琴が初春の肩をポンポンと優しく叩いて褒めると、初春は照れくさそうに返事をした。

809 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 21:52:00.21 ID:HBnTjmI0 [4/14]
佐天「………そう言えば気になってたんですけど」

不意に、佐天が美琴に訊ねてきた。

美琴「なぁに?」

佐天「あたしたちが、上条当麻と一方通行に負けた時、もう1人小さい女の子がいませんでしたか?」

美琴「…」ピク

美琴が小さく反応した。

黒子「ああ、確かにいましたわね。10歳ぐらいの女の子が、一方通行に連れられて」

佐天「初春、あの子のこと知ってる素振りだったけど、知り合いなの?」

初春「いえ、知り合いじゃないです。ただ以前、街を歩いてた時に一時だけお世話をしただけで、名前も素性も全く知りません。私は『アホ毛ちゃん』って呼んでるんですけど、一方通行とはどんな関係があるんでしょうね」

佐天「でも…引っ掛かってるんだけど、あの子、御坂さんに似てるよね?」

その言葉を機に、一気に3人分の視線がザッと美琴に寄せられた。

美琴「………っ」

美琴は思わず、と言うように反射的に顔を逸らしてしまう。

黒子「お姉さま確かあの時、あの子のこと『打ち止め(ラストオーダー)』って呼んでいましたが……やはりお姉さまの知り合い…いえ、身内ですか? やたらお姉さまに似てる感じがしたのですが…」

美琴「…………………」

黒子「お姉さま?」

黙ったまま顔を僅かに俯け、美琴は3人と視線を合わせようとしない。

810 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:02:02.63 ID:HBnTjmI0 [5/14]
『打ち止め(ラストオーダー)』―― 一方通行(アクセラレータ)の『絶対能力進化(レベル6シフト)実験』において生産された2万体の美琴のクローン―『妹達(シスターズ)』の司令塔とも呼べる存在。
美琴は彼女のことや彼女と一方通行の関係については知っていたが、何故彼女が、誘拐殺人を働いている一方通行と共にいるのかは分からなかった。
思い出す限り、彼女が無理矢理従わされているような感じはしなかった。そもそも一方通行は打ち止めに対しては、どんな内容であっても強要はしないだろう。

佐天「親戚とかですか?」

初春「おーい御坂さーん」

美琴「………………」

となれば、打ち止めは自らの意思で一方通行の誘拐殺人行為に幇助している可能性が高い。そして、打ち止めが協力していると仮定するならば、妹達(シスターズ)も彼らに関係していると見るのが妥当だ。
妹達も自らの意思で協力しているのか、それとも打ち止めに命令されて協力しているのかは分からないが、少なくとも学園都市に残っている10人の妹達は何らかの形で関与しているはずだ。

黒子「…………お姉さま…」

美琴「ん?」

黒子「あの子供との間にどんな因果があるのかは存ぜませぬが、まだその関係を打ち明けられないとなれば、別に今すぐ無理矢理話す必要もありませんわ」

黙ったままの美琴を見て何かを察したのか、黒子が助け舟を出す。

初春「そうですね。別に今すぐ聞きたいってわけでもないですし」

佐天「また落ち着いて余裕があったらその時に話して下さい」

美琴「……………みんな、ありがとう…」
美琴「…お言葉に甘えさせてもらうわ」
美琴「ちょっと喉渇いたから、ペットボトル取りに行くわね」

元気の無い声でそれだけ告げると、美琴は部屋を出て行った。
彼女の後ろ姿を見送りながら、黒子は心配するように言う。

黒子「やはり、何かあるのですね」

佐天「ええ。何なんでしょうね?」

初春「まあそう簡単には話せない複雑な事情があるんでしょう。今はそっとしておきましょう」

美琴の寂しそうな背中がフロアから消えていった。

811 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:11:36.29 ID:HBnTjmI0 [6/14]
廃ビルの地下――。

床に広げられた毛布の上に仰向けに転がり、美琴は組んだ両手の上に頭を乗せる。

美琴「『打ち止め(ラストオーダー)』か……」

美琴は、自分の幼い頃の姿に瓜二つな少女の顔を思い出す。

美琴「そして『妹達(シスターズ)』……」

美琴にとって、妹達(シスターズ)が生まれた経緯や、その顛末はあまり他人に口外したくないことだ。それが一番親しい仲である黒子や佐天、初春ならば尚更だった。
妹達の存在と、『絶対能力進化実験』は学園都市の闇にも繋がることだ。彼女自身、学園都市の闇はほとんど知らないが、それでも黒子たちには全く縁の無い世界。その片鱗を少しでも語ってもいいのか、垣間見せてもいいのか、美琴は迷っていた。
何より、彼女の個人的な感情でも、妹達のことは親友でもある黒子たちには知られなくなかったのだ。唯一、それを心から打ち明けられた存在はこの世にたった1人――。でも、その1人は今は………。

美琴「はぁ…駄目ね私ったら……」
美琴「でも、あいつらと対決する以上、黒子たちに隠し通すのは悪いわ。あの子たちは、私を信じ、頼ってくれてるんだから……」
美琴「……後ちょっとだけ。後ちょっと心の整理がついたら、あの子たちにも全て話そう…。うん、そうしよう……」

深く溜息を吐き、右腕を顔の上に覆うように置くと、彼女は目を閉じた。

813 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:16:26.15 ID:HBnTjmI0 [7/14]
とある部屋――。

一方通行「はァ…肩凝ったぜェ〜」

打ち止め「お疲れ様ー、ってミサカはミサカは缶コーヒーを渡してみる」

一方通行「おう、あンがとよ」

打ち止めから缶コーヒーを受け取り、ソファに腰を降ろすと一方通行は首をコキコキと鳴らした。

一方通行「ったくよォ…スーツなんて俺に似合わねェだろォが」

上条「まあそう言うなよ。レベル4の大能力者を嵌めるには、一芝居打つぐらいしないと逆にこっちが危ないんだからさ」

一方通行「けっ、何が一芝居だ。クソつまンねェ」

打ち止め「でも、スーツ姿の貴方も格好よかったなぁ、ってミサカはミサカは頬を赤くしてみるキャハ///」

御坂妹「馬子にも衣装……」ボソッ

一方通行「あァ? なンか言ったかァ?」

御坂妹「いえ別に…」

上条「そう言う御坂妹もスーツ、似合ってたぜ」

御坂妹「えっ……そ、それは、その…お褒めのお言葉ありがとうございます//// とミサカは突然掛けられたコトバニシンゾウガドキドキ……」ボソボソ

一方通行「イチャつくのもいいけどよォ、上条」

御坂妹「イチャ…っ!?///」

一方通行「でェ、どうすンだよ? あの常盤台の高飛車お嬢さまを死なすのは上手くいったが……いずれ超電磁砲たちに知られる羽目になンぞォ」

上条「それがどうかしたか?」

至極簡単に、上条は答えた。

一方通行「分かってるだろ? いずれ超電磁砲どもがそのことを知ったら、余計に俺たちに抵抗して悪あがきすンぞ。アイツらが俺らに歯向かってくるたび、相手すンのも面倒くせェだろ」

御坂妹「………………」

打ち止め「………………」

一方通行「だったら、ンなちまちまやってねェで、いっそのこと超電磁砲どもを先にターゲットにしちまえまいいンだ」

御坂妹「…その意見にはある程度同意します。先にお姉さまたちを何とかして動けなくしたほうが我々の計画もスムーズにいくのではないでしょうか、とミサカは推測してみます」

一方通行の主張に、御坂妹が倣う。しかし、2人の意見を聞いても上条は表情を変えなかった。

815 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:23:34.56 ID:HBnTjmI0 [8/14]
上条「………………」

御坂妹「いずれにしても、今のお姉さまたちの行動は目障りなだけです。あれだけ『深く関わるな』と言っているのに……。何なら、このミサカが直接出て行って話をつけてきましょうか?」

パリパリッと御坂妹の手に青白い電気が発生する。

一方通行「オマエが行ってもオリジナルに返り討ちにされるだけだろォが」

御坂妹「いえ、お姉さまや白井さまはともかく、残りの2人はレベル1の低能力者とレベル0の無能力者。2人がお姉さまと白井さまから離れた隙に襲撃して、ある程度のダメージを与えることが出来れば、お姉さまたちの行動に亀裂を生み出すことが出来ます」

一方通行「2人やられたぐらいで諦めると思うかァ?」

御坂妹「『諦める』のと『出来なくなくなる』のは別物です。確かに、佐天さまと初春さまは、能力者としての純粋な力は持ち合わせていません。ですが、お姉さまをサポートするには十分な知恵や技術を持っていると思われます。いえ、それ以前にお姉さまたちは『4人一緒』でいることが第一条件なのです」
御坂妹「そこに亀裂を生じてさせてしまえば、お姉さまたちの行動をかなりの確率で阻止出来る、とミサカは推測します」

上条「……そのために、2人を傷つけるのか?」

御坂妹「別に殺すわけではありません。一時的に、病院に収容されるレベル程度の傷を負わせれれば十分だとミサカは確信します」

上条「駄目だ」

上条は即答していた。

御坂妹「えっ…」

一方通行「………………」

上条「あいつらを真っ先にターゲットにしたら本末転倒だ。最初に言っただろ」

816 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:30:14.04 ID:HBnTjmI0 [9/14]
御坂妹「ですがこのまま……」

上条「あいつらはさして脅威にならない。構ってるだけ時間の無駄だ。目の前に近付いてきた時だけ相手してやりゃいいんだ」

一方通行「まァ、視界の端でウロチョロされンのは鬱陶しいが、所詮、人間様の足元でウロチョロしてるネズミみたいなもンだからなァ」

上条「…………」

御坂妹「では、やはり放っておくのですか、とミサカは訊ねます」

不服そうな顔をして、御坂妹は上条を見据える。

上条「ああ、当初の予定通りにな」

御坂妹「……」

上条「話は以上だな? じゃ、俺は地上にいる仲間に現状報告してくるからな」

部屋を後にする上条。取り残される3人。
しばらくして一方通行が口を開いた。

一方通行「あのヤロウも優しいねェ。反吐が出るほどに……ケッ」

打ち止め「むーそんなこと言ったら可哀想だよ、ってミサカはミサカは説教してみる」

一方通行「あーはいはい」

御坂妹「…………………」

817 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:36:24.37 ID:HBnTjmI0 [10/14]
第7学区・とある大通り――。

空が橙色に染まる頃、御坂妹は1人、バッグを掲げて大通りを歩いていた。

御坂妹「…………………」

特に目的もなくトボトボと歩く御坂妹。
休校措置はまだ解除されていなかったが、自分がテロや事件に巻き込まれるとは露とも思っていないのか、何人かの学生たちは随所に見かけられた。



   ――「あいつらはさして脅威にならない。構ってるだけ時間の無駄だ。目の前に近付いてきた時だけ相手してやりゃいいんだ」――



御坂妹「あの人は甘すぎます。相手がお姉さまだから半端な対応をとっているのでしょうか。作戦や計画と言ったものは、不安要素を全て排除して初めて成功するものです、とミサカは溜息を吐きます」

彼女は愚痴を零しつつ、歩みを進める。

御坂妹「まあ、今は文句を言ったところで始まりません。気分転換に喫茶店にでも入りますか」

キョロキョロと辺りに喫茶店らしきものがないか、彼女は顔を振ってみた。

御坂妹「…ありませんね」
御坂妹「……ん? あれは…?」

ふと、裏路地の方に注意がいった。

御坂妹「!!!!!!!」

驚き、絶句する御坂妹。――無理も無かった。そこには、いるはずのない人物が2人立っていたからだ。

818 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:42:33.45 ID:HBnTjmI0 [11/14]
御坂妹「……佐天さまと、初春さま………」

見ると、佐天と初春の2人が裏路地の陰から身を隠すようにして表通りを覗いている。何をしているのかはよく分からなかったが、初春の胸元には開かれたノートパソコンらしきものが抱えられていた。ときたま、初春はそっちの画面をチラッと窺っている。

御坂妹「……何て…危機感の無いお二方なのでしょう……。今、ご自分たちが逃亡中で追われの身であることを理解しているのでしょうか? ……てっきりどこかの隠れ家に篭っているとでも思っていたのですが……」

佐天と初春は裏路地の陰に隠れているものの、よく目を凝らせばすぐにその姿を視認できる。まるで、『自分たちはここにいますよ』とアピールしているかのように。そのことに気付いているのか気付いていないのか、2人は普通に何かを話し合っていた。

御坂妹「………………」



   ――「あいつらはさして脅威にならない。構ってるだけ時間の無駄だ。目の前に近付いてきた時だけ相手してやりゃいいんだ」――



御坂妹「…………………」

上条の言葉が脳内に響く。
しかし………

御坂妹「目の前に無力な子猫を見つけておきながら、これを取り逃がす空腹の犬がいるでしょうか……」

初春と佐天は、変わらず隙だらけの姿で裏路地にいる。

御坂妹「貴方の意向に逆らった形になりますが、全ては我々の計画完遂のため。今は、たとえ彼女たちであっても障害となる不安要因は排除すべきです……とミサカは心を鬼にします」

彼女は視界の先にいる2人を据え、掲げたバッグの重みを確かめると、静かにその場を離れた。

820 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:48:39.00 ID:HBnTjmI0 [12/14]
その頃、自分たちが狙われているのも露知らず、初春と佐天は相変わらず裏路地の陰にいた。

佐天「じゃあ、そろそろ帰ろっか」

初春「そうですね。もう十分だと思います」

初春は抱えているノートパソコンの画面を見る。

佐天「今日の夕飯はなんだろね」

初春「缶詰や保存食品に決まってるじゃないですか」

佐天「うー…そろそろ普通の食事が恋しくなってきたー」

初春「まだ2日目ですよ?」

彼女たちは踵を返し、路地の奥へと歩いていく。

佐天「帰ったら素振りの練習しよっと」

初春「佐天さん、バットを構える姿がサマになってきましたからねー」

佐天「えっへっへ、どんなもんだい。ま、あの上条当麻と一方通行を倒すためには、努力しないといけないからね!」





「残念ですが、その努力もここまでです」





佐天初春「え?」





御坂妹「……と、ミサカは本気モードに移行します」






822 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:54:20.64 ID:HBnTjmI0 [13/14]
佐天と初春が振り返ったその先……別の路地の細道に、常盤台中学の制服を着た1人の少女がそこにいた。何故か……
  顔  に  ゴ  ー  グ  ル  を  覆  い  、  胸  に  ラ  イ  フ  ル  の  よ  う  な  も  の  を  抱  え  な  が  ら  。

佐天「!!!!!!」

初春「!!!!!!」

暗闇が支配する裏路地の中、その少女――御坂妹は僅かな夕日の明かりを背に、徐々に佐天と初春に近付いてくる。

御坂妹「貴女がたの逃亡生活もここで終わりです」

佐天「な………」

初春「え………」

正体不明の突然の闖入者を前に、佐天と初春が恐怖の色を浮かべる。
そして御坂妹は、佐天と初春の2人を見据えると、ただ一言だけ告げた。





御坂妹「……と、ミサカは狩りの開始をここに宣言します」





ゴーグルの奥の彼女の目が、ギラリと不気味に光った――。

869 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/27(日) 21:35:21.34 ID:CsFSpKQ0 [2/22]
佐天「誰あんた……?」

佐天は目の前に唐突に現れた1人の少女に質問する。
少女――それだけなら佐天も初春も彼女に恐怖を覚えることなどなかったはずだ。
しかし、その少女の顔半分をゴーグルらしきものが覆い、胸に黒光りするライフルのようなものを見せられれば、話は違った。

御坂妹「ミサカはミサカです、とミサカは告げます」

そう言って御坂妹はゴーグルを上に押し上げた。

佐天「!!??」

初春「!!??」

佐天初春「御坂さん!!??」

驚き、佐天と初春は同時に叫ぶ。

御坂妹「……妹です、とミサカは必要最低限の説明だけ付け加えます」

佐天「妹?」

初春「妹って……」

御坂妹「……妹は妹です、とミサカは再度述べます」

佐天「何を………」

御坂妹「何を? 簡単なことです。ミサカは貴女たちの排除に来ました」

佐天初春「!!!!????」

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美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」4

謹慎編

459 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:09:34.15 ID:pGXaOCY0 [2/10]
3日後・ジャッジメント第177支部――。

ガチャリ、と扉が開かれる音がした。
久しぶりに見る支部は、4日前、誘拐犯たちを絶対倒すと4人で意気揚々に出ていった時のままだった。

黒子「………………」

美琴「何よ黒子、入らないの?」

後ろから美琴に促され、黒子は室内に足を踏み入れる。

美琴「フー…4日前のままね」

美琴がソファに腰を降ろすと、黒子はパソコンの電源を入れた。

美琴「……これから、どうすんの?」

黒子「…どう、とは?」

美琴「やっぱり、あいつらのこと調べんの?」

ふと、無言になる室内。彼女たちは、上条からこれ以上「深入りするな」と警告されている。

黒子「……そう…ですわね。調べましょうか…」

美琴「何か気にかかる言い方ね。もしかして嫌なの?」

黒子「……それを言うなら、お姉さまのほうでは?」

黒子は冷めた目で美琴を見る。

美琴「何ですって?」

黒子「いつものお姉さまなら、何度も負けようが、その都度諦めずに障壁に立ち向かっていくはずです。ですが、この3日間、お姉さまから積極的に『誘拐犯を追い詰めよう』といった意志や言葉を聞きませんでしたの。まあ、今回は特例中の特例ですから……」

美琴「何それ? まるで私がもう、やる気がないみたいな言いようじゃない」

黒子の口調に美琴が少し苛立ちを見せた。

黒子「違うのですか?」

美琴「…………違う……わよ」

黒子「嘘をつかないで下さいまし」

美琴「何ですって!?」バチバチッ

460 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:16:36.02 ID:pGXaOCY0 [3/10]
美琴が立ち上がり、電気を発する。黒子は一瞬、ビクと肩を震わせた。

佐天「こんにちわー。初春、復帰しましたよー」

出し抜けに、明るい声がドアの方から響いた。美琴と黒子はそちらに注意を向ける。

初春「ごめんなさい。ご迷惑掛けましたー」

佐天に続き、軽く礼をした初春が部屋に入ってきた。

美琴「佐天さん、初春さん……」

佐天「ん? あれ? どうしたんですか? 何か雰囲気が……」

ピリッとした空気を感じ取ったのか、佐天が疑問を口にする。

黒子「…別に大したことではありませんの。少しお姉さまの意固地に呆れてただけで……」

美琴「はぁ? それを言うならあんたでしょ黒子?」

佐天「な、何かあったんですか?」

妙に喧嘩腰な2人を見て戸惑う佐天。

黒子「お姉さまったら、もうやる気は無いくせに、まだ誘拐犯の調査について続けるつもりですの」

佐天「え…」

美琴「やる気がないのはあんたでしょ。言わなくても態度で分かるわよ」

初春「わっわっわっ」

居たたまれなくなったのか、初春が困惑の声を上げる。

美琴「佐天さんはどうなの?」

佐天「え…?」

美琴が突然、佐天に顔を向け訊ねてきた。

美琴「佐天さんは、誘拐犯…“上条当麻”と一方通行の2人をまだ追い続けたい…?」

佐天「それは……」

461 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:23:43.84 ID:pGXaOCY0 [4/10]
途端に、佐天が俯く。

佐天「……そりゃ、もちろんそうですよ……。あいつらは、固法先輩や泡浮さん、湾内さんを連れ去り殺した張本人ですよ? きっと、他に誘拐された学生たちだって既に殺されてるはずです」
佐天「御坂さんと白井さんはあの2人の知り合いだからまだ信じられないところもあるかもしれませんが、あたしにとっては憎き仇でしかありません。だからあたしは…あの2人を許せません……」

美琴黒子「………………」

佐天「だけど…許せないのと、諦めないのはまた別問題です」

美琴黒子「?」

佐天「……正直なことを言うと、あの2人と対峙してとても怖かったです…。まさか、2人のうちの1人が学園都市最強の超能力者だなんて夢にも思いませんでしたし……それに、実際に戦った上条とか言うあの高校生……。半端ない強さでした。いえ…強い、って言うよりかは凄まじく戦い慣れてるって言うか…。とにかく信じられませんでした。あたしと同じレベル0の無能力者なのに、あそこまで強くなれるなんて……」

佐天の言葉は静かでどこか暗い。

佐天「正直、同じ目に遭っていたらあたしも初春みたいになったと思います」

初春「佐天さん…」

佐天「それほど、あいつらは強かった…怖かった…。もう2度と会いたくないほどに。あたしたち4人なら何でも出来るって思ってたけど、その自信も見事にあっさり打ち砕かれて……」

徐々に佐天の口調は弱々しくなっていく。喋っているうちに3日前の状況が思い出されているようだ。

佐天「正直、御坂さんより強い人たち相手にこれ以上は……」

美琴「………………」

佐天「だから、本当のところを言わせてもらうと……固法先輩たちには悪いけど……もう……」

そこで言葉は途切れた。
一斉に無言になる美琴と黒子。2人が言いたかったことは全て佐天が代弁してくれた。
一気に、室内に諦めの空気が漂う。しかし、1人だけ諦めていない者がその場にいた。




初春「本当にこのまま終わっていいんですか!?」




美琴黒子佐天「!!??」

不意に、か弱くも怒りを混ぜた声が聞こえた。

462 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:31:32.65 ID:pGXaOCY0 [5/10]
初春「本当に、諦められるんですか!?」

美琴「初春さん?」

3人が顔を上げると、初春が真剣な表情をして美琴たちを鋭い目で捉えていた。

初春「ここで諦めて、まだあの人たちの凶行を放っておくんですか? 固法先輩たちのような被害者がまた出るかもしれないのを、むざむざと見過ごすんですか?」

美琴黒子佐天「!!!」

初春「……敵討ち…それも大事かもしれません。だけど、固法先輩たちが望んでいるのは、これ以上自分たちと同じ被害者が出ないことなんじゃないですか!?」

美琴黒子佐天「…………っ」

3人は普段からは考えられない、初春の気迫に呑まれそうになる。

初春「きっと、このままだとあの人たちはまた犯行を重ねます。そうなるとまた、罪も無い学生たちが犠牲になります。それを、固法先輩たちが許すでしょうか!?」
初春「誘拐犯まで辿り着いたのは、私たちしかいないんですよ? 私たちが今、最もあの2人の近いところにいるんですよ? なら、それを活かさない手はないんじゃないんですか!?」

佐天「初春は……怖くないの?」

初春「そりゃ、私だって怖いですよ。思い出すだけでも怖いですよ……」

美琴たちは初春を見つめる。その言葉通り、彼女の足はワナワナと震えているようだった。
しかし、初春は目に涙を溜めながらも続ける。

初春「でも、私はこのまま彼らを看過できません。これ以上、彼らの手によって学園都市の学生たちが被害に遭うなんて考えたくもありません。それ以前に、私は悔しいんです……」
初春「全力で立ち向かった私たちが負けたのは確かに実力差からです。それは認めます。でも、私が悔しいのはあんな、人の命を何とも思っていない人たちに、私たちの信念を馬鹿にされたことです」

美琴「信念……」

初春「確かに私たちには覚悟が足りなかったかもしれません。力も無かったかもしれません。でも、それでも『何があっても誘拐犯たちを追い詰める』って誓った私たちの決心を、あの2人は貶しました」

美琴は思い出す。上条の言葉を。



   ――「………お前らには知る必要のないことだ」――


   ――「……お前らは、“その時”が来るまでジッとしてろ」――


   ――「……レベル0の俺すら倒せないなら、もう2度と関わるな」――



無意識に、美琴の拳が強く握られた。

463 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:38:19.96 ID:pGXaOCY0 [6/10]
初春「確かに、あの2人と私たちの実力の差は歴然です。3日前の戦いがそれを証明しています」

黒子「…それは言われなくても嫌ほど身に染みましたわ…」

佐天「そうだよ。あのレベル0の高校生だって強かったけど、もう1人は学園都市最強のレベル5だよ? そんなの、どうやってもあたしたちに敵いっこないよ…」

負けたショックがいまだ抜け切れていないのか、黒子と佐天は弱音を吐く。

初春「だけど、今は状況が違います。私たちは既に、あの2人の実力を目の当たりにしています。3日前は、彼らがどんな人間で、どんな能力者なのか、どれほどの実力を持っているのか、など全く知らない状況で真っ正面からほとんど策の無いままぶつかっていきました」
初春「じゃあ逆に、彼らを倒す……いえ、倒さなくても、せめて追い詰められる策を考えてみてはどうでしょうか?」

美琴「………………」

黒子「…どうやってですの? 貴女も見たでしょう。あの2人は超能力者としても無能力者としても、反則レベルの力の持ち主です」

初春「ええ、でも…人間である以上、どこかに隙が、弱点が必ずあるはずなんです。あの2人と相まみえたのはほんの僅かな時間ですが、その僅かな時間のうちに、彼らはその手の内を見せています。格下と見下した私たちを徹底的に絶望させるためだけに、自分たちの力を自ら披露しているのです。そこが、彼らの突破口です。そして、その突破口を元に、いくつでも策は立てられるはずです!」

初春の声に覇気が宿る。

初春「確かに彼らは強いです。でも、私たちの実力を見下してること、私たちに手の内を見せたこと。この2点の僅かな隙間に、私たちが彼らを攻略するための道があると思います!!」

美琴「!!!」

黒子佐天「………っ」

黒子と佐天は押し黙る。
自分たちは怖気づき、既に厭戦気分であったと言うのに、一番怖い目に遭わせられたはずの初春は、諦めるどころか、上条と一方通行を再度倒すことを考えていたのだ。
正直なところ、彼女たちは初春の止め処ない強い意志を前に、逃げ腰だった自分を恥じ言葉を失くしていた。

美琴「初春さん…」

初春「はい?」

ずっと黙って聞いていた美琴が口を開いた。

美琴「貴女の言いたいことは分かったわ。でもね、私は同じレベル5の第3位でありながら、たった2つしか序列が離れていない一方通行に一度も勝ったことがないの」
美琴「……あいつとは、色々あって何度か敵対したことあるけど、1回も勝つことが出来なかった……。いえ、傷1つつけることさえ出来なかった……。一方通行の絶望的な実力の前では、私の超電磁砲(レールガン)も赤子の手をひねるようなもの。攻撃することすら躊躇ってしまう。まさにその名に相応しい“最強”の力……」

初春「………………」

美琴「そして、もう1人の上条当麻。こいつは全くの無能力のレベル0だけど、その右手には超能力を何でも打ち消す幻想殺し(イマジンブレイカー)が備わっている。最近は会ってなかったけど、以前までは日常茶飯事に遭遇してたわ」

美琴は遠い日の記憶を思い出すように語る。これからはもう、味わうことが出来ないだろう一晩中追って追いかけられた日々のことを。

美琴「私はあいつの右手の力が信じられなくて、毎回会うたびに攻撃を仕掛けてたけど…その都度、私の攻撃はいとも簡単にかき消されてたわ……」

464 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:46:36.76 ID:pGXaOCY0 [7/10]
美琴「分かる? レベル5第3位の私すら簡単にあしらうあの2人。それほど、あいつらの力は反則なの。それでも初春さん、あいつらに勝てるって断言できる?」

何かの真意を問うように美琴は初春に相対する。

黒子佐天「……………」

初春「出来ません」

美琴「……………」

初春「でも、御坂さん、基本的にその2人とはいつも1人で立ち向かってたんですよね?」

美琴「…? そうだけど?」

初春「なら、可能性はあります。僅かですけど彼らを攻略する方法が見つかるかもしれません」

美琴「どうやって?」

美琴が眉をひそめる。対し、初春は満面の笑みで、至極簡単に、それが当然であるかのように答えた。

初春「だって、私たちがいるじゃないですか」

美琴「!」

初春「私たち4人で1人だって…4人合わされば、何でも出来る、って言いませんでしたか?」

黒子佐天「あ…」

初春「ね? 私たちは戦友であり4人で1つの“超電磁砲(レールガン)組”。一心同体なんです。私たちが力を合せれば、1+1+1+1も、100×100×100×100になる。そうでしたよね、佐天さん?」

佐天「あ…うん。そうそう!」

初春「御坂さん、白井さん、佐天さん。あの2人に完全勝利出来る可能性は100%も無いと思います。ですが、4人で知恵を振り絞ったら1%ぐらいの可能性は出てくるかもしれません。もう1度、考える直すことぐらい出来るんじゃないでしょうか?」

黒子「…………」

佐天「…………」

誰も何も喋ろうとしない。いつもとは雰囲気が違う初春の問いに、彼女たちは逡巡するように黙っていた。
その時だった。

美琴「ふっ……」
美琴「あはははははははははははは」

黒子「お姉さま?」

突如、笑い出す美琴。黒子と佐天がそんな彼女を奇異の目で見る。

美琴「ふふ…ふふふ」

465 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:53:14.48 ID:pGXaOCY0 [8/10]
佐天「ど、どうしたんですか急に?」

美琴「いえ……なーんか、今までウジウジ悩んでた自分が馬鹿馬鹿しくなって…」

佐天「はぁ?」

何かが吹っ切れたように、美琴は明るい調子で話す。

美琴「だって、一番怖い目に遭ったのは初春さんのはずなのに……初春さんが一番あいつらにやり返そうって思ってるんだもん」

初春「えっ? えっ?」

美琴「それが何よ。私はやる気を完璧に無くしちゃってさあ。ホンット、バッカみたい!」

黒子佐天初春「??」

美琴「それで何がレベル5よ。何が超能力者よ。何が超電磁砲(レールガン)よ。笑っちゃうわね」

言いたいことを言い終え、美琴は初春に笑顔を見せた。

美琴「初春さん…ありがとう」

初春「えっ?」

美琴「貴女のお陰で目覚めたわ。……気持ち、切り替えないとね!」

そう言って美琴は初春にウインクする。

初春「え……あ…はい!」

初春もまた、美琴の言葉に笑顔で返した。

美琴「で、黒子と佐天さんはどうすんの?」

黒子佐天「え?」

美琴「別に今ここで抜けても臆病者扱いなんてしないわ。やめるのも、1つの勇気だから。それはそれで賞賛すべきことだわ」

黒子と佐天は顔を見合わせる。しばらくして、彼女たちは笑みを浮かべ合った。

黒子「なーに仰っているのでしょうかお姉さまは」

佐天「今更やめる? そんなかっこ悪いところ見せられませんよ。まだ、あいつらに仕返しもしてないのに」
佐天「初春1人にかっこいい思いはさせないぜ?」ニヤリ

初春と美琴に影響されたのか、黒子と佐天の声に元気が戻る。

初春「佐天さん、白井さん…」

466 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:00:22.02 ID:pGXaOCY0 [9/10]
美琴「じゃあいいわね。改めて言うけど、私たちの敵は、一方通行と上条当麻。一筋縄じゃいかない奴らよ?」
美琴「死ぬ気でないと、逆に痛い目見るわよ」

腰に手を当て、美琴はやる気を取り戻した3人の顔を見る。

黒子「それはもう十分身に染みて承知しておりますわ」

佐天「あいつらにも指摘されたことですしね」

初春「それが分からないで諦めないほど、私たちは馬鹿じゃありません」

美琴「そうね。では、各自まずは“自分が出来ること”を再確認すること。自分の得意分野を振り返るのよ。いいわね?」

黒子と佐天と初春は元気良く頷く。

美琴「じゃあ、超電磁砲(レールガン)組、再始動よ!!!」

美琴黒子佐天初春「おーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!」

儚くも、力強い声を上げる4人。
彼女たちは意気揚々に気合いを入れる。黒子と初春は自分のデスクに着きパソコンのブラウザを開き、佐天は支部に置かれている武器類の物色を始める。美琴は大量のコインを集めるべく、ゲームセンターに向かおうと………




黄泉川「そこまでじゃん!!」




バンッと、勢いよく支部の扉が開かれた。
驚き肩をビクつかせ、美琴たちはそちらの方に注意を向けた。
そこには、アンチスキルの黄泉川と鉄装が2人、険しい顔をして立っていた。

黒子「黄泉川先生?」




黄泉川「ジャッジメント第177支部はただ今をもって、その全ての業務を凍結する」




美琴黒子佐天初春「!!!!!?????」

467 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:07:16.57 ID:pGXaOCY0 [10/10]
初春「ど、どういうことですか先生!!」

信じられない、というように初春が黄泉川に駆け寄る。

黄泉川「どうもこうもない。今まで知った仲と言うことで大目に見てきたが、さすがに限界じゃん。ここ最近のお前らの行動は許容範囲を逸脱している」

黒子「そ、それは……」

黒子たちは困った顔を見せ、どうしよう、と無言で美琴に訴える。
しかし、美琴は黄泉川を見据えたまま何も答えない。

黄泉川「捜査の重要な証拠となる携帯電話を、アンチスキルの許可を得ずに勝手に他の機関に指紋鑑定依頼する。休校措置が出てるにも関わらず、無断で外出する。そして御坂……」

美琴「…」ピクッ

黄泉川「壊滅したスキルアウトの一団のアジトからお前の毛髪が見つかったぞ」

美琴「…………」

黒子佐天初春「!!!」

黄泉川「手口から見て、奴らを殺したのはお前の仕業じゃないんだろうが……何らかの情報を得るために奴らと接触していたな?」

美琴「……………」

黄泉川「どちらにしろ、アンチスキルの中にはお前がスキルアウトを壊滅したと疑ってる連中がいるじゃん」

黄泉川の言葉に、黒子と佐天と初春が声を上げた。

黒子「そ、そんなお姉さまはただ……!!」

佐天「そうです! 御坂さんはスキルアウトを殺してなんかいませんよ!!」

初春「そうだ、聞いてください黄泉川先生! 最近学園都市の学生が誘拐されてる事件で私たち遂に……」

黄泉川「うるさい!!!!」

黒子佐天初春「!!!!!」

黄泉川「キャンキャンキャンキャンうるさいじゃん」

黒子佐天初春「なっ……」

黄泉川「このかしまし娘どもが。ちょっとは静かに出来ないのか」

3人は怒鳴られたショックからか、黄泉川の顔を唖然と見返す。

黄泉川「今まで色んな事件を解決してきたお前らだから見逃してたが……これ以上は看過出来ないじゃん。よって、処分内容が決定するまで、当支部は凍結。お前らは、私の部下たちの監視の下、自宅にて謹慎してもらう」

黒子佐天初春「そんな!!」

468 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:14:30.82 ID:2J65Eag0 [1/5]
黄泉川の言葉を聞き、一斉に彼女たちは抗議の声を上げるが……

黄泉川「黙れ!!」

黒子佐天初春「ひっ」

またも、黄泉川の発する大人特有の気迫に慄く3人。

黄泉川「ジャッジメントだろうが、レベル5だろうが、お前らはまだ子供じゃん」

美琴「…」ピク

黄泉川「ここからは大人の領分。大人には、子供を守る役目がある。お前らの安全を守るためにも、従ってもらうぞ」

黒子「お姉さま…」

佐天「御坂さん…」

初春「御坂さん…」

今にも泣きそうな顔で、3人は美琴を見つめる。無表情で黙っていた美琴はようやく口を開いた。

美琴「みんな、ここは黄泉川先生に従いましょう…」

黒子佐天初春「そんな!」

美琴「耐えることも、1つの戦いよ」

黄泉川「良いことを言うじゃん御坂。強者には我慢も必要不可欠な要素じゃん。…鉄装、この子らを頼む。家まで送り帰して、謹慎生活中の詳細も説明してやってくれ」

鉄装「分かりました。さ、みんな、いつまでも我が儘言ってないで行くわよ」

互いの顔を見ると、4人は不服そうにトボトボと鉄装に従った。

美琴「1つ、あんたたち“大人”に言っておくことがあるけど……」

ふと、美琴が立ち止まり呟いた。

黄泉川「……何だ?」

美琴「“子供”を舐めないことね。“子供”ってのは“大人”の気付かないうちに、成長してるもんなんだから……」

鉄装「……………」

黄泉川「………フン、胸に留めておくじゃん」

それだけ言い残すと、美琴は鉄装に従って部屋を出て行った。

470 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:21:36.55 ID:2J65Eag0 [2/5]
常盤台中学女子寮――。

寮監「ふざけるな!!」

バンッ、と机を思いっきり叩く音が響く。その音に驚き、黒子は肩をビクつかせた。
美琴と黒子の2人は今、寮の管理人室にいる。

寮監「勝手な行動ばかり起こしよって…。周りの迷惑になると考えんのか!?」

寮監は怒りに溢れた顔を美琴と黒子に向ける。

寮監「いくらレベル4とレベル5とはいえ、中身はまだ子供だな」

美琴「(またそれ…)」

黒子「寮監様、どうかお話を聞いてくださいまし。私たちは……」

美琴「無駄よ黒子。どうせ聞いたって信じてくれないし相手にもしてくれない」

黒子が何とか事情を説明したが、横から美琴が止めた。

美琴「学園都市の“大人”ってそういう薄情な人が多いからね」

黒子「お、お姉さま…」

寮監「ああ? 随分と大層なことを言うじゃないか。やはりお前らには再教育が必要なようだな」

寮監の額には青筋が浮かんでいた。

472 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:27:19.50 ID:2J65Eag0 [3/5]
常盤台中学女子寮・某室――。

ベッドに腰掛ける美琴。その感触は自分の部屋のものと同じもので、寝心地は良い。それだけでなく、その部屋は浴室やトイレもついており、美琴が普段暮らす部屋とは大して変わらない。ただし、じめじめしていること以外は。

美琴「部屋の空気が淀んでいるわね」

その部屋に窓と呼べるものはなかった。ついているにはついているのだが、壁の最上部に小さな窓枠が並んでいるだけで、外の景色を眺めたりと窓としての本来の使い方が出来ない。しかも鉄格子まで嵌められており、仮にそれを破壊しても人間1人脱出出来るだけのスペースは無かった。

美琴「さながら牢屋ね」

寮監によると、その部屋は校則を破ったり、寮の規則を守らなかったりする生徒を謹慎させるためにわざわざ作られたものらしい。ここ数年は使われたことはなかったが、今回は特例ということで美琴が閉じ込められることになった。

美琴「あー囚人になった気分」

部屋には通信手段となるような電話やパソコンがなく、暇潰しのために少量の本が置いてあるだけである。もちろん美琴の携帯電話も取り上げられており、部屋の外には黄泉川の部下のアンチスキルの隊員が部屋の見張りについている。
さながらその部屋は陸の孤島だった。

美琴「寮にこんな部屋があったとはねー」

美琴は扉に近付く。そこには、食事の受け渡し用の投函口がついているが、どうやら室内からは開けられないらしい。鍵はついているようだが、対能力者用に簡単には突破されないよう何らかの細工がなされているのは容易に想像出来た。
顔を上げると、天井の隅に監視カメラらしきものまで設置されている。どこか別室で彼女の様子をモニターしているのだろう。
しかし、何より問題なのは、美琴は今自分がいる部屋の場所を知らないことだった。目隠しされ、エレベーターに乗せられやって来たので、そこが何階なのか、そして何号室なのかも分からなかった。故に、

美琴「……破壊して逃げることも出来ないのよね…。壁か天井か床に超電磁砲でもぶっ放して、もしそこが誰かの部屋だったら大変だし、ドアを能力で破壊しても偶然通りかかった誰かを傷つけたら怖いし」

474 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/16(水) 23:34:21.50 ID:2J65Eag0 [4/5]
何より、もし彼女が何らかの抵抗を試みた場合、別の場所で謹慎されている3人の罪が重くなるどころか身の安全を保障できない、と警告されていた。
黄泉川の性格を考えると、後者の言は中身がハッタリの警告だろうが、前者ばかりは実際に嘘とも思えなかった。要するに彼女は、物理的にではなく状況的にがんじがらめにされていた。

美琴「…そういや黒子はどうなったんだろ? 佐天さんや初春さんはどうしてるのかな?」

ボフッとベッドの上に仰向けになる美琴。ふと、3日前の夜のことを思い出す。



  ――「……レベル0の俺すら倒せないなら、もう2度と関わるな」――



美琴「………………」
美琴「…必ず、這い上がってもう1度あんたのところに辿り着いてやるんだから…覚悟しておきなさいよ上条当麻!!」

美琴はグッと握った拳を上げる。

美琴「あんたが私たちのことを何も出来ない子供だって見下してるなら………」





美琴「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!!」






522 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:08:43.62 ID:KfRKkG20 [2/6]
常盤台中学女子寮・管理人室――。

黒子「………………」ジロリ

寮監「そう睨まないでくれるか? これから先、仲良くやる身だ」

黒子「………仲良く? ただの監視のくせに?」

黒子は今、寮の管理人室にいる。美琴は、スキルアウトを壊滅したという疑いが掛かっているため、1人で謹慎用の部屋に閉じ込められているが、黒子の場合、謹慎用の部屋は管理人室だった。
つまり、黒子は見張り役の寮監と当分の間、管理人室で寝食を共にしなければならなかった。

寮監「ふん、言っておくが能力を使用しないことだな。さっきも説明したが、この部屋は女性警備員が監視カメラで交代で絶えず監視している。異常が起これば、寮内の全警備員が速やかに対処できるようなっているからな」

脅すように寮監は黒子に説明する。

黒子「…プライバシーさえ無いのですのね」

寮監「それは私も同じだ。悪いが、この部屋にいる限りは私の指示に従ってもらうからな」

黒子「………………」

黒子は横を向き、1つ溜息を吐いた。

523 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:13:26.57 ID:KfRKkG20 [3/6]
とある寮――。

初春「はぁ……佐天さんたち、どうしてるかな?」

そう言って初春は覗き窓を覗く。警備員が2人、背中を見せて立っているのが見えた。

初春「……この謹慎処分って、いつまで続くんだろう?」
初春「ケータイも没収されちゃったし、電話も使えなくされちゃったし、パソコンも取り上げられちゃった……」
初春「おまけに、監視もされちゃってるんだよね……」

チラッと初春は部屋の一角を見る。取り付けられたばかりの監視カメラが初春をジッと見つめていた。

初春「落ち着くことも出来ないや……」

ベッドに腰を降ろすと、彼女は本棚に置いてあるネットワークセキュリティ関係の本を読み出した。

524 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:17:30.45 ID:KfRKkG20 [4/6]
また別の寮――。

佐天「……………」シャカシャカシャカ

ゴロン

佐天「……………」シャカシャカシャカ

ベッドの上に寝転がりながら、音楽を聴く佐天。

ゴロン

佐天「……………」シャカシャカシャカ

彼女はうっとおしそうに何度も体勢を変える。

佐天「……………」シャカシャカシャカ

佐天「だーもう!! カメラが気になって集中できない!!!」

立ち上がり、天井の隅につけられたカメラを指差し、佐天は抗議の声を上げる。

佐天「見てなさいよ!! 絶対出し抜いてやるんだからぁ!!!」

525 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:22:43.43 ID:KfRKkG20 [5/6]
常盤台中学女子寮・管理人室――。

テレビ『アンチスキルによると今朝、第5学区で発生した爆発事件は、テロの可能性が濃厚なものとして……』

ガチャッ

黒子がボーッとテレビを眺めていると、扉が開かれる音がした。

寮監「テロテロテロ、世知辛くなったもんだな」

黒子「………………」

黒子は横目で寮監を窺う。

テレビ『また、3日前に殺害された田中重工の取締役は、学園都市の上層部と繋がりが深く……』

寮監「そして要人暗殺か。若いうちからこんな物騒なものまじまじと見るんじゃない」ポチッ

机の上に置かれてあったリモコンを取り、寮監はテレビの電源を消した。途端に、部屋の中の静けさが増した。

黒子「……これでも、ジャッジメントですので。情報の取得は欠かせませんの」

寮監「どちらにしろそういった凶悪事件はアンチスキルの担当だ。そして今のお前はジャッジメントも停職中の身。謹慎が解けるまでこの部屋からは出られん。間違っても、私の目を盗んで御坂を助けに行こうと思わないことだな」

黒子「お姉さまがどの部屋にいるのかも分からないのに、そんな馬鹿な真似はしませんわ」

526 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:28:49.86 ID:KfRKkG20 [6/6]
寮監「はぁ……ったく、無愛想だな。一緒の部屋にいるのに。なんなら私を本当の母親と思って甘えてくれてもいいんだぞ?」

黒子「ご冗談がきつすぎますわ」

寮監「はっは、言ってくれる」

コンコン

と、その時、扉をノックする音が響いた。

寮監「はい」

警備員「謹慎中の生徒に面会人です」

寮監がドア越しに返事をすると、見張りについていた警備員がそう告げてきた。

寮監「どうぞ」

ガチャッ

黒子「貴女は……」

開かれた扉の方に注意を向け、黒子は意外な者を見るように僅かに目を大きくした。



婚后「ご機嫌いかが白井さん? ま、そんなおブサイクなお顔では元気とも言えませんわね」



そこには、黒子のよく知る人物――常盤台中学2年の婚后光子が、扇子を口元で扇ぎながら立っていた。

528 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:36:18.59 ID:7YWEbyI0 [1/2]
黒子「……見ない間に毒舌は進化したようですわね婚后さん。で、何のご用かしら?」

いささか顔を引きつらせながら、黒子が訊ねる。

婚后「まーったく、アンチスキルの殿方ったら、私の身体を身体検査と称してベタベタ触るのですもの。嫌になりますわね」

黒子「…まあ、私が謹慎中の身ですから仕方がありませんわ」

婚后はチラッと寮監のほうを見る。寮監は椅子に座って雑誌を読んでいる。
次いで、婚后は顔を動かさずに視線だけをグルリと部屋中に巡らせた。

婚后「………………」

一点で彼女の視線が止まる。それは、天井の隅に向けられていた。

黒子「で、何しにいらっしゃったのかしら? 私を蔑みでも?」

黒子が言葉を掛けると、それに気付いた婚后の表情が一転した。

婚后「……泡浮さんと湾内さんの件については、お世話になりましたわね」

黒子「!」

婚后「何でも、無茶をしてまで、あの子たちの行方を追おうとしたとか……」
婚后「アンチスキルの黄泉川という方からお聞きしたのですが、あの2人が既に手遅れな可能性もあるとか……」

黒子は寮監の方を一瞥した。友達との面会ということで気を利かしてくれているのか、寮監は黙ったまま雑誌を読み続けている。

婚后「確定の情報ではないので、公表は控えているようですが……。でも、私はあの2人がまた戻ってくると信じていますわ」

黒子「……………」

529 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:42:26.03 ID:7YWEbyI0 [2/2]
婚后の表情はいつもの高飛車な彼女のものとは信じられないほど、暗い。と言うのも、婚后は泡浮と湾内の2人と親しく、最近ではよく一緒にいることが多かったのだ。

黒子「………………」

黒子は婚后から顔を背ける。
彼女は、泡浮や湾内がどのような末路を辿ったのかを2人を誘拐した犯人の口から直接聞いている。もちろん今ここで、2人の顛末を語ることも出来たが、僅かでも希望を抱いている婚后の様子を見ると、出来なかった。

婚后「どうかなされましたか?」

ギュッと黒子の手が握られているのを見て、婚后が不審に思ったのか扇子越しに見つめ訊ねてきた。

黒子「…いえ、別に……」

婚后「ハァ……まったく。張り合いがありませんわね。いつまでもここにいてもつまりませんから、そろそろお暇させて頂きますわ」

黒子「え?」

そう言って、婚后は立ち上がる。

婚后「では寮監様。失礼いたしますわ」

寮監「うむ。分かった」

ガチャッ

ドアを開けると、婚后は1度立ち止まった。

婚后「白井さん。私も諦めませんから、貴女も元気になってくださいね」

黒子「………え…」

バタン

どこか辛そうな笑顔を浮かべたまま、婚后は部屋を出て行った。

黒子「………………」

残された黒子は、握っていた拳に更に力を込めた。

530 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:49:52.23 ID:sZZFADU0
その頃、とある場所――。

上条「……………」

一方通行「おい」

上条「………………」

一方通行「おい!」

上条「…………………」

一方通行「聞いてンのか上条?」

上条「え? あ、何だ?」

ようやく反応があったことを確かめると、一方通行はやれやれ、と言うように溜息を吐いた。

一方通行「ったく……それでリーダーの自覚あンのかねェ?」

上条「……悪い。んでどうした? 何か用か?」

我に返った上条が一方通行の顔を見上げる。
すると、一方通行は顎をしゃくった。その先にいたのは御坂妹だった。



御坂妹「……………………」





531 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 22:56:52.25 ID:HbEzq6Y0 [1/2]
一方通行「2人っきりで話したいンだとよ」

上条「そ、そうなのか……。入れよ、御坂妹」

一方通行「じゃあ俺はお邪魔かもしれねェからなァ、出て行くぜェ」

ニヤリと笑みを浮かべ、一方通行は部屋から出て行った。

上条「で、どうした?」

上条が訊ねると、ほとんど無表情で彼の顔を見つめていた御坂妹が口を開いた。

御坂妹「ここ最近、貴方が物思いに耽っていることが多かったので、とミサカは不安を率直に述べます」

上条「そうか? 気のせいじゃねぇか?」

そう言って上条は立ち上がり、コーヒーを淹れた紙コップを御坂妹に手渡した。

御坂妹「………………ズズズ」

一口だけ仰ぐと、御坂妹は紙コップを両手に持ち上条を見据えた。

御坂妹「お姉さまのことを……考えていらっしゃるのですね? とミサカはズバッと真正面から斬り込みます」

バシャア、と上条は持っていた紙コップの中身をぶちまけた。

上条「やっべ、零しちゃったよ。あはは…何だよいきなりお前はもう…」

慌てたように上条は床に広がった液体を見やる。

御坂妹「図星ですね、とミサカは追い討ちを掛けます」

上条「…………布巾はどこにあったかな…?」

目にした雑巾を手に、上条は床に零れたコーヒーを拭いていく。

御坂妹「ま、あれほど突き放せば逆に気になるのも無理はないでしょうね。それにミサカたちがやっていることもやっていることですし……」

532 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 23:03:24.14 ID:HbEzq6Y0 [2/2]
御坂妹「残念ですが、お姉さまはあれで諦めるとは思えませんよ。むしろ逆に、貴方が宿敵なら立ち向かってくるでしょうね。わざわざ貴方が出て行かなくても良かったのに、とミサカは今更ながら意見を唱えてみます」

上条「……………」

コーヒーを啜る音に混じり、御坂妹の絶え間ない言葉の数々が後ろから上条の背中を貫く。
それでも上条は、彼女に背中を見せながらひたすら床を拭いている。

御坂妹「わざわざ貴方が非難の的になる必要はないのに。それとも、修羅の日々の合間に、お姉さまの顔が見たかったのですか? …と、ミサカは多少の嫉妬を覚えつつも切り込んでみます」

やがて、上条は立ち上がる。

上条「………俺が一方通行と一緒に、あいつらの前に出て行ったのは、あいつら自身の身の丈を分からせるためだ」

御坂妹「…嘘ばっかり。貴方も、そんなことされてもお姉さまが諦めない人だって最初から分かってるくせに、とミサカは見透かしてみます」

上条「………どっちでもいいさ。またあいつらがでしゃばって来たら、何度でも完膚無きまでに叩きのめすまで。あいつにしたって…何度もやっても無駄だと分かっているのに、いつまでも友達を巻き込んだまま愚行を続けるほど馬鹿じゃない」

御坂妹「あのお姉さまに、恨まれたままになるのですよ? 既に1人、大事な方を失くしている貴方にしてみればお姉さまは……」

上条「関係ねぇよそんなこと…」

そう言って上条は棚に両手をかけ、目の前にある壁を見つめる。

上条「目的を完遂するためには、俺たちは修羅道に落ちる必要があるんだよ」

534 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/17(木) 23:10:32.99 ID:4Ycj0Xc0 [1/2]
どこか悲しそうな声を窺わせる上条。それを見て御坂妹は飲み干したコーヒーカップを机に置き、上条に近付くと、そのまま彼の身体にピタリと寄り添い、上条の肩にそっと頭を預けた。

御坂妹「貴方は、多くのものを背負い過ぎています…。それだけは初めて出会った時と変わっていませんね」

上条「……………」

御坂妹「ミサカも、貴方と最後まで人生を共にすると誓った身……。お姉さまには敵わないかもしれませんが、せめて貴方の苦しみや悲しみをミサカにも分けてください…と、ミサカは呟きます」

上条「……………」

2人はそのまま、しばらく無言の時を過ごす。

御坂妹「………………」

上条「………………」

しかし…

打ち止め「ねー10032号! いつもと同じように寝る前に本読んでー! とミサカはミサカはお願いしてみたり!」

唐突に、その場にそぐわない明るい子供の声が聞こえてきた。
振り返ると、入り口のところに打ち止めが笑顔で立っていた。

御坂妹「チッ…まったく空気の読めないガキはこれだから……とミサカは愚痴りながらも上位個体の指示に従います」

打ち止め「早く早くー!」

御坂妹「はいはい、今行きます今行きます、とミサカは嫌がりつつも何故かいつも言う通りにしてしまう自分に多少呆れ返ります」

御坂妹の手をとりながら、打ち止めは部屋を出て行った。
それを笑顔で見送っていた上条の表情はやがて、徐々に暗くなっていった。

上条「………………」

576 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/19(土) 22:19:49.81 ID:89/qlxo0 [2/3]
数日後・常盤台中学女子寮・食堂――。

昼食時、広大な面積を持つ豪華絢爛な食堂に、常盤台中学の女子生徒たちがずらりとテーブルに並んで食事をとっていた。
さすがはお嬢様学校といったところか、昼食のメニューも豪勢で、ご飯を口に運ぶ生徒たちの動きも繊細で優雅だ。

婚后「ふー……」

その中の1人、婚后が突如顔を蒼くして溜息を吐いた。

生徒「あら? どうなされたのですか婚后さん? 食事が進んでいませんわよ?」

彼女を心配した横の女子生徒が声を掛ける。

婚后「ええ。少しばかり気分が悪くて……」

生徒「まあそれは大変ですわね。寮監様に途中退席を願い出てみては如何ですか?」

婚后「そうさせてもらいますわ…」

額に手を当て、気持ち悪そうな顔で婚后は寮監の元へ歩いていく。
それに気付いた寮監が眉をひそめて婚后に訊ねた。

寮監「なんだ? 食事中だぞ? 無断で歩くな」

婚后「いえ……少々、気分が悪くて食欲が無くて……。出来るなら部屋で休ませて頂きたいのですが……?」

婚后の声は弱々しく、今にも吐き出して倒れてしまいそうだった。

579 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/19(土) 22:26:32.67 ID:89/qlxo0 [3/3]
寮監「そうなのか…。なら仕方ないな。いいだろう。部屋に戻ってよし」

婚后「ありがとうございますわ」フラフラ

そう言って、頭を抱えたまま婚后は食堂を出て行く。
彼女はそのまま、廊下を曲がり、食堂が見えなくなった時点で物陰にサッと隠れた。

婚后「…………………」ニヤリ

婚后の様子が一変する。

婚后「……フン、この常盤台の婚后光子に掛かればちょろいものですわね」

扇子を口元に、婚后は笑う。
明らかにそれは、病人とは思えない健康な人間のものだった。

婚后「毎日健康に気を使っているこの私の体調がそう易々と不調になるはずがないでしょう。そう……私が途中退席した本当の目的は…っと。来ましたわね」ササッ

婚后は身を引っ込める。すると、彼女の目の前を、食器を乗せたお盆を持った1人の女性が通り過ぎていった。
姿形こそ、普通のスーツを着た若い女性だったが、婚后には違和感だらけに写っていた。

婚后「ふふん。大方、男性で無ければ怪しまれずに済むと考えたのでしょうが甘いですわね。あの歩き方、事件の際によく見かけるアンチスキルの方の訓練されたそれですわ。私の眼力は欺けませんわよ」

どや顔で婚后はスーツ姿の女性を観察する。

婚后「ここ最近毎日、違った女性が食事の時間に食堂に姿を現しては生徒たちと一緒に食事もせずにお盆だけを持って出て行っていますが……ただの来客や賓客がそんな怪しい行動をするはずがないでしょう」

彼女はお盆を持った女性の跡を密かに尾ける。
相手もプロだと思われるので、あくまで慎重に進む。

婚后「ずばり、あの方の正体はアンチスキルに所属する女性隊員、と言ったところでしょうか」

583 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/19(土) 22:34:12.95 ID:nG9oKnM0 [1/4]
婚后は、黒子が謹慎されていた寮監の部屋を思い出す。その時、彼女は、天井の隅にカメラのようなものがついているのを確認している。

婚后「管理人室にあったカメラは、白井さんの室内での行動を監視するために取り付けられたもの。恐らく、寮内のどこかで女性隊員が絶えずモニターを窺っているのでしょう。あの女性はそのうちの1人でしょうね……」

サササと婚后は足音を立てないよう気をつけながら、スーツ姿の女性を追う。

婚后「この女子寮で男性の、しかも装甲服を着たアンチスキルの方が無闇やたらに動き回れば、目立つ上に警戒されますからね」

美琴が謹慎を受けている部屋番号は秘密にされている。それは、彼女が外部の人間と接触を取らせないようにするための処置だ。
だが、美琴の仲間による不穏な動きを想定しての寮内の巡回や、美琴への食事の運搬など、アンチスキルはどうしても寮内を頻繁に動き回る必要性が出てきてしまう。しかし、装甲服姿の男性警備員が寮内をうろついていれば、それだけで生徒の目を引き、それが原因で美琴がいる部屋の場所を特定される恐れも出てくるのだ。

婚后「だから一般人を装った女性隊員を使っているのですわね」

そう言った理由から、男性警備員は美琴と黒子が謹慎中の部屋の見張りだけに役割を固定させて、寮内での巡回や食事の運搬は、監視カメラのモニターを見張っている女性警備員が交代で担当しているのだった。

婚后「この寮に派遣されてきた警備員は全て男性、と聞いていますが、それも私たち生徒の目を欺いて御坂さんたちの監視をスムーズに行うための嘘でしょうね……」

婚后は数m先のスーツ姿の女性の背中をキッと見据える。

婚后「ですが、毎日毎日、見たこともない女性が食堂から食事をお盆に乗せて持って行ったら、さすがにこの私が気付きますわよ」

彼女の表情は真剣そのものだ。

婚后「大方、生徒たちが食事に夢中になっていると思って油断していたのでしょうが、私の目はごまかせまんわ」

584 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/19(土) 22:41:25.93 ID:nG9oKnM0 [2/4]
絶対に気付かれないよう注意しながら、婚后は物陰から物陰へ移って、アンチスキルと思われる女性の後を追う。
と、フロアを3階ほど登ったところで婚后は少し足を止めた。

婚后「ここは……普段から立ち入りを控えるように寮監様から厳命されているフロアのはず…。まあ、こんなじめじめした薄暗い場所など、誰も近付かないのですが……」

彼女が視線を向けると、階段からフロアに繋がる道の真ん中に、コーンバーによって繋がれたロードコーンが置かれていた。コーンバーの真ん中には紙が貼り付けられており『立ち入り禁止』と書かれている。

婚后「…ふん、もし誰かがこのフロアまで上がってきた時のための保険策といったところでしょうか。ですが、何者であってもこの常盤台の婚后光子を通せんぼすることなど出来ませんわよ」

彼女は簡単にロードコーンの横を素通りする。
短い廊下を数mほど進み、そして……

婚后「見つけましたわ!」

角から少し顔を覗かせ、廊下を窺う婚后。
見ると、十数m先の向かいの壁のドアの前に装甲服姿のアンチスキルが2人立っていた。

女性「御坂への昼食です」

アンチスキル「ご苦労」

スーツ姿の女性に声を掛けられると、2人のアンチスキルが敬礼し、それぞれ横に移動した。
スーツ姿の女性がコンコンとドアを叩く。

女性「御坂さん。昼食を持ってきたわ」

婚后「(ちゃんと部屋の位置を記憶するのよ婚后光子…。私の手に、御坂さんや白井さんの命運が掛かっているのだから)」

スーツ姿の女性は、ドアの中央部分に設置された投函口を開け、お盆をそのまま中に入れる。
室内でお盆が受け取られたことを確認すると、彼女は投函口を閉め一歩下がった。

婚后「……さて、用は済みましたわ。早いところ撤収しましょう」

腕時計を見る。あと5分ほどで昼食後の点呼が始まる。点呼が終われば、恐らく寮監は婚后の様子を見るため、真っ先に彼女の部屋へ訪れるだろう。その時に、婚后の姿が無ければ怪しまれてしまう。
足音を立てぬよう気をつけながら、婚后はその場を離れていった。

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美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」3

邂逅編

242 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:43:14.31 ID:iWKmmLw0 [2/6]
学園都市某所。学生は滅多に寄り付かないような郊外の寂れたエリアに、その資材置き場はあった。
物陰に隠れ、目の前の空間を見つめる美琴、黒子、佐天、初春の4人。
資材置き場は広く、イメージとしては体育館ぐらいの大きさがあった。
しかし、逆に言えばその中央に立っているだけで目立ってしまい、狙われた者は不意を衝かれることになる。

佐天「……来ませんね」

黒子「現在時刻23時50分。私たちが来てから既に20分は経っていますわ」

目的の人物がなかなか姿を現さないことに焦りを感じているのか、佐天と黒子がそう言う。

美琴「待ち合わせ時刻は0時よ。だけど、油断しちゃダメ。広場の隅々までよく目を通して」

初春「…緊張しますね……」

彼女たちの鼓動と共に、時間はただ過ぎていく。

23時55分…

23時57分…

23時59分…

そして、遂にその時刻が訪れた。



美琴「午前0時よ」



4人の顔が強張る。

黒子「……………」ゴクリ

佐天「……………」ドキドキ

初春「……………」ドキドキ

静寂がその場を支配する。
それぞれ、目につく場所に視線を流す彼女たち。しかし、何者かが現れる気配はまるで無い。

243 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:50:36.38 ID:iWKmmLw0 [3/6]
5分後――。

佐天「…ぜ、全然来ないですね…」

静寂に耐えられない、と言うように佐天が言葉を紡ぐ。

黒子「5分ぐらいの遅延は想定内ですわ」

初春「でも、もしこのまま来なかったら…」

黒子はそう言うが、初春は懸念を口にする。
美琴はそんな3人を前に、自分に言い聞かせるように声を上げる。

美琴「来る! 絶対来るわ!!」

が、しかし、それから25分経っても誰1人その場に姿を現れなかった。
4人の間に、無駄足だったのでは、という空気が流れ始める。美琴はそんな空気を感じ取り、冷や汗を流す。

美琴「(ここで来なかったら……私たちのこれまでの行動は全て無駄になる…そんなの嫌。来るなら来なさい…)」

美琴は、より気合いを入れて目の前の広場を見据えた。

245 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:55:40.10 ID:iWKmmLw0 [4/6]
そんな彼女たちを、鷹の目のように監視する1つの視線があるとは、この時は誰も気付かなかった。
美琴たちを注視する鷹の目が、ヘッドセットのイヤホンに声を吹き込む。

『付近のサーチが終了しました。“子猫4匹”以外に、ジャッジメントやアンチスキルといった人影は見当たりません』

報告を受けた男は、ニヤリと口元を歪めた。

246 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:58:34.13 ID:iWKmmLw0 [5/6]
その頃、美琴たちの焦りも限界にまで来ていた。

黒子「………………」

佐天「………………」

初春「………………」

美琴「………………」

誰も、何も喋ろうとしない。否、喋ることが出来なかったのかもしれない。
やはり、無駄骨だったか、という落胆と絶望が彼女たちの心を支配し始めたとき、ソレは訪れた。

247 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:01:44.34 ID:iWKmmLw0 [6/6]






「あァれェ? こンな寂れた場所に似ても似つかない、4匹の子猫ちゃンたちが紛れこンでるぜェ〜」









250 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:09:22.63 ID:NwFQ4G60 [1/9]
神経を逆撫でするような、しかしその言葉1つだけで人間を殺せそうな、鋭い声が背後から美琴たちを貫いた。

美琴黒子佐天初春「!!!!!!!!!!!!!!!」

一斉に、4人は後ろを振り返る。しかし、声の主の姿は見えない。




「いけねェなァ……ここは子猫が遊びに来るような場所じゃねェンだ」




暗闇から再び、殺気に包まれたような声が届く。そのあまりの強大過ぎる威圧感に、美琴たちは声を忘れるほど戦慄していた。

美琴「だ……誰よ!」

何とか美琴が言葉を搾り出す。

251 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:15:38.47 ID:NwFQ4G60 [2/9]
やがて、コツコツと誰かが歩いてくる足音に気付くと、美琴は身体中に電気を纏い始めた。
同様に、黒子も太腿の金属矢に手を添える。佐天はバットを握る手に力を込め、初春もまた前方に意識を集中させた。



「おいおい、つれねェなァ……誰とはねェだろ。あンなに激しくヤり合った仲じゃねェか」



突風に吹かれたような殺気が4人を襲う。
美琴はそんな男の言葉と声を聞き、心の奥底に眠っていたはずの恐怖が蘇るような感覚を覚えた。

美琴「(この声……どこかで……)」

美琴が思考を巡らす暇も無く、遂に、その男は姿を現した。


「よォ、久しぶりだな超電磁砲(レールガン)」


ニヤリと不気味な笑みを口元に刻んだその男。
美琴はその男を知っていた。嫌と言うほど知り尽くしていた。
彼女は驚愕と恐怖が混合した視線を向ける。
そこに立っていたのは、紛れもなく、学園都市最強の超能力者“一方通行(アクセラレータ)”だった。





「………一方通行(アクセラレータ)……!?」







253 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:22:34.17 ID:NwFQ4G60 [3/9]
思わず出た言葉はそれだった。寧ろ、それ以外の言葉は出てこなかったと言える。
彼女にとって、あまりにも予想外の人物が唐突に目の前に出現したからだ。

黒子「お、お姉さま、知り合いですの!?(この殺気と威圧、只者じゃありませんわ!)」

続いて黒子も何とか声を絞り出す。それを皮切りに、佐天も初春もまたようやく声を上げた。

佐天「この人、能力者なんですか!? 御坂さん!?」

初春「この人の能力値は!? レベル3!? それともレベル4とか!?」

一斉に、喋り出す彼女たち。しかし、その声はどこか震えている。
それは、目の前で獰猛な殺気と威圧感を放つ一方通行によって生み出された動揺とも言えた。

一方通行「あン? 何だ超電磁砲、俺のこと教えてなかったのかよ…」

美琴「…………っ…」

夢でも幻でもない。今、自分の目の前に立つのはあの学園都市最強の超能力者・一方通行(アクセラレータ)だ。
しかも、見たところ彼は以前ついていた杖も、能力を制御するチョーカー型の電極バッテリーも首に巻いていない。どこからどう見てもそれは健康な人間そのもの。間違いない。彼は今、完全回復して最盛期の力を取り戻している。
美琴の脳裏に、彼の人智を越えた無慈悲なまでの強さが蘇ってくる。

一方通行「いや、無理か。そもそもここに来るのが俺だと分かってたンなら、ダチをわざわざ連れてくる危険冒すわけねェもンなァ」

佐天「み、御坂さん! この人の能力は何なんですか!?」

黒子「レベルの位は!? お姉さま!!」

焦りを隠しきれず、彼女たちは一斉に混乱する。

美琴「……こいつの能力は……ベクトル操作…」

初春「ベクトル……操作? 聞いたことありません。こ、この人の序列は!?」

信じられない、という表情でありながらも、美琴は何とか説明を口にする。
黒子たちは、自分がよく知るレベル5の美琴がここまで慄いている姿に不安を覚える。

美琴「第1位よ」

黒子佐天初春「え………」

美琴「こいつは……学園都市の230万もの頂点に立つ超能力者、最強のレベル5、一方通行(アクセラレータ)よ!!」

258 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:29:35.18 ID:NwFQ4G60 [4/9]
美琴は、不安を搾り出すように大声を張り上げた。

黒子「……超能力者……」

佐天「最強……」

初春「……レベル5?」

初めて幽霊を見るように、彼女たちは恐る恐る一方通行の顔を見た。

一方通行「よく言えましたァ! 超電磁砲には花丸をあげねェとな!!」ニヤァ

誰かの歯がカタカタ鳴った。誰かの震えが肌越しに伝わってくる気がした。無理もない。今、目の前にいるのは、学園都市の頂点に立つ人間なのだから。
そんな一方通行を前に彼女たちは今、まるでライオンと対峙した子猫のように小さくなっていた。

美琴「……して…」

一方通行「あン?」

美琴「どうして!? …どうして固法先輩を、泡浮さんを、湾内さんを殺したのよ!!!!」

恐怖と焦りを隠しつつ、美琴は必死に搾り出した言葉で一方通行に詰問していた。
それを黒子と佐天と初春が不安げに見つめる。

美琴「……あんた…改心したんじゃなかったの……。一般人に危害は加えないんじゃなかったの? ……どうして、何の罪も無い人たちを……」

語尾が弱くなる。そんな美琴を無表情で見ていた一方通行は口を開いた。

一方通行「俺に聞くなよ」

美琴「何ですって……?」ギリッ

思わず、と言うように美琴が一方通行を睨む。
そんな彼女の行動など気にする素振りも見せず、一方通行は答える。

一方通行「首謀者は俺じゃねェ」

美琴「え?」

一方「だろ?  三  下  ァ  」

ニヤリと再び一方通行が笑った。
彼の視線を辿り、美琴たちが振り返る。
そして、1つの声が暗闇の奥から聞こえた。

259 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:36:41.40 ID:NwFQ4G60 [5/9]






「……久しぶりだな……“ビリビリ”」








265 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:44:51.27 ID:NwFQ4G60 [6/9]
美琴は目を丸くする。
そこに現れたもう1人の男。その姿を視認して、彼女は言葉を失った。





「警告したのに……何で来ちまったんだよ、お前は……」





一方通行とは違い、殺気も、威圧感も無く、寧ろどこか悲しそうな表情と声をした男は、美琴を見つめそう言った。

黒子「貴方は……!!」

ようやくその姿を確認し、黒子もまた驚きの声を上げた。

佐天「だ……誰?」

初春「知ってるんですか、2人とも!?」

新たに現れた男を前に、また別の懸念と恐怖を抱いた佐天と初春が訊ねていた。

美琴「あ……あ……何で…何で…あんたが……」

「…………………」

美琴の声が震え出す。目を瞑るもう1人の男。

「こんな形で、お前と会いたくなかったのに……」

美琴「何であんたがここにいるのよ!!!」


美琴「上条当麻!!!!」

上条「御坂………」


美琴の目の前に立ったもう1人の男――上条当麻は、美琴の声を受け悲しそうな表情で彼女を見つめた――。

268 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:51:29.89 ID:NwFQ4G60 [7/9]
美琴と黒子と佐天と初春の4人を挟み撃ちにするかのように、一方通行と上条は暗闇に立つ。
彼女たちは小さく寄り添って事の成り行きに身を任せるしかなかった。

上条「わざわざ警告したはずだろ、電話まで掛けて……」

美琴黒子佐天初春「!!!!!?????」

黒子「では……貴方が、あの電話の主……」

佐天「じゃあ、こいつらが……こいつらが、固法先輩たちを殺した犯人なんだ……っ!!」

初春「どうして、あんなことを!?」

憎しみが篭った目で3人は上条を睨み据える。
対して、上条は素っ気無く言う。

上条「答える義務は無い」

黒子「……っ!!」

佐天「ふざけないでよ!!」

初春「何て血も涙も無い人なんですか……」

上条「御坂」

美琴「……何よ!?」

上条は黒子たちの言を無視するかのように美琴に顔を向ける。
美琴は、失望と驚愕と絶望が混ざったような表情で目に涙を溜め上条を睨み返した。

上条「今すぐこいつらを連れて帰れ。そして、言ったようにもう2度とお前たちはこの件に関わるな」

美琴「……勝手なことを…」





「ほーら、だからお姉さまは来るって言ったでしょ? ってミサカはミサカは勝ち誇った顔をしてみる!」





美琴「え……?」

277 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:58:43.17 ID:NwFQ4G60 [8/9]
一方通行「うっせェよ。つーか何でお前までついてきたンだよ」

「だぁってぇー」

その場に似合わないような、子供の声が響いた。
上条に気を取られていた美琴が再び一方通行の方を振り返ると、確かにそこには10歳ぐらいの1人の女の子が立っていた。

美琴「……あんた……打ち止め(ラストオーダー)?」

目を丸くし、美琴は眼前の女の子に訊ねていた。

打ち止め「こんばんわお姉さま! …とお姉さまのお友達! ってミサカはミサカは元気に挨拶してみる!」

一方通行の手を握りながら、『打ち止め(ラストオーダー)』と呼ばれた女の子がペコと子供らしい可愛いお辞儀をする。

佐天「……誰?……御坂さんに似てるけど…」

黒子「…お姉さまの妹さまですか?」

初春「あ、貴女…もしかして、アホ毛ちゃん……?」

美琴と瓜二つな女の子の顔を見、3人が各々思っていることを口にする。

美琴「………っ……打ち止め……どうしてあんたまで……」

打ち止め「? どうして、ってミサカがこの人と一緒にいたら悪いかな? ってミサカはミサカは疑問を口にしてみる」

美琴「だって……あんた、こいつらが何やったのか分かってるの?」

自分の末妹のような存在である打ち止めに、美琴は衝撃を受けたような顔で質す。

打ち止め「それはもちろん! モガガ」

一方通行「もう黙ってろお前。ややこしィから」

打ち止め「ブー……あなたってばいじわるぅ」

ふてくされる打ち止め。そんな彼女を片手1つであしらいながら、一方通行は美琴たちに顔を向ける。

一方通行「どうも、オマエらには脅しも通用しねェようだな。スキルアウトの一団壊滅させただけじゃ、刺激足りなかったみてェだな」

美琴「……あんた!」

一方通行「あァ、俺がやったぜ。情報漏らしてたンだからその制裁は受けねェとなァ!」
一方通行「それがオマエらへの脅しにもなると思って、敢えてこっちから警告せずに放置してたンだが……まさかそれでもノコノコこんなところまで来るとは思わなかったぜ。危機感無さ過ぎ!」

美琴「……何て事を…」

美琴は唇を噛む。

278 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 23:05:50.69 ID:NwFQ4G60 [9/9]
上条「だからと言ってわざわざ殺す必要は無かったろ、一方通行」

一方通行「はァ? だからお前は甘いンだよ上条」
一方通行「アイツら、スキルアウトにしてみれば筋の通った連中なンだろうが、仕事のためには無実の一般人を殺すようなこともしてたンだぜ? 本人たちは雇用主の依頼だからと、生きるためだと自分の意思に反して渋々やってたみたいだが、どっちにしろやってることは外道そのものだろ。そンなクズどもが死ンだところで誰も困らねェだろ。ま、今の俺らもアイツらと変わンねェのかもしれねェがなァ?」チラッ

美琴黒子佐天初春「!」

一瞬、ニヤリと笑って一方通行が美琴たちを一瞥した。

打ち止め「でも上条さんの言うことも一理あると思う、ってミサカはミサカは主張してみたり」

一方通行「あーうっせェうっせェ」

上条「やれやれ」

自分たちを無視し、頭越しに行われる会話を前に美琴たちは胸の中で何かが湧き上がってくる感覚を覚えた。

佐天「(……何なのこいつら…。人の友達を殺しておいて、こんな余裕綽々で…。ムカつく……)」
佐天「(こんな奴らに……固法先輩は……泡浮さんは……湾内さんは……)」

ギリッと唇を噛み締め、佐天はバットを強く握り締める。

佐天「ふ………」

初春「佐天さん?」

佐天「ふざけんなああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

美琴黒子初春「佐天さん!!!」

美琴たちが止める間もなく、佐天はバットを持って一方通行に突進していった。

美琴「ダメ佐天さん!! そいつだけは!!!」

282 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/13(日) 23:13:04.78 ID:DmLQYHI0 [1/2]
バットを構え突進してくる佐天を見、一方通行は待ってました、と言わんばかりに不気味な笑みを刻んだ。
佐天が思いっきり振ったバットが一方通行の顔を狙う。しかし……

佐天「きゃあああああああ!!!」

その瞬間、バットは大きく弧を描き弾き飛ばされ、佐天もまたすごい衝撃と共に後ろへ転倒した。
どのようにベクトルの向きを操ったのか、佐天に怪我はない。と言うよりも、攻撃を加える直前に何らかのベクトル操作で佐天を押し戻したようにも見えた。が、どの道それは佐天を気遣っての行動ではなかった。初っ端から遊び相手が簡単に減ってしまうのはつまらない。美琴には、一方通行がそんなことを楽しげに言いたそうに見えた。

一方通行「いいぜいいぜ、始めようぜェ!!!」

顔に傷を1つもつけることなく、一方通行は足元にあった木材に手を伸ばす。

美琴「!!!」

佐天に危険が及ぶのを察知した美琴は、飛び出し、一方通行の足元へ電気を飛ばした。

黒子「お姉さま!!」

初春「佐天さん! 御坂さん!!」

黒子と初春が無意識に体勢を起こす。
一方通行の足元に散乱していた砂塵が小爆発を起こし、それが辺りに撒き散らせる。

上条「!! チッ……!」

戦闘が始まってしまった。その状況に対して舌打ちするように、上条は砂煙に顔を覆いつつ、足を前へ踏み出した。


こうして、美琴・黒子・佐天・初春 vs 上条・一方通行の戦いの火蓋が切って落とされた――。

345 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/14(月) 22:29:02.91 ID:pAArqkA0 [2/5]
誰がどこにいるのか判別もつかない砂煙の中、黒子は目を細めながらも状況を把握しようと努めた。

黒子「…あの学園都市第1位……とてつもない殺気と威圧でしたわ。お姉さまは一体どこに……」

ふと、彼女は砂煙の中に美琴の後姿を確認した。

黒子「あ、お姉さま!」

次の瞬間、黒子の頭上をバックステップで美琴が、それを追うように一方通行が飛び跳ねていった。

黒子「お姉さま!……ハッ!?」

美琴を追おうとしたのも束の間、黒子は背後に何者かの気配を感じ取り咄嗟に振り返った。
砂煙の中に1人の影が浮かび上がる。
やがて砂煙が晴れていくと、その人間は姿を現した。

上条「………………」

無言でその場に立ち、黒子を見つめていたのは上条だった。
黒子はその顔を見ているうちに、怒りが込み上げそして叫んでいた。

黒子「どうして固法先輩たちを殺しましたの!?」

上条「………………」

しかし、上条は何も答えない。

黒子「何か答えたらどうですの!?」

怒りに任せ黒子は突進し、上条の腹部に手を触れる。

黒子「(空中5mほど頭上にテレポートして、地面に落下させてやりますわ!)」

しかし……

黒子「あら……?」

唖然とする黒子。
上条はうんともすんとも言わず、その場に立ち止まっている。

黒子「何故……ハッ!」

上条「忘れたのかよ白井?  俺  の  右  手  に  何  が  あ  る  の  か  」

変わらず、低い声のトーンでそう呟いた上条の顔を見、黒子は悪寒を覚えた。

黒子「(まずい……っ!)」

347 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/14(月) 22:37:07.11 ID:pAArqkA0 [3/5]
一端、上条から離れようと1歩後ろへ下がろうとする黒子だったが、その余裕が与えられる間は無かった。

ギシィ!!

素早い動きで上条が両手を器用に使って黒子の腕の関節を背後から極めた。

黒子「くっ…! 不覚……!!」

上条「………お前ら…」

上条が何かを言いかけた時だった。

佐天「うおおおおおおおおおおおお!!! 白井さんから手を離せええええええええええええ!!!!」

バットを手にした佐天が上条に向かって暗闇から飛び出してきた。

佐天「おりゃあああああ!!!」

バットを振る佐天。
しかし上条はそれをヒラッとかわしてみせる。

佐天「!? 逃げるな!!」

佐天は続けてバットを右に、左に、上から、下から、あらゆる方向から力のまま振り抜く。

佐天「これでも! キャパシティダウンを破壊したバットなんだ!! 食らったら、一たまりもないはず!!」

ブンッブンッと佐天はバットを振りまわすが、上条は黒子の腕を極めながらも全ての攻撃を難なく回避する。
ずば抜けた反射神経だった。

佐天「クソ! 何で当たらない!?」

上条「それはなあ……」

勢い余って、佐天は前方につんのめりそうになる。

上条「街の不良なんて、大多数で凶器を振り回してくるからだよ」

佐天「!!!」

上条「対して君の場合は…脇も締まってない、軌道が単調、バットの重さにつられてる、で簡単に避けられるんだよ」

佐天「……くっそおおおおおおおおおお!!!!」

転倒しそうな身体を何とか保ち、佐天は強く地面を踏む。そのままの勢いで、彼女はバットを右に薙いだ。

348 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/14(月) 22:45:03.02 ID:pAArqkA0 [4/5]
上条「おっと……」

しかし決定打にはならず、バットは上条の髪の毛にほんの少しだけ触れると虚空を引き裂いた。

佐天「きゃっ!」

思いっきり振り切った挙句、上条にかわされたせいか、佐天は派手に仰向きに倒れてしまった。

黒子「佐天さん!」

上条「おいおい」

手の力が緩まったのか、黒子は上条の身体から解き放されてしまう。
急いで彼女は倒れた佐天に駆け寄った。

黒子「大丈夫ですか!?」

佐天「へ、平気です……。それよりあいつ、何の能力なんですか?」

黒子「あの方は全くの無能力……レベル0ですわ…」

起き上がる佐天を手伝いながら、黒子は何とか言葉を紡ぐ。

佐天「は? レベル0?」

黒子「ええ…。しかしそれでありながら、右手には超能力を何でも打ち消す力を備えています」

佐天「ど、どういう……」

黒子「さっき、私が彼を飛ばそうとした時、手で触れてもテレポートできなかったでしょう? それも右手の力です。一切の攻撃能力は持っていませんが、最強の防衛能力ですわ」

そう言って黒子は上条を見据える。

佐天「それでも……レベル0?」

黒子「ええ」

佐天「(…でも、さっきの身のこなし、只者じゃなかった…。いくらそんな不思議な能力があっても、レベル0の無能力であそこまで強くなれるの?)」

上条「話は済んだかよ?」

敢えて手も出さず、ずっと2人の様子を見ていた上条が静かに問う。
共に肩を貸し合って立ち上がった黒子と佐天は上条を睨み据えた。

上条「…………………」

349 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/14(月) 22:53:34.41 ID:pAArqkA0 [5/5]
その頃、美琴の方は、一方通行との戦闘がヒートアップしていた。

一方通行「どうした逃げるだけかァ!?」

電気を発しながらも、美琴は軽快なバックステップとジャンプで一方通行の追撃から何とか逃れていた。

美琴「えやぁ!!!」

バチバチバチッ!!!!

耐えかねたのたか、美琴が一方通行に向かって雷撃の槍を飛ばす。
しかし、一方通行がそれを右手の甲で弾くと一気に霧散してしまった。

一方通行「オマエ、俺の身体がどうなってンのか知ってて攻撃してンのか? 自爆しちまうぞ。まあ上条のような幻想殺しがあれば話は別だけどなァ。それとも木原神拳でもやってみっか?」

ニヤニヤと一方通行は言う。彼の言うことはもっともで本来なら一方通行の身体に当たった雷撃の槍は跳ね返って美琴に向かうはずだった。だが、そうならなかったのは一方通行が雷撃の槍を右手の甲で弾いたからだ。しかし彼は、自分が傷つく恐れがあるから弾いたのでなく、美琴が傷つく恐れがあるから弾いただけなのだ。
もちろんそれは美琴を思っての行動、とは言い難くどちらかと言えば一方通行にとって戦闘があっけなく終了するのがつまらなかったためだ。

美琴「………うりゃああ!!」

次いで、美琴は砂鉄を集めて作った剣を振り回す。が、しかし、一方通行はそれを掴むと彼女の身体ごと、空中へ飛ばしてしまう。10mほど一直線に吹き飛び、やがて美琴は地面に落下した。

美琴「……くっ…」

ポケットに手を突っ込んだまま、一方通行は美琴に接近する。

一方通行「おィおィ、こっちは本気を出してないどころかまだ何1つ攻撃してないンだぜ? そんな早くくたばってもらっても、つまらねェだろう?」

楽しそうに、一方通行は笑う。

美琴「…ハァ…ハァ…ハァ…」

一方通行「撃てよ」

美琴「…ハァ…ハァ…」

美琴は一方通行を睨む。

一方通行「お前の切り札……超電磁砲(レールガン)、俺に撃ってみろよ」

美琴「くっ……」

一方通行「やってみろよほらァ!! 状況は何も改善しねェぞ!! ひゃははははははは!!!!」

351 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/14(月) 23:00:37.97 ID:UWYkmp60 [1/10]
2つの戦闘がまさにワンサイドゲームな展開で行われる中、少し離れた所で打ち止めはその様子をじっくりと眺めていた。

打ち止め「ハァ……なんかつまんない、ってミサカはミサカは愚痴ってみる」
打ち止め「完全復活した一方通行とは言え、お姉さまならダメージ1つぐらい負わせられると思ったけど劣勢だね。お姉さまの戦闘を目の前で見られるって思って楽しみにしてついてきちゃったけど、期待して損した感じ、ってミサカはミサカは冷めた目で溜息を吐いてみる」

チラッと打ち止めは逆方向に視線を移す。

打ち止め「あっちもダメだね。あのツインテールのお姉ちゃん、レベル4って話だからちょっとは期待したけど全然ダメ。それと、あの黒髪のお姉ちゃんはバット持ってるから能力者じゃないのかな?」

打ち止めはその場で上体を僅かに反らし、退屈そうに頭上を仰ぐ。

打ち止め「つまんないつまんないつまんないつまんないつまんなぁ〜い、ってミサカはミサカは更に愚痴ってみる」
打ち止め「これじゃあ勝負にもなってないよ。あーもう、あの2人遊んでないで早く終わってくれないかな? 退屈過ぎる〜、ってミサカはミサカはもう他人事」

打ち止めはそう言って、あくびをした。

354 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/14(月) 23:06:30.61 ID:UWYkmp60 [2/10]
美琴「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

ポケットからコインを取り出す美琴。視線の先の一方通行の姿を捉えると、容赦なく彼女は超電磁砲(レールガン)を発射した。



ズッオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!



その轟音に、その場にいた者たちが咄嗟にそちらに視線を寄越す。

黒子「お姉さま!」

佐天「御坂さん!?」

上条「…………………」

打ち止め「………………」

美琴「ハァ…ハァ…ハァ……」

目の前の空間を見つめる美琴。超電磁砲によって巻き起こされた砂煙が彼女の視界を覆う。
超電磁砲を放ったと同時に、咄嗟に痛む身体を出来るだけ動かし回避行動を取った美琴だったが、超電磁砲が跳ね返ってくることはなかった。
その理由として考えられる可能性は2つ。1つは、先程のように戦闘を終わらせたくない一方通行がわざと手を出し超電磁砲を霧散させた可能性。そしてもう1つは、超電磁砲が一方通行に直撃した可能性………。




一方通行「こンなもンか」




美琴「!!!!????」

目を細めていた美琴の前に、突如、一方通行がミサイルのように猛スピードで突進してきた。
回避する間もなく、美琴は一方通行の蹴りによって地面を転がった。
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美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」2

事件編

18 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:14:14.12 ID:Vf2bu9U0 [2/2]
ジャッジメント第177支部――。

美琴「っ…」

黒子「我慢して下さいましお姉さま。かすり傷で済んだのが不幸中の幸いでしたわ」

哀しそうな表情を見せる黒子に腕を見せ、美琴は応急処置を受ける。

初春「……御坂さんが無事で、本当に良かったです…グスッ」

美琴「泣かないでよ初春さん…。私はもう大丈夫だから、ね…」

初春「はい……」

支部には、黒子と初春がおり、美琴負傷の報を聞くと、佐天も馳せ参じて来た。

佐天「あ、御坂さん、ニュースやってますよ!」

美琴「え?」

4人は部屋に備え付けられたテレビに目を向ける。

『今日午後4時13分頃、喫茶店『ファニーランド』で発生した爆発事件についての続報です。
アンチスキルによると、現場は学区内に住む能力者たちの女子学生たちの憩いの場所となっており、死傷者は少なくとも10人は越す模様です。
現場で採取された形跡から見るに、アンチスキルはこの爆発は意図的に起こされたものとして捜査を進めており、同部隊隊長は、この件について『能力者たちが多数集まる「ファニーランド」を狙った爆発テロとして、警戒レベルを上げると……』

佐天「…また、テロですね」

黒子「今回も能力者が狙われてますの……」

初春「これで、今月に入って5件目…。しかも被害者の中には無能力者もいることから、無差別テロであるのは明らか…。もう嫌です、こんなの……」

佐天と黒子と初春が、元気の無い声で話す。

20 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:24:06.07 ID:mH9WXJw0 [1/4]
黒子「テロだけでなく、学園都市の要人暗殺も行われてますの。それどころか一昨日には、レベル4の学生が何者かによって殺害されています」

美琴「やっぱり…本気で今、学園都市ってやばい状況にあるのね…。こんなんじゃ、うかうか外出も出来ないわ……」

美琴は握り締めた手を見つめた。

美琴「……………………」

そして彼女は、先程自分が巻き込まれた爆発現場の様子を思い出す。

美琴「(私……あの時、何も出来なかった……。大勢の人たちが苦しみ、死にそうだったのに……)」

彼女は悔しそうに顔を歪める。

美琴「(何がレベル5よ……何が『超電磁砲(レールガン)』よ。傷ついた人も助けられない超能力者に何の意味があるの!?)」

美琴の葛藤に気付いていないのか、黒子たち3人は会話を続ける。

黒子「ネット上では、『学園都市崩壊のXデーはもう間近』などとも噂されてますの…」

初春「何で……こんなことに……私たちはただ、普通に生活してただけなのに……」

黒子「学園都市の外では、私たちを『普通』ではない、『化け物』と称している方々や団体が増え始めてますの。彼らによれば、私たちは脅威であり、排除すべき対象とのことですわ」

佐天「確か、『神に背く者には鉄槌を』って言って、色んな国の色んな秘密結社の工作員が学園都市に潜り込んでる、って噂も聞きます。もしかしたら、一連の爆発事件はその人たちによるものなんじゃ…」

黒子「可能性は充分有り得ますわね。どちらにしろ、我々『風紀委員(ジャッジメント)』や『警備員(アンチスキル)』が全力で対策を行っているので、すぐに事態は沈静化しますわ」

美琴「なら、いいけどね……」

黒子佐天初春「…………………」

美琴の言葉を機に、4人は一斉に黙りこくった。

21 名前:>>19あれぐらいなら全然大丈夫です[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:32:31.43 ID:mH9WXJw0 [2/4]
初春「ところで、固法先輩遅いですね……。確かお昼頃から、アンチスキルとの合同捜査に向かっていたはずですけど…」

黒子「そう言えばそうですわね。連絡もありませんし……」

Prrrrrrrrrrr.....

その時、支部の電話が唐突に鳴り始めた。

佐天「あ、電話だ」

黒子「固法先輩ですわきっと。どれどれ」

ガチャッ

黒子「はい、もしもし。こちらジャッジメント第177支部の白井と申し……」
黒子「………えっ!?」
黒子「…そ、それは本当ですの??」

突然、黒子の表情が一変した。

美琴佐天初春「???」

黒子「………そんな…」
黒子「………何で…」

幽霊でも見たような口調で、黒子は言葉を搾り出す。

美琴「何? どうしたの黒子?」

初春「白井さん?」

佐天「何かあったんですか?」

22 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 22:40:21.52 ID:mH9WXJw0 [3/4]
美琴たちが心配して声を掛ける。

黒子「分かりましたわ……。これから向かいますの…」

トーンを低くし、黒子は震える手で電話を切った。

美琴「ちょっと黒子? 何があったのか言いなさいよ」

顔面が蒼白になった黒子の顔を見、美琴は異常な空気を察知する。
そして、黒子は静かに、一言だけ呟いた。

黒子「……固法先輩が……」

美琴「?」





黒子「…死にましたの……」





美琴佐天初春「……………え?」

衝撃的な事実が、4人を襲った。
そして、彼女たちはこの時知る由もなかった。これが、地獄の日々の始まりを告げる合図だったことに――。

31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:52:46.22 ID:0/g74E.0 [2/12]
第7学区・とある病院――。

美琴「先生!」

カエル医者「やあ君たちか」

黒子「固法先輩は? どこですの!?」

初春「死んだなんて嘘ですよね!?」

佐天「だって昨日まであんなに元気にしてたんですよ!!」

懇願するような表情を浮かべ、美琴たちは固法の検死を担当したカエル顔の医者に詰め寄っていた。

カエル医者「残念ながら……」

カエル顔の医者がまるで自分の身内が死んだように静かに答える。

黒子佐天初春「そんな……!!」

初春「…先輩……固法先輩………やだぁ……グスッ…ヒグッ…」

佐天「初春、大丈夫…?」

初春「だって……何で……急に…」
初春「わあああああああああああああああああああん」

耐え切れなくなったのか、初春が泣き始めた。

佐天「初春……グスッ…泣いちゃ、駄目だよ……グスッ」

佐天も初春に影響されたのか声に嗚咽が混じる。

黒子「……どうして…こんなことに…」

カエル医者「……………」

美琴「先生…」

蛙医者「ん?」

美琴「ならせめて……固法先輩の遺体と……会わせてください…」

黒子「お姉さま…」

美琴「最後に、最後だけでも……今までお世話になったお礼を言っておきたいんです……」

美琴はカエル顔の医者を見据えて頼み込む。

33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:59:42.48 ID:0/g74E.0 [3/12]
黒子「そうですわ……。私も同じです。先生、お願いしますわ」

佐天「あたしからもお願いします!」
佐天「ね、初春も、そうでしょ?」

初春「ヒグッ……ヒグヒグッ…はい…グスッ…お願い…じまず…」

4人は目に涙を浮かべてカエル医者に懇願する。
無言でそれを見ていたカエル医者だったが、やがて彼は口を開いた。

カエル医者「……それは無理なんだよ……」

美琴黒子佐天初春「何で!!??」

カエル顔の医者の言葉に美琴たちは抗議にも似た声を上げた。

カエル医者「僕としても会わせてあげたいんだがね?」

美琴「じゃあ、どうして!!」

カエル医者「“物理的に”、不可能なんだよ…」

黒子「物理的?」

一言聞いただけでは、カエル顔の医者が何を言っているのか分からなかった。
彼も美琴たちの表情を見てそれを汲み取ったのか、ゆっくりと言葉を付け足した。

カエル医者「ああ……何故なら彼女は…」





カエル医者「爆死したからね」





美琴黒子佐天初春「え………」

美琴たちの脳内が真っ白になった。

35 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:06:27.61 ID:0/g74E.0 [4/12]
ジャッジメント第177支部――。

初春「グスッ…ヒグッ…ヒッグヒッグ…」

美琴「……………」

黒子「……………」

佐天「……………」

静寂な室内に、初春の嗚咽だけがこだまする。
黒子は手にした固法の遺品である歪んだ眼鏡を見つめていた。

佐天「……まさか、固法先輩も爆発現場にいたなんて…」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カエル医者「固法くんは、あの爆発に巻き込まれて死んだんだ」

美琴「そんな……!!」

カエル顔の医者は美琴たちから視線を外し、事の顛末を打ち明けた。

カエル医者「たまたま、テログループの手掛かりを求めてあの喫茶店にいたとの話みたいでね?」

美琴「じゃあ…私と同時刻に店内にいたんだ」

カエル医者「その可能性が高いね?」

美琴「………………何で…」

言葉を失くす美琴。それを横目で窺い、黒子が訊ねた。

黒子「では、固法先輩の遺体は……」

36 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:10:29.21 ID:0/g74E.0 [5/12]
カエル医者「無い…と言えば、嘘になるね?」

黒子「え?」

カエル医者「正確にはある。だが、“ある”だけだ」

佐天「先生、それってどう言う……」

初めは、カエル顔の医者の使う日本語がおかしいのかと思った。
だが、次に彼が発した言葉を聞き、美琴たちは衝撃を受けた。



カエル医者「君たちが見るもんじゃない」



美琴黒子佐天初春「!!!!!!!???????」

カエル医者「これは現場に残ってた彼女のものだ。君たちが持っておくんだ。いいね?」

そう言ってカエル顔の医者は懐からある物を取り出し、黒子に渡した。

黒子「これは……固法先輩の眼鏡…」

初春「固法先輩……」ガクッ

急に、初春がその場に崩れ落ちた。

佐天「初春! どうしたの!? 初春!!」

佐天が初春の身体をゆする。

カエル医者「ショックで気絶したようだね? ちょっと病院のベッドを借りるといい」

黒子「……ではお言葉に甘えさせてもらいますわ」

佐天「……じゃ、あたしが運びます。よいしょ……」

佐天が初春をおぶる。
美琴はその光景を見て、口中に一言呟いていた。

美琴「(固法……先輩……)」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




37 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:16:42.58 ID:0/g74E.0 [6/12]
美琴「私が……あの時、店内の固法先輩に気付いていれば、あるいは…」

悔しそうに、美琴が話す。

黒子「お姉さま、もう過ぎたことです。今更仮定の話をしても仕方がありませんわ」

佐天「白井さん……」

美琴「黒子…過ぎたことだなんてよく言えるわね」

黒子「私だって…グズッ……本当は…ヒグッ…どうしようも…グスッ」

黒子の言葉に嗚咽が混じり始めた。

御坂「黒子……」

佐天「やめてよ白井さんまで…。みんなして、泣かないでよ…。初春もさあ、いい加減泣き止んで……」

初春「だって…グスッ…だってだって…ヒグッ」

佐天「何言ってるの初春……グスッ…あれ?…何でだろ……あたしまで…グスッ」

部屋に3人分の嗚咽が響く。

美琴「何よ、佐天さんまで……」

佐天「そういう御坂さんだって……グジュッ」

美琴「え?あれ? …何でだろ?」

美琴は自分の目元に触れた。小さな水滴が指についた。

美琴「う……う……」

黒子「おねえ……さま…まで…グスッ…」

佐天「……みんな…ヒグッ…泣き虫…なんですね…グスッ」

初春「……御坂…さん…グスッ」

美琴黒子佐天初春「わああああああああああああああああああああん」

限界だった。彼女たちも所詮は普通の女子中学生でしかなく、感情を制御する能力までは持ち合わせていなかったのだ。
顔を見合い、4人は互いを慰めるように寄り添って泣きじゃくっていた。

38 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:20:10.05 ID:0/g74E.0 [7/12]

『臨時ニュースです!! 先程、第6学区で大きな爆発が……』

『昨夜、自宅で殺害された科学者の服に付着した髪の毛から…』

『見て下さい!! あの煙! まだ避難を終えていない生徒たちが中に……っ!!』

『カメラを止めろ!! ここはアンチスキル指定立ち入り区域だ!!』

『現在、一部の学区でスキルアウトたちによる暴動が起きているとの情報が…』


39 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:26:21.96 ID:0/g74E.0 [8/12]
翌日・ジャッジメント第177支部――。

初春「……………」ウツラウツラ

部屋の一角にあるスチールデスク。そこで初春は、電源が点いたままのパソコンを前にして座っていた。
頭がリズムを刻むように上下に揺れる。

初春「はっ!」
初春「……ダメダメ」ブンブン

目下、初春は眠気と格闘していた。

初春「……………」ウツラウツラ

ピトッ

初春「ひゃう!」

初春の目が大きく開かれる。どうやら冷たい何かを頬っぺたに押し付けられたようだった。

初春「あ、佐天さん…」

佐天「大丈夫? ちょっと休んだら?」

初春が顔を向けると、缶コーヒーを持った佐天がそこに立っていた。
佐天は初春に缶コーヒーを渡す。

初春「ありがとうございます。でも、今は休んでる暇は無いですから……」

ゴクゴクと初春は行儀よく缶をあおる。

佐天「そうだよね……」
佐天「白井さんは大丈夫?」

佐天は後ろに顔を向けた。黒子がデスクに座りパソコンのキーボートを叩いていた。

黒子「当たり前です。徹夜など、ジャッジメントにとって日常茶飯事ですわ」
黒子「しかし眠いことも確か……ふぁーぁ…」

佐天「白井さんも缶コーヒー、飲みます?」

黒子「ではお言葉に甘えて」

佐天「はい」

黒子に缶コーヒーを渡す佐天。

佐天「無理は駄目ですよ」

40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:33:00.25 ID:0/g74E.0 [9/12]
黒子「ありがとうございます」

佐天「それで、どうです? 何か新しいこと見つかりました?」

黒子「見つかるも何も……所詮はジャッジメントに回ってくる情報なんて限られてますの」
黒子「一連のテロ騒動や要人暗殺に関する重要情報はアンチスキルの方で一元化して管理されてますし、私たちが触れられる情報は僅か」
黒子「一応、管轄区内として、昨日の『ファニーランド』での捜査は我々に任されてる部分は大きいですが」

佐天「で、テログループの尻尾とか掴めました?」

黒子「ダメですわ。せいぜい分かるのは爆発現場で死亡が確認された学生たちの直前の行動や友人関係のみ。しかし、やはり彼女たちから犯人の足跡を辿るのは無理ですわね」

佐天「そっかー。じゃあ初春は?」

初春「zzzzz......」

佐天「あらら、寝ちゃってる」

黒子「初春も徹夜でしたからね」

佐天「みんな頑張ってるんですね」

黒子「…殉職した固法先輩を殺した犯人を見つけるまでは、絶対諦めませんの。それは恐らく初春も同じはず」

佐天「悔しいですよね……」

黒子「ええ、とても……」

一時、静寂が漂った。

『新しい情報が入ってきました』

その時、テレビからニュースを報せるアナウンサーの声が聞こてきえた。

佐天黒子「!!」

『第7学区の学生2名が行方不明となった事件について、捜査を進めていたアンチスキルは事件発生から4日後の今日、更なる情報を求めて学生2名の顔写真を公開しました。2日前の朝、『友達が帰らない』という通報を受け、アンチスキルが捜査を開始していましたが……』

佐天「今度は誘拐事件ですか…っていうか、最近誘拐事件もかなりの頻度で増えてますよね……」
佐天「何かもう学園都市、世紀末状態じゃないですか……」

黒子「上から小耳に挟んだ話ですが、現在、学園都市には各国の工作員だけでなく、特殊部隊、秘密結社、新興宗教団体などが紛れ込んでまるで戦国時代の様相を示しているそうです。噂では、『内戦勃発』も間近だとか…」

佐天「あたしたちは、どうなるんでしょうか?…正直、恐くて仕方ありません」

黒子「大丈夫ですわ。学園都市がそう易々と崩壊することは有り得ません。所詮、他国の工作員だろうが、軍隊だろうが、こちらには能力者が五万といるのですから」

佐天「……なら、いいんですけど」

41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:40:40.58 ID:0/g74E.0 [10/12]
とある公園――。

美琴「………まただ。またあいつが来ない」

自動販売機の側のベンチに腰掛け、缶ジュースを飲む美琴。

美琴「ここ1週間、あいつの顔全然見ないわね。もしかして避けられてんのかしら?」

美琴は空を仰ぎ見、溜息を吐き出す。

美琴「いい天気ねー。こうしてると、平和なんだけどねー」

顔を正面に戻し、続きを飲もうとした美琴の目にある人物の姿が映った。

美琴「あれは……!!」




インデックス「………とうま……」トボトボ

公園の一角を、彼女は暗い表情のまま歩いていた。頭の中に10万3000冊の魔導書を記憶するイギリス清教会の修道女――インデックスだった。

美琴「ちょっとあんた!!」

と、突然インデックスは声を掛けられた。

インデックス「え?」
インデックス「うわ、短髪!」

急に美琴が現れたためか、お化けを目撃したように驚くインデックス。

美琴「うわ、って何ようわって」

インデックス「………」ダッ

何故かインデックスが、慌てたように逃げ出そうとする。

美琴「あ、こら逃げるな!」

ガシッ

咄嗟に、インデックスの腕を掴む美琴。

42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:47:29.73 ID:0/g74E.0 [11/12]
インデックス「は、離すんだよ短髪」

ニャ〜

インデックスの胸の中の三毛猫、スフィンクスが鳴いた。

美琴「ちょっとあんたに聞きたいことがあるのよ」

インデックス「知らないんだよ知らないんだよ。とうまは何も関わってないんだよ」

美琴「はあ?」

インデックス「はっ!」

しまった、と言うように口を両手で塞ぐインデックス。

美琴「あんた、あいつ…上条当麻がどこにいるか知らない? 近頃見かけないんだけど」

インデックス「私は何も答えちゃいけないんだよ」

美琴「何言ってんの?」

必死に何やら弁解するインデックスに対し、美琴は怪訝な顔をする。

ニャ〜

インデックス「わっ、駄目だよスフィンクス。黙ってるんだよ!」

ニャ〜

インデックス「じゃ、じゃあ私はこれで行くから!」

美琴「え、ちょっと待ちなさいよ」

インデックス「短髪も気をつけるんだよ」

美琴「え?」

それだけ残すと、インデックスは走り去っていった。

美琴「あ、逃げた……」
美琴「もう、逃げ足速いわね…」

美琴は呆然と彼女の姿を見送る。

43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 22:55:05.34 ID:0/g74E.0 [12/12]
夕方・裏通り――。

泡浮「随分遅くなってしまいましたわね」

湾内「早く寮へ戻りませんと」

夕日が落ち始めた頃、常盤台中学に通う2人のお嬢さま――泡浮と湾内は寮への帰路に着いていた。

泡浮「にしても、本当に学園都市はどうなってしまうのかしら?」

湾内「恐いですわね」

不安を口にする彼女たち。

ズッズウウウウウウウン!!!!!

その時、遠くの方から何かが爆発する音が聞こえてきた。

湾内「今のは……」

泡浮「とても遠くに感じられましたが、またしてもどこかで事件かテロが起こったのでは……」

2人は顔を見合わせると無言になる。

湾内「………………」

泡浮「………………」

湾内「…急ぎましょう」

泡浮「ええ」

小走りになる2人。そう広くもない道を彼女たちは2人して駆ける。
辺りに人はおらず、先程の爆発もあってか、彼女たちの焦燥感は増しつつあった。

泡浮湾内「!!??」

急に立ち止まる2人。

泡浮「…あ、あれは…?」

湾内「……何でしょう? 嫌な予感がします。迂回した方が良さそうでは?」

2人の視線の先に、夕日を背にして立っている1人の男がいる。
ポケットに手を突っ込んだその男の顔は逆光になっていて判然としないが、どうやら湾内と泡浮の2人をじっくり見つめているように見えた。

泡浮湾内「……………」ゾクッ

44 名前:少し休憩[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:02:51.64 ID:JOGmnjk0
2人の脳裏に、最近頻発中の行方不明事件が蘇る。
視線をゆっくりと交わした2人は踵を返し、急いで別の路地へ逃げ込んだ。

泡浮「ハァハァハァ……」

湾内「ハァハァハァ……」

泡浮湾内「!!!!!」

また立ち止まる2人。
彼女たちが恐怖の視線を注いだその先には、先程とはまた別だが1人の男が立っていた。
その男の背後の空は既に暗くなっていて、顔は判然としない。

泡浮湾内「………っ」

寄り添った2人が来た道を引き返そうと後ろを振り向いたとき、彼女たちの目の前に、また男が1人立っていた。

泡浮湾内「!!!!」

恐らくは、先程の通りで待ち伏せしていた男だ。

泡浮「いや……」

湾内「た、助けてください……」

泡浮と湾内は弱々しく言葉を搾り出す。
しかし、2人の男たちは彼女たちを挟み撃ちにするように徐々に距離を縮めてくる。

泡浮「通報……しますわよ!」

携帯電話を取り出す泡浮。
後ろから迫ってきた男が泡浮の携帯電話を奪おうと触れた。

泡浮「やめて!!」

咄嗟に泡浮は手を引っ込める。

湾内「来ないで……」

男たちとの距離は既に半径2メートル以内。
泡浮と湾内は前から迫ってきた男に視線を向けた。

男の口元が、不気味に歪んだ――。

46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:37:50.30 ID:hR4QmeM0 [1/3]
時間は少し遡り…ジャッジメント某支部――。
連日のテロや殺人・誘拐事件などの影響を受けてか、室内は普段より何倍もの学生たちで溢れていた。

「本部には連絡取れたのか!? アンチスキルは何て言ってるんだ? 全然、情報が回ってこないじゃないか!!」

「スキルアウトの暴動だぁ? 知るかそんなこと、他の支部へ回せ!!」

怒号が飛び交い、熱気が充満する。元々、学区内でも比較的施設が大きかったためか、現在ここに詰めているジャッジメントの学生の数は50人近くに昇っていた。

「支部長〜!」

「あ?」

1人の女子生徒が慌てて支部長と呼ばれた男の下に駆け寄ってきた。彼女の手には1つの箱が収められている。

「何だそりゃ?」

「たった今、アンチスキルの方がこちらの物を届けに来ました〜」

「箱?」

「何か、昨日起きた放火事件の現場に捨ててあったものらしいです。アンチスキルでは調査優先レベルが低いとのことでこちらに回してきたとか」

「チッ、俺たちはアンチスキルの残飯処理じゃないってのに……。しかも忙しいこの時に。もういい。俺が調べとくからお前は仕事に戻れ」

「分かりました」

女子生徒が机に戻っていくのを見届け、支部長は箱に手をかけた。

「一体、今更何だってんだ。………って、何だコリャ?」

箱の中には、粘土状のものと時刻を刻むデジタル式の表示盤が入っていた。

「………時計?」

何か、様子がおかしい。しかし、今こうしている間にも、表示盤に刻まれた数字は「00:10」……「00:09」と1つずつ数字を減らしていっている。

「!!!!!!!!」

嫌な予感が、支部長の頭を過ぎった。

「お……

カッ!!!!!!!!!!!!!!!

箱を運んできた女子生徒に声を掛けようとする時間すら許されなかった。
直後、ジャッジメント支部は一瞬で炎と爆音に包まれた。

48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:44:34.84 ID:hR4QmeM0 [2/3]
ジャッジメント第177支部――。

黒子「何ですって? ジャッジメントの支部が狙われた!?」

初春「ええっ??」

電話を手にし、大声で聞き返す黒子。
初春が驚嘆の声を上げる。

黒子「……分かりましたの。気をつけますわ」ガチャン

黒子が電話を切る。

初春「白井さん!!」

不安な表情を浮かべ、初春が立ち上がる。

黒子「今言った通りですわ。隣の学区にある支部で爆発がありましたわ」

初春「そんな……っ!!」

佐天「怪我人は、いたんですか?」

黒子「まだ具体的なことは分かりませんが、死傷者は50名近くになるとのことですわ」

初春「……酷い……何て、酷いことを……」

ショックの余り、初春は無意識に椅子に腰を降ろした。

佐天「何でジャッジメントの支部が狙われたんですか?」

黒子「分かりませんが、恐らくまたどこかのテログループがやったのでしょう。あの支部は高レベルの能力者がたくさん在籍していましたから……」

佐天「またですか…。みんな無関係なのに…。どうしてこんなことに……」

黒子「とにかく、こちらも不審物には注意せよ、とのことですわ」

佐天「どういう意味です? もしかしてこの支部も爆発されるってこと?」

初春「ええっ!! そ、そんな……」

黒子「落ち着きなさいな初春。そう連続してジャッジメントの支部を狙うと、警戒されるのはテログループも分かっているはずです。彼らもそういった点は注意するでしょう」
黒子「取り敢えず、最寄りのアンチスキルの部隊が用意出来次第、ジャッジメントの全支部に速やかに警護につくことが決まりましたの。ですから、我々の業務に支障はありませんわ」

佐天「でもまさか、ジャッジメントの支部まで狙われるなんて……。これで学生の被害も一気に増えましたね」

黒子「犯人たちももっと過激になるでしょうね。もしかすれば近いうち、学園都市内の全校に休校措置が出されるかもしれませんわ。そうなる前に事が収まればいいのですが……」

49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/08(火) 23:51:30.06 ID:hR4QmeM0 [3/3]
初春「……………」

佐天「初春、元気出しなよ。落ち込んでても仕方がないよ」

初春「だって、無実の人が……それも私たちとそう年齢も変わらない人たちが死んだんですよ……。こんなの…酷すぎるじゃないですか」
初春「それに、この学園都市にいる限り……いつ私たちも同じ目に遭うか分からない……。ジャッジメントの私たちなら特に……。嫌ですよそんなの……逃げる場所も無いのに…」

佐天は初春の手を見る。彼女の手は僅かに震えているようだった。

佐天「……………」

黒子「……………」

美琴「みんないるー?」

出し抜けに後ろから声を掛けられ、3人は肩を少しビクつかせた。

黒子「あ、あらお姉さまでしたの…」

美琴「何よ? 私だと何かダメだった?」

黒子「い、いえ別に。それで、どうかしましたの?」

美琴「実は……」

黒子「あら、貴女がたは……」

泡浮「こんにちわ」

湾内「お邪魔します」

佐天「あ、湾内さんと泡浮さんだー」

黒子たちが美琴の背後を見ると、そこには泡浮と湾内が行儀よく立っていた。

初春「何かあったんですか?」

美琴「うん、実はちょっとねー」
美琴「ほら、ここに座って」

泡浮湾内「はい……」

促され、椅子に座った泡浮と湾内の顔はどこか怯えているようにも見えた。

黒子「それで、一体何が?」

美琴「実はさっき、帰り道で会ったんだけどさ。何か2人とも、誰かに襲われかけたみたいで」

黒子「襲われた??」

51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 00:04:46.77 ID:eCnvMVA0 [1/3]
湾内「怖くて…逃げるだけで精一杯だったので……」

美琴「そっか…」

泡浮と湾内は一生懸命思い出そうと試みる。

泡浮「………………」

湾内「………………」

泡浮「あ!」

美琴「?」

泡浮「お待ちになって」

何かを思い出したのか、ガサゴソと学生鞄を漁る泡浮。美琴たちはその様子を見守った。

泡浮「これですわ!」

泡浮が取り出したのは、彼女の携帯電話だった。

初春「ケータイ…ですか……?」

泡浮「ええ」

黒子「でも、それが何の手掛かりに?」

泡浮「この携帯電話を、男の1人が触れたのです!」

美琴「ホ、ホントなの!?」

泡浮「ええ、確かに見ましたわ。私が通報しようとこの電話を取り出したとき、男が奪おうと一瞬触ってきましたから」

湾内「そう言えば…そんなことが……」

美琴「なるほど! それじゃあそのケータイについた指紋を辿れば……」

初春「簡単に犯人が割り出せます!」

佐天「やったー! ざまあ見ろですね!」

美琴たちは歓喜の声を上げる。

美琴「黒子!」

黒子「分かりましたわ。では早速、指紋鑑定の依頼を出しましょう。………ですが、どこに?」

美琴「………」ニヤッ

52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 00:08:07.72 ID:eCnvMVA0 [2/3]
黒子「?」

美琴「……あの人のところなら…きっといち早く、正確な結果を出してくれるはず……」

どや顔になる美琴。

黒子「誰ですの?」

ニヤッと不適な笑みを浮かべたかと思うと、美琴は叫んでいた。

美琴「リアルゲコ太のことよ!!!!」ドーン!!!

黒子佐天初春「えっ?」

美琴「忘れたの? あの、カエル顔の先生のことよ! あの人なら、きっと……!!」

右手にガッツポーズを作り、勢いよく椅子から立ち上がる美琴。
一同は茫然としながら、彼女のどや顔を見る。

黒子「……………お言葉ですがお姉さま」

美琴「ん? 何?」

黒子「あの方は医者であって、科学者ではないのでは……?」

美琴「…………あ」

直前の体勢のまま、美琴は動きを止める。

黒子「まあ、念のため聞いてみますか」

60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:44:57.54 ID:2TB5W7w0 [2/7]
とある病院――。

黒子「ではお願いしますの」

カエル医者「うむ。分かったよ」

泡浮の携帯電話に付着した指紋の鑑定依頼を黒子たちから受けたカエル顔の医者。意外にも彼はそちらの畑にも精通していたのか、快く承ってくれた。
そして早速、黒子が空間移動(テレポート)を繰り返し病院まで携帯電話を持って来たのだった。

黒子「まさか先生が指紋鑑定出来るとは、思いませんでしたの」

カエル医者「これでも学園都市で一、二を争う技術を持っていると自負している医者だよ?」
カエル医者「科学の分野についても詳しいんだよ。医者が科学に精通していても、この街では何も不思議ではないと思うがね?」

黒子「クス……確かにそうですわね。ご協力に感謝致しますわ」

カエル医者「何これぐらい。ここには最新の機器が揃ってるからね。結果は早く出ると思うよ?」

黒子「ありがとうございます」

カエル医者「いやいや、君たちとは縁があるからね。これぐらい朝飯前だ」

黒子「感謝してますわ」

一礼し、黒子はまたテレポートでジャッジメント支部へ帰って行った。

61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:51:40.79 ID:2TB5W7w0 [3/7]
ジャッジメント第177支部――。

黒子「ただいま帰りましたわ」ブン

部屋の中央に突然出現する黒子。

美琴「あ、お帰り黒子ー」

初春「ちゃんと受け取ってくれましたか?」

黒子「もちろん。結果は早く出るそうですわ」

美琴「良かったー」

佐天「これで後は犯人を見つけるだけですね!」

美琴「泡浮さん、湾内さん、ゲコ太はとても優秀で信頼できる医者なの。だから安心して」

泡浮「はい!」

湾内「皆様、ありがとうございます!」

感謝し、頭を下げる2人。美琴たちは笑みを浮かべて彼女たちを見た。

ビーッ

その時、呼び鈴が鳴った。

初春「あ、誰か来たようですね」

黒子「どれどれ」
黒子「はい、どなたですか?」

黒子が部屋に取り付けられたテレビドアホンに応じる。

『アンチスキルのものじゃん。こちらの支部を警護しに来たじゃん』

そう言って、画面越しにIDを見せる警備員(アンチスキル)。

黒子「分かりましたわ。わざわざご苦労ですの。今迎えに参ります」

美琴「アンチスキルが来たの?」

黒子「ええ。下まで向かいに行きますわ。初春、お茶を用意しておいてくださる?」

初春「分かりました、今すぐに」ガタッ

初春に指示を出すと、黒子は下に降りていった。

62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 22:58:58.66 ID:2TB5W7w0 [4/7]
黄泉川「アンチスキルの黄泉川じゃん。どうぞよろしくするじゃん」

鉄装「同じく鉄装です。宜しくお願いします」

警備員(アンチスキル)の2人――黄泉川と鉄装が挨拶をする。

一同「お願いしまーす」

初春「はいこれ、お茶です」

黄泉川「サンキューじゃん」

美琴「(取り敢えずこれで、この支部が狙われる危険はもう無いわね)」

佐天「(あ、あの人、特別講習の時の先生だ……)」

黒子「わざわざ警護に着いて下さり、ありがとうございますわ」

黄泉川「取り敢えず、今この支部は私の部隊が守ってるじゃん。爆発物の反応もなし。安心するじゃん」

黒子「やはり、隣の学区の支部の爆発はテログループによるものなので?」

早速、黒子が気になっていたことを訊ねた。

黄泉川「いや、それはまだ分からないじゃん。ただ、支部に正体不明の怪しい男が不審物を届けに来たという証言は得ているじゃん。今、我々はその男の行方を追っているところじゃん」

黒子「なるほど」

美琴「あの……」

黄泉川「ん?」

美琴「もし良ければ、こちらの子たちを2人、寮まで届けてくれますか?」

黄泉川「どうした?」

黄泉川は美琴の後ろに視線を向けた。怯えたような顔つきの女の子が2人、立っていた。

美琴「実はこの子たち、さっき街で暴漢らしき男たちに襲われかけて……」

黄泉川「ほう、どこで?」

黄泉川が眉を顰めて聞く。

泡浮「18番通りです」

黄泉川「なるほど。あそこは人通りが少ないからな。男の顔に特徴は?」

湾内「それが……暗くてよく見えなかったので…」

63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:05:36.16 ID:2TB5W7w0 [5/7]
黄泉川「分かった。その件については、こちらも本部に報告上げとくじゃん」

泡浮湾内「ありがとうございます!」

泡浮と湾内がお辞儀をする。

黄泉川「鉄装、車の用意しとけ」

鉄装「え? ど、どうしてですか?」

黄泉川「私たちがこの子たちを寮まで送るからに決まってるじゃん。早くしろ」

鉄装「わ、分かりました!」

慌てるように鉄装は支部を出て行った。

黒子「申し訳ありませんわ黄泉川先生。何から何まで面倒を見てもらって」

黄泉川「なーに、能力者と言えど学生たちを守るのは教師の務めじゃん?」

ニコッと黄泉川は笑みを見せた。

黄泉川「基本的に第7学区のこの辺りは直属の管轄だから、用があればすぐ飛んでくるじゃん」

佐天「(いいなー…憧れるな、黄泉川先生…)」

佐天は目を輝かせて黄泉川を見つめる。

初春「アンチスキルの方がいれば、百人力ですもんね!」

黄泉川「よすじゃん。照れるじゃん」

Prrrrrr......

その時、黄泉川の懐の携帯電話が鳴った。

黄泉川「はい、黄泉川」

鉄装『車の用意出来ましたー』

黄泉川「了解、すぐ行くじゃん」ピッ
黄泉川「で、常盤台の寮は『学び舎の園』だったっけか?」

泡浮「あ、いえ…最近、私たちは『学び舎の園』の外の寮に移ってきたので、そちらで宜しくお願いします」

美琴「あれ? そうなんだ」

湾内「はい。寮の一部が改築中なので。一時的ですけど、婚后さんたちと一緒に移ってきたんです」

64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:13:00.90 ID:2TB5W7w0 [6/7]
黒子「ほーう…あの婚后さんも」

泡浮「なんでも『御坂さんたちが寂しいでしょうから私たちも移って差しあげましょう』とか何とか」

初春「(何という分かりやすいツンデレ)」

美琴「また挨拶に行っといたほうがいいかもね」

黒子「ですわね。また皮肉たっぷりの嫌味ばかり言われるのかもしれませんが」フン

黄泉川「じゃ、そういうことでそこの2人、一緒に来るじゃん」

泡浮「はい」

湾内「分かりました」

黄泉川「私たちはこの子らを寮まで送ったら、また本部へ戻るじゃん」
黄泉川「私の部下たちが支部を警護してるので問題は何もないと思うが、何か困ったことがあったらこの番号に連絡するじゃん」

黄泉川は懐から取り出した名刺を黒子に渡した。

黒子「恩に切りますわ」

泡浮「では、御坂さま、白井さん、佐天さん、初春さん、今日はお世話になりました」ペコ

湾内「とても感謝していますわ」ペコ

黒子「どういたしまして」

佐天「気を付けて帰って下さいね」

初春「また何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってください」

美琴「いつでも私たちが助けてあげるんだからさ!」

泡浮湾内「ありがとうございます」

手を振る御坂たち。泡浮と湾内も手を振り返し、彼女たちは黄泉川に連れられ支部を後にした。

65 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:20:31.60 ID:2TB5W7w0 [7/7]
翌日・とある病院――。

放課後、美琴と黒子はカエル顔の医者から指紋鑑定の結果が出たという報せを聞き、病院まで馳せ参じていた。

黒子「まさかこんなに早く鑑定結果が出るとは思いませんでしたわ」

美琴「さすがゲコ太ね!」

黒子「あ、いましたわ。先生〜!」

遠くにカエル顔の医者の姿を視認すると、黒子が手を振った。

カエル医者「ん? おお、君たちか」

黒子「今回の件ではとてもお世話になりましたの」ペコ

美琴「ありがとうございます!」

カエル医者「あー…まあ、それはいいんだがね…?」

2人の礼を聞くと、急にカエル顔の医者の表情が申し訳無さそうに曇った。

美琴黒子「?」

黒子「どうかいたしましたの?」

カエル医者「実は……」



研究室――。

美琴黒子「指紋が出なかった!?」

美琴と黒子が同時に叫んでいた。

カエル医者「そうなんだよ」

椅子に座り、残念そうな表情を浮かべて美琴たちに話しかけるカエル顔の医者。

美琴「どうして……」

カエル医者「そう言われてもね? 採取できた指紋を調べてみたんだが、ほとんどが彼女本人のもの、または友人やクラスメイトと思われる常盤台中学の生徒のものばかりだったんだよ」

黒子「本当ですのそれは?」

カエル医者「ああ。学園都市上のデータベースを照合してみたが、男性の者と合致する指紋は無かったよ」
カエル医者「もしかしたら、泡浮くんの勘違いだったのかもしれないね? 実際は、携帯電話は暴漢に触れられてはいなかったのでは?」

66 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:27:07.00 ID:6Rglqhk0 [1/3]
カエル顔の医者は顎に手を当て推測する。

美琴「でも…泡浮さんは、確かにケータイを男に触られたって…」

カエル医者「すまないね。力になれなくて。どうか許してくれないかな?」
カエル医者「これ、彼女に返しといてやってくれるね?」

泡浮の携帯電話を黒子に渡すカエル顔の医者。

黒子「……ありがとうございます。…出なかったのなら仕方がありませんわ」
黒子「…ご協力に感謝致しますわ」

カエル医者「うむ。困ったことがあったら、いつでも頼ってくれていいからね?」
カエル医者「今は学園都市も大変な時期だしね?」

黒子「…はい」
黒子「では、行きましょうお姉さま」

美琴「…………………」

黒子「お姉さま?」

反応が無いので黒子が美琴の顔を覗き込むと、彼女は納得出来ないような、そんな空気を醸し出していた。

美琴「えっ? あっ……」

黒子「帰りましょう?」

美琴「うん、分かってる……」
美琴「ありがとう……ございました…」

元気の無い声で美琴は礼を述べた。

カエル医者「うん、どういたしまして」

美琴と黒子の後姿を見送るカエル顔の医者。

黒子「泡浮さんたちには帰ったらすぐ伝えましょう?」

美琴「……ええ…」

カエル医者「……………………」

67 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:36:38.83 ID:6Rglqhk0 [2/3]
ジャッジメント第177支部―。

佐天「ええ!? 指紋が出なかった!?」

美琴「…そうなの」

初春「どうしてです? 確かに泡浮さんはケータイを暴漢に触られたって…」

ジャッジメントに帰ってきた美琴と黒子から、病院であったことを聞いたが、どうにもこうにも佐天と初春は釈然としないようだった。

美琴「…でも、ケータイからは泡浮さんと女友達かクラスメイトの指紋しか出てこなかったって…」

佐天「じゃあ、泡浮さんの勘違いだったってことですか?」

美琴「うーん…」

黒子「駄目ですわね」ピッ

離れたところにいた黒子が、自分の携帯電話をポケットに収めた。

美琴「どうだった?」

黒子「湾内さんに電話をしてみましたが、今は電源を切ってるようで繋がりませんでしたわ」

美琴「そっか」

初春「でもこうなると、暴漢の行方が掴めませんね」

佐天「だよねー。また襲われでもしたりしたら危ないもんね」

黒子「…まあ、ストーカーでもない限り、18番通りに再び行かなければ大丈夫だとは思いますが…」

Prrrrrrr....

初春「あ、電話ですね。湾内さんからでしょうか」

支部に備え付けられた電話がコール音を鳴らす。

黒子「いえ、ケータイではないですし、きっと関係各所からでしょう」ガチャッ
黒子「はい、もしもし、ジャッジメント第177支部の白井です」
黒子「え?」
黒子「ああ……その件ですの」

急に表情を曇らせた黒子を見て、美琴たちは怪訝な表情で顔を見合わせる。

黒子「ええ。そうですよ…それで?」
黒子「えっ……!?」
黒子「そ、それは本当ですの!!??」

68 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:44:29.62 ID:6Rglqhk0 [3/3]
美琴佐天初春「???」

電話の相手に向かって大声を上げる黒子。

黒子「ちゃんと確認を取ったのですか!?」
黒子「・・・……………そうですか」

僅かに間隔があって、彼女は落ち着いたようだった。

佐天「な、なになに? どうしたの?」

初春「何だか恐いんですけど……。最近は嫌なことばっかりでしたし」

黒子「了解しましたわ」

ガチャン

電話を切り、黒子は無言で美琴たちを見つめた。

美琴「な、何なのよ黒子? 何か言いなさいよ」

初春「もしかしてまた何か事件が起こったんですか!?」

黒子「いえ…」

美琴「じれったいわね」

黒子「実は……隣の支部が、例の、お姉さまが巻き込まれた爆発事件について調査していたんですが…」

美琴「ああ、あれね」

初春「何か分かったんですか?」

黒子「どうやらその調査の過程に於いて、固法先輩の友人の証言を取ったそうですの」

70 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:51:17.46 ID:XrFe1zk0
美琴「固法先輩の!?」

初春「友達の証言ですか?」

黒子「ええ」

佐天「で、何て言ってたんですその人は?」

黒子「……爆発に巻き込まれる2日前のことでしたの……。先輩はその友達に告げたそうですわ『2人組みの男に尾行されてる』と」

美琴「何ですって!?」

佐天「ス、ストーカーですか?」

初春「で、でも、それと爆発事件とどう関係が?」

黒子「それはまだ分かりませんの。ただ、固法先輩が爆発に巻き込まれる日まで何者かに追い回されていたのは事実ですわ」

美琴「それって……つまり、そのストーカーがあの爆発を起こしたってこと?」

佐天「でも、いくら何でも店を爆破して無関係の人を巻き込んでまでそんなことしますかね?」

新たに提示された事実に、美琴と佐天が推測を述べる。

黒子「確かにそうですの。爆発の件とストーカーの件は別件かもしれませんわね」

初春「とにかく、その固法先輩の友達に会ってみましょうよ!」

黒子「…そうですわね」

71 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/09(水) 23:58:35.27 ID:iaTa.PE0
それから2時間後――。

ジャッジメント第177支部には、件の固法の友人が訪れていた。

黒子「では、詳しく話して頂けます?」

目の前に座る固法の友人と対面するようにして、黒子が訊ねる。

友人「ええ。あれは2日前だったわ。思えば、美偉はその前日…つまり3日前からずっと落ち込んでたっけ…」
友人「初めは、何かプライベートの悩みがあるのかと思って、敢えて聞かずにはいたんだけど、翌日になってもずっと同じ調子だったから、ちょっと聞いてみたの。そしたら美偉、暗い顔で……」

黒子「『2人組みの男に尾行されてる』と…」

固法の友人の言葉に続くように、黒子が確認した。

友人「ええ…」

黒子の後ろで話を聞いていた美琴と佐天と初春が神妙な顔つきになる。

初春「でも、固法先輩、ジャッジメントではそんなこと一言も…」

佐天「確かに。いつも通りきびきび動いてたよね…」

黒子「固法先輩のことですの。きっと、私たちに迷惑を掛けて仕事に支障をきたせたくなかったのでしょう」

友人「ええ。本人もその後、急に明るい顔になって『私はベテランジャッジメントよ。ストーカーが襲ってきても返り討ちにしてやるわ!』って自信満々に答えてたから……」
友人「でも……まさか…それが…あんなことになるなんて……」

徐々に固法の友人の表情が崩れていく。

友人「うわあああああああん」

両手で顔を覆いながら、固法の友人は泣き始めた。
黒子は彼女の肩に手を置き、慰めるように話しかける。

黒子「まだ、その2人組みのストーカーが固法先輩を殺したとは決まってませんの。ですが、どの道犯人は我々が見つけますので、ご安心下さいませ」

友人「わああああああああああああああああん」

ずっと我慢でもしていたのか、吹っ切れたように彼女は大声で泣き始めた。

美琴佐天初春「…………………」

72 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 00:06:14.17 ID:a9ix2gk0
夜・常盤台中学女子寮――。

美琴「はー…結局、謎は深まっていくばかりね」

黒子「そうですわね」

208号室の自室で、美琴と黒子はそれぞれベッドの上に座りながら話していた。

美琴「喫茶『ファニーランド』でのテロ爆破事件、固法先輩の死、固法先輩の友人の証言、そして2人組のストーカー……。全部、怪しいわね。ま、今の学園都市は何が起こっても仕方がない状況なんだろうけどさ」

黒子「……精神的にも疲れてきましたわね。今日は12日ですか。事件が起こってから2日ほど経っていますが、固法先輩がいないだけで、ジャッジメントの仕事がいくぶんか滞ったような気がしますわ」

美琴「そうよね。私絶対、固法先輩を殺した犯人を見つけてやるんだから…!」

ググッと美琴は手に力を込め、宣言する。

黒子「それは私も同じですわ」

美琴「どっかのイカれたテログループか、もしくは2人組みのストーカーか…。爆死の直接的な理由としては、前者のほうが可能性高いんだろうけど…」

黒子「…ええ」

美琴「………………」

と、そこで美琴は何かを考え込むように顔を少し俯かせた。

黒子「どうしました?」

美琴「………2人組み…」

黒子「え?」

美琴「2人組みの男……」

ボソボソと呟きながら、美琴は思考を巡らせる。



  ――湾内「それが…暗くてよく見えなかったので…。ただ、男性の2人組みであったことは覚えています」――



美琴「……!!!!! ……………ねぇ黒子…」

美琴は強張った形相で黒子に視線を向けた。

黒子「何でしょうか?」

美琴「確か…泡浮さんと湾内さんも、2人組みの男に追いかけられた、って言ってなかったっけ?」

73 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 00:14:04.04 ID:n/t9kYA0
黒子「!! ……そう言えば確かに…」

美琴「…まさかとは思うけど、固法先輩をストーカーしてたのって…」

黒子「考えられなくはありませんわ。しかし、2人組みの男など、どこにでもいますし…。それに固法先輩をストーカーしていた2人組と泡浮さん、湾内さんを襲った2人組が同じだったとして、何か理由があるのでしょうか」

黒子は顎に手を添え考えを巡らす。

黒子「固法先輩と泡浮さんたちの接点や共通点と言えば……」

美琴「いやいや。ほら、前みんなで一緒に水着になってカレー食べたりしたじゃん? 水着モデルのときの」

黒子「あ……」

黒子の動きが一瞬止まる。言われてみればそうである。確かに以前、固法と泡浮、湾内は水着モデルの時に顔を合わせているが…

美琴「これって……偶然?」

黒子「…しかし…」

ただの思い過ごしではないだろうか、と黒子が思った時、部屋の外から何やらざわめきが聞こえてきた。

ザワザワ

黒子「ん? 何だか外が騒がしいですね」

美琴「そう言えば…」

ガチャッ

ドアを開ける美琴。彼女の目の前の廊下を、常盤台中学の教師と思われる大人たちが数名駆けていった。周りに注意を向けてみると、女子生徒たちが怯えるような顔つきでヒソヒソと話し合ってる。

黒子「どうかしたんですの?」

ドアノブに手をかけたままの美琴が気になったのか、黒子が部屋の中から声を掛けてきた。

美琴「いえ、それがよく……。あ、ねぇねぇ」

美琴は近くにいた女子生徒に話しかけてみた。

美琴「何かあったの?」

女子生徒「さぁ…何だか聞いた話によると、生徒が2人行方不明になってるとか…」

美琴「行方不明!? 誰が!?」

女子生徒「1年の、泡浮さんと湾内さん、という方たちらしいですわ」

美琴黒子「!!!!!!??????」

81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:15:37.08 ID:gzASGvE0 [2/6]
常盤台中学女子寮・管理人室――。

教師「では、泡浮と湾内は?」

寮監「…一通り、寮内を探してみましたが、見当たりませんでした…」

部屋に訪れた常盤台中学の男性教師3人を相手に、寮監は神妙な顔つきで話していた。

教師「いつからいなくなったか覚えてますか?」

寮監「昨日は11日でしたか…。夕方頃に、アンチスキルの黄泉川という方がわざわざ2人を送っていただいたのは確かです。その後の巡回の時には部屋にいたのですが…」

自責の念にかられているのか、寮監の雰囲気はいつもとは違って覇気の無いものだった。

教師「なんということだ…。我々はもう一度、寮内の探索に行きますので、寮監さんはアンチスキルに通報しておいてくれますか?」

寮監「分かりました」

管理人室を出て行く教師陣。
それを見てようやく寮監は溜まった疲れを吐き出すように溜息を吐いた。

寮監「フー………」
寮監「ん?」
寮監「何だお前ら?」

うなだれた寮監が部屋の外を見ると、ドアの隙間から美琴と黒子が頭を重ねるようにこちらを覗いていた。

寮監「今はややこしいから部屋に戻っとけ」

いちいち相手をする余裕も無いのか、寮監は一言だけ注意する。

美琴「あの…泡浮さんと湾内さんが行方不明になったのって、本当ですか?」

美琴が心配そうな顔で訊ねた。

寮監「………本当だ」

黒子「何故? 一体いつ??」

黒子も冷静に訊ねたが、その口調にはどこか動揺が含まれていた。

寮監「それが分からん。昨日の最後の巡回時には確かに部屋にいたんだがな」

美琴「今朝は?」

寮監「今朝はあいつら早くから部活動だ。ほら、今は『学び舎の園』の中にある女子寮が改築中であいつら今こっちに一時的に移ってきてるだろ。だから朝早くから寮を出なければならんらしい」
寮監「よって、朝の巡回時にも朝食の時にもあの2人は既に寮内にいなかったんだ。まあ、それでも特別な理由での外出は私の許可が必要なんだが、あいつらこっちの寮生活に慣れてないのかそれを忘れて行ったようでな。が、実際はそれどころか学校にも登校していなかったようだ」

そこで一息つき、寮監は何かを思い出したように美琴たちに質す。

82 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:20:55.30 ID:gzASGvE0 [3/6]
寮監「そうか、お前ら、昨日はあの子らと一緒にジャッジメントの支部にいたらしいな。2人を送ってくれたアンチスキルの人から聞いたぞ」

黒子「ええ。ちょっと問題があったので」

寮監「2人組みの男に追い回された、というやつか?」

黒子「はい」

寮監「確か、泡浮の携帯電話を指紋鑑定に出したらしいな? 結果はどうだったんだ?」

黒子「いえ、それが泡浮さんの勘違いだったらしく…男の指紋は出なかったそうですわ」

寮監「そうか……」
寮監「どうした御坂?」

美琴「え? いや、何でも……」

声を掛けられた美琴を黒子は横目で窺う。どうも彼女は今もまだ指紋鑑定の結果に納得いっていないようだった。

寮監「…………………」

黒子「実は、今日1日ジャッジメントの支部で泡浮さんの携帯電話を預かっていたので、返そうと思い昼頃、湾内さんの携帯電話に電話をしてみたんですの」

寮監「それで?」

黒子「その時は、電源を切っているのか、繋がらなかったんですの……。今までそのことを失念していましたが、もしかしたら、もうその時にはあの2人は……」

顔を暗くする黒子。

寮監「そういうことはアンチスキルに言っておけ」
寮監「それに気に病むことではないだろう。別に、あの2人が消えたのはお前のせいじゃない」

黒子の表情から彼女の心情を汲み取ったのか、寮監が声のトーンを少し優しくして言っていた。

黒子「はい……」

寮監「…御坂もな」

美琴「……………はい」

寮監「さ、私は今すぐアンチスキルに通報せねばならんのだ。気になるだろうが、2人は部屋に戻れ」

美琴黒子「分かりました……」

寂しそうな背中を見せながら、美琴と黒子は管理人室を出て行った。
受話器を耳にあてながら、寮監は2人の姿を無言で見送る。

寮監「……………………」
寮監「……あ、もしもし、アンチスキル支部ですか? こちら第7学区・常盤台中学女子寮の………」

83 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:26:36.80 ID:gzASGvE0 [4/6]
1時間後、アンチスキルが女子寮に到着し、教師や生徒たちへの聴取が始まっていた。

208号室・美琴と黒子の部屋――。

黒子「それは確かですの?」

携帯電話に耳を押し付け、受話器の向こうの相手と会話する黒子。

黄泉川『だから、そうだって言ってるじゃん。昨夜、確かに私と鉄装が泡浮と湾内を寮まで送り届けたじゃん』
黄泉川『わざわざ、寮監さんにまで事情を話したじゃんよ。嘘だと思うなら、寮監さんに聞いてみればいいだろう?』

黒子「いえ、寮監からは、既にその話は聞き及んでおります」
黒子「問題はあの時、泡浮さんと湾内さんにおかしな様子は無かったということですの」

美琴「………………」

黄泉川『もしかして家出の可能性とか? そんなことするような雰囲気じゃなかったじゃん。ちゃんと笑顔で手を振ってまで分かれたじゃん』

黒子「……そうですか」

静かに、黒子は答えた。

黄泉川『とにかくこっちもそっちに向かいたいところだが、私も鉄装も他の仕事に追われててな。一応、常盤台中学も私の直属の管轄内だから、部下たちがそっちに行ってるが…まあ何か新しいことが分かったらこっちから連絡するじゃんよ』

黒子「了解しましたわ。ありがとうございます」ピッ

電話を切る黒子。

美琴「どうだった?」

黒子「どうやら寮監の話していた通り、確かに黄泉川先生たちは昨夜、泡浮さんと湾内さんをこの寮まで送り届けたようですわ」

美琴「じゃあ、帰宅途中で誰かに襲われた可能性もないってことか」

黒子「そういうことですわね」

美琴「でも何か引っかかるのよね…」

顔を横に向け、虚空を見つめるように美琴は考え込む。

黒子「え?」

美琴「黒子、泡浮さんのケータイって今、ジャッジメントの支部に保管してるんだっけ?」

黒子「? そうですけど」

美琴「あんた、今から取りに行ける?」

黒子「え? 何故ですの?」

84 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:33:06.90 ID:gzASGvE0 [5/6]
美琴「いえ、取りに行ったら、そのままの足で木山先生のところまで行ける?」

黒子「木山春生のところまで? 一体何故??」

突然出て来た名前に、黒子は顔を傾げた。

美琴「きっと、アンチスキルによる私たちへの聴取が始まったら、間違いなく泡浮さんのケータイは没収されることになるわ。その前に、もう1度だけ、彼女のケータイの指紋を調べておきたいの」

黒子「で、ですがどうやって…」

美琴「今度は木山先生に指紋鑑定を依頼してもらうのよ。そしたらまた、新しいことが何か分かるかもしれない。ゲコ太が見落としてたかもしれない指紋が出てくるかもしれないし」

黒子「なるほど。ですが別に、アンチスキルに没収されてもどうせまた指紋鑑定されるでしょうし、後でその結果を聞けば宜しいのでは?」

美琴「……いえ…それじゃ…ダメな気がする…」

そこで、妙な間があり美琴は自分に言い聞かせるように呟いていた。

黒子「?」

御坂「…今やっておかないと、ダメな気がするのよ……」

今度は黒子の顔を見据え言う。
ただならぬ何かを感じ、黒子は答えていた。

黒子「……………了解しましたわ」

美琴「じゃあ、急いで行ける?」

黒子「お任せくださいまし。飛ばして行ってきますわ」

美琴「宜しく頼むわ」

それを聞いて1秒後、既に黒子は部屋から消えていた。

85 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:40:06.77 ID:gzASGvE0 [6/6]
とある研究所――。

木山「こんな遅くに君が来るとはな。思ってもみなかったよ」

白衣を纏った1人の研究者――木山春生は大して驚く素振りも見せず、突然目の前に現れた黒子にそう言った。

木山「私以外の研究者が出ていたら、とっくに門前払いにされてるところだ」
木山「…と言ったところで、君なら易々と私の部屋まで辿り着くんだろうがね…」

のらりくらりとした口調で木山は語りかける。
それに対し、黒子は伸ばした両手をお腹の辺りで交差させてかしこまっているようだ。

黒子「……夜遅くに申し訳ありませんの。ですが、緊急の用事でして…」

木山「……君の顔を見れば分かるよ、白井黒子」

白衣を纏った木山に続き、黒子は廊下を歩く。
飾りっ気のない、無機質な廊下が永遠と続く。

木山「大方、今、学園都市で多発している事件に関してかな? それも、こんな夜中に1人で来たということは、よっぽど非公式にしたいことか」

黒子「お見通しですわね」

木山「まあね。で、何の用かな?」

黒子「これです」

感情を窺わせないような声で肯定した木山に、黒子は1つの携帯電話を差し出した。

木山「…携帯電話? 誰のだ?」

黒子「私のクラスメイト、泡浮万彬さんのものですわ」

木山「これをどうしろと?」

黒子の顔と彼女の手元にある携帯電話を、視線だけ流すように交互に見る木山。

黒子「泡浮さんとその友人である湾内絹保さんは、昨日の夕方、第7学区の18番通りで正体不明の暴漢2人に襲われそうになりましたの」
黒子「その時、通報しようと泡浮さんが取り出したこの携帯電話に一瞬ですが、暴漢の1人が触れたとのことです」

木山「……その指紋を採取しろとでも?」

黒子「その通りです」

木山「何故私に頼ろうとする? 専門の機関にでも頼めばいいじゃないか」

黒子「…実は既に1回頼んでますの。ですが、暴漢の男らしき指紋は見つからず、採取出来たのは泡浮さん本人のものと、友人、あるいはクラスメイトの女子生徒のもののみ…」

木山「その…あわうき、とかいう子の勘違いでは…?」

86 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:49:48.47 ID:eIK6mbk0 [1/3]
黒子「…それも無きにしも非ずですが、彼女たちの口ぶりを思い出すに、勘違いとは思えませんの。今ではもう、改めて確認することが出来ないのですが……」

突然表情を曇らせた黒子の顔を見、木山は怪訝な表情を彼女に向けた。

木山「どういう意味だ?」

黒子「実は先程、泡浮さんと湾内さんが行方不明になっていることが判明しましたの」

木山「…それは……大変だな」

黒子「ええ。もうアンチスキルによる聴取が始まっていますわ。いずれこのままでは、アンチスキルに泡浮さんの携帯電話も没収されてしまいます。その前にもう1度、確かめておきたかったんですの…」

木山「それで私のところにか…。だが、別にアンチスキルに没収されても構わないのでは? いずれ、頼み込めば、またその時に出た指紋採取の結果を教えてくれるだろうに…」

黒子「いえ…」

ゆっくりと黒子は目を閉じる。

木山「…?」

黒子「…それではダメなんです。そうしてしまうと、一生、泡浮さんと湾内さんの行方を見失ってしまうような……そんな嫌な予感がして……」

木山「…………………」

友達を心配する黒子の落ち込みようは半端なものではなさそうだった。

木山「なるほどな…。事情は分かった。だが、そう簡単に私を信用してもいいのかな?」

黒子「え?」

木山「私も面倒事には巻き込まれたくないのでね。君ら子供の言を無視して、アンチスキルにこの携帯電話を提出してしまうかもしれないぞ?」

黒子「……それは、有り得ませんの…」

木山「何故、そう言える?」

黒子「……何故かは、分かりませんが…何となく…貴女なら…」

木山「………………」

語尾が弱くなった黒子を見、木山は押し黙った。
黒子は下を向き、視線を逸らし、泡浮の携帯電話をギュッと握り締めている。
しばらく、静寂がその場を支配した。

ポンッ

黒子「……え?」

突然、小気味良い音が頭の上から聞こえた。

87 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:52:19.77 ID:eIK6mbk0 [2/3]
黒子が顔を上げる。木山の手が彼女の頭に置かれていた。

木山「何だかんだ言って、まだまだ君たちも子供だな。私の教え子たちを思い出すよ」
木山「だが、その心意気は感謝するよ。バレたらジャッジメントの仕事も停職になり兼ねないだろうに…」

黒子「………覚悟しておりますの」

木山「…いいよ。君たちには枝先や春上たちの借りもあるしな」

黒子「本当ですの?」パァァ

木山「フフッ…私を信じてくれ」

まるで子供を励ます親のように木山は微笑んでいた。
それに応えるように、黒子の声に張りが戻った。

黒子「ありがとうですの!」

木山「その顔だ」

黒子「え?」

木山「笑っていると、君たちも歳相応の子供に見えて可愛いものなんだが…」クスッ

黒子「ま、まあ! 失礼ですのね。これでもレディですのよ?」プンプン

顔を膨らませる黒子を見て、木山は更に笑みを零した。

木山「では、これは私が責任を持って秘密裏に鑑定しよう。遅くとも明日の朝には結果は出るはずだ」

黒子「感謝しますわ」

88 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:57:21.96 ID:eIK6mbk0 [3/3]
常盤台中学女子寮・208号室――。

美琴「遅いわね、黒子の奴…」

ベッドの上に座りながら、美琴は組んだ自分の腕の上で規則的に指を叩いていた。

黒子「お姉さま!」ブンッ

突如、ベッドの側に黒子が姿を現した。

美琴「黒子!」

黒子「遅くなって申し訳ありませんの」

美琴「それはいいから。で、どうだったの?」

黒子「ちゃんと木山先生に頼んできましたわ。こちらの事情も理解してくれたようで、秘密裏に調べてくれるそうです!」

美琴「よ、良かったー……」

美琴が胸を撫で下ろす。

黒子「それで、アンチスキルによる聴取は?」

美琴「さっき、隣の部屋の生徒のが始まったばかりよ。ギリギリだったわね」

黒子「それはそれは、危ないところでしたの」

美琴「どの道、アンチスキルも寮監さんから聞けることは聞いてるだろうし、泡浮さんのケータイについては事情を話さないとこっちが怪しまれるわ」
美琴「問題は、いつ、木山先生の元からケータイが戻ってくるかね」

黒子「ええ。明日中に戻ってくれば、こちらも余計な手順を踏まずにジャッジメントの公式捜査物品として普通にアンチスキルに提出できるのですが…」

美琴「とにかく、木山の鑑定結果を待つわよ!」

黒子「はい!」

89 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:03:46.22 ID:z57Z5Vo0 [1/3]
数時間後・木山の研究室――。

木山「この指紋も、常盤台中学生徒のもの…」

泡浮の携帯電話から採取した指紋を、学園都市の学生データと照合する木山。

木山「……本当に、男の指紋は無いぞ…」
木山「やはり、泡浮とかいう子の勘違いだったのでは…?」

木山は泡浮の携帯電話をもう1度見て取る。

木山「さて、次で最後だ。この指紋がまた女子生徒のものだったら、結局のところ、その子の勘違いだったということになる…」
木山「さて、何が出てくるか…」

木山はスキャンを始める。
1秒後、その指紋の照合結果に一致する者のデータがディスプレイに表示された。
木山の目が細くなる。

木山「!!!!!!!」
木山「出た……確かに、男だ。……こいつがその暴漢とやらか…」

確かめるように、木山は顔を画面に接近させる。
と、そこで彼女は何かに気付く。

木山「待てよ……この男、確かどこかで………」




「世の中には、知ってはいけないことがあるんだよ?」




木山「!!!!!?????」

刹那、木山の背中に悪寒が走った。
誰もいないはずの研究室。
突如、後ろから掛けられた声に冷や汗が背中を伝っていく感覚を味わった木山は、ゆっくりと後ろを振り返った。

木山「……あんたは…!!」

「さて、知っちゃったからには、君をどうしようかね?」

その時、木山の目に映ったのは底無しの絶望だった―。

90 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:13:19.29 ID:z57Z5Vo0 [2/3]
翌日・ジャッジメント第177支部――。

黒子「遅い」
黒子「…ですわね」

美琴「そうねー…もう昼過ぎちゃったのに…」

佐天「本当に木山先生、朝までに鑑定結果が出るって言ってたんですか?」

黒子「ええ。確かにそう言ってましたわ」

初春「遅いと言えば、アンチスキルからも、泡浮さんのケータイ提出の依頼電話が掛かってきませんねー」

1日の半分も過ぎた頃、美琴たち4人はジャッジメントの支部に集まって、木山からの電話を待っていた。

黒子「そうですわね。今のところはそれでややこしいことにならずに助かってるんですが…」
黒子「まあ、バレたとして、はなから承知の上。ジャッジメントの停職ぐらい、受け入れてやりますわ」

初春「でも…白井さん1人で責任を負うのも…」

黒子「もしもの話ですの。取り敢えずは大丈夫でしょう」

初春「ならいいんですけど……」

Prrrrrrr......

その時、支部の電話が鳴った。

美琴「来た!」

佐天「電話ですよ白井さん!」

初春「あわわわわ…遂に…」

黒子「さて、木山かそれともアンチスキルか…」

黒子が受話器を手にする。それを見て一同は唾を飲む。

ガチャリ

黒子「はい、もしもし……ジャッジメント第177支部の白井ですの…」

美琴と佐天と初春は会話を聞き逃さないように、黒子の持つ受話器の側に集まり、聞き耳を立てる。

木山『木山だが…』

黒子「!!」

電話の相手は木山だった。4人が安堵の表情を見せ合う。

92 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:18:20.75 ID:z57Z5Vo0 [3/3]
指紋の鑑定結果が出たのだ。
美琴たちがヒソヒソと小声で話し合う。

佐天「よかったー」

初春「先に木山先生から連絡あってよかったですね!」

美琴「そうね」

黒子が鼻に手を当て「静かに」と言うと、3人は慌てて口に手を当て押し黙った。

黒子「これはこれは。お電話お待ちしておりましたわ」

木山『そうか。遅くなってすまんな』

黒子「いえいえ。それで早速ですが…」

木山『早速だが、悪いな…』

黒子の声を遮るように、木山は淡々と言い放った。

黒子「はい?」

木山『泡浮とか言ったか』
木山『その子の携帯電話、アンチスキルに提出させてもらった』

黒子美琴佐天初春「………………え?」

余りにも自然に紡いだその口調に、美琴たちは初めその言葉を理解できなかった。

黒子「い、今、なんと…?」

木山『聞こえなかったか? 君らが私に鑑定依頼を出してきた携帯電話だが、今朝、アンチスキルに提出させたもらったよ』

やはり、それは聞き間違いではなかった。

初春「……どういうこと?」

佐天「……何で?」

美琴「………木山先生…」

3人の顔が青ざめていく。

木山『悪いね。昨日も言ったが、余計なことに巻き込まれたくなくってね。それに、わざわざ私が君ら子供の言うことを聞く義理もあるまい』

黒子「……木山っ!!」

冷静に務めていたつもりだったが、黒子はつい感情的になってしまった。

93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:27:35.94 ID:ZGtiZXc0 [1/8]
黒子「裏切ったんですのね!?」

木山『裏切る? 今言ったろう? 私に君らの言うことを聞く義理は無い。申し訳ないが、事情を説明して携帯電話はアンチスキルに提出した』
木山『鑑定結果を知りたければ、後日アンチスキルに聞くといい。私より彼らの方が、より信頼性のある鑑定をしてくれるだろうしね』

反省の色も後悔の念も窺わせない木山の声に、黒子は苛立つ。

黒子「…………っ…」

木山『じゃ、私は忙しいんでこれで』

黒子「待ちなさい!」

美琴「黒子、変わって!」

美琴が奪うように黒子から受話器をひったくる。

美琴「“先生”!! 私たちは、貴女を信じて頼んだのよ!?」

木山『超電磁砲(レールガン)か…。だからどうした。今回のように大人の言動を信じないところを見ると、まだまだ君も子供だな』

美琴「何言ってるの!? ふざけないでよ!!」

激昂する美琴。

木山『ああ、そうそう。ツインテールの子に伝えといてくれ。私が事情を説明したアンチスキルの隊員、どうやら君たちの知った顔ということで、今回のことは見逃してくれるそうだ』

黒子「……黄泉川先生ですね…」

木山『そういう訳だ。力になれなくてすまんね。それじゃ』

ガチャン

ツーツーツー……

一方的に、電話は切れた。

美琴「くっ………」

ガチャン!!

叩きつけるように美琴は受話器を置いた。
彼女は握り拳をつくる。

美琴「……木山っ……」

黒子「…こればかりは仕方がありませんわ…」

と言いつつ、黒子の声は小さく弱々しい。

続きを読む はてなブックマーク - 美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」2

美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」

プロローグ〜地獄編〜

3 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 18:30:21.48 ID:/WCxYmg0 [2/2]
学園都市――。


美琴「喉乾いたわね……」

美琴は、とある食堂に入る――。
食堂、と言っても実際は内装が洋風の洒落た店内だ。メニューも、女の子向けばかりの軽食が揃っており、学園都市の女子学生たちに人気だった。

美琴「黒子も初春さんもジャッジメントの仕事だし、佐天さんは学校で補習。暇なのは私だけか……」

美琴はカウンターに向かい、レモンティーとサンドイッチを注文する。グラスの乗ったお盆を受け取ると、彼女は窓際の席に座った。

美琴「何よみんなして。暗い顔しちゃって…」

見渡した所、店内にはある程度女子学生たちが来客していたが、みな、あまり明るい顔をしているとも言えず、どちらかと言うと暗い表情を浮かべて会話をしていた。

美琴「以前4人で来たときは、店内は黄色い声で溢れかえってたって言うのに…。本当に今時の女子学生っ?って思うほどテンション暗いわね……。まあ、仕方ないけど…」
美琴「長居したってつまんないわね。帰ろうっと」

席を立ち上がり、グラスをカウンターに返そうとしたところ、美琴は誰かと衝突した。
相手が持っていたお盆が床に落ちる。

美琴「あ、ごめんなさい!」

女の子「大丈夫大丈夫。もう食べ終わったところだから」

美琴「そう、でも手伝うわ」

美琴は床に落ちた紙くずを拾い、ゴミ箱に捨てる。

女の子「ありがとう。いい人ね。みんなが疑心暗鬼になってる今では、ちょっとした気遣いが胸に響くわ」

美琴「どういたしまして」

ニコッと笑顔を見せる美琴。女の子も笑顔で返した。

女の子「あ」

美琴「どうしたの?」

女の子「席にケータイ忘れちゃったわ」

美琴「そう。じゃあ、私はもう帰るから」

女の子「うん、またね。元気でね」

美琴「貴女もね」

4 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage] 投稿日:2010/06/07(月) 18:41:22.25 ID:gNYZGno0 [1/2]
女の子は忘れた携帯電話を取りに行くため、席に戻って行った。
美琴はそれを見届けると、食堂を後にした。

美琴「さてと、どこ行こうかな…」





ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!!!





――直後、激しい音が爆ぜ、突風が美琴を襲った。
視界が揺れに揺れ、身体が浮遊するような感覚を味わった美琴は、誰かの叫び声が自分の耳を突き抜けてくる中、鈍い音と共にアスファルトの地面に叩き付けられた。

美琴「ぐっ……!!」

何が起きたのかも理解出来ず、耳に霞がかかったような状況で、美琴は何とか身体を動かしてみる。
どうやら五体満足であることは確かなようだ。ところどころ、肌から出血してはいたが。

美琴「い……たい……」
美琴「あ………」

口中に血の味を噛み締めながら美琴がゆっくりと目を開けると、そこには誰かが倒れておりその人間の身体中から大量の血が流れ出ていた。

美琴「……死んでる……」

急いで辺りに視線を巡らせてみる。
煙が周囲を覆い、モノが焼ける臭いが鼻をつんざく。
明瞭とも言いがたい光景の中に浮かび上がってきたのは、何体もの死体と鮮血に染まりまくった地面だった。

「痛い痛い」

「いてぇぇ……チクショウ…」

「誰か助けて……」

幾つもの悲痛な呻き声を聞き、何とか身体が動くことを確かめた美琴は、側にあったポールに手を預け、よろよろと立ち上がった。

美琴「…………………」

つい2分前まで美琴がいた食堂の入り口からは黒い煙が吹き出ており、店内の状況は壊滅的と言えた。

美琴「………店が……無くなってる……」

阿鼻叫喚の地獄の中、美琴は茫然とその光景を眺めていた――。



事件編 はてなブックマーク - 美琴黒子佐天初春「貴方たちを全力で倒す!」 vs 上条一方通行「……やってみろ」

御坂妹「テレテレと、ミサかは感情を擬音で表現してみます」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 07:29:09.82 ID:5ybb2bIYO
御坂妹「…………」

上条「ん? あれは……お〜い」

御坂妹「……? 何でしょう、とミサカは呼びかけに応じます」

上条「そりゃこっちの台詞。こんなとこで何してんだ?」

御坂妹「実はいぬが逃げ出してしまったのです、とミサカは落胆を隠さずに溜息を零します」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 07:45:58.69 ID:5ybb2bIYO
上条「いぬ……ってお前が飼ってるあの猫?」

御坂妹「はい。昨日から帰ってこないのです。きっと今頃寒さにうち震えているに違いありません、とミサカは居ても立ってもいられない気持ちを吐露します」
上条「居そうなところに心当たりは?」

御坂妹「一通りは探しました、とミサカは経過を報告します」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 07:58:50.97 ID:5ybb2bIYO
上条「ふむ、じゃあもう一回探してみよう。一人だと見落としとかあるかもしれないし」

御坂妹「手伝ってくれるのですか? とミサカは淡い期待を込めながら瞳を見詰めます」

上条「放っておくわけにもいかんでしょう。早く行こうぜ。なんか雪降ってきそうな天気だし」

御坂妹「はい」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 08:11:19.79 ID:5ybb2bIYO
上条「げっ」

美琴「出会うなりご挨拶ねぇ。そんなに私の電撃を喰らいたいの?」

上条「いやいやいや滅相もございません生憎の空模様美琴センセーに於かれましてはご機嫌如何でせう? てことで、じゃあな、ビリビリ」

美琴「いきなり逃げんなー! ってなんで妹まで一緒にいるのよ?」

御坂妹「愛の逃避行中です、とミサカは愛しき人の手を取ります」

美琴「ほほう……」

上条「洒落にならない冗談はやめて! そしてお前も電気で髪逆立てないで!」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 08:28:38.57 ID:5ybb2bIYO
美琴「猫探しねぇ」

上条「あぁ、それらしい黒猫見掛けなかったか?」

美琴「んー、見掛けてないわねぇ。心当たりはもう探したの?」

上条「今もう一回見回ってるとこ」

美琴「ふーん。じゃあぐずぐずしてないで、さっさと行くわよ」

上条「手伝ってくれんのか!?」

美琴「か、勘違いしないでよ。この子をあんたなんかと二人っきりにさせるのが心配なだけなんだからね!」

上条「あははー、かみじょーさん信用0ですかー……。でもまあ、ありがとな御坂」

美琴「う……」

御坂妹「お邪魔虫め……とミサカはひそかに愚痴ります」

美琴「聞こえてるわよー?」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 08:44:25.17 ID:5ybb2bIYO
美琴「見つからないわねぇ……」

御坂妹「…………」

上条「そんな顔すんなって。きっと見つかるさ」

御坂妹「……ん」

美琴「なぁ〜にどさくさに紛れて頭撫でてんのよ。あんたも恍惚とした表情をしない」

御坂妹「……やきもちですか? とミサカは勝ち誇ります」

美琴「なっ!? べ、別に私は、こいつのこと、なんて……」

御坂妹「素直じゃありませんねぇ、とミサカはやれやれと肩を竦めます」

上条「お〜い、早くしないと日が暮れちまうぞ」

黒子「そうですわよ。冬は日が落ちるのが早いのですから」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 08:58:05.61 ID:5ybb2bIYO
美琴「って黒子!? なんであんたがここに!?」

黒子「なんでではありませんですの、お姉さま。そろそろ門限だというのにお姉さまがお帰りになられないから、こうして黒子が迎えに来たんですの」

美琴「いや〜、黒子。私、ちょっと用事が……」

黒子「駄目ですの。こう頻繁に門限を破っていては、また寮監から大目玉を頂戴することになりますのよ?今日のところは大人しく一緒に帰ってもらいますの」
美琴「んん〜〜にににににに〜〜〜……」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 09:08:17.23 ID:5ybb2bIYO
上条「あの〜御坂さ〜ん? 何を悶えていらっしゃるのでせうか?」

美琴「あんた!」

上条「はいぃ!?」

美琴「ちゃんと猫、見つけてあげなさいよ。……この子のためにも」

上条「……おう、任せとけ!」

御坂「お姉様……」

美琴「ふ、ふん! 行くわよ、黒子!」

黒子「あ、お待ちになって、お姉さま。それではご機嫌よう、お二方」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 09:21:46.83 ID:5ybb2bIYO
御坂妹「あとはこの公園だけですね、とミサカは逸る気持ちを抑えられずに捜索を開始します」

上条「あ、あれじゃねえか? あの木の幹の上にいるやつ」

御坂妹「……確かにあれはミサカのいぬです、とミサカはほっと胸を撫で下ろします」

上条「上に登っちまったまま、下りられなくなってたのか。じゃああとは下ろすだけだな、と」

御坂妹「危険です。ここはあなたより体重の軽い私が、とミサカは救助に志願します」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 09:35:47.61 ID:5ybb2bIYO
上条「いいからいいから。そこで待っててくれ」

御坂妹「では万が一落下した時のために受け止めるべく、ミサカは下で待機しています」

上条「あっはは、任せた。でも俺が足滑らせた時は避けてくれよな、危ないから」

御坂妹「ばっちこーい、とミサカは鼻息を荒くします」

上条「よっ、と。……大人しくしててくれよ〜……」

43 名前:保守有難うございます[] 投稿日:2009/12/20(日) 13:40:28.36 ID:5ybb2bIYO
頼りない幹がぎしぎしと嫌な音を起ててたわむ。
振り落とされまいと必死にしがみつく黒猫に上条は救いの手を伸ばした。

上条「よし、捕まえた、って、あらぁーッ!?」

負荷に耐え切れなくなった幹は遂に中程から折れてしまった。
必然、その上に跨がっている猫を抱いた上条も落下を始める。

上条「ぐおッ!? ……さ、さすが上条クオリティ、最後にきっちりアクシデントに見舞われるとは……ふ、不幸だぁー……」

地面に打ち据えられ、朦朧とした意識で猫の無事を確認する。

上条「よしよし……お前は無事、だった、か……」

安堵の溜息を吐くと視界は暗転し、上条の意識はそこで途切れたのだった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 13:52:22.64 ID:5ybb2bIYO
御坂妹「気が付きましたか、とミサカはあなたの身体を気遣います」

上条「……ん、あれ? 御坂妹? 俺、どうして……」

御坂妹「まだ起きてはいけません、とミサカはあなたの頭をふとももに誘導します」

上条「ふともも!? この感触、この温もり……まさか今上条さん、ひざ枕とかされちゃったりしてます?」
御坂妹「いぬを救助した際にあなたは頭を強打し、意識を失っていたのです、とミサカは現状を報告します」

上条「あー……はは、格好悪いとこ、見せちまったな」

御坂妹「……ごめんなさい、とミサカはしょんぼりします……」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 14:04:58.63 ID:5ybb2bIYO
上条「なんでお前が謝るんだ?」

御坂妹「受け止めると豪語しておきながらこのていたらく……とミサカは自分の不甲斐なさに肩を落とします」

上条「気にすんなって。お前に怪我でもさせた日にゃ俺がビリビリに怒られちまう。それに……」

御坂妹「それに? とミサカは小首を傾げます」

上条「こうやって御坂妹にひざ枕をしてもらえたしな。災い転じて福となす、てね」

御坂妹「こ、こんなものでよければいつでも……とミサカは……」

上条「ん? 何か言った?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 14:18:16.73 ID:5ybb2bIYO
上条「いやー、しかしあれですな」

御坂妹「な、なんでしょう、とミサカは動揺を隠します」

上条「こうしているとまるで恋人同士のようですな」
御坂妹「こ……!」

上条「俺なんかでごめんなー。という訳でお前の未来の恋人さんに悪いから、そろそろ起き上がる上条さんなのです」

御坂妹「あ、あ、駄目ぇ! とミサカは覆いかぶさってみます!」

上条「ッ!? こ、この胸とふともものサンドイッチという桃源郷はいったい!? ど、どうしたんだよ、御坂妹! 取り敢えず落ち着け、なっ? じゃないと上条さんはいろんな意味で落ち着けません!」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 14:25:45.91 ID:5ybb2bIYO
御坂妹「こ、これは、え〜と……計測! 脳波や心拍数に異常がないか計測しているだけであって、特に性的な意味はありません、とミサカは下手な言い訳をして、みたり……あぅ……」
上条「と、とにかく離れてくれるとありがたいんだが。なんか心拍数がどんどん大変なことになってるんで……」

御坂妹「…………」

上条「…………」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 14:40:13.10 ID:5ybb2bIYO
御坂妹「あ……」

上条「雪だ。とうとう降ってきちまったな」

御坂妹「綺麗……と、ミサカは感嘆を漏らします」

上条「そういや雪見るのは初めてなんだっけ?」

御坂妹「はい。知識としては知ってはいたのですが」
上条「積もればなー、一面の銀世界が見れるんだけど」

御坂妹「白いのに銀世界……ふふ」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 14:50:18.24 ID:5ybb2bIYO
御坂妹「っくちゅん!」

上条「ん? 寒いのか……って、そうか。自分の上着を俺に掛けてくれてたから……」

御坂妹「平気です、とミサカは身体の震えを我慢してみます」

上条「ごめん、なんで気付かねーんだ、俺は……。早く暖かい所に移動しよう。このままじゃ風邪ひいちまう」

御坂妹「もう少し……」

上条「ん?」

御坂妹「もう少しだけ、あなたと雪を見ていたいです、とミサカはわがままを言ってみます」

上条「…………」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 14:57:56.33 ID:5ybb2bIYO
上条「……仕方ねえなぁ。ほら」

御坂妹「?」

上条「こっちこいよ。二人でこの上着羽織ってれば、少しは寒さもマシになるだろ」

御坂妹「で、ではお邪魔します、とミサカは隠し切れない緊張を押し殺します……!」

上条「こうして身を寄せ合っていれば結構温かいだろ」

いぬ「にゃー」

上条「おぉ、お前もそう思うか」

御坂妹「…………」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 15:09:10.18 ID:5ybb2bIYO
御坂妹「こ、こうしていると……」

上条「うん?」

御坂妹「こうしていると、ま、まるで恋人同士、みたいですね、とミサカは小さな願いを呟きます……」

上条「そう……だな」

御坂妹「…………」

上条「…………」

御坂妹「テレテレ、とミサカは感情を擬音で表現してみます」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/12/20(日) 15:13:42.50 ID:5ybb2bIYO
上条「今度、さ」

御坂妹「?」

上条「見に行かねーか? 一面の銀世界ってやつを。その……二人っきりで」

御坂妹「……はい」

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